平凡は、いちごと共に消ゆ   作:フリードg

32 / 37
※注 ほぼ原作沿い…… オリ分不足でございます。

ムフフ~ なシーンもまだちょっと……m(__)m


まぁ、中学生ですし? (遠い目)


31話

 

 

「……初めてじゃないけど やっぱ緊張するな」

「へ? 今 蓮 緊張してたの? というかそんなのするの? だって前とか、テンパっちゃってるのあたしだけだったじゃん」

「いやいやいや、オレだって緊張くらいするわ。女の子の家に1人だけで来るのって考えてみれば西野が初めてだし。……ん 前の時、上手くオレ謝罪とかできてたのかなぁ……?」

「あははっ! そーんなに気を張り詰める必要なんかないよっ! だって、蓮とあたしの仲じゃん? あたしの……彼氏、でしょ? だから 軽くいこうっ! 寛いでいってよー(と言うより 上手く出来過ぎて……じゃなく完璧過ぎて逆にお母さんちょっと引いてたよーな気がするけどな……)」

 

 

 という訳で今西野の家の前に丁度ついた所だ。

 以前は 帰るのが遅くなってしまった事や西野自身が危ない目に遭っていた事とかが重なって、本当に申し訳ない気持ちになって、西野のお母さんに謝った。あの場は許してくれた……と思うんだけど、オレとしては やっぱり不安は残る。

 でも、話を聞けば オレが西野の事を助ける場面を見ていた人(コンビニの店員さん)から話が伝わったらしく…… 好印象抜群! と西野がドヤ顔で笑っていたから 少しだけ安堵出来たんだけど、やっぱり難しいかな? 平常心。

 

「(でも、どきどきしてくれるのは 嬉しいかも? 蓮ってとってもクールだし) はい、どーぞ!」

「ん……。お邪魔します」

 

 がらっと扉を開けて入った先には誰もいなかった。別に出迎えてくれる~ とかは考えてないけど、ちょっと出鼻くじかれた気分だ。

 

「ほら、いいからいいから。止まらないであがって! あ、スリッパ適当に使って良いからさ! あたしの部屋いこっ!」

「……にしのの部屋?」

「そっ」

 

 そりゃ 西野の家に来たんだから お呼ばれしたんだから 全然可能性無いってわけじゃないけど、やっぱりドキドキするな。

 

「あ、なーに蓮? あたしの部屋が汚さそうだー! とか想像してる??」

「……いや、なんでそうなる?」

「だーって蓮、難しそうな顔してるんだもん! 考え込む時そーいう顔してるし! 誤解しないでよね! あたし 部屋いつもきれいに片付けてるもんっ!」

「……大丈夫大丈夫。西野の事ならしっかり見てるし、部屋汚いとかギャップあり過ぎ。そんな事考えてないって。……まぁ 世の中にはそう言う外見と真逆な感じな人は多数いるけど」

 

 誰とは言わない。 ……そうだ。誰とはぜーーったい言わない。外面パーフェクト。100点中120点だって上げれそうな感じなのに 家に帰ったら まぁ 大変。な人物の事なんて。

 

「へへっ ならよーし! じゃ、いこっ こっちこっち」

「ん。お邪魔させてもらうよ」

 

 階段を上がって部屋を何部屋か横切って到着したのが西野の部屋。

 女の子の部屋ってこういう感じなのかな? って年頃の男子中学生ならだれでも想像するって思うケド、その印象にピタリだったよ。可愛らしい装飾。それに人形やちょっとした置物だって可愛らしさ抜群だ。

 とある人物に連れられて(勿論、用事があっただけ)入った部屋もこういう感じだったし。

 

「じゃ、とりあえずベッドに座ってて。あたし準備するからさ!」

「(ベッドに座ってて~ と準備するから~ ってなんかそれこそ誤解を生みそうな発言だと思うんだけど)……ん。ああ、机出すの手伝うよ?」

「いーからいーから。蓮はあたしの家庭教師(かてーきょーし)さんだしねー! 寛いでてよ」

「うん? オレが家庭教師?」

「あっはは! 良いじゃん。蓮の方が成績良いんだし、教えるのだって上手じゃん」

 

 小宮山を教える時は スパルタだ~ と言われてるし、オレが教えるの上手い、って思った事は無いんだけど…… 西野の言う事信じてみようか。

 

「よし。ならビシビシ行くか。……手加減はしないぞ?」

「えへへ。望む所! 頑張るね!」

 

 にっ とお互いにウインクした。それはそれでなんか恥ずかしかったからちょっと顔が赤くなったと思うけど、直ぐに西野が取り掛かったから 見られずに済んで良かったよ。

 その後 西野は部屋の隅に立てかけて仕舞われてたお洒落な丸机を引っ張りだした。そんな西野の後ろ姿を見ながらオレは訊いたよ。

 

