プシュケリア   作:鈴本恭一

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第7話

 

 

 目の前に、その灰色の薬があった。

 

 それを前にして、私の心は言葉なくさざめいてしまう。

 

 

 

 私の兄弟子にして友人から、件の試薬がついに届いたのだ。

 

 師の体は弟子達の甲斐甲斐しい介護もあり、悪魔がいた頃の絶望的な衰弱は治まっていた。

 しかし弟子達が入れ替わり立ち替わりプシュケリアを分け与えても、師のプシュケリアを正常に戻すことは出来なかった。

 

 失われたプシュケリアの量はそれほどまでに多かったのだ。

 いかにあの悪魔が師を蝕んでいたのか、弟子達はいやでも理解できた。そして自分たちのしたことに間違いはなかったと日々確信していった。

 

 師は結局、弟子達に何も問いはしなかった。

 

 悪魔がいなくなったあの夜のことも、一切言及しなかった。

 

 師の邸は変わらず病人たちが並んでいた。師の代わりに弟子達がプシュケリアの術を施した。当然、師ほどの効果は見られない。それに文句を言う者はひとりもいなかった。誰もが、師の快復を待ち望んでいた。

 

 私の友人もそのひとりだった。

 

 彼は出来るなら師のところへ飛んで帰りたいと手紙を添えてきた。いずこかの土地で無くてはならぬ身になった友人から、例のプシュケリアを癒す薬がとうとう送られてきた。

 

 

 

 それは灰白色の粉薬だった。

 

 小麦粉と石灰を混ぜ合わせ、そこに銀粉を薄く練り込ませたような見た目をしている。軽そうに見えるが、比重は意外に重い。無臭だった。

 

 

「これが、薬…?」

 

 

 私は机の上に広げたそれを前にして、何か危ういものを覚えた。うまく説明しきれない感覚的な警鐘が、私の中に鳴り響く。

 何かに似ているのだ。だがそれを思い出せない。もどかしい感情を誤魔化すため、私は友人からの手紙をさらに読み込む。

 

 

 手紙には薬の用法だけでなく、製造方法まで記されていた。おそらくこの街でもなんとか作れそうだと踏んだ私は、この薬を誰かに話すべきか悩んだ。

 

 

 他の弟子達に話せば、実績のない薬を師に施すなど論外だと攻撃されるだろう。今度は私が肉塊にされかねない。ということは、やはり師以外には口外しない方が良いのか。

 

 相談する相手がとぼしいなと悩んでいると、ふと、あの悪魔なら何と言うだろう、と思ってしまう。

 

 

「馬鹿な」

 

 

 独りでこぼし、自嘲する。あの悪魔のせいで、このようなことになっているというのに、その張本人に相談できていれば、などと。あまりに愚昧で我ながら呆れてしまう。

 

 だが、師と同じ位置で、師と対等に問答ができたのは、あの娘だけだった。

 

 最後に見た、あの澄み切った清らかな微笑を思い出す。

 

 そして激しく首を振ってその残像を振り払った。まやかしだ。悪魔の術に他ならない。

 

 

「やはりあの娘は悪魔だった」

 

 

 口に出して言葉にし、自分へ強く言い聞かせる。

 

 悪魔の呪いに屈してはならない。師を助けることが第一なのだ。あの悪魔の呪いを解いて差し上げねば。

 

 不意に、私はこの灰色の薬を前にした危機感が、何に似ているのか気付いてしまった。

 

 

 あの悪魔だ。

 

 

 あれと初めて出会い、廃墟の床に這いずらなければならなくなったときと同じものを、魂が感じているのだ。

 

 これは、本当に人間が口にして良いものなのか。プシュケリアを毒すものではないのか。

 

 私には判断出来なかった。決められるのは師だけだった。そして師に問答出来る者は、もういないのだった。

 

 

 

 

 

 

「ありがたく頂戴しよう」

 

 

 師は寸分の迷いもなく私に言った。

 

