平凡は、いちごと共に消ゆ   作:フリードg

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実は 前話の最後のやり取り(『平凡は~』ってヤツです)が最終回~って考えてた自分もいたりしましたが……。
とりあえず 続行しようかなと。


もうしばし お付き合いしてくれたら幸いです。


28話

 と言う訳で 今は翌日の早朝6時。

 

 オレは ここまで早く起きる事はあまり無いし、部活とかも今まで入ってなかったから朝練って言う習慣もない。

 

 だから、結構家族にぎょっとされた。そんな遅起きじゃない筈なんだけど。

 

「もー、言っておいてくれたら 蓮の分もちゃんと用意するのに」

「あ、母さんゴメン。大丈夫だって。何か買ってくから」

「育ち盛りなんだから コンビニとかで済ましちゃダメでしょ? ほら まだ時間ある?」

「えっと……うん。まだ少しなら」

「はいはい。ちゃんと朝ご飯作ってあげるから。しっかり食べて行きなさい。何があるのかは聞かないけどね?」

 

 色々と察したのだろうか……? 母さんはキッチンの方へと行ってくれた。いや、本当に反省だ。昨日言っておいたら良かったのに、完璧に忘れてたから。

 

 うん……。反省するケド…… 何か感じる。さっきから何か感じる。

 

 肌寒い朝なんだけど、太陽はちゃんと出てるから、仄かに暖かさだって感じる良い朝だって思うのに、何処となく異常な冷気。……いや、妖気? みたいなのが。

 

 

 

『………蓮、最近おかしくない?』

 

 

 

 原因は絶対アレ(・・)

 

 全国ツアーとやらの真っ最中の癖に 事ある毎に舞い戻ってきては また戻ってく。

 メチャ凄まじいバイタリティの持ち主。そこらへんの芸人さんの体当たり企画とかより数倍は疲れそうな事してんのに、全くおくびに出さず、おまけにこのオーラ? を出すと言う特技まで発動させてる。おまけにエスパー。

 

 

「……なんか、あったでしょ? ……フラグ的なのが」

「かーさん。そろそろ行きたいんだけど、まだ?」

「何言ってんのよ。まだ1分も経ってないじゃない。しっかり食べないと大きくなれないゾ?」

「いやだって、家の中が異常に寒くて……。まだ外の方が良いかな? って。早く出たいってすげー思って」

「あらあら」

 

 ここで漸く母さんも気付いたみたいだ。姉の妖気(オーラ)に。いや、妖気にと言うか 視覚的に姉を見つけたらしい。

 

「愛ちゃんももうご飯食べるでしょ? 今日はまた飛行機で戻るって言ってたけど」

「……………」

「おーい、愛ちゃん。お母さんの事無視するの、なんか寂しいし辛いナァー」

「………あ、ごめんごめん。ちょっと考え事してて」

 

 何か姉の様子が変わりだした切っ掛けってどう考えても、オレが…… その、西野と一緒になれたからだって自覚がある。そう言うの読んでくるのがマジでヤバイんだ。

 でも流石にオレの事 尾行とかまではしてない。そんな事したら、オレが本気で怒るって判ってるから したくても出来ないって言うのが正しいかもだけど。

 

 でも、なんか今日は更にハイテンションな様子だ。

 

「今日は蓮と一緒にいるっ!! がっこーについてく!」

 

 怒るの判ってる癖に、何かまた無茶な事言い出したから。

 

「何馬鹿な事言ってるの愛ちゃん。もう中学は4年前には卒業したでしょ?」

「そう言う問題じゃないって、母さん……」

「行くのっっ!!」

「ダメだろ! つか、時間的に無理だろって! 飛行機! 搭乗時間!! 流石のオレもこれ以上困るマネージャーさん見てられんわ!」

 

 ひぃひぃとさせてる 悲壮な感じなマネージャーさんを度々見る事はある。

 

 因みにマネージャーさんは女性であり、オレにとっても姉にとってもお姉さんの様な存在。

優しいし綺麗な人で ほんと弟のオレから見てもスゲェ手のかかる姉を妹の様に面倒を見てくれていて、更には多少な我儘は大目に見てくれる。……というより必死にフォローしてくれてるの方が正しい。

 

 でも流石に今回レベルのはダメだ。

 

 姉もやってるけどそれ以上にオレがTVに映らない様に、というかメディアに露出しないように色々とお力添えをしてくれてるのもマネージャーさんだし。オレも出来る限りはフォローしたいって思ってる。