「そう言えば 凄く家が静かだったけど、西野のお母さん、家の人はいないのか――?」

 

 また 話をしてみたい と言ってくれてたみたいだからさ。オレもちゃんと挨拶したいって思ってる。あの時は 冗談抜きで本当にテンパってたから……あまり覚えてないトコとかあるんだ。

 

 それで西野の返答待ってて 帰ってきた答えがちょっと予想外だったんだ。

 

「ん? 明日まであたし以外誰もいないんだー。お母さんは話したい~って言ってたケド 次回に持ち越しだねー」

 

 西野と西野の家で2人きり。今晩は(宿泊するつもりは無いけど)。

 やっぱりドキッとしてしまったけど 西野と2人きり、と言う場面は多いから大丈夫だったよ。

 

「仕事か?」

「うん。お母さんもお父さんも出張だってさ。残念だよねー?」

「オレは色んな意味で複雑かもな」

「ん?? あ、蓮もまたお母さんと話してみたかった?」

「あー それもあるけど……、ほら 緊張してたんだけど 気が抜けたって事もあるし。でも西野とその……家で2人きり、って言うのもあるから やっぱり色々思うトコある~って言うかやっぱ緊張はするし。つまり同時に色々あって。気は抜けたケド やっぱり なかなかなぁー」

 

 嘘偽りない心情ってヤツだよ。彼氏彼女の間柄になっても やっぱり2人きりだったらドキドキするし。西野はやっぱ可愛いからさ…… 想像以上の高威力なんだ。色んな仕草が。

 

 

「……蓮って、ほんっとポーカーフェイスだね」

 

 

 西野は少し黙ってたかと思えば、用意できた後オレの方に来て そのやわらかな両手でオレの頬を むにゅっって挟み込んだよ。

 

「あたしさ、すっごくドキドキしてるんだよー? 蓮をちゃんと家に招待できて、その……あたしの部屋に連れてきて、ふたりっきりでー……って、蓮が言うように色々同時にあってさ! ………ほんとに蓮もドキドキしてくれてるの?」

「…………」

 

 口でそう言っても信じられないよー! って言われてる気がしたよ。だからさ……、ちょっと強引かもだけど、オレは西野の手をもって オレの胸辺りに当てた。

 

「あっ……」

「……わかってくれたか?」

 

 心臓の鼓動を伝えた。

 今まで ずっと凄い勢いで鳴ってたから 服の上でも簡単に伝える事は出来るし。西野がオレに触れてくれた瞬間から更に際立ったからさ。

 

「……えへへ。すっごくドキドキしてくれてるね?」

「そーいうこと。……これ以上ないだろ?」

 

 ふいっ と顔を逸らせたよ。やっぱ 照れるし。

 顔逸らせたのがちょっと間違いだったかも。

 

「れーんっ!」

「おわっっ!!」

 

 西野が背中に抱き着いた……と言うより飛びついてきたから。

 

「あたしの事も感じてくれる? ……すっごくドキドキしてるのがさ!」

 

 そう聞かれるけど、正直自分自身のと西野のがごっちゃ混ぜになってて判らん。って言うのが正直な感想。

 

 

「こらー! な、なんかいってよー! あ、あたしだって恥ずかしいんだからね!」

「あーあー! すげー感じる! メチャメチャ感じる!! 西野もドキドキしてくれてるってさ!!」

「ほんと?」

「ほんとほんと!! だ、だから ちょっとタイムだ!」

 

 

 理性がヤバイから! 西野は凄く柔らかくて、心地いいケド、何度でも言うオレだって男だ。健全な男!!

 

 

 でも…… やっぱり 約束だってしてるから。――――健全なお付き合いを、って。

 

 

 でもさ。健全な男な部分は なかなか西野は離れてくれないから、約束の『や』の字がうす~~く消していく様な気がした時だったよ。

 

 ピーンポーンッ! って聞こえたのは。

 

「………むー。誰か来たみたい?」

 

 西野の身体がオレの背から離れた。ほっとしたのと、名残惜しいのと、……また色々ごっちゃになりそうだな。

 

「こんな時間なのに、誰だよー」

「……それは確認しないとわからんのじゃないか? 居留守するのは、アレだろ?」

「判ってるよー。(うー……邪魔(・・)された気分だよ)しょーがないから ちょっと行ってくるね」

「おう」

 

 速足で西野は部屋を出ていった。

 これで良かった――と思ったケド 帰ってきた時がまたどうなるのかが判らない。

 

