ロクでなし魔術講師と異能者と超能力者 作:TouA(とーあ)
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ではどうぞ!
僕の名前は斉木楠雄。超能力者である。
二度も説明はいらないよ、と貴方が思ったことはお見通しである。
何故なら僕が超能力者だからだ。ちなみに映画は10月21日に公開である。
ここらで僕の学院生活に話を戻すとしよう。
グレン=レーダスという見た目そのままロクでなし要素満載の男が僕のクラスの非常勤講師を務め始めて一週間が経過した。
(あぁもう面倒くせぇ・・・早く授業終わらねぇかな)
僕が所属するアルザーノ帝国学院は生徒は優秀な者ばかりで、この様な考えを持つ生徒は極少数だ・・・その少数の中に目の前で大きく口を開けアクビをしている非常勤講師も入るのだが。
ロクでなし、という言葉の体現者であるグレン先生はこの一週間をやる気一つ起こさず、全ての授業を投げやりに行った。寧ろ投げやりに行う事にムキになっている節すら感じる。
今日も今日とて先生は通常運転で、黒板に教科書を釘で直接打ちつけ始めた。最初の頃は要点を板書し教科書の内容を一通りさらうなど形としての授業は行っていたのだが、それが教科書の内容をそのまま書き写すに代わり、翌日には教科書を引きちぎって黒板に貼り付けていくようになった。
さてここで僕の能力の一つを紹介しよう。
テレパシー能力の応用である“好感度メーター”である。
これは周囲全員の心を読んで好感度を割り出し数値化するものだ。
例えば僕の数値は平均的に45程度である。
それでグレン先生はというと平均的に20といったところか。この数値は席替えで隣になった女子が悲鳴を上げるレベルだ。そしてこのクラスには先生に対して一人だけ好感度が特別高い者と人一倍低い者がいる。
ルミア=ティンジェル。
ミディアムの金髪に見る者を魅了する青玉色の瞳。清楚で柔和、容姿端麗、成績優秀、まるで天使の生まれ変わりであるかの様な少女である(クラスメイト男子談)。または千年に一人の美少女(隠れファン談)。彼女のせいで僕のテレパシーに一日何度『おっふ』が届くことか・・・。
彼女は先生に対して好感度が80を超えている。テレパシーで耳に入ってくるに過去に何かあったようだが、僕は知りたいと思わないので知らない。
それでもってこのルミア=ティンジェルという少女は僕と近しい能力を所持している人物であり、ある重大な秘密を抱えており、僕の平穏無事の学院生活を脅かす存在だ。まぁ今のところこの少女よりグレン先生の方が平穏を脅かしているのだが。
そしてもう一つ。
このルミア=ティンジェルという少女。僕に対しても好感度が高く、70を超えているのである。70はどのくらいかというと、咄嗟にへんな挨拶をしてもちゃんと返ってくるレベルだ。なぜそんなに高いのか分からないし身に覚えもない。テレパシーで聞こうにも全く僕の話題を出さない(当たり前だが)から知れないのだ。そういう意味でも彼女は僕の学院生活を脅かしていると言える。参考として言うが他の男子は50から60相当である。
話を戻そう。
グレン先生に対して人一倍好感度が低い者がいる。
その人物の名はシスティーナ=フィーベル。由緒正しい魔術の名門であるフィーベル家の娘だ。成績は優秀で、ある一部分を除けば容姿こそ親友のルミア=ティンジェルに劣っていないものの家柄も合間ってか性格がキツイので男子人気は殆ど無い。昨今で僕の平穏を脅かしている人物の一人でもある。
「いい加減にして下さい!」
「言われた通りいい加減にしてますが何か?」
「子供みたいな屁理屈こねないで!」
堪忍の尾が切れたフィーベルは寝ぼけ眼のグレン先生に激昂し、怒声を浴びせる。
お分かりいただけただろうか?僕の平穏無事のスクールライフが見る影も無くなっていることを。性格が真逆で犬猿の仲である二人がこうして幾度とぶつかっているのだ。
(いいぞいいぞ!もっと言ってやれ!)
(もっと言ったれフィーベル!)
(システィーナ!もっと言ってくださいまし!)
(もっともっと熱くなれよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!)
