お暇なら覗いてあげてください。
オリキャラも出ます。
「ねぇねぇ知ってる?」
「えー なになに?」
「ほら、放課後の屋上の話――」
「あっ、それ訊いた事ある! 何か夕方ごろになると……出るんだってねー?」
「え? 私は別の話を訊いたよ? んー っとすっごく綺麗な歌声が聞こえてくる~ とか?」
「歌って、それ断然ゆーれいじゃん! 出た~~! と一緒じゃん!」
「でも綺麗な歌声らしいよ?」
「綺麗だから何だか怖いじゃん! ……引き込まれたら逃げられなくなるよ~~??」
それは何気ない いつもの女の子同士の会話だ。
女子中学生はこの手の噂などでは大いに盛り上がる事が出来る。……けど、生憎実際に確かめに行くまでは出来ないんだ、それが私は以前から少しばかり気になっていた。
その噂は最近聞き始めたばかりだし、ありきたりな学校の階段ものじゃないのだから。怖いのは得意! と言う訳じゃないんだけど、何故だか、今日は特にこの話には興味があったみたい。
「ふ~ん……」
何だか今日は特に気になってしまうから、今の今まで別の話、関係ない話をしていたんだけど、いきなりで悪いけど話を変えてみた。親友と一緒なら、怖いのも全然へっちゃらだから。
「ね? 行ってみない? 今日の放課後!」
「ええっ!? 放課後って……お、屋上?」
「そーだよ? さっき、皆で話してたヤツ」
「え、えっとぉ…… きょ、今日はちょっと……用事があって、ね?」
ついさっきまで一緒にカラオケ行かない? と話してたばかりなのに、もうちょっと上手い言い訳は無いのかな? と思わず笑ってしまったよ。
「えー 付き合い悪いなぁ。別に怖くなんてないってば」
「こ、怖がってる訳じゃ……」
「あははっ ユリってば動揺しすぎだよ。ま いっか。何となく言ってみただけだし」
「で、でしょー? あそこって基本立ち入り禁止なんだから! バカな事言わないで今日も大いにカラオケで盛り上がろーよ! つかさもっ!」
私の背中をぐいぐいと押しながら行くよう催促する親友のユリ。
あぁ…… 思い出したんだけど ユリは怖いの滅茶苦茶苦手だった。
前に、『彼氏が出来た時の為の映画デートに付き合って!』と、彼氏を作ってからやりなよ! とツッコミながらも、面白そうだし、一緒に遊ぶ様なものだから、とついて言った映画の内容が……ガチのホラー系だった。
なんでも、怖かったら隣りに座ってる彼氏の手をぎゅっ と握りたいとか、終わった後 怖いから家まで一緒に~ 等等のシチュエーションが出来るかららしいんだ。
だけどーー、結果は散々なものだったよ。
ホラー映画。まだ前半部分だと言うのに、何だか雲行きが怪しくなった。本当の本気で怯えていた。特に最後のシーン。テレビの中から白い服を着た髪の長い女のひとが出てきた時、両手で耳を塞いで、目を思いっきり閉じて 凄く震えていた。
正直、私も怖かったんだけど、ユリの方が心配だったから 映画の内容全く頭の中に入ってこなかったよ。……ユリ曰く、それは幸福だったって事らしいけど…… 映画代は痛いよ?
「あれ? ユリ。携帯光ってるよ?」
「あっ ほんとだ。ありがとーつかさ」
ふと、見てみると ユリの鞄から見えるユリの携帯が点滅している事に気付いて教えてあげた。落としたりしたら散らばっちゃうし、何より変なヤツに盗まれたりする可能性だってあるから、鞄はちゃんとファスナーまで締めましょう! って言い聞かせたばかりなんだけどなぁー。
「わーー、つかさっごめんっっ! 今日、弟の誕生日だったんだ!! は、早く帰らないと……っっ!」
「え? サト君の誕生日って今日だったんだ?」
「うん――。ねーちゃん遅いっ! ってぷんぷんだって……」
「あははっ、相変わらずのお姉ちゃんっ子だよねぇ~ 何だかそう言うのも可愛いなぁ。羨ましいかも」
「駄目駄目。幾らつかさでも、サト君は上げないよー!」
「取らないってば。ほんっと弟君の事大好きだよね?」
「そりゃ当然。私の理想の男性に育て上げちゃりますので!」
危ない方向にいかないでね? と脳裏に思い浮かんだが……口に出さないで上げたのはやさしさなのかな?
それは兎も角、ユリの家と私の家は正反対で いつも用事が無かったら皆と一緒に遊んだり、話したりするんだけど 今日は皆用事があるっぽいんだ。
「じゃあまた明日ねー つかさー!」
「うんっ! また明日―!」
ユリも帰っちゃったから 久しぶりの1人の下校になるなぁと思ってたんだけど……、やっぱり何だか気になるから、私は踵を翻して学校の方へと戻る事にした。
「ん? おい西野。もう下校の時間だぞ?」
「あー、すみません。沖先生。ちょっと教室に忘れ物しちゃって……」
「ああ、そう言う事ならまだ鍵は閉めないでおく。……だが、6時までには帰れよ?」
「はーい」
途中で先生とも出会ったけど 何とかうまい言い訳をして回避!
そう、これくらい自然に出てこないとダメなんだゾ? ユリ君っ! ……嘘つきが好きって訳じゃないけどね。
それは兎も角 さっさと屋上へと続く階段を上って、ちょっぴり疲れちゃったけど、勢いよく扉も開いた。扉を開いた先の景色に、私は眼を奪われた。
「わぁ……すっごい。夕日、綺麗……」
ちょっぴり冒険してるって気分だったんだけど、大きな夕日を見たら 何だか全部吹っ飛んじゃったよ。その代わり別な事が頭の中に浮かんできちゃった。
『あぁ~ ロマンチックな出会いをしてみたいなぁー。ほら、彼氏と夜景の見えるレストランとかっ! オーロラとか!』
何だか 判らないけど この時、ユリの言っていたことが頭の中に過っちゃってたよ。
確かにとても綺麗だし、好きな人と一緒に綺麗な景色を見るのって素敵だとは思うよ? でも、オーロラってなんだヨ! って 今でもはっきり言えるよ!
「っとと、目的忘れてた忘れてた。ええっと、出るとか出ないとかー……。う~ん」
今はほんと夕日、とても綺麗! それ以外の感想はないんだよ……。
それっぽい声も無いし、風の靡く音と間違えたのかな? とかも思ってたりしたけど、どうしても それっぽく聞こえない。
まぁ、噂なんてそんなものだし。
「あーあ。ユリも呼べばよかったかな? 私が彼氏になってあげて~、一緒にこの景色みてーーっ ……って、私は女の子と付き合うつもりないってば! 彼氏役彼氏役」
自分で自分の事をツッコむなんて、ちょ~っとむなしかったりするけど仕方ないよね。いつものメンバーは誰も今日はいないんだから。私の事をビシッ! とツッコめるのは私だけなんだから!
「はぁ~ もう帰るかな。流石に夜の学校は……絶対無理だし。そもそもそんな事したら怒られるから、違う意味で怖いし……」
と言う訳で今日はお開き! と思って帰ろとした時だったんだ。
『――――――――っ』
屋上に靡く夕方の風にのって――何かが聞こえてきたのは。
オリキャラ
・ユリ&サト君