 姉が暴走する原因の大体がオレ関連だから。

 

「……だって、蓮怪し過ぎるもん」

「なんでオレが怪しいんだよ!」

「それに構ってくれないし……」

「アホな事以外は普通にしてるだろ?」

「抱きしめてくれないもん……」

「それは常にせんわ! アホ!」

 

 朝から頭が痛くなるような会話をしている内に……気付けば6:25

 

「ッ!? やばっ」

 

 一応約束では『6時半くらい』にだ。

 正確に6時30分って言ってないから、言い訳の余地はあると思うけど……そう言うのはしたくない。

 

「母さん! パンだけで良いから!! ゴメン」

「もー しかたないわね……。はい。あまりがっついてのどに詰まらせない様にね?」

「ああっ! 蓮っ!?」

「はいはい。愛ちゃんも時間圧してるでしょ? 早くご飯食べちゃって」

「ぶー……」

 

 

 朝からほんと疲れる。

 こんなのが毎朝あるのは正直辛いかもだ。色々考えとかないと、だな。西野のこととかも勿論……。ちゃんと早めに話した方が良いのかな。

 今時の中坊がわざわざ付き合ってる事を親姉弟にカミングアウトとかするか? って思うケド 姉の暴走は正直頂けんし。でも今は早く向かった方が良いって事でオレは更に急いで家を出た。

 

 

 

 それで 何とかダッシュして待ち合わせの場所に到着。

 

 

 待ち合わせ場所、あまり遠くなくて良かった。

 

「ふぁぁ……って わっ! びっくりした!!」

「ふぁっっ!?」

 

 一息つこうと思ってたら、曲がり角から丁度西野がやってきたんだ。

 何と言うベストタイミング! と言わんばかりに。おかげで変な声出たし……。

 

「おっはよ~~…… うーん、あたしとしては蓮の事待つつもりだったんだけどなぁー……ん?」

「……はぁ、はぁ、って いやいや 時間指定してるのに 相手待たすのは不味くないか? それ普通に遅刻って事じゃん」

「ふふ。でも 待ってる時間も楽しいかもだよ? あーでも、頑張って走ってきてくれたみたいだから、それ以上に嬉しいかなっ?」

 

 上がってる息や汗を見て、西野はオレが走ってきた事が判ったみたい。

 ……ここまではぁはぁ言ってたら判るか。ほんと到着したと同時だったし、息なんか整えられないし。

 

「ふぅ……。そりゃ 男の方が遅刻するなんて アレだろ? 幾らあいまいな時間指定だったとはいえさ」

「へぇー。蓮も恋愛系のドラマとか漫画とか見るのかな? かな?? ほーら、可愛い彼女が『ごめん、待った?』ってきたら『いや、オレも今来たばかりだから』って返すシーンを思い描いてたでしょ??」

 

 西野は、オレの胸の部分に 人指し指を当てて笑ってた。

 確かに 王道ではあるがそう言う類のドラマや漫画は見た事がある。というより、姉が出てるドラマとかは基本家でかかってるし。

 そう言うドラマとか漫画の中じゃ純愛でエンディングを迎えるのが多いけど現実じゃえげつなかったり、ドロドロしてたり、って言うのもよーーーく知ってるから、あまり変な想像とか、理想をもったりはしてない。

 だから、これはあくまでオレの意思だ。あまり西野を待たせたくないって言う、な。

 オレは 違う方向で西野にカウンターを入れる事にしたよ。

 

「……ははは。でも西野。自分で自分の事を可愛いって言うか? まぁ、オレは全く否定はしないけどな」

 

 そう。その辺だ。可愛い彼女が~ってシーンを当てはめてるし 遠回しに言ってるって事だと思うのは当たり前だし。

 んで、勿論可愛いって部分は否定しない。それを真顔で言えたよ。

 なかなかナイスな感じで平常心を保ちつつ返せたから 西野は顔を結構赤くさせてた。

 

「っ/// も、もうっ! 言葉の綾だよっ! ほら、いこっ! 皆待ってるかもだし!」

「っとと、OKOK」

 

 照れ隠しだろうな。オレの腕を取ってさっさと前を向いて歩きだした西野。……それにしてもやっぱり結構力強いな。いつまでも引き摺って連れて行って貰うのもなんだから さっさと西野に合わせたよ。隣り合った。

 

 ……今日もまた、始まるんだろうな。新しい日がって思う。

 

