玄関を出た俺は幼馴染達がいる待ち合わせ場所へと向かっていた。辺りを見渡すと、仕事へ向かうサラリーマンや俺と同じように学校へ向かう学生達などの人々であふれかえっている。朝のこの光景はどの時代もあまり変わらないらしい。
そんな他愛ない事を考えながら歩いていると待ち合わせ場所の公園が見えてきた。科学が進歩を続け、高層ビルがほとんどの土地を占めているこの国にとっては多くの緑を見ることができる貴重な場所だ。
「さて、メールからするに俺以外は全員来てるはずウガァ!!!!!」
公園に着いた途端、いきなり背中に衝撃がはしった。急いで振り向いてみると金髪の美少女が頬を膨らませながら立っていた。
「遅い!もうみんな集合してるよ!!」
俺に蹴りをいれて、目の前で怒ってますアピールをしているのが俺の幼馴染の一人、リア・ルノア。金髪ショートカットの美少女で、元気で明るい性格とその容姿で非常にモテている。あと巨乳。
「おいまて、俺は珍しく時間に間に合ったはずだ。なんで蹴られる必要がある?」
「あっ、えっと……あの」
「おい、俺の目を見ろ」
さっきの自己紹介にバカっていう情報追加。おいコラ、テヘって舌出してごまかしても許さないぞ……可愛いけど。
「なに朝っぱらからバカやってんだ」
「そうですよ、朝ぐらい静かに過ごせないんですか?」
リアのこめかみを締め上げていると見知った顔の男女が声をかけてきた。
「全く、毎朝毎朝飽きねぇのか」
不機嫌そうに声をかけてきた男はリアと一緒で俺の幼馴染の1人、コウタ・ソラル。身長が高く、がたいが良いため見た目は怖そうなイメージだが、結構世話焼きで良いやつ。あと動物が大好き。
「えー、そんなこと言いながら自分も私たちの会話に入りたいくせにってイタッ!謝るから無言でたたくの止めてぇぇぇ!」
「まったく、コウタまで参加してどうするんですか……」
俺たちを見ながらため息をついているこの黒髪ロングの清楚系美少女は俺の4人目の幼馴染のシズ・アルノール。家がお金持ちのお嬢様で、幼馴染の俺たちにも敬語を使っている礼儀正しいやつ。ちなみにシズもリアと一緒で相当モテる。あと貧乳。
「リョウ、今失礼なこと考えていませんでしたか?」
「いえ、めっそうもない。」
「……まぁ良いでしょう。そこの2人も喧嘩はやめて早く学校に行きましょう」
シズがそう言い、歩き始めると喧嘩を止めた2人と俺は、彼女についていくように歩き出した。
「にしても学校に行くのってなんか久しぶりだね」
リアが嬉しそうに横にいる2人に話しかけた。
「確かにそうだな、あの事件が解決したらちょうど春休みに入っちまったからな」
「フフッ、そうですね。久しぶりの学校、私も楽しみです」
コウタとシズも笑みを浮かべながらリアに返答をしている。そのまま3人は友人の事や宿題などの学生っぽい話で盛り上がり始めた。
前を歩いている3人が楽しそうに会話をしているものだからとても言いづらく、そして言いたくはないのだが、しょうがない。と1人で意思を固め、俺は思い切って笑いあってる3人にとっては最悪であろうことを言った。
「エレナからの伝言だ、今日が今月最後の学校になるから楽しんで来いだってよ」
「「「……」」」
瞬間、笑いあっていた3人は無表情になり、周りの空気が一瞬で凍った。
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しばらく歩いていると俺たちの学校が見えてきた。ルドリア城の南部に位置していて、この国で一番大きく、有名な学校、国立ルドリア騎士養成学校。その名の通り聖都ルドリアの騎士を養成する学校だ。
「騎士」とは簡単に言うと、この国を守るのが役目の者達だ。だが、他にも国から依頼されたダンジョンの調査や地位の高い人の護衛も騎士がやっている。
俺たちはこの春からこの学校の2年生となる。去年はある事件があって後期は忙しく、学校へあまり行けなかったので今年は何の事件もなく平和に過ごしたい。さっそく出鼻からくじかれたが。
