バイオリンの演奏をしにやってきた龍音と偶然に再会して改めて自己紹介をした龍音に戸惑っていたセイレーンだったのであった。
「楽しむ資格はない‼」
「楽しむも、楽しまないも、セイレーン、いや、エレンと呼んだ方がいいかな?」
「どうして、その名前を?」
「なんとなく、セイレーンのアナグラムじゃないかなって思っただけだよ。それと、この前言ったこと、覚えてる?」
「償う心が強さ」
「おまえさんはその若さで、よくそんなこと言えてしまうんじゃな」
龍音に自分が音楽を楽しむ資格などないと言ったセイレーンに龍音は楽しむも楽しむもと付け加えて、セイレーンの事をエレンと呼んだのである。
セイレーンは昨日会ったばかりの龍音にまさか偽名である「エレン」と呼ばれたことに驚いたのであった。
もう一つの名前を目の前の昨日会ったばかりの人物が知っているという状況に驚かないのは無理もない、流石に次元武偵にしていろいろな事件を解決してきた腕を持つとは言えなかった龍音は、ハミィが呼んでいたセイレーンのローマ字表記のアナグラムだと思ったと答えたのであった。
そして、龍音は昨日セイレーンことエレンに言ったことを覚えているかというと、エレンは償う心が強さと呟いたのであった。
調べの館の主である調辺音吉が龍音が歳のわりにすごいことを言ってのけたことに感心していたのであった。
「もう答えは出るはずだよ。こっからは、エレンが気づけるんじゃないかな?」
龍音はバイオリンを片付けて、答えはもう出てるはずだとエレンを後押しする形で言い、エレンはそのまま調べの館を後にしたのであった。
「ボクも行きますね」
「いつでも、来なさい。おまえさんのバイオリンは本当に独学なのかと思うくらいに自由な音色だからな」
「はい」
「鳴り響く流れの神の龍の音の女か・・あの子はとんでもない逸材じゃな」
龍音もバイオリンケースを持って音吉に挨拶をして調べの館を出て行ったのであった。
龍音が出て行ったのを見た音吉は、天の道を行き、総てを司る男のような、名乗り口上を姿が見えなくなった龍音に言ったのであった。
「償う心が強さ・・・」
「セイレ~ン‼」
調べの館を出たエレンは龍音に言われたことを思い出していたところに、ハミィがエレンの顔面目掛けて飛びついたのであった。
「仲がいいんだね」
「龍音ニャ‼」
「さてと」
後ろから廊下を通過中にアイテムパックにバイオリンケースを締まって出てきた龍音がエレンとハミィを茶化したのであった。
「出て来たらどうかな? 響と奏‼」
「ギクッ‼」
「響‼ 奏‼」
龍音に完全に気配を察知されたことに気づいていなかった響と奏は龍音に出てくるように言われて、木陰から出てきたのであった。