電「本当に...忙しいのです...」
翔「とまあこのように電が許してくれるほどにコンブの奴は勉強頑張ってるらしいから、どうにか許してくれ。てなわけで────」
翔・電『本編へ、どうぞ!』
in風呂...
「龍田さん、あなた...男が苦手なんじゃ?」
「いや〜、見せてくれるねぇ〜。」
「龍田さんが...驚きです、はい。」
「あの司令官さんのいいとこ、教えて欲しいな〜!」
龍田さんを囲むように私...山城と、この前第七鎮守府にやってきた鈴谷、春雨村雨姉妹がにじり寄る。
...春雨村雨姉妹のぴちぴちで健康的な肌はとても眩しく、小ぶりながらも膨らみかけている胸は────
────私は何を考えているのだ。
少し煩悩に侵されていたようだ。
...まあ、いわゆる“恋バナ”と言われるものが好きなのだろう。
「それが...あの人だけは、気を許してもいい気がするの。」
「あの龍田が...まぁ、いつかはこうなると思ってたけどな。」
摩耶もうんうんと頷きながらざばぁと浴槽に浸かる。
...引き締まった体つきだが、出ているところはちゃんと出ている女性として恵まれた身体。
同じ艦娘というのに、私とは比べ物にならないくらいに綺麗。まったくをもって私は不幸だ...
「アイツぁ心からアタシたちのことを考えてくれてる。日本を変えるなんて夢物語と思ってたけど...正直、アイツならやりかねないな。」
「榛名も、こんなに休みを頂いてお風呂も入らせてもらえるなんて...」
「そうね。私たちは入渠以外お風呂は入らせてもらえなかったわ。」
榛名や暁も集まる。
...榛名は大きすぎず小さすぎず、彼女自身の性格を体現したかのような謙虚な体つき。でもどこか、“ほにょ”感があり、包容力に溢れたお姉さん体型だ。
私のような根暗でお腹や二の腕がぷにぷにしているおばさんなんかとは比べ物にならない。実に不幸だ...
「私も聞かせてもらいます。」
「何を話してるのです?」
「あー!私も私もー!」
「......」
電を抱えた加賀や雷、北上も興味なさげな顔をしながらもす〜っと近づいてくる。
...加賀はもはや、凶器だった。大きいくせにハリがあってブラ無しでも型崩れしない胸、弓を使っているからか腕や脚は細いがちゃんと筋肉がついていて、それに加えて真面目だが天然の入っている性格。生まれる時代によってはその天然さで国を傾けていたかもしれない。
贅肉しか付いていない山城はもう泣きそうになってきた。
「で、進捗の方は?」
「龍田さんは意外と大胆なのです!」
「あの提督のどこに惚れちゃったの??」
艦娘と言えどみんな女の子。艦娘の原動力は闘志と資材と装備改良だが、女の子の原動力は恋バナと甘味とお洒落なのだ。
結局全員で龍田を囲んで、暁がのぼせるまで尋問は続いたのであった...
∽
ブオー!
「...電。
なんだか、私に視線が集まっている気がするんだが。」
「気のせいなのです。」
髪を乾かしてやっているのはいつも通りなのだが、今日は妙に見られている気がする。
いや、ガン見という訳では無いのだが、なんか...チラチラと見られている気がするのだ。
...ふと、春雨と目が合う。
「春雨も乾かしてやろ...」
「ぴゃーっ///」
顔を真っ赤にして執務室から出て行ってしまった。
...と思ったら顔を少し見せて、
「...その、後でお願いします。」
と言い残し、どこかへ行ってしまった。
「...電、やっぱり────」
「気のせいなのです。」
「そ、そうか...
────ところで電、なんか怒ってないか?」
一見いつもの電なのだが、何かわからないけど怒っている気がする。
長年付き合ってきた私には分かるのだ。
「別にぃ、何も無いのですぅ。」
ぷくー、とほっぺたをふくらませる。
...やはり、この電の言い方は何かでいじけている時だ。
「......」
しばらくの静寂。
いや、ぶおおおおっとドライヤーが唸りをあげている。
「......よし。
電、終わったぞ。」
......
「電?」
「もう少し、こうしていて欲しいのです。」
...ようやくわかった。
最近電といる時間が短くなっていたからだろう。
本格的な指揮が始まって毎日遠征に行かせ続けていて(一七〇〇には戻れるように時間は調整しているが)、二人の時間が最近短くなってきたのは事実だ。
申し訳なさを感じながら、電を抱き寄せる。
「はゎ...」
∽
カチャ...
私が扉を開くと、提督さんと電さんが座っていた。
...よく見ると、寝ているようだ。
(村雨お姉ちゃんに頼んだ方がよさそうですね、はい。)
パタン。
∽
翌朝。
第七鎮守府には、一つ問題があった。
「...そろそろ、だな。」
翔が着任してもう一ヶ月経とうというのに、護送作戦の一度しか出撃していないのだ。
「今日は近海警備に出てもらう。強力な深海棲艦は出ないはずだから駆逐、軽巡を軸にした編成を組むつもりだ。」
「...(資材節約なんだね〜)ボソッ」
「そういう事だ北上、まだ資材に余裕が無いからな。」
「聞かれてるし?!」
翔はかなり耳が良い。まあ、電には全く及ばないが...
つくづく器用(?)な奴である。
「それじゃあ旗艦は龍田で...北上、村雨、春雨、雷、暁に頼む。
主にはぐれ敵艦隊を撃退してくれ。」
『了解ッ!!』
みんなの返事を聞いてうんうん、と頷く翔。しかし...
