平凡は、いちごと共に消ゆ   作:フリードg

18 / 37
報告ですが。
ストック切れました。


17話

 

 

 

「…………」

「おーい、つかさー」

「…………」

「つかさってばー!」

「………………」

 

 誰、なんだろ。

 あたし、昨日から ずっと、ずっと考えてる。

 普通に、普通に考えたら判るよね。あんな風に並んで歩く関係って 普通……。だって 街中に行けば沢山見かけるもん。みんな、みんな あんな感じで並んで歩いてるもん。

 

「つーかーーさっ!」

「わ、わぁっ!? な、なになに??」

 

 突然横から大声出されちゃって凄くびっくりしたよ。

 犯人はユリだね間違いなく。だって席が隣同士だもん。

 

「も、もう。いきなりなにっ!? ビックリするじゃん!」

「何回も呼んでるのに無視するつかさが悪いーっ! もう つかさの事、5回は呼んだんだよ?」

「……えっ? 5回? なんで? 嘘!」

「嘘じゃないもん。ねー皆?」

 

 ユリが回りの友達の方を向いて聞いてる。皆が頷いてた。

 

 あ、あたし 考えすぎててユリのこと無視しちゃったの?

 

「つかさ何だかずっとおかしいよ? 何だかボーっとしてるし、さっきの授業中だって、当てられて、聴いてませんでしたーって、つかさが言うの初めて聞いたし」

「うぅ……」

 

 恥ずかしい所思い出されちゃった……。

 うん。さっきの授業中も全然集中できなくて 授業の内容だって頭に入らなくて 先生にあてられた時本当に頭の中が真っ白になっちゃって……。

 

「まっ つかさは日頃の行いが良いからか、お咎めなしだったのは良かったよね?」

「う、うん……」

「さぁ はくじょーしちゃいなさいよ。つかさ! 最近 すっごくご機嫌だったのに、今日に限っては一気にテンションダウンしてるんだもん。気になるよ」

「えっ わ、わたしそんなだった?」

「バレバレだって。あそこまであからさまだったらさ?」

 

 うぅ…… 何だか恥ずかしいよぉ。ユリとは長い付き合いだからかな……? 

 

「ああ、因みにね? 判ったの私だけじゃないよ? みーんなにバレてるから」

「ええっっ! って もーー 心読まないでよー!」

「あははは。最近つかさってば判りやすすぎだよー」

 

 やっぱり恥ずかしい……。今の私 絶対顔赤くなってるよぉ。

 

「それで、好きな人でも出来たの? つかさ」

「ええっ!? な、なんで??」

「いやいや、判るから。女の子だったらぜーーったいピンと来てるから。昨日までの笑顔もそうだし、ちょくちょく休み時間教室抜け出したりして、バレバレだから。それで、ひょっとしてだけど―――」

 

 うっ……、ユリってば 鋭い所があるから……バレちゃってたのかなぁ? や、やっぱりちょっと恥ずかしいかな。幾らガンガン行く性格っ! って自分で判ってても、こうも指摘されちゃったらやっぱり。

 

「4組の……」

「っ……!」

 

 4組。……うん。ユリ間違ってないよ。……やっぱり凄く鋭い。

 

「大草くんの事、でしょ?? 学校一のハンサムだし、サッカー部でエース。運動神経も抜群だし、美男美女。つかさとはお似合いだって思うよ? でも、大草くんってけっこー周りに女の子多いし……、何だか そんな場面(・・・・・)にでも遭遇しちゃったのかな? 本命がいるって噂は訊かないから 諦めるのは早いよっ つかさ!」

 

 ……うん。早速だけど前言撤回だね。ユリ凄く間違ってる。でも間違ってくれてて嬉しかったかも。

 改めて思うよ。持つべきものは友達だって思う。大草って人の事 話しには聞いた事はあるけど、余り知らないんだよね。でも、嫉妬されるレベルの格好いい男子って言うのは判る。そんな子と噂とかになっちゃってたら 女子だったらきっと――って思うんだけど、ユリにはそんな気配はないし、あたしの事心配してくれてるし、励ましてくれてる。うれしいよ。

