平凡は、いちごと共に消ゆ   作:フリードg

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3話

 

  

 昨日は なんだか色々とあったけど、とりあえず目立たない様に、それでいてボッチとは思われない様に。

 

 無難に過ごす事。つまり普通。それが一番。すごい楽だ。

 

 

 それが15年生きてきて一番学んだ事だ。……大して生きてないじゃん、と言われそうだけど。

 

 

 

 新しい中学に来てもする事は変わらない。毎日を無難に過ごす。

 

 

 

 まぁ 先生にまで『中坊らしくない』 って結構言われてたけど、今までだって別に気にした事なかった。

 

 

 ……でも、このクラスは少しばかり今までとは違ったけど。

 

 

「おーい、神谷~ 神谷 蓮~~!」

「……いつもいつも思うんだけど、たまにフルネームで呼ぶの止めてくれよ」

 

 

 別に名前や苗字が嫌いって訳じゃないけど、フルネームで呼ぶヤツ他にはいないから、目立ってしまうんだ。それが……まぁ ヤダ。

 後 あの声がでかいからって理由もあるけど。

 

「別に良いじゃねーか! そんなもんさ~! それより今はこれだこれ、これ見てみ! あゆみちゃんのグラビア写真♡ 真中が持っててよぉ~~! とうとう手に入ったんだよぉぉんっ!!」

「わかったわかった しがみ付くな。 ……と言うか、それぐらいで泣くなって」

「うぉぉんっ!! ……って、そんぐれーってなんだよ! オレが望みに望んだお宝なんだぞ! 13号の付録にしかついてない限定品なんだぞ! 言うなら家宝クラスなんなんだぞっ! これ探すのにどんだけ苦労したか……。中坊じゃ売ってくれないから変装しつつ探してたりして……、来る日も来る日も古本屋巡り…… 長かったんだぁ……」

「その努力を他の面にも向けろよ……。テストがヤバイって嘆いてた癖に。もう受験も近いんだぞ」

「うぉぉぉ!! 嫌な事思い出させんなよーーっ!」

「受験を忘れてどーすんだよっ! 流石に進路大事だろ」

 

 転校生って、最初の内は珍しがったりして 結構話しかけてきたり、クラス全体の話題にあがったりするんだが、それは一定期間だけで 転校生ブームが去ったら ある程度は静かになるってイメージだったんだけど、このクラスはアットホームと言うか、お気楽と言うか、当時のテンションのままの付き合いが続いてる。

 

 

 勿論、基本的に疎ましいとか思ったりはしてないぞ? 打ち解けが早かったのはありがたいって思った。

 

  

 だけど…… 目の前の号泣してるヤツ、小宮山はまた別だ。

 

 

 そんな感謝の気持ちなんか、遠の昔に消失しる。もうなんの遠慮もしないくらいの存在になってる。……別に特に嬉しいとは言えないけど。

 

 

「よぉ、大声でなーにやってんだ? お前ら」

 

 

 もう1人話の輪の中に加わってきた。

 

 

「真中……。お前がヤった刺激的な餌のおかげで興奮しきってる様だぞ、このゴリラ顔。落ち着かせてやってくれ。あの悪夢っつってたグランド50周があったっつーのに、懲りないねぇ」

「おい! 誰がゴリラ顔だコラっ!!」

 

 

 真中が教室に戻ってきたから、このまま バトンタッチをしようとしたが無理だったよ。……ゴリラって言ったのは余計だったかもしれん。でも思うトコはある。それをネタにして使ってたから。

 

 

「ほれ ゴリラの物真似して笑わせてたじゃん。けっこー 何回も女子たちの前で。だからゴリラ好きなんだろ? って

「あ、あれは…… ほ、ほら 笑ってくれたら嬉しいじゃん! オレの持ちネタだし! な? 判るだろ? 真中も」

「そんなん知らんって、変な時に オレに縋りつくなよ小宮山!」

 