 口にはぜーーったい出さないけど、そんな感じで割りと思ってるから オレもたまに自分の事変になっちゃったか、と思ったりしてるよ。恋して変になった。って所か。

 うん。似たような漢字だし。

 

「……面白くないか」

「うん? 何か言った?」

「いーや。何でも。……ほら、マフラーズレてるぞ? 首元寒いだろ?」

「わっ! ……へへっ ありがと」

 

 マフラーをかけ直してあげて、西野は笑ってて……。うん。メチャクチャバカップルだ。オレ達。

 

「………」

「い、今更顔赤くしないでよ」

「あ、いや、……うん すまん。がっこーでは自重するから。それでも良いよな?」

「うーん…… ま、しょーがないかな?」

 

 許してくれてよかった。

 こんなの、学校でもやってたら それこそ大変だ。小宮山みたいなのが 増えてきそうな気がするし。

 

 

 それで学校には無事に到着。

 朝早いからか誰にも会う事なかった。校門をくぐって学校の玄関、下駄箱の前で2人に会った。

 

「2人ともおっはよー。みんな早いねぇ。あたし達が1番だと思ったんだけどなぁ」

「おはよう。西野さん。神谷くんも」

「はよー」

 

 東城と真中の2人。東城は兎も角、真中がここまで早いとは予想してなかったな。

 

「あっ! わぁー 東城さん! 今日は前髪おろしてるんだねーっ?」

 

 西野は 東城の髪型を見てにこっと笑って頭撫でてた。 オレも結構西野の事撫でたりしてるけど、あれってやる方もなんか気持ちよかったりするんだよな……。女の子の髪ってすごくサラサラで気持ちいいし。………絶対口にださないよ? この辺も。そんなフェチない。

 

「あ、あはは…… 恥ずかしいわ。なんかその気になっちゃったみたいで」

「ううん。ぜーーったいこっちのが可愛い可愛い! 自信もって!」

「ありがとー 西野さん」

 

「……なんか絵になるよなぁ。学園1の秀才と美少女が並んでると……」

「変にトリップするなよ、真中。今からべんきょーするんだからな」

「わ、わーってるって!」

 

 ぽーっと2人を見てる真中をとりあえずオレは起こした。気持ちはわからなくもないけど 折角の早朝勉強会だ。色々と有意義に過ごしたい。ああ、でも真中には確認をしておこうか。

 

「もう間違いないって判ってきたんじゃないか? 真中」

「ん? 何の事だ?」

「東城の事だ。……屋上で出会ったのが東城だって事」

「っ…… あ、ああ。東城って 本当はメチャクチャかわいい……よな?」

「本当は、って 結構失礼な気がするケド……。まぁ 今の方が似合ってるってオレも思うよ。あ、あと オレ東城に確認してるから100%間違いないぞ。『あの時落ちたけど脚大丈夫だったかー?』って」

「っっ! そ、そーなのか!? なんで早く教えてくれないだよ!!」

「お前なぁ…… 変態ワード連呼してて あんま近付きたくなかったからだろうが。オレの気持ちも判れ」

「う……」

 

 真中は自覚あったみたいで、押し黙ったよ。 

 

「でねでねー? 東城さんってすっごく成績良いじゃん? だから あたしも気合いれよーと思って予習してきたんだよ? 勉強見てもらえるのが凄く嬉しくってさ!」

「や、やだ。そんなこと……。西野さんは 苦手って意識しちゃってるだけだって思うから 直ぐに判ると思うわ」

「えへへ。何だか自信がつきそうだなー。東城さんにそう言われたら」

 

「さて、オレ達も2人を見習って勉強だ。英文でも読んで問題出してやろうか?」

「ええ! ちょ、ちょっと待て! 心の準備がまだだって!」

「……いやいや、別にいらんだろ。そんなの」

 

 女子同士、男子同士で勉強会が始まる前のちょっとしたやり取りをしつつ、目的地である図書室についたんで、扉をがらっと開いてみると……あらビックリ。

 

 

「やあやあ!! キミたちも今から勉強かな? いやぁ 実に奇遇だねぇ。偶然だねぇ」

 

 

 ……何か先客がいた。すげぇ見覚えのある2人がいた。

 

 その内の1人は何か拝んでたよ。口には出してないけど 多分『わりぃ……』って言ってる様に見える。感じる。 

 

 

 

 朝から学校でもなんかメンドクサイ事になりそうな気がするんだけど……気のせいじゃないよな、これって。

 

 

 


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