平凡は、いちごと共に消ゆ   作:フリードg

16 / 37
15話

 

 

 屋上で鐘の音を聴くのも乙なもんだな、と思ったり思わなかったり。

 

 

 ただ、もうちょっと慌てても良いって思うんだけど、案外皆ケロッとしてたよ。いや 東城だけは慌ててたかな。

 

 

 それは兎も角、当たり前だって言われるかもしれないけど あの後 先生に怒られて大変だった。

 

 

 まぁ 西野のクラスでは運が良かったのか、先生が来るのが遅れたらしく、全くお咎めなしだった様なんだが ちょっとオレの中で何か引っかかってたりするケド。

 

 

 

 

 今はもう放課後。色々あって 直ぐに帰らず ちょっとゆっくりしてた所に真中がまた出てきた。多分、また映画関係の話になってくるんだろうけど、先ずは言いたい。勿論午前中の事だ。

 

 

「はぁー朝はたいへんだったな? 注目されんのは正直嫌なんだがなぁー 真中は慣れてると思うケドさ」

「って 別にオレだって慣れてる訳じゃねぇって……」

「そうか? 小宮山や大草と授業中に、まぁ色々とカミングアウトしてたらしいじゃん。メッチャ目立ってたらしいぞ? お前ら。……オレ保健室行ってて良かったって心底思ってるよ。そこに いたら100%巻き込まれてるパターンだろ」

「っ……」

 

 因みに、前にも少し話してたけど、改めて説明すると それは小宮山が抜き打ちの持ち物検査で引っかかった時の事だ。

 

 原因は グラドルの写真集を集めた写真を張った下敷きだった、らしい。

 

 まぁ その後は、先生に取り上げられて、それに抗議する真中がそれはそれは勇ましかったらしいよ? うん。……裸じゃない水着だーとか、それはオレ達の活力剤だとか、清涼飲料水だとか、色々と言ったらしいわ。

 

 おまけに大草を巻き込む形になって、最終的にグラウンド50周を課せられた真中と小宮山。

 

 此処でもう一度。大切な事だからもう一度言っておこうか。

 

 

『オレ、そこにいなくて良かった!』

 

 

 

 

 

 

 

 因みに東城も残ってた。今日一日ずっと暗いのは絶対今朝の事だろうな。怒られたから気分が悪い、とかではなく 東城はずっと気にしてる。

 

「あの、ごめんなさい……神谷くん」

「いやいや大丈夫だって。それに 大体は真中が悪いって事で片が付くし」

「何で大体がオレなんだよ! ってか、オレで片付けるなよ!」

 

 因みにこれは最初じゃないから。2,3回目くらいだよ。何度も良いって言ったんだけど、気にしてるみたいだったから、ここは真中に活躍してもらおうと思った。

 

 勿論 オレは真中が全部悪いとは思ってないよ? だって あの時屋上に先に行ってたのはオレだし、その後西野が来て、あの場で歌う事を決めたのも最終的にオレだし。歌をうたってたら 2人が来て……

 ん? つまり、オレが一番悪い……? って少なからず思ったケド。それは全力で否定したよ。オレの中で。

 

 

 真中は兎も角、東城ははっきり言って優等生だ。

 授業態度等の内申点も申し分ないし、今までもこんな事無かったと思う。それにずっと気にしてしまう程優しい性格だったのはよく判った。

 

 そんな東城も遅刻したのは同じだから一緒に先生に説教されたんだけど、……される切っ掛けは東城も一枚噛んでるんだけど、何だかいたたまれないんだよ。

 

 と言う訳で 真中に活躍ならぬ、全部かぶってもらおうと言う事だ。性格悪いかもしれんが 今までも真中に付き合わされた事とかを考えたら、絶対釣りがくるって思う。

 

「ふふふっ……」

 

 それに、こうやって東城が笑顔に戻れたんなら良いだろう。辛そうな顔をさせるくらいなら何も問題なしだって真中も思ってる様で ただただ笑ってたよ。

 

