平凡は、いちごと共に消ゆ   作:フリードg

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30話

 

 

「蓮って結構スパルタなんだねー? ちょっとイメージが変わっちゃったかもだよ?」

「ん? そうか?」

 

 朝の勉強会が終わった。

 当然だけど次は学校が始まる。

 

 

 それで今は保健室からの帰り道で 西野と軽く話してたんだ。……なんで 保健室? って思うかもしれんが、まぁ 色々あったんだよ。主に小宮山が原因だけど。

 

「えー、だってほら。小宮山君に教える時凄かったじゃん。『そんなんじゃ どこにも行けねーぞー!』とか『お前、一体この中学3年間なにやってたんだー!』とか。それでねー、あたし、竹刀みえたよ? 蓮が持ってる様に見えた!」

「あー…… ま、まぁ だって あの後も小宮山脱線しそうだったし? あいつら 奇遇とか言って、勉強やりに来てたはずなのに、身が入ってない感じで……。……それに、西野だって思わなかったか? ぶっちゃけ。 あの連立方程式の問題とか、基礎中の基礎だろ? アレわかんないで泉坂狙ってる~とか………」

「あ、あー それは数学嫌いな流石のあたしでも ちょっとヤバイって思っちゃったかなぁ……」

 

 西野も引き攣った笑みを浮かべだしたよ。

 

 だって、ショウガナイって言えないし。小宮山は元々得意な教科も無いっぽいし。多少は荒っぽくやらないと スイッチ入らないだろーなー、って思ったからだし。

 

「ほらな。オレ甘やかすのはあまり好きじゃないから」

「ふーん。……蓮って 甘やかすの嫌いっていうケド、やっぱ優しいよね」

「ん?? 優しい?」

「だってさ。例え仲の良い友達だったとしても、あそこまで真剣になって教えるのってなかなかできないって思うんだー。ちょっとスパルタ気味だったけど小宮山君、ちゃんと聞いてたじゃん? それも蓮のこと信頼してるからだと思うよ。なーんにも思わない人からだったら、訊かないって。寧ろキツくされたら逃げるよ」

 

 あはは、と笑いながら オレの事を褒めてくれる西野。

 ……それにやっぱ顔近いって。褒められた事も合わせて高威力だから 顔が赤くなりそうだよ。

 

「ま、まぁ…… ここに転校してきて 最初はやっぱ結構壁作ってるって 自分でも意識してたんだ……、そんな中であいつらぐらいだったから、かな。結構グイグイ来てた……、その、来てくれてた? のは。おかげで結構クラスに打ち解けるの早くなったって思ってるし。……ぁ~~」

 

 オレ、何か恥ずかしい事言ったよ。ゼッタイ。

 

「西野…… 『来てくれた』ってトコ、忘れてくれ。……あいつらに言わないでくれ」

「へへ~ やーっぱ蓮は恥ずかしがり屋さんだね~。皆の事好きなんだー って言っちゃえば この際スッキリするかもよ?」

「ゼッタイヤダ。……それにだ」

 

 オレは、周囲をちょっと確認したよ。廊下には 殆ど誰もいなかった。それをちゃんと確認したところで、ちょっと西野に踏み込んだ。

 

「その単語。……使う相手は 今の所オレの横にいる人にしか使いたくないから」

「へ……? ……ぁっ///」

 

 西野、最初は判んないって感じだったけど ちゃんとわかってくれたみたいだ。

 

「え、えへへ……/// あたしも……だよ? 大好きだからねー」

 

 そっと西野はオレの腕を取って、肩に頭を乗せた。

 仄かに感じる甘い香り。西野の香り。……うん。健全な中学生にはやっぱり刺激は強いよ。暴走しちゃう! とまでは言わないけど……。

 だってほら、ここは学校だ。そんな事した日には一体どーなってしまうのか、って思うし。

 

「んっ よーし! 蓮分をしっかり堪能したし! あたし、こっちだから行くねー」

「なんだよ、オレ分って……。 おう。またな」

 

 西野は2組。オレは4組。

 今更だけど、同じクラスだったら良かったってやっぱり思うよな。

 

「……高校では同じクラスになりたいね」

「! ……はは。だな」

 

 どうやら西野も同じだったみだいだ。恥ずかしく言えば通じ合ってるみたいで ちょっとくすぐったい。 さっきの腕組、肩乗せでもそうだけど、オレも結構西野分を貰えた。

 

