平凡は、いちごと共に消ゆ   作:フリードg

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最近暑さに比例して 仕事もしんどい……
40度近いってヤバイ。


16話

 

 東城に大して結構強引な西野だったけど、結果としたら その暴走を止めたのはオレでも真中でもなく……。

 

 

『コラァ! お前ら!! 下校の時間はとっくに過ぎてるぞ!』

 

 

 寒い真冬だっていうのに ランニングシャツを常に着続けてる男。

 そうまるで寒さを知らず、季節感と言うものが無く、いつも元気に外を走り回ってる子供の様な男。……まぁ 散々言ってるけどこれでも先生。生活指導の白鳥先生だったよ。

 ここで見られたのが 良かったのか悪かったのか、目を付けられたら 教育と言う名のスパルタランニングを強要されてしまうかもしれないし、それが無かっただけで儲けものだ。

 それに まぁ 東城が西野から解放されたから、良しとしようか。とりあえず。

 

「はぁ…… あの姿を見たら 暑苦しいのか、見てるだけで寒いのか正直判らんな。いつもながら」

「だね。この寒い真冬でも一貫してるあの姿。長袖一着も持ってないって噂も、頷けるなぁ」

「おまけに妥協を許さない性格と来てる。ちょっとルール違反、と言うか帰るの遅かっただけでこれだ。店ん中とか買い食いとか気を付けないとな……」

 

 只今下校中。

 真中と東城とは別れて、丁度西野と2人で下校…… いやしかし、何でこうなったのかな。一緒に下校と言うのは真中や東城がいた4人だったからまだ良かったんだけど、流石に2人きりは……ちょっと。

 

「……西野」

「ん? なーに?」

 

 気を紛らわせようと、話しかけたんは良いんだが、何だか西野は妙に笑顔だった。直視するのが、非常に難しいくらいに。

 

「あぁ、何で東城にあんなに強引に行ったんだ?」

「……なに蓮。今日は何だか東城さんの事ばっかだね。何かあるの?」

 

 あ、何だか むすっ とさせて 頬まで膨らませた。

 ……東城に嫉妬? いやいや 何でオレなんかに。あ、歌かな? 

 西野は歌に惚れたって言ってたし、独り占めしたいって言う独占欲もあったりするのか、多分。

 

「いやいやいや、流石に仕様がないだろ? それにヘルプ視線も貰ってたし、真中は頼りにならなかったし。幾ら強引だって言ったって あそこまで拒否してたら 言いたくもなる」

「……そーだね。蓮って何気に優しいし」

「何気っつーのは余計な気がするケド」

「だってさ。蓮は女子とあんまり話した事無い、だったんでしょ? なのにやっぱ東城さんとはけっこー話してるみたいだしー、やさしーからじゃん」

「その言葉、東城より まんま西野に当てはまると思うんだが……。寧ろ量で言えば東城より圧倒的に西野だぞ?」

 

 それは自分でも納得出来る話だ。 

 東城と西野。

 

 東城に関しては 同じクラスだとは言え、まともに話したのはつい最近。

 西野に関しても同じであって、クラスは違うが それでも話し始めたのは同じく最近の事だ。

 

 タイミングは一緒で、どっちと話したのか? と言われれば西野って言う。 

 

 こんな質問と答えに何の価値がある? って正直思うが……小宮山辺りに訊かれたとしたら、うん。考えたくないな。

 

「っ…… じゃあ、あたしにも もっと優しくしてよっ!」

「なんじゃそりゃ……」

 

 優しくしろ、って言う要求にどう答えたら良いか判らん。

 

「……あたしはね。色々と訊いてたの。東城さんに対する周りの声って言うか、何と言うか……」

「ん?」

 

 西野の要求について考えてたら、話しが変わったよ。

 東城に対する周りの声って、東城ってあまり目立たないから そんなに声なんて上がらないんじゃないか? って言うのがオレの意見だった。

 

「ダサイ、とか ブスな黒縁メガネ、とか…… 他にも色々と聞いた。綺麗事かもだけど人間って中身だって絶対思う。外見だけ男なんてあたし絶対嫌だし」

「…………」

 

 この時漸くオレは理解したよ。

 

 東城に対する悪口。オレは聞いた事無いけど、西野は聞いたらしい。たまたまだったのか、日常的に陰口叩く様なヤツがいるのかは判らないが、仲良くなったって言っていい相手の悪口を言う話だったら、嫌だろう。

 

 つまり……、あの強引な行動の真意は 東城の事を想っての事だったらしい。本人の意向を訊かないのは正直どうかと思うが、それでもその行動の理由を聞いたら思う。

 

「やっぱ、そうだよな」

「ん? 何が??」

「優しいって言葉。……オレなんかより」

 

 オレ、自然と手が伸びたよ。

 話すだけでも緊張するし、顔を見ても赤くなりそうなのに、自然と西野に手が伸びてた。

 