 

「しかし先生、これが本当にプシュケリアを癒してくれる代物なのか、まだ確証できていません」

 

「ならば私が確かめよう」

 

 

 と師は「用意しなさい、アロトロバ」と私に命じる。そう言われれば私は従うしかない。

 

 

 用法通り定量の粉剤を白湯へ溶かし、少し冷ましていると、不思議な感触を覚える。私のプシュケリアに、誰かが触れているような気がしてくるのだ。

 

 皮膚の下を、見えない何かが撫でる感覚。

 

 不可視の手がやはり不可視の血流を弄ぶ錯覚。

 

 

「…っ!」

 

 

 私は思わず薬湯から身を引いてしまう。

 

 なぜその薬だと思ったのかは自分でも分からない。何かを感じ取ったのは私ではなく、正確には私のプシュケリアだ。プシュケリアが警告を発したのだ。

 

 やはりこの薬は何かがおかしい。

 

 無機物を触って自分のプシュケリアが呼応するなど未だかつてなかった。

 

 しかもこれは、どちらかと言えば、薬の方から私のプシュケリアに呼びかけてきたような……

 

 

「恐れるな、アロトロバ」

 

 戦いている私に、師が静かに言う。穏やかな微笑を浮かべ、

 

 

「それは戯れたいだけだ」

 

 

 何かを見知ったように告げる。もちろん私にはなんのことか分からない。

 

 

「先生は、この薬を知っていたのですか?」

 

「それを作った彼の者から相談を受けていた。お前と似たようなものを、自分の作ったものから感じ取っていたのだ」

 

「これは、なんなのですか?」

 

「安心するのだ。確かに、プシュケリアは癒される」

 

 

 薬を、と師は私に促す。私は恐る恐る、しかし師が取りこぼさぬよう気をつけながら、その薬湯を手渡した。

 

 師はそれを少しずつ口に含み、しばしの時間を掛けて全て飲み干した。空になった器を私に返すと、師は寝床に横になった。

 

 

「……正確に言えば」

 

 

 体を休めながら、師は口を開く。

 

 

「正確に言えば、この薬自体には、さしたるプシュケリアは宿っていない。そのあたりの路傍の石と変わらん」

 

 

 しかし、と師は言われる。

 

 

「この薬を通してプシュケリアをもたらす者達がいる」

 

 

 私ははっと顔を師に向ける。師は「残りの薬を持って来なさい」と私に言う。

 

 油紙に包まれた残りの粉薬を言われた通り師に渡すと、師は包みを開けながら言葉を続けた。

 

 

「その者達は自身の潤沢なプシュケリアを服用者にもたらしてくれるが、その代わり、服用者へあることを要求する」

 

「なにをです?」

 

「此処で戯れさせよ、だ」

 

 

 師が言われた瞬間、

 

 

 

 粉末が宙に舞った。

 

 

 

「……!」

 

 

 驚く私の前で、灰銀色の粉が勝手に空中へ立ち昇り、千切れる。幾つも幾つも枝分かれし、てんでばらばらの方向に伸びていく。

 

 

 あるものは蛇のようにうねり、あるものは矢のように直進し、あるものは螺旋を描く。そして動きながら崩壊し、瞬く間に集まってまた復活し、別の動き方で再開した。

 

 こういった複雑な運動と集散を恐ろしい速度で繰り返す粉末に、私は声も出せなかった。

 その粉は、まるで何かの生き物だった。自在に形を変えられる不定形の体であり、何もかもをどこまでも掴める無数の手を備えている。

 

 

 唖然とする私とは対照的に、師はいつも通りの穏やかさだった。常ならそれは私を安心させてくれる篝火であるのに、今に限っては、何を意味するのか分からない妖しい鬼火であった。

 

 そんなことを思っていると、灰色の粉末が一部を薄く長く伸ばし、私へその先端を差し向けてきた。

 

 反射的に後ずさる私に、

 

