平凡は、いちごと共に消ゆ   作:フリードg

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24話

 

 

 

 

 

 あたしがいるのは 自分の家。

 もっと言えば 自分の部屋のベッドの上で寝転がってる。

 

「…………っ」

 

 やっぱ、駄目だよ。

 

「~~~~っっっ!!!」

 

 ちょっとは落ち着けっ! って自分に言いたいんだけど、どうしても 身体が動いちゃうんだ! 足が勝手にバタバタ動いて、傍にあった枕をぎゅ~~っと抱きしめてる! 興奮を抑えきれない~って感じだよ。

 

「れんっ…… れんっっ……!」

 

 今日、あたしは蓮と……キ、キスしちゃったんだから!

 

 最初はあたしからで ほんと勢いに任せて、だった。

 蓮の事が好き。まだ会ったばかりだって言ってもおかしくないけど、時間じゃないもん。蓮は落ち着いて考えれば、って言ってたけど あたしは蓮以外考えられなかったからさ。

 

 それに、蓮も同じ気持ちだったのは ほんと嬉しかった。勢いに任せた一度目は はっきりと覚えてなかったんだけど、二度目…… 蓮からしてくれた時は なんていうのかな、凄く気持ちよかった。 あっっ、え えっちな意味じゃないゾ?? 何と言うか 多幸感って言うの?? なんて言えば良いわかんないケドっ ただただ 良かったんだって。

 ……蓮、キスが上手い とかだったりするのかな? 

 

 

 それは兎も角 勢いに任せたのは良かったケド…… やっぱり怖かったりもしたかな。

 返事、訊くまで 本当に。フラれちゃったらとか 悪い風に考えてしまっちゃって。もし、フラれちゃったら 前以上に蓮と会えなくなるって判ってるから。本当に楽しかったあの空間、あの時間が失ってしまうのが怖かった。一秒が何十分にも感じられちゃう。あんな感覚、初めてで もう無いかもしれないかな。……心臓に悪いから あんなの味わいたく無いケド。

 

 

「はぁー……。明日 どんな顔して会えば良いのかなぁ……。あたし、蓮の顔見たら絶対顔真っ赤になっちゃうよ~…… 皆にもぜーーったいバレちゃいそうだし……。蓮、そう言うの嫌がるかなぁ やっぱり」

 

 目立つの嫌! って身体で表してる感じだし。その辺りは あたしも気を付けないと、だね。だって 蓮の……、か、彼氏の為……だもんっ!

 

 きゃーきゃー! か、かれしだって! 彼氏、だってっ!

 

「っっ~~!」

「ちょっとー つかさちゃん? 早く寝ないと明日大変よ?」

「っっ!! ご、ごめんなさい! お母さんっ!」

 

 お母さんが 部屋に入ってきた。すごい、びっくりした。

 足、バタバタさせてたから…… 伝わっちゃったのかな? 振動とか。

 うぅ き、気を付けないと。

 

「お、おやすみー」

「おやすみ」

 

 お母さん ちょっと神妙な顔してるね……。

 仕方ないのかなぁ……。 漫画とか、映画とかじゃ 娘が彼氏連れて来たら、簡単に両親って許してくれないのが定番だもんね。 でも、そーいうのってお父さんじゃないのかな。一発殴らせろー! ってヤツとかさ。

 

 それに 蓮の事 更に好きになっちゃったんだ。あの時のお母さんと蓮の話、聞いててさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 公園から帰る時だった。

 

 凄く、遅くなっちゃったんだ。本当なら6時には帰れる筈だったんだけど あの事件があって 時間は8時過ぎてた。携帯にも帰る時 かかってきててね。

 

『お母さんからだ。うぅーん。ちょっと遅くなっちゃったし、絶対怒ってるかなぁ……』

 

 あたしは、名残惜しかったけど 蓮とはここで別れようとしたよ。だって お母さんは遅かったときとか、通りまで出て待ってくれてる事だってあったし。今日はお父さんは出張で帰ってこないから尚更心配してるだろうし。

