「マジかよ……」
朝のHWが終わってから時間はたち、今は4時間目と5時間目の間の昼休み。俺はナスタ遺跡の調査中よりも不安に駆られていた。
「まさか今日の1から4時間目の授業が全部復習テストだったとは」
今の俺の机の上には「再試験」と大きく書かれたテストが4枚広げられていた。騎士を育成するための学校とは言え、俺たちは学生。少し戦いが強いだけでは生きていけないのである。
「語学、数学、理科に社会。見事に全部再試験かよ」
ソラが呆れたような視線を俺に向けてくる。何か言い返してやりたいのだが全テスト90点越えに全教科30点前後のやつが何を言っても虚しいだけだ。
「まぁでもしょうがないんじゃないかしら?リョウは去年の後期あまり学校に来てないんだし」
「甘やかすなよゴリ、そんなのはただの言い訳だ。きっと美人と戯れすぎてばちが当たったんだ!」
フハハハハと高笑いするソラ。そんなんだったらコウタも同じだろう。ちなみにコウタは全テストしっかりと合格点を取ったらしい。そんなわけでこの結果は俺の自業自得である。
「はぁ……なんかテンション下がった」
「んもうリョウ、昼ご飯でも食べて元気出しなさいな!次の時間は特訓なのよ、リョウの得意分野でしょう。ソラも高笑いはそこまでにしておきなさい」
ゴリの言う通り気分転換にさっき買ったパンに食らいつく。やけ食いは得意分野だ。
しばらく食べるのに集中していると、俺の隣でゴリに注意されて、静かに弁当を食べていたソラがふと何かを思い出したかのように口を開いた。
「そいや特訓の授業にテストなんてあったっけ?」
「そういえば……」
特訓の授業ではその名の通り騎士になるための力をつけるために特訓する授業だ。ここにいる生徒たちはこの授業を受けるためにこの学校に来ていると言っても過言ではないため、すべての生徒がしっかりとこの授業を受けている。そしてこの授業にテストはなく、あるとしても模擬試合のトーナメント戦だけだ。
「でもさっき先生が言ってたわよね、特訓のテストも頑張れよって」
「それってただ単に先生が言い間違えただけなんじゃないのか?」
「そうかしら?」
……何か気になるな。今からできることはないから注意だけしておこうか。そう考え、パンの最後の一切れを口の中に放り込む。ご馳走様と言い、手を合わせ終わると、ちょうど俺と同じように昼食を食べ終わったソラとゴリが俺をじっと見ているのに気が付いた。
「な、なんだよ」
「いや、その……お前あの量のパンよく全部食ったな」
「20個以上はあったわよ……」
確かに少し食いすぎたし、俺の財布に小さくはないダメージは受けたが後悔はしてない。昔からストレスが溜まった時は食べてしまうのだからしょうがないのだ。
「そんな目で見るな。ほら、もうそろそろ運動着に着替えにいくぞ!」
「へいへい」
「分かったわよん」
▼▼▼▼
「あ!リョウだ~」
5時間目の為に運動着に着替えて特訓場に来ると、リアが俺の方に小走りで近づいて来た。リアがここにいるということはこの授業は1組と4組の合同授業らしい。
「おう、今朝ぶりだな」
「そうだね……リョウはテストどうだった」
少しげっそりした様子で俺に聞いてくる。こいつもやっぱり俺と同類か……うれしくはないが。
「俺は全教科再テストだ」
「やった~!仲間がいた~!コウタもシズも全部合格したらしかったから心細かったよ」
「頭の良さがお前と同レベルみたいでなんか屈辱なんだが」
「ちょっと!それじゃ私が頭が悪いみたいな言い方じゃない!」
「違うのか?」
「も~!」と言いながらリアが俺の体をポカポカ叩いてくる。ちなみに俺は決して頭が悪いわけではない。しっかりと勉強すれ良い点数は取れるのだ。誰でも勉強すればテストで点数が取れる、なんて言ってはいけない。
「相変わらず、あなた達は仲がいいわね」
筋肉を際立たせるぴっちりとした運動着を着たゴリが特訓場の入り口から向かってきた。後ろにはソラもいる。
「あっ!ゴリちゃん久しぶり、元気にしてた?」
「ええ。私は心身共に健康だったわよ。この筋肉にも磨きがかかったわ!」
「ソラ君も久しぶり!」
「ひ、ひさし、久しぶりです!リアさ、さん!」