 

「動くな、アロトロバ」

 

 

 師は静やかに言う。私は動けなくなった。

 

 体の周囲を粉が舞う。

 

 粉末の全体量はたいしたことがない。それを薄く広く伸ばしているので、よく注意しなければ見落としてしまうだろう。

 

 

 だというのに、その細かい粒子達は尋常ならざる存在感を放出している。

 

 目には見えない大熊が私の背後に立ち、その獣の匂いと気配だけで生命の危機を感じ取れるように。

 

 薄っぺらい灰白色の粉に、いかなる猛獣より驚異的な何かが宿っている。間違いなく。

 

 

「恐れるな、アロトロバ」

 

 

 僅かばかり前に口にされた言葉を、師は再び繰り返す。

 

 

「この程度の量なら悪さは出来ない。あの粉末の量が多ければ多いほど力は大きくなるが、この状態では軽すぎて舞い遊ぶことしか出来ん」

 

「で、では先生。『これ』は私に何をしようとしているのですか?」

 

 

 空中に流れては跳び、踊り、また流れる粉状のもの。

 

 それは私の周囲を完全に取り囲み、渦を巻いて流動している。明らかに私を認識し、何かをしようとしていた。

 

 師はやや困ったような表情を浮かべ、言う。

 

 

「一服しないか、と誘っているのだ」

 

「は?」

 

「服用を勧めている。この薬を」

 

 

 私は二の句が継げなくなった。

 

 私がこの薬を? なぜ?

 

 

 明らかに動揺する私の周りで、灰色の流れが小さく震える。まるで竦み怯んだ私を面白がるように。

 

 

「…どうすれば良いのです、先生?」

 

「私に飲ませた程度の量であれば、一度の服用で肉体に悪影響が出ることはない」

 

 

 と師は断言する。私はその確固たる言葉に安堵した。が、

 

 

「しかしその薬を飲めば、今ここに粉を借りて現れている者の姿を視ることになる」

 

「……」

 

「この者の姿を視ること、この者の声を聴くこと、この者と触れ合うこと。それがこの者の望みだ」

 

 

 師は淡々と言った。私は震える体と乾ききった喉から言葉を絞り出し、訊く。

 

 

「師は、いえ、師とあの悪魔は、この者が見えていたのですね?」

 

「そうだ。この者達を見ていた」

 

「どうやって…?」

 

「それは私にも分からない。気付けば見えていた。これは天に坐すあの方の御意志だと、私は思った」

 

「…この薬を飲めば、あなたと同じものが見られると?」

 

「そうだ」

 

 

 師は言い切る。それでいて、

 

 

「断っても良い。お前に害は加えさせない。お前が断ればそれで済む」

 

 

 と安心させるように微笑んだ。私のよく知る、師の暖かな笑顔だった。

 

 

 そう、この表情だ。

 

 この温もりが欲しかった。

 

 

 プシュケリアの徒として同じ屋根の下で修行と治療に努め、同じ食事をし、共に暮らした。

 

 師がおり、弟子仲間がいて、召使い達が働き、病人達が分け隔てなく並び、役人も僧侶も商人も牧童も訪れる。

 

 悪魔に奪われる前の、我々の家。

 

 

 私は、それを取り戻したかった。

 

 

 もう悪魔はいない。

 

 取り戻したのだ。

 

 だから、私がこの薬を飲む必要などなかった。師の言葉に偽りはないだろう。服用を断ることで私が被る害などない。服用した場合の危険の方が断然大きかった。

 

 

 

 私が飲む必要などないのだ。

 

 必要ない。

 

 必要ないのだ。

 

 

 …しかし。

 

 

 

「飲ませてください、先生」

 

 

 私は目を強く閉じながら、師に嘆願した。

 

 肉体の中心を流れるプシュケリアが、金切り声をあげて抗議する。全身が震えて萎縮し、膝が今にも崩れ落ちそうだった。

 

 