 

 ぁ、でも、ユリのタイプは弟君だからかな? 興味とかあまりないのって。

 

「あはは……。全然違う違う。ユリ? だって大草って人とあたし話した事も無いし」

「あれ? そーなの??」

「うん。話しには聞いてるけど……知ってるでしょ? そー言う噂とか、見かけとかだけで判断して、舞い上がって~なんてしないって事」

「そうだよねー。うんうん。そこなんだよねー。つかさってさぁ。と言う事は 何かあったんだよねー? 絶対にさ」

「え、えっと……ユリ?」

 

 あれ? 何だか、ユリの言い方と言うか 雰囲気と言うか、ちょっと変わってない?

 

「うぅーん。結構最近なんだよねー。つかさが変わったかな? って思ったのは。でも クラスでは目立った事起きてないしー。こんなつかさ初めてだしー。大草くんじゃないって事は他の? 4組の子と言えば誰だっけ?」

「……」

 

 判ってきたよ。ユリが何をしようとしてるのか。

 

「しれっと探りを入れないでくれるかなー! 誘導尋問とかしよーとしてるでしょ!」

「あははっ バレたか」

 

 ユリってば! そこまで行ったらあからさま過ぎるよっ!

 

「もうっ!」

「ふふ。でも笑顔には戻ってるね? つかさ」

「え……?」

「さっきまでの顔よりは良いよ? ほら、もう授業始まるからね♪」

「も、もうっ!」

 

 やっぱり……、持つべきものは大切な友達だよ。でも心配をかけちゃったのはほんと申し訳ないかな……。

 

「気が向いたらで良いから。相談ならいつだって乗るからね? つかさ」

「ぁ……。うん、ありがとねユリ」

 

 これは簡単に解消できる悩みじゃないけど本当に嬉しいよ。ありがと――ユリ。

 

 

 本当にありがたかったんだ。とっても。

 

 でもやっぱり心のもやもやは取れたりはしないよ……。

 

「(だれなのかな……? あの時間で、あの後直ぐに会えたって事はこの辺の人……だよね? でも、学校では見た事無いし、会ってたりもしてないって思うし……。あまり話さないって言ってたんだけど、ウソだとはもう思えないし……)」

 

 どうしても考えちゃうんだ。

 蓮の隣で歩いていた女の人の事。腕を組んで歩いてた女のひとの事。

 

 その時、蓮ってどんな顔してたんだろう……?

 

 女の人の横顔は見えた。でも、蓮はずっと前を向いてたから見えなかった。とてもきれいな人で、あんな風に密着されたら、男の子だったら嬉しくない筈ないって思えちゃうし……。

 

「(うぅ……。色恋事に無頓着な朴念仁って訳じゃなさそうだよね……。だって、ほら あ、あの時 あたしが。……蓮につい『惚れちゃった』って言った時、顔凄く赤くなってたし……)」

 

 うぅ……ユリや皆にこれ以上心配かけたくないんだけど……やっぱり考えちゃうよ。蓮の事、だって だって、あたし――本気だから。蓮のこと……。

 

「(……うん! うじうじするのは駄目! あたしらしくない! また蓮に……蓮に会いに行く! 頑張るっ!)よしっ!!」

「お、気合入れたな西野。よし、その勢いでこの問題解いてみろ。三平方定理を使った証明問題だ」

「……っっ!?」

 

 また、あたしベタな事しちゃったよ……。それも苦手な数学の時間に……。

 

 あの後ユリにちょこちょこフォローして貰って、○はもらえなかったけど、部分点。△くらいは貰えた。 

 

 証明問題、特に苦手だから……重点的にしないと、だね?