 西野が2組の方へと向かったのを見送った後。

 

「さてと。今日も1日頑張りますか」

 

 気合を入れて教室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と言う訳で、教室の中。

 真中と大草は先についてたみたいだ。

 

「悪いな2人とも。なんか面倒押し付けたみたいで。……アイツ、大丈夫だったか?」

「いやいや。オレちょっと神谷で遊んじゃったし、良いってそれ位。小宮山だけど、興奮しっぱなしで、全然鼻血止まってなかったよ」

「オレで遊ぶってなんだそれ? ……ま、それは置いといて、小宮山には刺激が強過ぎだんだろうよ。(多分、小宮山に限ってじゃないと思うけど…… あそこまではいかないかな)」

「朝っぱらから奇怪だよなぁ、アイツは……」

 

 ちょこっと話すと 小宮山の勉強を東城も見てくれてたんだ。

 それで 勉強中にちょっと手が消しゴムに当たって小宮山の方に転がって それを取ろうと近づいた東城と小宮山が当たった。

 

 ……うん。口に出しては言わないが、東城って、その……かなり大きい。アレだけ近付いたら、やっぱ むにゅっ と当たったみたいなんだ小宮山に。

 

 その瞬間、まるでクジラの潮吹きみたいで鼻血だしてぶっ倒れた。 

 

 保健室までは一緒だったけど、先に女子の2人を上がらせて、それで 大草が気を利かせたみたいで、オレも一緒に西野と帰らせた。それがお礼の部分だ。

 

 あ、その話とは別にちょっと気になるトコが出来た。

 

「ん? 真中どうした? さっきからなんかぼーっとしてないか?」

「………んあ? なんだ?」

「いや、オレが聞いたんだけど……。まぁ 別に良いけど」

 

 

 

 

 ここでちゃんと注意してたら良かったかも、って少しばかり後悔したよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この後の移動教室とかで、真中 ふらふらしてたみたいでさ。色んなトコにぶつかりそうになってんだ。それで とうとうぶつかって倒れたから。

 

 

 

 

 

「東城ってオレのこと好きかな―――って!」

「どわぁっ!!」

 

 ぶつかった相手は復活した小宮山だ。あー でも小宮山雑誌見ながら歩いてたから、どっちが悪いか、って言えば小宮山の方かも。

 

「なんだよ ボーっとして人の前歩いてんじゃねーよ!」

「てめーだって本読みながら歩いといて何言ってんだ!」

「真中の言い分に賛成、って言いたいケド、なんか変だぞ真中。ぼーっとしてるのって 朝からずっとじゃないか?」

「やーいやーい! つまり真中が悪い~~」

「んで、小宮山は調子に乗んな。そんな雑誌見てそっちの勉強する暇あったら、数学の教本みて 勉強しろ。一番数学が悲惨だろ?」

「うるっせー! つかさちゃんがいる神谷にはわかんねぇんだよ! オレの気持ちが! オレは今分析中なんだよ! 東城がオレのこと、本当は好きなんじゃねぇかってことをよぉ!」

 

 何か突拍子もないこと言い出した。

 これって多分朝の勉強会での出来事のことを言ってるんだと思うけど…… んな訳無いだろ。東城はきっと真中に惹かれてるって思うし。

 

「はぁ? ってか んだそれ! 『女のコにモテる50のコツ』!? なんか恥ずかしいぞ お前!」

「邪魔くせぇな! なんなら見せてやっから落ち着けよ! あ、神谷はダメだからな!! モテ男は禁止だ! き・ん・し!!」

「あー別に良いよ。寧ろそっちの方がありがたい。今お前らに混ざりたくない……ってのが本音だからなぁ。色んな意味で目立ちすぎだろ」

 

 真中が大声で雑誌の中身を暴露しなけりゃ まだ良かったのに。

 

「だぁぁぁぁ!! てめぇは良いよなぁぁぁぁ!!! なーーーんせ、あのつかs「デカい顔と声で何度も言うな!」ぶげっ!!」

 

 また、顔でかく変化させて(妖怪化?)迫ってくる小宮山にカウンターで肘打ちを見舞った。もう周囲にはバレてるの判ってるけど、それでも口に出して言われるのは……、それも大声で言われるのは嫌だ。

 