 

 顔を真っ赤にさせながら言う姿みたら、妙に純粋っぽいトコがあるんだが…… 意地の悪さと妄想癖もそれ以上に強くて 結局は色々振り回されてしまう事が多かった。……まぁ 妄想癖って言えば小宮山の隣にいる真中だって負けてないって思うけど。

 

 

 小宮山は可愛い女子に対しては エロい妄想ばっか。で、真中の場合はもうちょっとマニアックで、映画のシーンがどうとか、ってぶつぶつ言ったりする事が多かった。誰もが知ってる様なA級映画じゃなくて、誰も知らない様な映画が多くて、誰もついていけないから、1人でやってる。妄想癖、と言うより空想壁かもしれないけど。

 

 

「あっ! それより聞いてくれよー! この間さぁ 西野つかさちゃんが笑ってるとこ、見てよー! やっぱ可愛いよなぁ……♡」

「急に話題変えたな……」

 

 そして、小宮山が突然話題を変える時は大体 『西野つかさ』の話になる。

 

 学年一のアイドルって言ってて かなりの入れようなんだ。

 

 

「そうだなぁ。ほんっと最近は何でもかんでも西野つかさの話。無理矢理もってくんだよな~」

「うっせぇなー! 好きなんだから仕方ないだろー!」

「……大声で言う様なセリフじゃないと思うけど」

 

 

 だれそれが好き~なんて、学校の教室で大きな声で言うもんじゃない、って思う。アイドルとかならまだしも、同じ学校の生徒にってのは……。多感な中学生が。

 

 

「その意見では流石のオレも同意だな。流石は神谷。そこらへんの男子より大人びてるよな」

「ん?」

 

 

 声で大体誰か判ったけど、振り返って確認した。それで間違いなかった。

 

「ああ 大草か。あれ? さっき女子に呼ばれて出てったんじゃなかったっけ?」

「ん? ああ、今度遊ぼうって誘われただけでもう終わったよ。……勿論、オレはOKを出した」

「別に誰も聞いてないって……」

 

 クラスでも屈指のイケメンである大草。スポーツ万能で成績も良く絵に描いた様な存在だ。

 

 冗談抜きで大草がいるトコには女子も集まってくる感じで最初は正直苦手だったりする。……でもまぁ実際にはある意味デカい光である大草の傍にいたら、影になって隠れられるから特に問題なかったけど。

 

「それよりさぁ。神谷。今度サッカー部の皆と集英中の女子とで飯食いに行くんだけど、行かないか? 丁度良い人数になるんだ」

「ああそうか。うん。行かない」

「即答かよ! 10秒くらい考えても良かったじゃん」

 

 そんでもって、たまにだけど、こんな感じで誘いを入れてくる。

 

「はいはい! 蓮が行かないんならオレが行くーー!! りっこーほっ!!」

 

 そんでもって……、こういう時の小宮山は地獄耳だ。速攻で話に加わってくるんだ。勿論結末はいつも変わらない。

 

「小宮山は駄目だろ……、絶対」

「んだとコラ!! 真中!! まだ何にも言ってねぇだろうが!!」

 

 そう、NGだと言う事。

 そして 小宮山は真中のぼそっと言ったツッコミも決して聞き逃さないんだよね。凄い。

 

「いやぁ、小宮山は勘弁してやってくれ。その顔で迫ってきたら女子たちが怖がる」

 

 何処か爽やかな顔してる大草も結構毒舌だったりする。

 

「どういう意味だ!!!」

「そう言う意味だろ? ……ほれ、お前らも席に戻れって。そろそろ授業始まるぞ」

「うぐぐっ……」

 

 と言ったらタイミングよく開始を告げる本鈴が鳴った。

 