「まぁ、真中の事はとりあえず置いといたとしても、正直……西野だけがお咎めなしっつーのがちょっとばかり納得しかねるだよなぁ……」

「あ、あははは。それは西野さんは運が良かったんだ、って思うよ。2組の先生。授業準備で遅れたって言ってたみたいだし」

「それは、オレも聞いたが…… 一番最初にアイツがサボろう! とか言いかけてたんだしなぁ……」

 

 うん。西野は間違いなくあの時『サボっちゃおう!』とか言いかけた。オレが途中で割って入ったから最後まで言えてないけど、今回の主犯だって言っても良いくらいだ。

 

 でもまぁ、仮に教師側にオレがいたとして、西野が申し訳なさそうに謝ったりでもすれば……。うん。無条件で許しそうな気がするけど、それは それ、これは これ、という事で。

 

「(……西野さんは、きっと神谷くんともっともっと一緒にいたかったんだって思うよ)」

「ん? 何か言った?」

「んーん。何でもないよ」

 

 何言ったのか判らないけど、さっきまでの顔よりは良いだろう。笑顔が良い。

 

 

 

 

 なんか、西野と出会ってオレ色々と変わってきてる気がする。

 

 真中とか小宮山、大草はまだ男同士だし 話す事は多いかもだが、基本的に女子と話す事は殆どないって言っていいし、……こんな風に考える事も無かったんだけどな。笑顔が良い、とか。考えるだけで恥ずかしくなりそうだし。

 

 

「おーい、2人とも。そろそろ帰らないか? 東城! 後小説の続きもよろしくな!」

「あ、う うん。でも 真中くんちょっと、その……」

「声デカいって。まだ帰ってない人だっているかもしれないのに。小説の事あんま知られたくないんだろ? 東城は。……あぁ、オレの事も心配になってきたよ。ヤバイ奴にバレたな……」

「わ、悪かったって!!」

 

 真中は声がでかいし、色々な意味で一直線だから。

 歌の件も、妄りに言わない様にと約束させたけど、この分じゃいつバレる事やら。

 

「……あのー、キミたちはまだ帰らないのかなぁ~?」

 

 そんでもって、こんな感じでいつの間にか現れるのは西野だ。もう定着するんじゃないか? って思う。真中の映画で言えば西野の登場のシーンが。

 

「あっ、西野さん」

「やっほー、東城さん!」

「もう良い時間だし、オレらも帰るか?」

「……そうだな」

 

 

 と言う訳でオレ達は帰り支度。

 

 ん? 何だか西野とも一緒に帰る様になったらしい。流れに身を任せたと言うか何と言うか。4人いるから別に問題ないと思うんだが……。

 

「流石に放課後は賑やかじゃないみたいだなー」

「もーー! だから、勝手についてくるんだってば! しみじみと言うなよっ!」

 

 西野に取り巻いてる人数はねずみ講? って言いたいくらい倍々に増えてるのを見たから、しみじみそう言っても良いって思う。……うん。それだけだと思う。きっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ(きっと、神谷くんは ヤキモチ妬いてるんだね……?)」

「ん? どうしたんだ? 東城」

「いいや。何でもないよ、真中くん」

 

 

 うん。神谷くんと西野さんの2人を見てて、私は思った。

 

 次に書くとしたら、小説の登場人物は2人をモデルにしたいって。真中くんにも凄く褒めてもらえたし 少しだけ自信をもって書けると思う。

 

 

 男の子の方は、なかなか女の子のアピールに気付いてくれない。女の子は必死に気を引こうとしてるんだけど……、やっぱり気付いてくれない。そうなっちゃったら、ちょっとありふれた恋愛物語になっちゃうから、そこにファンタジーの要素も少しずつ入れて。

 

 ん。男の子の歌には 神秘の力が宿ってて……、諸外国のトップがそれを狙ってる。でも、男の子は 女の子の前でしか歌ったりしないんだ。

 

 その歌の力が本当に覚醒するのは、本当の力が宿る為には 心から想ってる相手がいないといけないんだよ。そう、男の子にとって唯一無二の女の子じゃないとダメなんだ。

 その想いが愛だと知るのは ずっと先の事で―――。

 

