平凡は、いちごと共に消ゆ   作:フリードg

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10話

 

 

 とりあえず、さっき西野が言ってた『また後で』ってセリフなんだけど、西野は正確に『何時に~』 と言ってないからなぁ。

 

 

 ボクとしては何時アナタに会えば良いのか判らないのですよ、はい。

 

 

 だから、休み時間も用事が出来たって不思議じゃないし~下校時間になったって、大切な友達の方を優先させたって別に不思議じゃない、よな?

 オレは悪くないよねー? オレは悪くねーって叫んでも良いかもだよね? 

 

 うん。絶対しないけど。

 

 

 

「さ、帰ろうぜ! オレは謎が解けた! ぜーーーったいそうだ! 間違いない!!」

 

 真中はと言うと、何でか最初からテンションMaxだった。固化現象解除された途端にこのテンション。

 

 あ、実は西野じゃないって事、ちゃんと真中に教えてあげたかったんだけど……。

 西野の言葉。云わば何か得体のしれないプレッシャー? をずっと感じてしまってて そんな余裕皆無だったんだよ。

 

 まぁ、学校から離れたら余裕が出来るって思うし、大丈夫だろうな。うんうん。

 

「どうしたんだ? 神谷。何だか表情がコロコロ変わってて変だぞ?」

「……そう? 別に何でもないケド」

「何でもないって顔じゃない、って思うケドな……。ま、無理には聴かないよ」

 

 大草は、何やら察してたみたいだけど、はっきりとは絶対に判らないだろう。西野と面識を持った事を知るヤツはいないから。ずーっとくたばってる小宮山辺りに知られたら ちょっと厄介だ。

 

 

 でもま、得体のしれないプレッシャーをずーーっと感じるよりははるかに良いので、とりあえず帰宅準備準備。

 

 

「おーい! 神谷ー、神谷ー! ちょっと待ってくれー」

「え?」

 

 

 

 帰ろうとしてたら、担任の先生に呼ばれた。

 

 

 行って聞いてみたら、明日の日直の件だったよ。ちょっと忘れてたんだけど、明日はオレが当番で、HRが終わった後に教材運ぶの手伝ってくれ、と言う事。勿論、先生の頼みを『嫌です』なんて言える訳も言う訳も無く、了承する。だって、日直当番の仕事、皆の仕事だし。受けるのが当然だし。

 

 

「HRの後、と。うん、ちゃんと覚えとかないとな」

 

 

 生徒手帳にせっせと記入して、さっさと帰ろうとしたその時だったよ。

 

 

 

「はーい。こっちの約束もちゃーーんと覚えてるよね? そうやって忘れないよーにしてるよね?」

 

 ぽんぽんっ、と二度程肩を叩かれた。

 声からして、誰だか判ったよ。しれーっと逃げようものならきっと、持ち前の読心術で見抜かれて『蓮ーー! 逃げないでよー、蓮~~!!』って言うだろうな。そう、西野の性格ならな。うん間違いなく。

 

 だけど、何となく嫌な気配がするから、振り向く動きも固いよ自分。

 

「よし! 今逃げようとしなかったな。エライぞ!」

「ま、逃げたら 西野サンに酷い目に合わされるし」

「ちょっとっ! 人を悪女みたいな言い方しないでよ!」

 

 ぷくっ と頬を膨らませる西野。

 うん、後ろには誰もいないな。さっきみたいな大行列は。

 

「それにしても、何処の大名様ですか西野は。教室移動する毎についてきてるんじゃないか? 皆。まるで参勤交代だな」

「もーーっ! それも茶化さないでよ! アレは頼んでも無いのに、ついてくるんだから仕方ないだろっ!」

 

 腕を腰に当てて仁王立ちしてる西野。……これ以上言うと ちょっと被害が大きくなりそうだから、直ぐに本題に。

 

「それで 用って何だ? 西野。……まぁ あの時に大きな声で言わないでくれたのは感謝しとく」

「ふふっ、蓮って目立つの嫌う恥ずかしがり屋さんみたいだからねー」

「……そう言う西野は、直ぐに忘れちゃうから 忘れん坊ってヤツか? 坊じゃないか。忘れん嬢? いや、坊って確か女子にも使えた様な」

「何だよ! 忘れん嬢って! それに別に間違ってないぞ。今2人じゃん。学校とは言っても2人の時は~って言っただろ?」

 