 未練がましくしてるみたいだけど、次の授業の山岡先生は、小太り気味で無精髭が特徴的な怒らせたら面倒な部類の先生だ。ちょっと前 2人に罰としてグランウド50周! を宣告した教師でもあって、またまた 怒りを買おうものなら今度は内申点にも響くんじゃないか? と言ったら 少なからず自粛すると2人は言っていた。

 

 正直、この時は 『くだらない事で教師に逆らって無駄なエネルギー』と言っていた大草に素直に賛同した。

 

 オレも席がすぐそばだから 危うく巻き込まれそうになってしまったんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、ちょっとした事件が起きたのは次の日だった。

 

 

 

 

 とりあえず、あの日。屋上でいた時に出会った女子との鉢合わせは無かった。

『ぜったい見つけてやる!』と恐ろしい事を言われて 結構警戒したけど……取り越し苦労だったよ。

 

 あの日から 屋上は危険かな? と思ってたんだが、あの場所は自分にとって憩いの場でもある。簡単に放棄できる様な場所でもないから。

 

「―――歌、ちょっと自粛しよっと」

 

 そうだ。

 そんな大きな声で歌った訳じゃないんだけど、訊かれたらしくて ああなったから。

 

「……やっぱし 気持ち良いな。ここが学校の中で一番」

 

 目を閉じれば、更に気持ちいい。 

 誰にも邪魔されずに 無心になれる場所なんて早々無いから。

 

 でも――、またまた来訪者が来たんだ。

 

 

 

「よい……しょっと」

 

 

 丁度、給水タンクの影になってたから、ここで転がってるのはバレてない様だったけど。

 

「……ん? 誰だ?」

 

 前の子かな? って思ったから ちょっと警戒してたんだが 違った。長い髪は同じだけど、髪の色が違う。

 

「ん………」

 

 その子は、手にノート、ペンを持って何かを書いてた。

 こんなトコで勉強? って思ったけど…… 落ち着ける場所での勉強は結構捗ったりするから そこまで不思議には思わなかったけど……。

 

 

「(まぁ……あんまり人が来ないってだけか。ここは)」

 

 

 全く人が来ないって訳じゃなさそうだと思った。

 今の今まで鉢合わせが無かっただけで。

 

 

 そして、オレは頭の中で選択肢を選んでいた。

 

 

 

① 素直に出て行って 軽く会釈し下に降りる。

② 先に来たのはオレだ。オレの場所! と出ていく様に言う。

 

 

 

 ①は まぁ……驚かせてしまうかもしれないけど、無難かな? と思う。

 だけど、つい先日の事もあるし……もしかしたら あの子の刺客? かもしれないし、と言う事で無し。

 

 

 ②は ……なんで選択肢に入れたんだ? と自分で自分を責めつつ却下。

 何処のガキ大将だ。

 

 と言う訳でありきたりだが

 

 

 

③ このまま隠れて、いなくなったらオレも帰る。

 

 

 

 をチョイスした。

 

 幸いな事に気付いていないし、屋上はそれなりに広い。

 もしも あの彼女もここがお気に入りで ちょっとした至福の時間を過ごしているのだとすれば、邪魔するのも悪いだろう。時間帯を考えても 何時間もここにいるとも思えない。

 オレだって、後30分くらいゆっくりしたら帰ろうと思ってたし。

 

「……(風が結構吹いてるのも幸運だな。風音で色々と紛れる)」

 

 ちょっとした息遣い程度は気付かれない程吹いているから良かった。

 

 丁度給水塔の裏側と表側で過ごす男女。

 

 一体どういうシーンだ? って映画とかにうるさい真中だったら、ツッコミ入れられるかもだけど、こういう事だってあるんだろ。たまには。

 

 

「さ……、もうひと眠り………」

 

 

 

 と言う訳で、オレは目を閉じた。

 

 

 

 それで、ちょっとした事件が起きるのは、この直ぐ後の事だったよ。

 

 

 

  




今更ながら。



オリ主

神谷(かみや) (れん)くん。

備考:転校生


細かな設定まだ考えて無し。


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