電「誤字報告が怖いのです...」
翔「遠慮なく報告してくれ。それでは...」
翔・電『本編へ、どうぞ!』
17話 異邦人の漂着
目覚めると、鎮守府が遠くに見えるほどに近づいていた。
破壊の痕跡は無く、深海棲艦?は暴れていないのだろう。
「起きるんだ、もうすぐ鎮守府に着くぞ!」
「!!」
一番に加賀が跳ね起きて、窓から外を見る。...あのメールの内容を知っているからだ。
続いて駆逐組、榛名、山城、龍田、少し遅れて鈴谷が起きるが、摩耶と北上は寝ている。
「...電、頼む。」
「はいなのです...!」
私が合図すると電はこっそりと二人に近づいて、摩耶の耳元に息を、北上の背中に指を這わせる。
ㅤくすぐりなど人の神経を逆撫ですることが、電の隠れた特技だったりする。
ㅤすーーーっ...
「「────??!!」」
ㅤガスっ!
二人は驚き、揃って天井に頭をぶつけて悶える。
意外とバスの天井は低い。みんなも寝ぼけまなこで立ち上がって頭をぶつけたこと...あるだろ?
本当は拳骨を落としたいところだったが、日本男児として女子に手を出すなどあってはならない。
「全員起きたな?
鎮守府に到着したら、常に艤装を展開できるようにしてほしい。
理由は後ほど話すが、警戒状態を解かないように。」
少しバス内がざわつくが、雷の「わかったわ、しれーかん!」の声でだんだんと収まっていく。
門をくぐると、憲兵さんが私に手を振る。
駆逐艦たちは出迎えてくれていると勘違いしているのか手を振り返しているが、あれは『降りたらこっちへ来てくれ』という合図だ。
運転手に少し頭を下げ礼を言い、走って憲兵についていく。
「こちらです。」
ガラリと医務室の扉を開くと、ベッドに白髪の少女が横たわっていた...顔に残る擦り傷切り傷が痛々しい。
そっと布団を捲っても特に手や足は縛られてなく、しかし傷が深いと思われる脚に包帯を巻くなど応急処置がなされていた。
「ありがとう。流石は長いこと勤めているだけあって完璧な対応だ。」
「いえ、勿体なき言葉です。」
下手に拘束したり敵意を見せようものなら、ここら一帯は焦土と化していただろう。
獣とは違い、会話できる知能を有しているかもしれないと言われている得体の知れない敵ならば、とりあえず大人しくしてもらえる環境を作るのがベストだ。
「う...ん......」
少女が身体をよじる。都合がいいことに目覚めたのだろうか。
ゆっくりと目を開き、こちらを見てこう言った。
「────
「?!」
「『ここは日本の第七鎮守府、私は提督の鞍馬翔だ。
君はどこから来たんだ?』」
「?!?!」
憲兵さんが目を白黒させている。
当然だろう、私たちはロシア語で会話しているのだから。
「日本語なら、話は早いね。
私もあなたも話したいことが山々かもしれないけど、帽子...私の帽子を知らないかい?」
ㅤその艦?は頭を触りながらきょろきょろと見回し、流暢...いやそんなレベルではない。母国語のように日本語を使いこなして聞いてきた。
「あ、あぁ...これかな?」
憲兵さんが椅子の上から帽子を取って、頭にかぶせる。
「ありがとう...これがないと妙に落ち着かないんだ。」
「...ん?
そのバッジは...すまない、会わせたい人がいる。」
「うん、時間はあるからね。待ってるよ。」
帽子に付いていた見覚えのあるきらめくバッジ。
...きっと彼女たちと同じものだ。
その“三人”が警備を担当している執務室の扉を、特定の回数ノックして入る。
「お疲れさま司令官。
その、問題は解決したの?」
暁が声をかけるが、ちょっと待っててくれと適当に返事をして放送機器のスイッチを入れる。
「『館内放送、全艦娘の警戒を解除する。繰り返す、警戒を解いて大丈夫だ。
この後はしばらく自由行動とする。』
そして君たち三人、私と一緒に医務室までついてきてくれ。」
「わかったわしれーかん!」
「了解なのです!」
「場所がわからないからエスコート...
ふえぇ、置いてかないでー!」
「は、はわわわ?!」
「いつから着任したの?!」
「えっ...えぇ?!」
「これは...驚いたなぁ。」
後書き・北上
「ここまで読んでくれたみんなぁ〜、ありがと!
ㅤこの私、北上さまがとうとう後書きに来ちゃったよ〜?
ㅤお話の方じゃあまだ大した活躍はできてないけど...この漂着者のお話がひと段落したら、色々と進めていくつもりなんだって〜。
ㅤて・な・わ・け・で、
ㅤ次回、サブタイトル予想・『集合!第六駆逐隊』。
ㅤ...面倒臭そうなタイトルだね〜。」
ㅤ