「西野の方がよっぽど優しい」

 

 伸びた手は、西野の頭に置かれてた。 

 ゆっくり頭を撫でる。うん、心地よい感触……。うんうん、自分でやっといてなんだが、異常に身体が熱くなってきた。

 

「はー……………」

 

 西野は暫く何をされてるのか判ってないのか、固まってたけど。直ぐに背伸びする様に頭を出して手を払った。

 

「も、もーーー!! れ、れんっ!? あたしのこと子供扱いしてるだろっ!! あ、頭撫でられて喜ぶ歳じゃないってば!」

「ははは。悪い。ちょっと不躾だったな」

 

 払われたんだけど、良かったかもしれん。オレの熱が伝わらなくて良かった。

 放課後、夕日の下だから更に良かった。顔色なんて判らんから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東城さんの髪とかメガネとか、改善してあげようって思った。

 

 その理由は、東城さんの事を悪く言うのを止めさせようと思ったから。

 

 東城さんの顔、近くて何度か見てみたけど やっぱり綺麗な顔してるから。少しでも弄っちゃえば、絶対綺麗になるって確信してるからね。髪の毛やメガネだけで印象が変わるのなんて、ざらだし。

 

 もし、綺麗になった東城さんが 蓮と――――って思ったら正直嫌な感じがしたんだけど、それ以上に折角仲良くなった東城さんが悪く言われるのだけは嫌だったんだ。

 

 強引だって言われたケド、もうちょっとだったのに、白鳥先生が来たおかげで全部おじゃんになっちゃったよ。

 

 あ、でも どさくさに紛れて蓮と2人で下校出来たのは良かったかな。色々な話題で盛り上がれるし 話しててやっぱり楽しいから。それに、頭を撫でてくれた事。子供扱いされてるっ! って言っちゃったし 恥ずかしかったから払いのけちゃったけど 嬉しかった。蓮は不躾だって言ってたけど、そんな事なかったよ? 本当はさ。

 

 ただ、やっぱり恥ずかしいから。蓮に撫でられるのは気持ちが良いんだけどね……。

 

「あっ、優しくしてって言ったから行動に移したの? な、なら良い心掛けだよ。うん」

「嫌がっといて今更だよ」

 

 嫌がっては無いんだってば!

 

「も、もう! 良い心掛けだって言ったでしょ!? 別に嫌がってなんかないよ……」

 

 うぅ、大きな声で言っちゃって何だか恥ずかしくなっちゃった。

 

「そうか。……ん?」

 

 あ、蓮の携帯電話が鳴ったみたい。

 この着メロは……確かあのアイドルの歌? 蓮ってアイドルとか見るんだ。ちょっと意外だったかも。あ、歌が好きなのかな? それだったら判るかも。洋楽、邦楽どっちも凄く上手だったし。

 

「………」

 

 あれ? 何だか蓮の表情が険しくなっちゃった。あまり良い内容じゃないのかな?

 

「あー、西野。悪いな。用事が出来たみたいだ」

「ん? そっか。じゃあここで、だね。もう家も近いし」

 

 嘘じゃないよ? ……ちょっと正直に言えば家に招待して、とかいろいろと考えてたんだけど……。

 

「じゃあな」

「うん! また明日ねー」

 

 今日は楽しかった。

 途中から、とは言っても蓮と一緒に下校出来たのも良かったし……、ね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 でも、この後だったんだ。

 とっても、……とても衝撃的な光景を目にしたのは、ね。

 

 蓮と別れて、暫く歩いてもうちょっとで家って所で、蓮の姿を見掛けた。

 あれ? この辺りの家なのかな? とか もうちょっと行った所に商店街があるから そこに行ってるのかな? って思ったんだけど……それよりも問題だったのは、蓮1人じゃなかったって事だよ。

 

「……あ、あれ? 誰だろう、となりの人」

 

 凄く気になった。

 だって、蓮の腕を取ってるんだもん。腕を組んでるんだもん。

 

 後ろ姿だったんだけど、間違いなく蓮で、それにとなりの人は、女の子だった。帽子をかぶってて、髪は東城さんより少し長いくらい。黒い髪でとってもサラサラなのは遠目からでもよく判る。それに横顔も見えたけど……すっごく綺麗な人だった。

 メガネもかけてて、帽子も。一瞬だけ変装? って思ったりしたけど そんな事する意味は解らないし、それよりも蓮の腕を組んでる所にだけ、あたしは釘づけになってたんだ。

 

「……だれ? だれ、なの? ねぇ れん……」

 

 自然とあたしはそう呟いてた。

 蓮に直接聞きに行きそうだったんだけど、足 地面に縫い付けられたみたいに動けなかったよ。

 

 

 

 

 

 その日の後、家に帰ってあたしは 何したか覚えてなかった。

 

 ただ、蓮の隣の人、誰なの! って言う事だけしか。


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