「大丈夫……かな。たまたま来訪者が来たから 中断しただけだし。まだ……長いんだし。不思議だ。楽しい事、西野と一緒にいる時間は いつも凄く早いのに。何か今の 永久くらいに感じられた気もする……」

 

 

 オレは暫く悶々としてたけど、気を紛らわせる為に持ってきた教科書、数学の教科書を広げて準備した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あたしは、ずっとドキドキしてる。

 

 蓮と会う時、蓮と話す時。蓮の事なら何でも。

 家に連れてきた時なんかほんっと最高潮だったんだ。 お母さんやお父さんがいない時って ちょっぴり狙っちゃった。2人にはちょっと悪いって思ってるけどね。

 

 忘れられない思い出を、沢山作りたかったんだ。

 

 

 ――初めての夜、蓮と一緒に。って。

 

 

 い、イヤラシイ事考えてなんか……って言えば嘘になるかも……。だって 蓮に触れるのも、触れられるのも本当に心地良いんだから。考えるだけで凄くドキドキなんだから。

 ちょっと 死んじゃうんじゃないっ? って思っちゃうくらい心臓が暴れてたんだ。

 

 なのに――蓮はいつも通りな表情だった。

 

 口では 『緊張』って言葉使ってたけど…… なーんか信じにくいんだよねぇ。

 あの男たちをやっつけてくれた時とか、お母さんと会った時とか。ぜーんぶそつなく熟しちゃってるもん。あたしはこんなになのに! 

 

 だからちょっとムキになって 蓮の頬をむぎゅっ って挟んだ。でまかせじゃないのかーほんとなのかー! って。

 

 それで蓮は論より証拠~って言わんばかりにさ。あたしの手をとって自分の胸に押し当てたんだ。……それでさ凄っごく早かった。蓮の気持ちが伝わってきた。

 あたしで蓮がドキドキしてくれてるのがとても嬉しくて、プイっと顔を背ける蓮が可愛くも見えて…… あたしは思わず抱き着いちゃったんだ。

 

 そのまま勉強の事忘れて この温もりをー…… って思ってたら まさかのタイミングでチャイムが鳴った。ちょっと 怒っても良いって思うんだー。 まぁ 勿論 そんな事しないけどね。

 

「こぉんばんはぁ~ 隣の篠原ですぅ~」

 

 出てみたらお隣のオバサンだったし。

 

「聞いたわよぉ。つかさちゃん 今晩ひとりでお留守番なんですってね? お母さまから様子見てやってって頼まれたものだから。……どーお? 何か困ったことなぁい?」

「いえ…… ひ、ひとり(・・・)でも やれてますから」

 

 流石に、蓮と一緒~って言うのは 口に出せなかった。はしたない~って思われるかもだし。そんなの嫌だし。

 

「そーお? そうよねぇ。もう中学3年生ですもんねぇー。うっふっふ~」

 

 何だか、オバサンの笑みが変わった気がした。

 

「つかさちゃんには 王子様がいるんでしょ~? あ~ 危なくなったら 私より 王子様を呼ぶかしらぁ?」

「……ほぇ?」

 

 あまりに突然の事だったから、あたし 自分でも変な声が出たって自覚出来たよ……。

 

「うふふ。私も聞いてるのよぉ。つかさちゃんに見合う殿方だーって。暴漢から身を挺して守ってくれる殿方なんて、今時いないわよぉ? 今度、私にも紹介してもらいたいわ~」

「あ、あー いやー はい」

 

 ……生返事しちゃった。

 蓮のこと…… 近所に伝わってる~って話はお母さんから聞いたけど。実際に聞いたらほんと実感するよ。

 

 

 その後は暫く 蓮の話とか 最近この辺りには下着ドロボーが出る~とか聞かされた。話が長く感じたのは言うまでもないよね……。心配してくれてるみたいだし、注意するように言ってくれてるから邪見には出来ないケドさ。

 

 

「う~…… やっぱなんか疲れんのよねぇ、あのオバサンって……」

 

 

 喋り方とか何処のマダム? って感じだしさ。蓮の事色々と言われても恥ずかしくなったり、照れたりしなかったのは それ以上に話すのが疲れるから、だよね? うん。間違いなく。

 

 なーんだか 色々と挫かれちゃった上に戻ってみたら蓮は勉強の準備進めてくれてて……。

 

 仕方ない……よね。でも……。

 

 

 

 

「(まっ……。夜はまだまだ長いもんね♪)」

「ん? 何かわからないトコでもあったか?」

「やっ。まだ大丈夫だよ。ここ終わったらご飯にするから! ラストスパート、頑張るねー」

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。