ロクでなし魔術講師と異能者と超能力者   作:TouA(とーあ)

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プロローグ

 

 僕の名前は斉木 楠雄。

 

 

 超能力者である。

 

 

 最初に説明しておくが僕がおかしいのではない。言うなればこの世界がおかしいのである。

 

 もう一度言おう。僕は(れっき)とした超能力者である。

 

 超能力と聞けば何を思い浮かべるだろうか。

例えば、意思の力で物を動かす念力(サイコキネシス)

例えば、言葉を介さず意志を伝達する念話(テレパシー)

例えば、重力を介さず空を飛ぶ空中浮遊能力。

例えば、一瞬で別の場所へ移動する瞬間移動。

 

 他にも、透視、千里眼、幽体離脱、予知、変身能力(トランスフォーメーション)などなど。

 

 この様な言い方をすると、もしかしたら『なんて羨ましい!1つぐらい分けてほしい!』みたいに思う人がいるかもしれない。

 

────確かに。

 

 瞬間移動を使えば学校や職場へは一瞬で移動出来る。

 

 手を触れなくてもスプーンも曲げられる。

 

 伏せられたカードだって透視で分かる。

 

 念話(テレパシー)のお陰で気になるあの娘の考えていることも全てお見通しである。

 

 

 超能力者の人生。

 それはまさに、夢のように素晴らしい人生────。

 

 

 

 だと思ったら大間違いだ!!

 

 

 

 例を一つ挙げるとしよう。

 僕には“念話(テレパシー)”という能力がある。

 想像通り、他人や動物の頭の中の考えを読み取れる能力である。

 

────だが。

 

 僕の念話(テレパシー)能力は『半径200m以内にいる人や動物の思考が常に頭の中に流れ込む』のである。

 

 想像して欲しい。

 僕は24時間365日、頭に流れ込んでくる大量の心の声を聞き続けているのである。

 今までの16年間、如何に僕が精神を蝕まれてきたかを少しでも慮ってくれたら嬉しい限りだ。

 

 念話(テレパシー)という1つの超能力を取り上げただけでこれなのだから、僕に羨望の眼差しを向ける者は少なくなったと思う。

 

 

 ここでこの地と僕の所属している学院ついて説明をしよう。

 

 

 アルザーノ帝国。

 その中にあるアルザーノ帝国魔術学院に僕は通っている。

 

 アルザーノ帝国魔術学院は四百年前に、時の女王と呼ばれるアリシア三世によって提唱され、巨額の国費を投じて設立された国営の魔術師育成専門学校だ。

 

 アルザーノ帝国が大陸で魔導大国として、その名を轟かせる基盤を作った学校であり、最先端の魔術を学べる最高峰とされ、近隣諸国にも名高い。

 

 帝国で高名な魔術師の殆どが、この学園の卒業生であり、帝国で魔術を志す者達の聖地となっている。

 

 

 つまりこの世界には魔術が存在するのである。

 

 

 僕がこの学院に入った理由は単純明快。もしも僕の超能力が暴走した時に魔術という言い訳が通用するからである。まぁ万が一、億が一にも有り得ない話ではあるが。あと家から近い。

 

 

 ここまで説明をしても信じてない者がいるかもしれない。なら僕が超能力者であるという事を証明してみせよう。

 

 

 僕が幼い頃から使っている超能力がある。

 

 それは“マインドコントロール”である。

 

 マインドコントロールとは『不自然なこと』を『自然なこと』と他人に思い込ませる事ができる能力である。僕はこの能力で人の生態まで変えてしまったのだ。

 幼少の頃、僕はこの能力で『ピンクや赤、青、銀など様々な髪が地毛になる』や『怪我の治りが異常に早く、壊された建物が簡単に復元する』や『首の裏を“トン”とやっただけで気絶する』や『服の大事な所はなかなか破けない』など、僕がこの世界で異端に見られない様、この世界の常識を改変した。

 

 お陰で地毛がピンクであっても、眼鏡が緑であっても、頭に付いている超能力を抑制するアンテナがヘアピンに見えたりと普通の一般人と変わらぬ容姿になっている。その様に常識を改変したからだ。

 

 

 この様に僕は学院でも目立たぬよう努めている。これも超能力者だとバレない様にする一つの策だ。そして平穏無事に学院生活送る為だ。

 

 

 だが一つだけ懸念材料がある。

 僕の超能力に近い能力を持っている者が同じクラスに在籍しているからだ。これは念話(テレパシー)によって分かった事実である。

 

 ルミア=ティンジェル。

 

 彼女は“異能者”である。僕とは違う。

 “異能”は異なった力だ。“超能力”は力の上にある力だ。根本的に違う。

 

 だがそれが問題なのではない。彼女の旧姓は────。

 

 

「あー悪ィ悪ィ!遅れたわ!」

 

 

 がらっと教室前方の扉が開いた。

 ずぶ濡れに着崩れた服。加えて擦り傷、痣、汚れ。

 本当にコイツがこの学院の非常勤講師なのか・・・。

 

 

(あーめんどくせぇめんどくせぇ)

 

 

 おい本当にコイツで大丈夫なのか。アルフォネア教授は何を考えている?いや・・・あの人には関わるべきではないな。

 

 

「非常勤講師のグレン=レーダスです。本日から一ヶ月間、生徒諸君の手助けをさせてもらいま────」

 

「挨拶はいいから授業をしてくれませんか?」

 

 

 いいからさっさとしなさいよ、か。念話(テレパシー)はこんな知りたくもない情報を拾ってしまうから困るのだ。

 

 

(授業かぁ・・・自習でいいか)

 

 

 頭で思った通り、僕の新しいクラス担任であるグレン=レーダスは黒板に大きく“自習”と書いた。

 クラスがざわつく、無理もない。この非常勤講師は建前と起こす行動と言動がマッチしている。こんな講師は初めてだ、いやこの学院史上初めてなのではないのだろうか。

 

 

 グレン=レーダス、ルミア=ティンジェル、この二人が学院に居る事で僕の平穏無事な学院生活が消える事になるとは・・・。

 

 

 

 

 いいか?よく聞いてくれ。

 

 僕は産まれた時から世界中の誰よりも不幸だ。

 

 “超能力”のせいでこれから起こる騒動に()()巻き込まれるのだから。

 

 

 

 

 




はい、第一話いかがでしたか?

もし宜しければ感想や評価をお願いします!!

モチベーションに繋がりますので!

ではまた次回にお会いしましょう!!


※まだ一話では描写してませんが、クラスメイトから呼ばれた時は『斉木』ではなく『サイキ』とカタカナ表記にします。

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