 そうやって力をなくしそうになる肉体と精神を、私は叱咤する。あの悪魔を思い出せ。確かに目の前の何者かは恐ろしいが、あの悪魔ほどではない。

 

 私から何もかも奪おうとした、あの悪魔よりは。

 

 

「先生、お願いします」

 

 

 私は言う。声は震えていたかもしれない。震えていなかったかもしれない。分からない。

 

 だが師は少しだけ目を伏せ、しばし黙して、ついに、

 

 

「…分かった」

 

 

 と言った。

 

 

「目を閉じ、口を開けなさい」

 

 

 師の言葉に従い、目を瞑りながら唇を開く。

 

 視覚が閉ざされると、私を囲む何者かの気配がより強く感じ取れた。その気配が色めいているのが分かる。私が要求を呑んだと知って歓びに波打つ。はしゃいでいるかのよう。

 

 

 まるで小児だ。

 

 

 そう思ってしまったせいだろうか、暗闇の視界の中で、私はあの悪魔の姿を思い浮かべていた。

 

 子供の姿をした魔物。悪鬼。人間ではない。恐らくこの目に見えない怪物達の仲間なのだ。人間ではない。もし人間であるなら、

 

 

 私の脳裏で、これほど美しい姿になるはずがない。

 

 なんの辛みも恨みもない、あの清水のような微笑みを浮かべているはずがない。

 

 

 この世で私しか知らない笑みの貌。

 

 師さえ知らない、あの娘の最期のかんばせ。

 

 

 

 うつくしかった。

 

 

 

「―――っ!」

 

 

 不意に、口の中を何かが潜り込む。

 

 粉末状のあの者が私に入り始めたのだと理解する前に、体が異物を排除しようと咳き込む。だが侵入者は口の中のあらゆる場所にへばりつき、粘膜の上を這い上がり、執拗に喉の奥へ進み続ける。

 

 肉体と侵入者の戦いは激しく、その影響で私は呼吸することも立っていることも出来なくなった。私が床に倒れ込んでしまっても、口の中の攻防は続いていく。

 

 

 そしてついに、体が粉薬を押し戻せなくなった。私の胃の中へそれは進出を果たす。

 

 

 胃に何かが到達したのを感じた瞬間、感覚が急激に鈍っていく。

 

 閉じた視覚はもとより、聴覚も嗅覚も、触覚さえも曖昧になる。私はそのあまりに急な変化に恐怖したが、声を出す力も振り絞れなかった。体を動かす力どころか、肉体を持っているという感覚そのものが希薄になっていた。

 

 その状態がどれほど続いたろう。私にそれを計る術はなかった。

 

 ただ遠くから、目を開けなさい、という響きが届いてきて、それで感覚が戻っているのかと悟れた。私は初めて瞼を動かすかのような違和感の中、目を開ける。

 

 

 

 世界の色が、崩壊していた。

 

 

 

 師の寝室であったはずだが、それを認識することが私には出来なかった。椅子や机らしきものは確かに見えるのだが、それらの輪郭を上塗りするように、空間が様々な色で満たされていた。

 

 空気が色を持っている。しかもその色は一定ではなく、七色それぞれが細かく濃度を変えて混ざり合い、無数の色彩を蠢かせていた。

 

 

 屋内に置かれた物体の全てが、空気と同様に色を様々に変化させ、ある色で固定されるということがない。

 

 そのせいで物体と物体の境目が曖昧になっている。どこからどこまでが何なのか判別できない。じっと目を凝らして輪郭をつかみかけるも、すぐに複雑な変色に押し流される。目を開いているというのに、目を閉じているのと変わらない。

 

 

 ここは一体どこなのだ。

 

 

 

「ようこそ、アロトロバ。人智の理法が統べる世界の、ほんの外側へ」

 

 

 師の声が聞こえる。しかし場所が分からない。四方から声が伝わっているように思える。

 

 

「先生、これは、なんなのですか…?」

 

 