「ふんっだ! もー良ーよ! ほら 行こうぜー! なー真中っ!!」

「そのセリフ…… お前が言うと 正直メチャ気持ち悪いぞ」

「うっせー!」

 

 と言う訳で、2人は仲良く? 一緒に席に戻ってったよ。

 オレは禁止令出されたから、自分の席に戻ったけど。

 

「どうしたんだ? あれ」

「ん? ああ、大草。なんでも小宮山が分析したいんだと。その本だって」

「分析? ……って、ぜーったい女子関係だろ?」

「言うまでもないだろ。んなもん。この大事な時期だってのに余裕があって、ほんと凄いよある意味」

 

 はぁぁ、と深いため息が出た。西野はオレの事優しいって言ってくれてたけど……、やっぱあんま小宮山には優しくしたくないって思う今日この頃だ。つけあがるし。

 真剣になれるのが凄い……か。まぁ 腐れ縁だからって事で納得しとこうか。

 

「んじゃ、行ってみようぜ? 神谷」

「……は?」

「ほれ、あいつらんトコだよ。そっちのアドバイス、出来るだろ? 神谷なら」

「いやいや、出来ないって。んなもん知ってるだろ? ……あぁ、大草関係での断り方なら教えれると思うケド」

「確かにそれは得意そうだよなー」

「別に得意になりたかった訳じゃないけどな!」

 

 大草は人間磁石(女性限定)だからな。

 

「んじゃ、行ってみようぜ? 神谷」

「……まーったく同じセリフ繰り返し言うなよ。オレ行かねぇって」

「面白そーじゃん! それにあの手の本にはさ。付き合いだしたころの心得とか載ってると思うぜ? チラ見しといて損はないと思うけどなぁ」

「…………」

 

 付き合いだして、か……。正直 オレは得意じゃないから。範疇外の事だったから……、自信無いのは事実だし……。でも ここで乗ったら大草にまた色々弄られそうだし……、どうするのが 一番だ?

 

「つー訳で 行ってみよう!」

「……はぁ」

 

 言われるがまま 一緒に行ったよ。多分、いや 間違いなく小宮山にはいろいろ言われそうだけど、まぁ 別に良いか。大草に無理矢理って言えば。……揺らいだのは事実だケド。

 

 

 それでちょこっと近付いただけで直ぐに何話してるのか判った。

 だって2人とも声メチャデカいから。特に小宮山がだけど 真中も何気に負けてない。

 なんでも『今朝東城が勉強に誘ってくれた』から始まり『わざと(・・・)消しゴムを落として、わざと(・・・)オレに胸をすりよせてきた』とか何とか。

 前半部分は まぁ、判るけど 後半部分は何言ってんの? って感じだ。東城はその辺はちょっと疎いっぽいし、うっかり者、ドジっ子な所もあるから アレは天然だと思うってのがオレの意見だな。

 

「いやいや、別にそれ わざとじゃないんじゃ……」

「わざとなの!! だからこの本でいくと東城はオレに気がある!! ってワケよ!」

「ええっと、なになに 『髪の毛をいじると欲求不満』? うさんくさ~~~っ そんな本、頼りにすんなよなぁ。なぁ? 神谷」

「オレに振るな。人それぞれだから 本が売られてんだろ」

 

 しれっと後ろから声をかける大草。それとオレ……は声かけてないけど一緒に来たから一緒かも。

 

「コラァァぁ!! 神谷禁止! って言っただろーが! 金払え!!」

「何で金なんだよ。大草に連れられて、だ。それ以外に理由は無い」

 

 ……ちょっと興味が出たって言うのは やっぱり秘密だ。あんまり言いたくないし。

 

「良いじゃん。神谷の意見だって重要で貴重だって思うぜ? 何せ学園のアイドルをオとした男だからな。大いに利用しちゃえって小宮山」

「うぐぐぐ……。うぐぅうぅ……」

「へ、へんな風に言うな大草! それに、呻くな!」

「つー訳でだ。おまえらが誰の事調べてるか、知らねーけど、自分のこと好きかどうかなんてすぐにわかるじゃん」

「「ええ!? それ、一体どーやって!?」」

「……直ぐ復活したな」

 

 大草の話だから、大分説得力があるらしいよ。呻いてた小宮山は、一瞬の内に起き上がったし。 んで、何か知らんケド 大草はオレの肩に腕回してきた。

 