「...ところで提督ぅ〜、鈴谷たちの出番はまだなのー?」
「アタシたちは物置に放り込むってか?!」
「は...榛名も、体が鈍ってしまうというか...」
「提督が変わっても出撃できないのは変わらないのね...不幸だわ...」
...加賀も無言でじっと翔を見つめる。やはり艦娘として海に出たいのだろう。
「大丈夫だ。今はまだ出撃の機会は無いが...
夏に予定されている大規模作戦では、君たちが主役になるんだ。
今のうちに訓練で力をつけて、然るべき戦いで活躍をみせてくれ!」
「榛名、感激です!」
「...もー、口が上手いんだから。」
「ケッ...仕方ねーな。」
「あぁ、大規模作戦で死ぬほど出撃させられるのね...不幸だわ...」
...などと言っているが、みんなの目は闘志に滾っていた。
加賀もふむふむと頷いている。丸く収まったようだ。
「それじゃあ各自、行動に移ってくれ。
...あと、今日一日電と私は鎮守府を空けることになるから、分からないことがあれば憲兵さん辺りに頼ってくれ。」
私にも頼っていいのよ!と、雷がぴょんぴょん跳ねる。
「おっ?!二人きりでデート?」
早速北上が食いつく。
「いや、航路がようやく出来上がったから集会で報告するんだ。」
「長ったらしい話を聞く羽目になりますが...代わりたいのです?」
「い、いや...遠慮しとくわ。」
∽
集会には全ての鎮守府の提督が集まる。
廊下を歩いていると色んな提督と出会うのだが、秘書艦はみんな斜め後ろに控えて歩いている。
第八鎮守府の秘書艦に電が話しかけようとして提督に威嚇されたりとか、まあ多少あったものの特に問題はなく歩いていく。
ざわっ... ざわっ...
私が会議室に入ったときには既に半分くらい揃っていた。
どいつもこいつも変に装飾やら服やらにこだわっているのがわかる。
...馬鹿らしい。
私の右隣にいつぞやの第六鎮守府提督...浦辺がいるのだが、目が合うとこちらを軽く睨んでフン、と鼻を鳴らす。
噂によると今まで出撃させていなかった艦娘を起用したり、私たちの鎮守府を見習って士気向上のためか施設改良に手をつけたり、浦部なりに努力はしているようだ。それに面と向かって再び会ったのにあの戦いを掘り返さないあたり、浦部も現実を受け止めれる潔いやつなのかもしれない。
左側には先ほど電が威嚇された...第八鎮守府の提督が座っている。
私よりもいくつか年上に見え、目つきが鋭く無口な男。...脅す気がなくても、電ぐらいに気が弱い娘ならビビってしまうだろう。
ざわっ...!
辺りを見回すと秘書艦たちはやはり、みんな席についた提督の斜め後ろに立っている。権威を見せたいのだろうか...?
「...みな、集まったかな?」
元帥が最後にやってきた。もちろん、例の黒髪美人の秘書艦は室内でもベレー帽をかぶっている。
適当な挨拶やら開会宣言を済ませると、早速私に出番が来た。
「今回の議題は第七鎮守府の鞍馬君が見つけた、ウラジオストクと繋がる航路についてじゃ。説明、頼むぞ?」
「はい。」
私は立ち上がって、電から資料を受け取る。
「私は約二週間前、ウラジオストクの鎮守府から漂流してきたという駆逐艦、響と出会いました。
響はどうやら深海棲艦撃退作戦中に嵐に遭遇したようで────」
∽
「────ということです。
また、これらの情報からこのように航路を組みました。...こちらになります。」
壁掛けスクリーンも利用して、あの十日間についてほぼ全て話した。
「────もしもその航路で響?とやらが深海棲艦と会敵しなかったのが、偶然だったらどうする?
その航路の安全性を立証するには少しばかり、情報が足りないなぁ?」
ざわっ...! ざわっ...!
調子に乗るな若造め...と言わんばかりの目で睨まれながら、あれは...第二鎮守府の提督に反論される。
確か元帥の右腕のように働いていたはずだが、見た感じ上手いようにこき使われてるようにしか感じられないし、やはり艦娘の扱いは雑らしい。
歳上至上主義の老害は失せろ、と言いたいところだが相手の意見もまあ筋が通っている。
「しかし深海棲艦と出会いにくい航路として、艦娘の遠征先に出来ると思うのですが?」
「一理、あるな。」
ざわっ...!
元帥からの思わぬ支援射撃。どうにか元帥に媚を売って権威を高めたい下衆共は、この一言でもビクビクするのだ。
「...元帥殿が言うなら。」
なんとかクソジジイもすっこんだようだ。
「(────、プークスクス。)」
後ろで電が笑っている。幸いにも周りに聞こえない程度の笑い声だったが...
「兎に角この航路については、後々他の鎮守府からも遠征部隊を送って安全性を立証してもらおう。
では、次だ────」
無駄な時間は続く...
後書き・鈴谷ちゃん
「ちぃーっす!ここまで読んでくれた読者のみんな、ありがとね!
最近私、ネタ扱いっぽくされてんだけどー!
...とまあ愚痴はこのへんにしといて、お話の方は提督会みたいだね。
鞍馬提督に提督繋がりで友達って...アッハイ(察し)
次回・サブタイトル予想『提督会議・“秘書艦Side』。
どうやら第八鎮守府の秘書艦さんから見たお話になるみたい。
気長に待ってくれると、嬉しいな☆(ゝω・)v」