電「ちょっと日間ランキングに載った程度で調子に乗っているのです!」
翔「相変わらず手厳しいなw
────それでは、」
翔・電「本編へ、どうぞ。」
日は流れて護送作戦当日。
「これが私の初めての作戦行動だ。私も全力でサポートするが、どうか生きて帰ってきてくれ...!」
「もちろんなのです!」
「まっかせなさーい!」
「私の活躍、見ていてね!」
「うふふふ...」
うむ、士気は十分のようだ。
「提督...」
「どうした?響。」
「ここにいた数日間、楽しかったよ。ありがとう。」
「楽しかったのは私たちもだ。貴重な話、情報...ありがとう。」
そして響は少しもじもじしながら、憲兵さんに向き直る。
「憲兵さん、その...助けてくれてありがとう。ろくなお礼もしてないのに会えなくなるなんて...寂しいよ。
その...君の背中は、暖かった。」
「いやいや、また寂しくなったらここに来てくれ。...きっと提督も喜んで迎えてくれるさ。」
「...うん!」
最後にぽんぽん、と帽子の上から響の頭を撫でて憲兵さんは下がる。
「よし、じゃあ...行ってこい!」
『了解っ!』
∽
ビーッビーッ!ビーッビーッ!
「な、なんだ?!」
この音は...救援信号をキャッチした時の音である。
「ここから結構近い...深海棲艦に襲われてるのかも、提督!」
「あぁ、言われずとも!」
紳士のティータイムを邪魔された恨み、響の仇...
私は近海警備を任せていた駆逐艦四艦編成の遠征部隊に速攻でポイントへ向かわせ、戦艦・空母含む第一艦隊を後から援護に向かわせた。
∽
「この辺...なのです?」
あれから一度も会敵すること無く、目的地に着いてしまった。
なんだか不自然な気もするが、今は自分たちの運が良かったということにしておく。
「もう信号は出したから大丈夫よ!きっと来てくれるわ!」
司令官から指示されたポイントで救援信号と発煙弾を撃って、待つこと15分。
「『おーい!』」
「あ、あれは...『輸送部隊のみんな!おーい!!』」
突然響がロシア語で叫ぶ。
「『心配したんだよ響!
...その人たちは、艦娘??』」
「『そうだよ。日本の私の姉妹と軽巡洋艦の姉さんさ。』」
ぽかーんとしていたが、翔にインカムを二回小突いて合流したことを報告。
その後ウラジオストクの鎮守府に招待され、翔から預かっていた資料などを交換。
美味しいお菓子を貰ったり燃料を補給してもらったり、さらには近海まで見送ってもらって難なく帰投。
∽
日本の軽巡洋艦と駆逐艦たちを見送って、響を呼び出す。
「『響、向こうで何もされなかったか?変に触られたりしなかったか?』」
「『まあまあ提督、君は過保護すぎるよ。漂流している間は寂しかったけど...それを埋めても有り余るくらいに楽しい生活だったよ。』」
「『ハハハ...これは日本に貸しが出来てしまった。
また会えるならご馳走を用意しないと、な。
じゃあ、詳しく聞かせてくれ...』」
「『うん。まず、私は海岸に打ち上げられていたらしいんだ────』」
∽
────バンっ!!
「艦隊が帰投したわ!」
...私たちは、何にもしなかった。
率直に言おう、一度も会敵しなかったのだ。
「ああ、お疲れさま。よく頑張った。」
「ただいま司令官!」
ドスっ!
勢いよく扉を開いた雷が勢いよく飛びついていく。そのスピードは迅雷が如し。
「お゛っふ!
...おかえり、雷。」
響ちゃんがいた時...いや、雷ちゃんが遠征から帰ってきたら提督さんはいつもこの突撃を受けていた。
...衝撃を殺す手段はもう掴んでいるようだ。
その様子をじっと見つめる暁。
またこの暁ちゃんが傑作なのだ。
提督さんは、ぱっと手を広げて待ち構える。
「なっ、何よ!子ども扱いしないでくれる?!」
────ぼふっ!
「お姉ちゃん、そういうのは満面の笑みで抱きついてすりすりしながら言っても説得力がないのです...」
「────はっ!
い、いつの間に...騙したわね司令官!」
「お姉ちゃん、そういうのは頭を撫でられて目を細めて日向ぼっこしている猫さんのようにリラックスしながら言っても説得力がないのです...」
「────はっ!!」
「ふふっ...」
このかわいい平和なやり取りを一歩離れたところから見るのが、私...龍田の最近のお気に入りだ。すると今度は私に向き直り、
ぱっ...
「......」
「スミマセン調子乗りま────」
────ぽふん、ぎゅー。
「...ただいま、てーとくさん。」
∽∽∽
────てめぇらまた遠征失敗したのか?!
ボコッ、どしゃぁ...
────ひいい!痛いぃ!
────仕方ないです!今日は一寸先も見えないほどの大嵐なんですぅ...
────提督さん、次は、次こそはちゃんと成功させるから!
────その言葉は聞き飽きたんだよ!
ガスッ、ドンガラガッシャン...
痛々しい音や声が部屋まで聞こえる。いつもに増して機嫌が悪い...酒でも切れたのだろうか。
...人間など、男など私たちのことを兵器として恐れる目で見るか、“モノ”として奴隷を扱うような白々しい目か、短いスカートを追うような性的な目でしか見ない。
...私は人間と向き合う時は、常に薙刀を出すのが癖になってしまった。
────龍田さん、慰めてくれてありがとう...迷惑かけて、ごめんなさい...
────良いのよ。私にとってあなたのことを見られるのが、唯一の幸せなんだから...
────ねぇ、龍田さん。
ㅤㅤ私って、なんで生まれてきたんだろ。
ㅤㅤ生きるって、こんなに辛いの?
────いつか、きっと楽しく...
────嘘だ!ずっと...ずっとこの鎮守府で!遠征ばっかり行かされて!奴隷みたいな扱い受けて!もう嫌なの!こんなぐらいならジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!!
耳障りなアラーム。次の遠征の報せだ。
────...行ってらっしゃい。
────......、.........ごめんね、龍田さん。
ㅤㅤㅤ............ありがとう、龍田さん。
いつもは『行ってきます』と返してくれるその子は、いつもと違う挨拶を返して遠征へと出ていった。
バタン、と響いたそのドアの音は、なぜか妙に耳残りするものに感じられた。
百足が背中を這うような、羽虫が頭の中で飛び回っているような、底のない違和感...不安がとめどなく溢れてくる。
────まさか...ッ!
その日、四艦編成の遠征部隊は...三艦で帰ってきたのであった。
────あ、あ...あぁ.........ぁ...............
...この日から龍田は、涙を流すことができなくなった。
あまりのショックに感情が壊れたのか、はたまたその前から既に────
∽∽∽
後書き
「ここまで読んでくれた読者の皆さま、ありがとうございます。
えー『裏話・あなたが手を引いてくれたから』にて、多くの感想、評価を頂いたので改めてお礼を言いたくてこの場をお借りしました。ありがとうございます。
今回はとうとう...龍田さんの過去が。
次回は多分、お風呂回になりそうです!
男子読者諸君の期待には応えられないかもしれませんが、楽しみにお待ちください。
もちろん女性読者の皆様も、楽しみにお待ちください。
次回・サブタイトル予想『提督会議・翔side』
“翔side”ということは...
次々回まで少し長引きそうです」