 何より、蓮と鉢合わせちゃうと…… さ? その、まだ 心の準備が出来てないと思うし。

 

『送っていくよ。家まで』

『え……?』

 

 そんなあたしの考えを全部判ってるよ、って言わんばかりに蓮はあたしが言う前に言ってたよ。

 

『理由はどうであれ、こんな遅くになってしまったのは事実だからな。ならオレにも責任はあるだろ』

『そ、そんな。蓮は全然悪くないじゃん!』

『西野がそう思ってくれてるだけでオレは十分だ。……でも、親はそうはいかないよ。 オレ、自分の両親を見てるから尚更判るんだ』

 

 蓮のお姉さんの事、言ってるんだって思う。

 心配なのは心配なんだけど やっぱり 娘と息子じゃ ちょっとだけ違うんだって。

 

 

『つかさっ!? こんな遅くまで何処に……』

 

 

 それで、お母さんと鉢合わせしちゃったんだ。家の外にいたからさ。

 家の中だったら 大丈夫だから、って帰って貰おうと思ってたんだけど、目もあっちゃったし どう説明しようかな、って悩ませてたら、蓮が前に出た。それで……深く頭を下げたんだ。

 

『本当に申し訳ありません。大切な娘さんを、こんな夜遅くまで……』

 

 あたしは、突然蓮が謝りだして、びっくりした。お母さんもきっと同じだったんだと思う。 えっ? って感じで 固まっちゃってたから。

 

 でもね。あたしは……。今回のはあたしのせいだから。あたしのせいで蓮が怒られるのだけはどうしても嫌だった。 最初は上手くお母さんを説得と言うか、聞こえは悪いけど言い訳をしよう、って思ってたんだけど 頭を下げた蓮を見て テンパっちゃって。

 

『れ、蓮は悪くないのっ! お、お母さん。遅くなっちゃってごめんなさい! で、でも聞いて、蓮は全然悪くなくって、あたしを助けてくれてっっ』

 

 今思い出したら もうちょっと良い言い訳の仕方はなかったのかなぁ、って思うよ。

 

 友達と遊んで手て遅くなって、門限超えてー って事はした事あって怒られちゃった事もあるんだけど、男のコと一緒に帰ってきたのは初めての事だったから、仕方ないって思うけどさ。

 

 でも、どうしても言いたかった。『蓮は悪くない』ってお母さんに聞いて貰いたかった。

 

 決してあたしを連れまわしたりして、遅くなったんじゃない、って。そんな簡単に信じられないって思うけど、何度も何度も『助けてくれた』って言ってた。

 

 お母さんも呆気に取られてたみたいだけど、多分冷静になれたんだと思う。あたしが思いっきり混乱してるみたいだから、さ。

 

『……はぁ。お説教はまた今度にします。それで貴方は つかさの友達かしら?』

 

 お母さん。蓮の方をじっと見てたよ。

 ここで、なんて返せば良いんだろう? 友達だよ って言えば良いのかな? で、でも…… あたしは今日蓮と結ばれたから ちゃんと伝えたいって思ってたのもあった。

 それでもこんな遅くまで その……彼氏と一緒って言う事を言っちゃったら……、いかがわしいって思われちゃうかもしれない。健全に! って言いたいケド、その……キス、しちゃったし。

 

 そんなあたしの気持ちを、また判ってるって言ってるみたいに、そっと蓮はあたしの頭を撫でてくれた。

 

 

『私は神谷蓮と言います。つかささんとは お付き合いをさせて貰ってます』

 

 

 ……は、はっきり言っちゃったんだ。あたし 凄く顔が赤くなってるって。一瞬でMaxまで行っちゃったって。蓮が初めてあたしの名前を呼んでくれたってのもきっとあったかもしれない、ね。

 

 

 その後も続けて色々と蓮は言ってた。こんな形で本当に申し訳ない~とかさ。

 