リアの挨拶にゴリは筋肉を見せつけながら、ソラはがちがちに緊張しながら返事をする。ゴリはいいのだが、ソラは普段からモテたいモテたいと連呼してるくせに女子の前だとこのように緊張してしまう。これが、顔が整っていて、いいやつなのに女子と付き合えない理由の1つだったりする。
「それにしてもリアちゃん、特訓の授業にテストがあったなんて知ってた?」
ゴリの質問にリアが首を横に振る。
「ううん。私も初めて知ったよ。テストが終わったばかりで頭が疲れてるのに最悪だよ~」
「……そうゆう事か」
「リョウ何か分かったの?」
リアの問いに俺が口を開こうとすると、ちょうど先生から集合がかかってしまった。
「あっ、私もうクラスに戻るね!じゃあ、また後でね~」
手を振りながらリアがクラスメイトのところに戻って行った。
「さて、私たちも行きましょ」
「そうだな。それにしても、リアちゃんはやっぱり可愛かったな~」
2人も同じように歩いて行こうとする。リアは大丈夫だと思うが、2人には一様言っておくか。
「2人とも、少し待ってくれ」
俺の声に2人が振り向き、どうしたのか聞いてくる。
「これから授業が終わるまで、一瞬たりとも集中を切らさないでくれ」
「あら、これまたなんで?」
「さっき言いかけたことと何か関係があるのか?」
「ああ、まぁ「おい!そこの3人、早く集まれ!」」
大きな声が聞こえた方を振り向くと、ロウ先生が俺たちの方をにらみつけていた。どうやら俺達以外は全員集まっているようだ。早くいかないとロウ先生の機嫌がどんどん悪くなってしまう。
「説明を受ける暇はなさそうだな。まぁ忠告通りにしとくぜ」
「ええ、そうね。リョウのアドバイスはいつも役に立つしね」
そう言うと2人は今度こそクラスが集まっている場所に向かった。その後、深呼吸をすると俺も少し小走りで、2人の後を追いかけた。
▼▼▼▼
「よし!みんな集まったな」
1組と4組のクラスが全員いることを確認すると、ロウ先生が前に立ち話始める。
「さっそくだがテストを始める!」
ロウ先生がそう言うと周りの3人の先生たちが俺達から距離を置いた。やっぱりそういう事か。リアも気が付いたようでいつでも動けるような体制をとっていた。ソラとゴリも先生の意図に気が付いてはいないようだが、俺の助言を守っていて集中しているようだった。
「では、武器の展開と身体の強化を始めろ」
先生の指示通り、身体に強化を施し、俺の武器である大剣の刀身を展開する。刀身の色は訓練用の青色だ。ちなみに赤色は相手の命まで奪うが、青色はただダメージを与えるだけで、命には別状がない。
俺が刀身を展開してから3秒くらいたった後、急に地面が青く光り始めた。
「っと!」
俺はそれに反応し、青く光っている地面から脱出する。その直後、青い光は反応できなかった生徒を呑み込み、パリン!と音を立てて生徒とともに消えた。消えた生徒は訓練場の観客席に移動している。どうやら、訓練場に設定された以上のダメージを受け、はじき出されたらしい。
周りを見渡すと残っている生徒は全体の4分の1くらいだった。どうやらテストには合格したようだ。よかっ「リョウ!」……っ!
「ほう、よく今の一撃に反応したな」
リアに呼ばれた瞬間、大剣を横に振りロウ先生が投げたであろう短剣をはじいた。背中に冷や汗がつたっていくのが分かる。リアに呼ばれなかったら今頃、俺は観客席にいるだろう。
まったく、さっき2人に集中するように言ったのに自分が集中を切らしてしまうとは情けない。
「さて、ここにいる諸君。武器を構えろ、その時間はやる」
その言葉を聞き、俺を含めて残っている全員が武器を構えて目の前の敵に意識を集中させる。俺達の敵、ロウ先生は全員が武器を構えたのを確認すると自分も武器の短剣を構えた。
「さて、ここからが本当のテストの時間だ」
ロウ先生は不敵に笑いながらそう言い放った。
こんにちは、だゆつーと申します。
第9話を最後までお読みいただきありがとうございます。
これからも頑張っていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
誤字脱字があれば教えていただけると幸いです。
また、感想とアドバイスがあればぜひお聞かせください。
最後に、次回の話もお読みしていただければ幸いです。
私のカルデアにマーリンは来なさそうです……