 

 蓮がどこの高校を狙ってるのか判らないんだけど、絶対同じトコ行きたいから。5教科の中でダントツで数学がダメだから。……蓮の事をしっかり解決した後にでも。

 

 

……うん、頑張らないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ 神谷ー。どうしたんだ? 今朝から生気が抜けた様な顔してんぞ?」

「はぁ…… 大丈夫だって。ただ疲れただけだ……。昨日、いろいろあったから……」

「んだとぉぉ!! 神谷テメェ! つかさちゃんと一緒に帰って疲れた事があったのか、コラァァ!! いったいナニしたんだ!!」

「喧しいし、違うわ!! デケェ声で変な風に言うな!」

 

 確かに、真中が言う様に オレは凄く疲れてる。

 生気が抜けた顔って結構あってると思う。ほんとに色んな意味で昨日は疲れたから。

 

 でも、誓って言うが小宮山の様な事じゃない。西野との下校は楽しかった。疲れる、何てことはない。……ちょっと気を使って、それで心労が と言うのはあるかもしれないが、学校に影響がある様な事は今の所無い。

 

 それに西野との下校の話をデカい声で言われるのは正直頂けないんだ。色々とひそひそ話されるかもしれないから。あんな行列を作ってる西野なんだ。他の男子が黙っちゃいないだろうし。

 

「お前らほんと目立ってるぞ……。特に小宮山だけど」

「遠目から眺めてるなよ……。止めてくれ」

「無理だって、小宮山は西野に振られてから 色んな意味で暴走してるから」

「だれが暴走してるだぁ!!」

「「お前だ!!」」

 

 オレと大草のダブルなツッコミを喰らった小宮山は、またまた何処からか飛んできた金盥を喰らって仰け反ってた。

 

「あ、真中。東城との事はどうなんだ? 色々と確認する~って意気込んでたじゃん」

「ぅ……」

 

 大草が突然真中に話題を振ったら、明らかに挙動不審に陥ってた。 

 でも当然だって思う。

 

「まぁ……確かに幾ら仲良くなったからって、真中の動機をそのまま東城に伝えるのは……なぁ? 神谷」

「まぁ男子なら判らんでもない、って思うケド、言葉に出した時点で完全な変態だし」

「オレもそー思うぞ」

 

 小宮山がここぞとばかりに乗っかってきたけど。

 

「小宮山だけには言われたくねぇよ!! でも、オレゆっくりと行くつもりなんだ。東城とは、話しが合うし 話してるだけで楽しい! だから今は……今は良いんだ。東城は いちごパンツ以上のもんがあるんだよ!」

 

 あぁ……、さっき言った事完全に理解してないみたいだったよ。

 オレ、釘刺すつもりで言ったんだけどなぁ……、『言葉に出した時点で~』って言ったの、自覚を更にさせようとしたんだけど……。

 

「頼むからオレ達を巻き込まないで。教室でデカい声でんな単語はヤメテ」

「変態過ぎだぁぁ! ヤッパお前が一番だ!!」

「っっ!? ち、ちがっ!! ってか、だから小宮山だけには言われたくねぇってなんど言わすんだぁぁぁぁ!!」

 

 あ、真中がなかなか腰の入ったパンチを小宮山に当ててた。いつもなら、小宮山が暴走して パンチ喰らわすシーンが多いんだけど、珍しいな。『真中ぱーんち!』だって……。

 

 

「ま、真中の方針は悪くないって思うよな? 神谷。東城を落とすなら時間をかけて、ゆっくりと外堀を埋めてかないとってオレは思う。ほら、あーゆータイプって男を信用してないってゆーか、恋愛に関してはかなり慎重っぽいよな?」

「……何でオレに訊く? そう言うデータが多いんなら、自分の中で完結できるだろ……?」

「神谷の考えと一致すれば、更に効果が発揮するんだって」

「一体何の効果だよ……」

 

 

 

 

 

 

 まぁ、色々疲れちゃったケド 昨日に比べたら大した事無いか。商店街で誰にも会わなかったのは 本当に幸運だったよ……、ほんと。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。