 自分の声さえ体の外から聞こえてくるように感じた。肉体の実感が薄い。

 

 

「ここは…異界、なのですか?」

 

「違う。偉大なるあの御方が創造なさった、我々の生きる世界だ。しかし人間が見たり聞いたり出来る範囲の外にも、この世界は広がっている」

 

 

 師の声が届く。その声はまるで複数人から発せられるように、ひどく音割れしていた。

 

 

 その声で師は言う。

 

 

「彼らは人間の領域の外に棲んでいる、同じ創造主から造られた生き物だ」

 

「…生き物?」

 

「だが感覚の領域が異なりすぎて、人間は彼らを感じ取れない。彼らも人間を感じ取れない。互いに見えないのだ、通常は」

 

「…先生は、この世界が見えていたのですね? この世界が見える代償に、我々の世界が見えにくくなっていたのですね?」

 

「そうだ」

 

「あの娘も…?」

 

「そうだ」

 

 

 師は断言した。私は安堵する。うれしさのあまり笑いたかった。

 

 

 ではこれで、私はあなたがたの仲間になれたのですね?

 

 

 そう言おうとした。

 

 その直前。

 

 

「我々はここを覗き見ることができる。それと同様に、彼らの中にも、こちらを覗き見る者がいる」

 

 

 師が言う。ひどく悲しい声音で。

 

 

「――そして、今、彼らもお前を見つけた」

 

 

 なにを、と問いかける間もなく。

 

 それが、目に入った。

 

 

 光。

 

 

 何かが空間上で発光した。瞬間的に、無数の色の空気が光に貪り食われる。無色透明の光は暴虐なまでに色という色を蹴散らし、色彩という現象そのものを破壊した。

 

 

 黒ではない暗闇。白ではない無色。

 

 

 その奇妙きわまりない空間に、亀裂が入る。

 

 

 ひび割れたその中から、無数の小さな何かが伸びてくる。

 

 蔓草のようにも、虫の肢先のようにも見えるそれが、亀裂という亀裂全てから這い出てきた。裂け目を無理矢理押し広げるように、黒々としたひび割れの向こうから、大量の手が溢れ出た。

 その勢いと量はまさに氾濫だった。音のない怒濤となって私に襲いかかってくる。

 

 

「……っ!」

 

 

 私は叫び声を上げようとしたが、叶わない。

 

 体を誰かが押さえ付けているからだ。

 

 

 その誰かを、私は見やった。

 

 

 白と灰と銀の荒縄を乱雑に組み合わせたような、筆舌に尽くしがたい肉体。頭も手足もなく、縄のような銀の触手をいくつも不規則に垂らし、それで私の体を束縛していた。

 

 その銀の体のあちこちに、口腔と歯牙が生物的な法則を無視して点在している。それらの口から一斉に歯軋りが起こり、その振動が私に伝わってくる。私の魂を直接震え上がらせて。

 

 

 あらがうことの出来ない恐慌に陥った私へ、銀の肉体が近づく。

 

 その体の一部が歪み、霞んで、別の形状になった。

 

 

 顔だ。

 

 私の顔。

 

 

 銀よりも白に近い色になったその部位が、目を開く。

 

 瞳があった。不安しか覚えない、底なしに透明な金色の双眸が。

 

 

 

 私を見ていた。

 

 

 目を、合わせてしまう。

 

 

 

 くわれる。

 

 

 

「―――っ!!」

 

 

 全ての理屈と勇気と理知を消し飛ばし、名状しがたい圧倒的な純度の恐怖が私を襲う。

 

 

 見てはいけないもの。なぜ人間がそれと違う領域で暮らしているのか。

 

 

 知識も理性も意志も、暴力的なまでに納得させてしまう原始の感情が、私を破壊する。

 

 

 粉々にされる私の意識が最後に捉えたのは、裂け目から溢れ出る無数の手がついに私へ到達した瞬間だった。

 

 

 

 

 


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