「って、東城!? 前、前!」

「きゃんっ!」

 

 あ、あたたた……、考えすぎてて電柱に当たっちゃった……。メガネかけてないって訳でもないのに。

 

「大丈夫か? 結構な音鳴ったぞ」

「わっ、東城さん! 女の子なんだから 顔に傷でもついちゃ大変だよ」

 

 西野さんが、私にハンカチを貸してくれた。

 うん。西野さんはすごく優しい。

 容姿だけじゃない。男子にも女子にも圧倒的な人気がある理由が本当によく判るよ。

 

「あ、ありがとー。 あ、ちゃんと洗って返すから」

「んーん。だいじょーぶだって。ぜんぜん汚れてないし」

 

 こんな地味な私にも分け隔てなく話してくれる事が、嬉しかったんだ。

 

「んー……」

「ん? どうしたの西野さん。あたしの顔になにか………」

 

 何だか西野さんが私の顔をじっと見てる。……お、女の子でも何だか照れちゃうよ? 西野さんみたいな綺麗な人に見られちゃったら。

 

「やっぱり東城さんって すっごくキレイな顔してるね? 何だかその髪型とメガネで絶対損してるって思うよ?」

「え……っ」

「ねぇ 皆もそう思わない?」

 

 西野さん、真中くんや神谷くんの方を向いたけど、私凄く恥ずかしかったりするよ。……だって き、綺麗って 西野さんが言ってくれたから……。

 

「え? あ、まぁ……うん。か、かもな?(これは、神谷の言ってる事を確認する絶好のチャンス?)」

「……かもな」

 

 あ、神谷くんは流してくれた。

 よく考えたら神谷くんは知ってるんだよね。丁度 屋上で会った時……そうだったから。

 

「でしょ? 蓮も真中くんもそう思うでしょ? ……うーん、あたし 東城さんがメガネ取ったとこ、見たいな! ねぇ 見せて! 見せてよ東城さんっ!」

「きゃ、きゃあっっ」

 

 わわわっ! に、西野さんってこんなに強引な人だったのっ?

 

「おいおい……嫌がってるなら無理強いするもんじゃないだろ?」

「だって、あたし色々訊い……っ じゃなくて 東城さんって凄くキレイだって思うから 見てみたいもんっ」

 

 西野さん…… 色々って 何だろう。で、でも 今は。

 

「だ、だめっ! あたし本当にメガネとっても変わんないし、だ、だから……」

 

 何とか諦めて貰おうと思ったけど、中々止まってくれないよぉ…。

 

「そんなことないって! 絶対にかわいいってば。ね? ちょっとだけ、ちょっとだけっ」

「ちょっとは落ち着けって西野」

「あうっ!」

 

 あ、神谷くんが止めてくれた(軽いゲンコツで)

 

「さっきも言ったけど、無理強いはやっぱ良くないって。ってか、オレん時もそうだが、知り合って間もないのに 結構アグレッシブだよな、西野って。……色んな意味で」

「むー! 授業の内容が飛んじゃったら蓮のせいだから! って、色んな意味ってどー言う事だよっ! 引っかかるぞ!」

 

 神谷くんには、本当に何度お礼を言ったり 謝ったりしても足りないよ……。

 

 でも、西野さんや神谷くんは気付いてないのかな? 神谷くんの事名前で呼んでる事。確か前は、神谷くんがそれとなく止めてた様な気がしたんだけど……。

 

「ねぇ、真中くんも思うでしょ? 東城さんの顔見てみたいよね? 絶対かわいいよね?」

「あ……う、うん。オレもメガネ取ったらイメージは変わるとは思うけど……」

「(あぁ、真中にオレ 言っちゃってるからか。んで、東城の反応を見て そこまで強く賛成できない、と)……難儀だな。お互いに」 

 

 な、なんだか 西野さん真中くんに協力してもらおうとしてるのかな??

 

 

 

 お願いします神谷くんっ! なんとかしてくださいっ!

 




西野の暴走? を止めれるのは……… 誰?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。