さて、学校に到着したのだが俺以外の3人は用事があるらしく、早々とどこかへ行ってしまった。このまま始業式の会場まで行こうかと考えたが、まだ30分以上も時間がある。仕方がなく、そこら辺のベンチに座り本でも読むことにした。
あっという間に時間が過ぎ、始業式まであと10分くらいのところでそろそろ移動しようと腰を上げると、ピンク色の髪の色をしている女子生徒が俺に声をかけてきた。
「あのぉ、すみません。始業式の会場はどこにあるのでしょうか?」
制服に付けてあるピンバッチの色を見ると、どうやら新入生らしくまだこの学校に全然慣れていないらしい。当然だ、俺もこの学校で1年間過ごしたが、たまに迷うこともある。それだけこの学校は広い。
そんなことは置いといてだ、この女子生徒の頼みをどうするかだが、まぁ俺とこの女子生徒の目的地は同じわけだし
「俺も今から会場に行くところだったんだ。行くついでに案内もするよ。」
こう返事をするのが妥当だろう。
「あ、ありがとうございます。」
俺が返事をすると女子生徒は少し緊張気味にお礼を言ってきた。
それから俺たちは一言も会話をすることなく歩き、すぐに目的地の聖堂に到着した。
「ここで始業式が執り行われるよ。確か新入生は前の方で先生がどう並べば良いか教えてくれるはずだから、その指示通りに移動したら大丈夫だと思う」
「は、はい。こ、この度は誠にあ、ありがとうご、ございました。」
俺が少し話すと女子生徒は顔を赤くしながら、走って聖堂の中に入ってしまった。言動と行動を見るに、どうやら人と話すのには慣れていなかったらしい。
「ちゃんと会場には案内したし大丈夫か」
そんな事を呟きながら、俺も聖堂の中に入って行った。
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長い始業式が終わり、自分のクラスの担任が解散を言い渡すと、生徒たちは自分たちの家に帰り始めた。中には遊んで帰る生徒もいるようで、どこに行くかなど話し合っている声も聞こえてくる。俺も遊びに誘われたが断った、否、断るしかなかった。俺以外の3人も同じなようで各々不満そうな顔をしている。
「始業式が終わったとたんに呼び出されたら、学校を楽しむなんて出来ないんですけど。」
「文句があるんだったらこの扉の奥にいるやつに言ってくれ」
そう、俺たちは始業式が終わったとたんに各担任に至急、第一会議室に行くように指示をされたせいで、友達と遊ぶことや少しゆっくりと話す事もできないまま会議室の前にいる。これではリアの言う通り学校を楽しむもくそもない。
「ここでカリカリしても仕方がねぇ、さっさと扉を開けねぇか?」
「そうですね、文句はこの部屋の中にいる人に言いましょう」
「む~、リョウよろしく。」
「なんで俺なんだ」
いや、開けるけども。だからそんな不満そうな目で俺を見ないでくれ。
俺は仕方なくドアをノックするとそのまま会議室の中に入った。
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中に入ると全ての元凶のエレナが優雅にコーヒーを飲みながら椅子に座ってくつろいでいた。
「やっと来たか、とりあえずそこに座ってくれ。なに?その前に文句を言いたいだって?そんな事は後でいくらでも聞くだけ聞いてやるから後にしろ。さて、私がお前たちを呼び出したのは他でもない、私がお前たちに騎士の仕事を一緒にさせてもらえないか頼みこんだら、なんと一緒に仕事をさせてもらえることになった。感謝しろよ、いろいろ大変だったんだから。自分たちは頼んでいないだと?まぁそう言うな、こんなチャンスはめったにないほどの大きな仕事を貰ってきた。聞いて驚くなよ、その仕事とは……
ダンジョンの調査だ!」
こんな感じで俺の新学期は幕を開けた。今思えばこれは、これから起こるやっかいごとの言わば序章だったのかもしれない。
こんにちは、だゆつーと申します。
第2話を最後までお読みいただきありがとうございました。
これからも頑張りますのでよろしくお願いします。
誤字脱字があれば教えていただけると幸いです。
また、感想とアドバイスがあればぜひお聞かせください。
最後に、次回の話もお読みしていただければ幸いです。