 って蓮さぁ……。キミは本当にちゅーがくせー(中学生)なのかっっ!? 留年してるんじゃないのっ!? 2~3コは年上なんじゃないのっ!? って思いっきりツッコミたいな。今ならだけど。 あそこまで丁寧に謝罪の言葉を口にして、お母さんもビックリしてたし。って言うか思いっきり振り切ってたって感じだし! その辺はあたしも一緒だったからよく判ったんだ。

 

 

 それで、あたしと言えば もう只管 『蓮は悪くない!』ばっかり言ってたよ。

 

 うぅ…… もっとしっかりしないと、だよね……。

 

 

 

 最終的に、お母さんも許してくれたよ。遅くなっちゃった事も一緒にさ。 

 それで これからも健全な付き合いをー とか、受験勉強の妨げにならない様にー とか言って。

 まだ、お父さんの事もあるから クリア! って訳じゃないと思うんだけど……。

 

 

 

「こ、これじゃまるで……りょ、両親に紹介して…… け、けっこ…… ~~~っ//」

 

 やっぱりダメっ! 考えれば考えるだけ顔が赤くなっちゃう。

 ちゅーがくせいっ! ちゅーがくっ!! ぜったい早過ぎだろっ!? って自分で自分にツッコミ入れそうだけど……それ以上に嬉しいんだ。

 

 だって…… もう、今は蓮以上の人なんて考えられないもん。 蓮以外となんて、考えられないから!

 

 

 

「うぅ……ダメだっ 今日、寝られそうにない……よ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気が付いたら家についてて、遅くなった事をちゃんと謝って、……それでベッドの上に横たわった。

 

 

 オレは、色々と知ってるし、何度か見たんだ。

 

 

 男女関係での失敗談……じゃないけど、姉の住む世界での例を何度か悪い例を、極端なものからちょっとしたものまで。

 姉自身から聞かされた事だってある。『蓮はそんな風になっちゃだめだよ!! 私をそんな風にしないでよ!』とか何とか言われた事だってあった。……弟に何言ってんだって今でも思うケド。

 

 だからこそ、嫌悪感だってあった。好きになって 結ばれて……なのに なんでそんな事が出来るのか、ってさ。所謂浮気とか、そう言う感じの裏切りだ。男も女もどっちの例もあったよ。一般的じゃなくてちょっと特殊な世界だし 仕方ないのかな、とも思った事もあるけど、それでもそんなの嫌だった。反面教師の様に思ってた。 当分は無いって思ってたけど、もしも オレに好きな人が出来たら ちゃんとしようってずっと思ってた。祖母ちゃん 祖父ちゃんにも色々と鍛えられた? し。

 

「……それでも、考えてたとしても 実際にするのとはやっぱ訳が違った、よな……」

 

 まだ、脚が震えてる気がする。

 帰る時、西野と別れる時までは何とか我慢できた……気がするケド、見えなくなった、見えない場所にまで行った瞬間、どっ! と押し寄せてきたよ。そこから暫く動けなかったくらいだし。

 

「ちゃんと……言えた、よな。ちゃんと、できた……よな?」

 

 誰に確認する訳でもなく自分に言い聞かせる。

 本当にちゃんとできたのか、その答えはきっと……、その、本当の意味で西野と結ばれるその時にはっきりするだろうな。何年後になるか判らんけどさ……。

 

「……オレからは絶対にないかな。別れたいとか、嫌ったり、とかさ。きっとずっと西野だけだ。ずっと西野だけ……」

 

 

 

 

 うん。そう思う。……西野も同じだったら凄く嬉しい。

 

 

 

「あ…… オレ西野の事 つかさって呼んだんだったなぁ。……明日からは、どうしようか」

 

 

 そもそも、まともに西野と話出来るのかな、って心配にもなるな……。顔に出ないって言われるけど…… 内心オレだって 心臓バクバクなんだ。

 

 

 

 

 

「……寝られない、かもな。今日は……」

 




こんな中学生いねーよなぁー……。苦笑

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