 そう言えばそうだ。

 揚げ足取られてしまったよ……。

 

「わかったわかった。それで用事って? 何だったんだ?」

「……うん。えっとねぇ、蓮ってうそつきだな~って思ったから、その事のお説教を、だよ」

「……はい?」

 

 西野さんが言ってる意味、いまいち判らない。いまいち~どころじゃないよ、全然わかんないよ。いつだれが嘘をついたと言うのだろうか?

 

「ついたよっ! 蓮、あの時『家族以外の異性と交流殆どないっ』って言ってたじゃんっ!」

「……若干ニュアンス違うと思うけど、まぁ そうだな。似た様な事 言ったよ」

「それが嘘だったじゃんっ!」

「???」

 

 いやほんと、何言ってんの? って素で思った。

 

「『何言ってんの?』みたいな顔しないでよ! ……だって、あたし見たもん! 休み時間に、……その、女の子と楽しそうに話してただろ!」

「んん? 休み時間? 女の子……?? あー」

 

 西野が言ってる意味、漸く理解出来た。

 そう言えば、真中達のおかげで頭ん中から速攻で抜けちゃったけど あの時 妙な視線を感じてた。アレ、西野だったんだ。……そう言えば直ぐ後に西野着たな、確か。

 

「思い出したかっ!?」

「ああ。うん。……楽しそうかどうかは判らんが。でもそりゃ話すだろ。真中ってヤツと一緒に重そうな荷物持ってあげて、その礼を、だったんだ。……幾らなんでも そんな状態でオレが無視するなんてするわけないだろ? そりゃ、あんまり無いって言ったけど オレから話す事があんま無い、って事で」

 

 確かに、つまらない会話とは言わないよ。東城と話す時もオレ自身は楽しかったし。それを他人が楽しそうな会話、ととらえるかどうかは判んないけど。……あ、西野が捉えてるから見えたのかも。

 

「ふーん……。そー言う風には見えなかったけどなぁ~。何だか笑顔だったし~ あの子 何度も何度も頭さげてたしー。物持ってあげただけで、あそこまで頭下げるかなぁ?」

「んー……。ああ、礼はそれだけじゃなくってだな」

「わ! 隠し事してるの!?」

「何でだ……。言う程の事じゃないって思ってたと言うか、あんまり言いふらすのもどうかと思っただけだよ」

「あ……、それは確かに。あの子も聞かれたら嫌かもだし」

 

 西野は頭冷えたのかな? って思えるくらい 声色が変わったよ。トーンも。

 

「だろ? ってか 何でそれ位で怒るんだよ……。オレにはそっちの方が不思議だ」

「べ、別に怒ってなんかないよ!」

「そうか? 正直 屋上での一件より怒ってる様に見えたけど……」

「おくじょうの……って もうっ! 忘れてよ! あぁ、そうだった。あの男子たちの友達なんだよね? 全く君たちは!! えっちは駄目だぞ」

 

 あ、また元に戻っちゃった。……これはオレのせいか。

 でも、怒らす事になると思うけど、言いたかった事があるから ぼそっ と。

 

「自分で柄をバラした癖に……」

「なんか言った!?」

「いーや。別に。ただ、西野が2日も同じのはいてる何てちょっと想像が、って思っただけで……って」

 

 あ、……これはマズイ。

 思わず、思った事そのまま言っちゃった……。確かにあの時間違いなく思った。真中にパンツの柄を告白した時に。

 

「ちょーーっ! そんな同じな訳ないだろーー!! な、何考えてんだよ! ばかっ!! えっち!!」

「あ、いや その……」

「あたしは、その……いちごのが好きなのっ! だから、好きだから同じの、持ってるからなのっ!!」

「わ、悪かった。今のはほんとに。……確かに、考えたらその可能性の方が高いし、わざわざ確認する様な事でもないし……」

 