「な? 神谷!」

「だから同調させようとするなっての! オレ達思考回路一緒~ ってワケじゃないんだぞ!」

「良いから教えろよー! 大草!」

「そーだそーだ!!」

 

 お預け喰らった腹空かせた犬みたいになってるよ2人とも。

 

「………大草。さっさと餌ヤレ」

「へーへー。簡単な事だろ? 相手の目を見て3秒見つめて、赤くなって目を逸らせたらホレてる」

「そ、そんなのどんな女子だってそうなるだろ!?」

「まあ 確かにオレが見つめたら大抵の女子は赤くなるけどね?」

「あのなぁ!! 嫌味か!」

 

 そりゃ 間違いないな。大草の言う通り。今ちらっと後ろの方とか見たけど、遠巻きに大草の事見てるコ多いし。でも、ちょっとそこには異議ありだ。

 

「ん…… でもさ、西野は違うぞ大草」

「ん? そうなのか?」

「ああ。西野の場合 目見たら見つめ返してきたし」

 

 以前もそんな事あったから。『なになに~?』って興味津々にさ。

 

「…………………」

「あーー、悪かった悪かった。だから無言の殺気止めろ」

 

 小宮山は恨めしそうに見てきたから、これ以上言わない事にするよ。

 

「ま、西野は他の女子とはちょ~~っと違うトコがあるっておもうし、参考にするのにはなぁ……? でも一度は試す価値はあるって思うぜ? ほれ、神谷の場合でも見つめ合う事が出来てるんだしさ。それで 真中は 東城の気持ちを知りたいんだろ? 善は急げだ」

「っ……」

「なにぃっ!?」

 

 真中と東城だったらもう確認するまでもない、ってオレは勝手に思ってるんだけどな。

 なんか、小宮山がうるさくなったけど。

 

「んじゃ、頑張れよー。オレは席に戻るからな」

「そろそろ時間か。オレも戻るわ」

「こ、こらぁ! お前らー! 小宮山止めてくれよ!」

「何で真中なんだよぉぉぉぉぉ!!! つ、つかさちゃんに続いて東城までぇぇぇぇぇ!!」

 

 こんな感じだから。全部真中に任せてオレは振り返らずに戻った。

 

 

 

 と、言う訳でもうあっという間に下校時刻。

 西野と一緒に帰るトコ。

 

「あははは~! それでなんか騒がしかったんだねー、4組の方」

「まぁな。ほんっと騒がしいなんてもんじゃないな。同じ組にいたらさ」

「楽しそうじゃん? それで 東城さんと真中くんはどうだったの?」

「ああ。つまり……。お互い顔逸らせた」

「あははははっ! 初心ってヤツだね~~?」

 

 西野はほんと面白そうに笑ってるよ。オレらも偉そうに言える程実績と言うか時間を掛けた訳じゃないんだけどな……。

 

「ほら西野。電柱に当たるって」

「あははは おーっとっとー。ありがと。蓮っ あ、そうだ! ねぇ これからヒマかな?」

「ん? ヒマー かな。帰ったら受験勉強するくらいか。……あぁ 後は姉の世話? いや 今日はいないから大丈夫か」

「おおっ 丁度良かった! 受験勉強だよ。よかったら今日あたしん家で一緒にやろうよ。ねっ ねっ!?」

「……え?」

「明日学校休みでしょ? ひとりで勉強してもすぐにサボっちゃうんだよね、あたし。……それにさ。蓮をちゃんと家に招待したかったんだ。前回はその…… アレだったし。ダメ、かな?」

 

 両手をもじもじさせながら言ってる。それも上目遣い。

 

「ははは……。断らないって。大丈夫だ」

「えへへへ~。そうと決まったらさ! 家に電話して! 夕飯も用意するから食べてってねー」

 

 前回は確かに西野の言う通り…… あまり良い訪問だった、とは言えないって思う。

 それに、西野のお母さんもまた オレと話をしたい、って言ってくれてるらしいし……。ちょっと緊張するケド、アレだけはっきり『お付き合いさせてもらってます』って言ったんだし。

 

 それ位しっかり覚悟決めとかないとだな。

 

 

 

 ああ――― この時は思ってもいなかったんだよ。

 

 

 色んな意味(・・・・・)で大変な事になる何てことは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




所謂 真中×西野 初めてのお宅拝見? の場所ですね。二巻辺りの。



そしてそして…………次回はR-1○な展開に?  


あまり期待はしないでね…………………。。

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