(このまま黙って自習しておけばいいものを・・・くっ!左手が疼く)
その度にテレパシーで否が応でも聞こえてくるクラスメイトの心の声は不愉快極まりない。極少数に至ってはとてもじゃないが聞きたくもない。まぁ気持ちはわかるが少し冷静になって欲しいところだ。
「ぶへっ!」
「貴方にそれが受けられますか!」
「お前・・・マジか」
手首のスナップでそこそこの速度で放たれた手袋がグレン先生の顔面に当たって床に落ちる。 しん、と教室内は静まり返った。
僕の手に掛かればここで過去に逆行し、この雰囲気を止めることは可能だ。だが止めたところでフィーベルの忍耐はどこかで崩壊する。どうせこのイベントが起こるのなら早く済ませるに尽きる。
「・・・何が望みだ?」
「野放図な態度を改め、真面目に授業を行ってください」
世界に散らばる何でも一つ願いが叶う七つの玉を集めたのに願い事をギャルのパンティレベルで済ませたフィーベル。
「はぁ・・・なら俺が勝ったらお前、俺の女になれ」
「─────ッ!」
「当たり前だろ?そっちが望みを言うんならこっちだって言わねぇと釣合わねぇ。それにお前、上玉だし」
「わ、わかりました!受けて立ちます!」
(チョロイというか何というか・・・親御さん泣くぞホント)
(だ、駄目よシスティーナ!弱気になっちゃ駄目!勝てばいいのだから!そうよ!勝てばいいの!)
今回に至ってはグレン先生に同意だ。
さすがにチョロ過ぎやしないだろうか。今時のメインヒロインももう少し突っぱねると思う・・・ほら周りの男子を見てみろ、好感度が上がっている・・・上がってる!?
(これだけチョロかったら俺にもチャンスが・・・!)
(よく見るとフィーベルさん可愛いよね、性格はちょっとアレだけど)
(胸はないけど・・・それがいい!)
(熱くなれよぉぉぉぉ!もっと、もっとぉぉぉぉぉ!)
(静まれぇぇぇ僕の左手!!)
相変わらず僕のクラスメイトの男は脳内がキャラメル牧場らしい。本人が聞いたら発狂しそうだが。
やはり多少ズレてはいるが一般家庭で育った僕やクラスメイトと名門の娘として育ったフィーベルとでは価値観に相違が出るのだろうか。言うまでもない、か。
「冗談だよ冗談。そんな泣きそうな顔すんなよ。俺の望みは喧しく説教しないこと。オッケー?」
「〜〜〜〜〜〜っ!わ、わかりました!」
「はぁ・・・さっさと中庭行こうぜ」
「え、えぇ!!」
先生は気怠げに、フィーベルは気合十分に教室から出て行った。その結果を見ようと他のクラスメイトも付いていくように出て行く。
僕も好感度的に考えて出て行くのが妥当だろう。然し僕の超能力を使えば中庭にいたと暗示を掛けることもできる。所詮、好感度40程度は居るか居ないか認識されないレベルだからだ。
それに決闘の結果は
フィーベルの圧勝。それが結果だ。
テンプレという一応の流れでは、日頃弱そうにしていた奴がいざ強者と決闘すると隠していた力を開放し圧勝する。簡単な話、そうすると盛り上がるからである。
だがグレン先生の本性と心の声を知っている僕は先生が勝たない事を知っている。勝てない理由を知っている。授業でよく一人ごちっているからである。
「サイキ君は行かないの?」
おっと好感度70のティンジェルが動かない僕を見て声を掛けてきた。
クラスメイトの好感度は40程度で存在をあまり認識されないからと甘く考えていた・・・一人例外が居たな。さて、どうしようか。
『行かない』
「そっか。じゃあまた後で」
そっけない態度を取ったにも関わらずティンジェルの好感度は下がらない。僕は一体、君に何をしたと言うんだ。
(また後で。また後で、か・・・ふふっ)
上機嫌に教室から出たティンジェルを最後に教室は静かになった。テレパシーも半径200m以内までなので教室がここまで静かになったは久方振りである。
だから僕はスイーツタイムへと移行する。
母さんが毎度キャラ弁当と共に入れてくれるデザート。これが学院生活の密かな楽しみだ。
弁当と共に入っている袋を開いてみると・・・おっと今日は“コーヒーゼリー”のようだ。
僕は“コーヒーゼリー”というデザートが嫌いではない。珈琲豆の芳醇な深い香りとコク、それを閉じ込めた気品を感じさせる味、更にミルクとの出会いで違った顔を覗かせる罪深い程に贅沢な一品・・・全然嫌いではない。
こうして今日も僕の学院生活は忙しく喧しく過ぎ去っていくのである。
お久しぶりです。久し振りの一話、いかがでしたか?
話が進まない。アニメで言えば一話さえ終わってねぇ・・・どうしよ。
今日のうちにもう一話投稿するのでお楽しみに。
謝辞。
『ましろんろん』さん、最高評価有難うございます!
『カクト』さん、高評価有難うございます!
ではまた次の話でお会いしましょう!感想と評価、お待ちしてます!