 口は禍の門だってことわざ……、今更だけど身に染みたよ。うん。

 

「判ったら良いよ! もう 蓮は考えすぎだぞ! えっちな事ばっかり!」

「うーん……、そう言うつもりで考えてた訳でもないんだけど……、ふとした疑問と言うか、何と言うか……」

「それも何だかあたしに失礼じゃん!」

「んじゃ どーすりゃいいんだよ!」

 

 互いにツッコミが冴えるね。

 それにしても良かった。……この場にいるのが西野と2人だけで。他に男子生徒やらがいたら一体どうなってた事やら……。女子生徒だったとしても、色々な噂を立てられる事間違いないだろうし。

 今は下校時間で 先生に会ってた時間を入れたら更に時間が経ってる。

 

「うぅー、なんだか 蓮に色々とヤられてばっかりだ」

「変な言い方しないでくれって」

「でも言ったのは事実だもんね!」

「わ、わかったわかった。ほんと、悪かったって。――うぅん、オレは西野に謝ってばっかだ。……それに 冤罪が多い気もするし」

 

 そう思ったって無理ないだろ? ぱんつ見た事だって偶然と言うか西野の自業自得。

 東城と話してた事だって、別に嘘ついたつもりはない。そんなの人の捉え方で変わってくるし。

 

 つまり失言だけだ。オレに非があるとすれば。……口にチャックだ。色々と。

 

「よーし。ならお詫びしてもらおうかなー」

「うん?」

「良いでしょ? 無茶な事言うつもりないよ。でも、チャラにしたげるから」

「……へいへい。西野サンの仰せのままに~」

 

 何だか色々と理不尽気味なんだけど、……いや 正直に言おう。

 

 

 

 

 

 西野と話すの、すごく楽しいんだ。

 

 

 

 

 

 怒らす事が楽しい、って性格悪い様な事は言わないつもりだけど……、やっぱり色々と表情いっぱいに出して反応する西野を見たら楽しい。可愛らしいし、気さくな西野の性格も相余って更に楽しさに拍車をかけてるって感じかな? 

 流石に何度もそう言う事を本人に言うのは恥ずかしいから言えないけど。

 

 

「うむうむ。苦しゅうないぞ蓮クン? えっと それでお詫びなんだけどねぇ~」

 

 

 コツっコツっ、と芝居が掛かった歩き方で、西野はオレに近づいてきたよ。

 

 それに中々止まらなかった。

 

 えっ、ええっ!? って思う間もなく、滅茶苦茶近くに来たよ。

 

 互いの前髪が触れるか? って思える程至近距離だった。うん。近いね。

 

 

 

 ……って、いやいやいやいやいや!

 

 

 

「ち、近いって! それぜったい近いってっ!」

 

 ちょっと間違ったら……唇さえも合わさいかねない程の距離だよ。ドラマとかでしかないんじゃない?

 

 オレだって男子なんだから恥ずかしいんだって!

 

 

 

 だけど、これに匹敵するかもしれない様なお詫びの内容を西野から依頼されちゃったよ。

 

 

 

「蓮の歌、また聴きたいなっ? あたしに聴かせて欲しい!」

 

 

 うん。すっごい笑顔だよ。

 綺麗で可愛くて、輝いてるって言えるよ?

 

 

 でもちょっとね………。

 

 

 歌はちょっとした諸事情。私事だけど……色々ときついお願いなんだ。

 

 

「う、ん……。それ以外は駄目か?」

 

 

 だから、内容の変更! その要望を出したよ。思いっきり。

 

 

 

 

 だけど――― 次に帰ってきたのが、本日一番。或いはこの学校に転校してきてから含めて、一番のモノだったんだ。さっきの超接近や、歌のお願いとかよりもずーっと凄いモノが。

 

 

  

 

 

「えー、なんで? あたし蓮に惚れちゃったから! お願いっ」

 

 

 

「………………………」

 

 

 

 

 

 だって、オレ頭ん中完全にフリーズしちゃったから。

 何にも考えられなくなって……『○・ワールド』発動されちゃったから。

 

 

 

 イッタイ、何テ言ッタノカナ?

 

 


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