密疎の狩人とシュレーディンガーの吸血鬼   作:(´鋼`)

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№1~2 前触れ

 戦闘訓練の日の夜。明密とアーカードは吸血鬼狩りに出ていた。最近は落ち着いてきており何事も無さそうに思えたのだが、帰り道で政府の人間が明密の携帯を鳴らしたのだ。電話に出て話を聞くと、遠視個性持ちの者が不思議な群衆を発見。細部まで細かく見ていくと異常なまでの鋭い歯と白い肌が確認できたため明密とアーカードの出番である。

 

 午前1時半。目的の場所に到着すると、まだ群衆は居た。しかし数は15体も居る。明密が今まで戦ってきた個体数が精々3体程なので、それの5倍は居る。

 

 ガントレットを装着した状態で、ホルスターからベレッタ二丁を取りだす。密度操作でガントレットの手の部分だけ厚さを減らしているため拳銃のトリガーは引ける。

 

 そして戦闘が始まる。脚の筋肉をバネの様な状態にさせ接近していく。接近している途中で素早く計14発の弾丸を3体の吸血鬼に当て、殺す。

 

 吸血鬼の群れに明密は入り込んでしまうが、霧状になり吸血鬼を【殺意】で撹乱させる。その隙にアーカードが拳銃での殺害をしていく。明密は手と拳銃だけ密度操作で形成し、吸血鬼の脳天を狙っていく。

 

 ガントレットを形成し、吸血鬼の心臓を貫き、また次の吸血鬼へと移り、心臓を貫く。こうした行為が9回行われた後、明密は装備諸とも密度操作で形を形成する。アーカードは明密に対し拍手をかけていた。

 

 

「中々良い戦闘スタイルだったな、アケミツ。先程の霧状に変化し相手を撹乱させ、使用する武器や体の一部を形成し確実に仕留めていく……実に見事だ」

 

 

 しかしながら明密は疲労が蓄積されていた。

 

 本来生物とは形を持ち生命活動をしているという定義に入る。ならば明密の“あのスタイル”は生物の定義そのものを無視しているのだ。霧状になった自分の体や武器の操作が要因となって疲労していたのだ。これには肩で息をする明密。これはデパートの時に居た敵《ヴィラン》にも使用したが、その時も同じ状態になっていた。

 

 明密は重い足取りでアーカードの元へと辿り着き、アーカードに触れる。それを確認したあと、アーカードと明密は“元から居なかった”かの様に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし疲労をするか……やはりまだまだ青いな」

 

「大分疲れも取れましたけどね」

 

 

 ベッドに入り上半身だけ起こしている明密と、ベッドの横で椅子に座っているアーカード。絵面的に見れば父と子の様にも見えなくはない。

 

 しかしそんな事を2人は考えている訳ではなく、今回の吸血鬼狩りでの疑問をお互い投げ掛ける。

 

 

「「何故、吸血鬼が“多く”居たのか?」」

 

「やはり気になるか、アケミツ」

 

「えぇ。今回のは数が多かった。前は多くて3体ほどだったのに」

 

 

 まるで“今回だけ”の特別な儀式または予定が組み込まれた様に異常であったのだ、今回の狩りは。そしてアーカードはとある出来事、50年前の……105年前の事を思い出していた。

 

 

「人体実験……」

 

「?アーカードさん、何がですか?」

 

「何、昔の事だ。どうにも吸血鬼狩りとなると、あれを思い出してしまう」

 

「あれ………とは?」

 

「……ちょうど良い機会か。では話そうか」

 

 

 アーカードは話始める。105年前に狂ったナチスドイツの少佐が、ある実験を始めたという。

 

 その実験というのが『吸血鬼を人工的に作り出す実験』であった。人工的に作り出す事が出来るのか明密は尋ねたところ、アーカードは続けざまに50年前に成功している事を話した。これには明密にとって衝撃的な事実となる。

 

 しかし105年前に一度潰し、そして50年前に完全に消滅させたとアーカードは言った。その出来事の代償かの様にシュレーディンガーという毒が入ってしまった事もおちゃらけて話す。

 

 明密は考えた。そしてアーカードも自分の発言での事を考えた。ある意味恐ろしく、ある意味悲惨な1つの仮説を。

 

 

「「人工吸血鬼………」」

 

「もし先程のも。そして今まで戦ってきたのもそうだとすると、アイツらはどうやって人間から吸血鬼になったのか?」

 

「50年前は特殊な機械を着けていたが……よく思い出せばそれすら無かった。だが今回の狩りで分かった事は1つ」

 

「烏合の衆。統率すら取れていなかった」

 

「完全に捨て駒。事実、実験という仮説を立てれば……あれは実験体という事になる。吸血鬼ならば支配するのがセオリーだ」

 

「しかし誰かが支配している状態じゃなかった。各々が恐怖に刈られてて指示を出さない所を見ると……」

 

 

 アーカードと明密は最終的な仮説へ辿り着く。確信は未だ無いが、それでもそう考えざるを得ない仮説へと導かれた。

 

 

「データ収集……『新たな何かを生み出す』ためのデータ」

 

「その何かは分からず仕舞いだが、恐らく仮説は合っている筈だ。さて、そろそろ寝ろ。お前は明日も学校だろ」

 

「そうですね、御休みなさい」

 

「あぁ」

 

 

 明密はベッドで横になり、アーカードは椅子から立ち上がり持ってきてた棺桶に入って寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とあるバーにて。そこで全身に掌の様な飾りを着けた男と、黒い“もや”の様な男。そして……発狂しているかの様に躍っている眼鏡を掛けた痩せ形の男。

 

 

「煩いぞプロフェッサー。酒が不味くなる」

 

「そんなもの知るか!否!知ったところで何になる!?」

 

「死柄木、プロフェッサーが高揚……いえ、発狂気味になるのも理解できる。何せ漸く完成した『対オールマイト兵器』に、そして『対吸血鬼狩り兵器』へと漸く完成したのですから」

 

 

 このプロフェッサーと呼ばれた男。分かるように頭が狂っている。静かな場所だろうが人目に着く場所だろうが、自身の研究が成功すれば何時でも何処でも大はしゃぎ。あまりにもはしゃぎ過ぎるが故に周囲のものにまで被害が及ぶ。

 

 

「黒霧……幾ら“あの方”からの命令を為し遂げたとしても、あれじゃあ俺らが被害受けるって」

 

「まぁ……それはそうですね。グランドプロフェッツァル」

 

「何だね黒霧君?君の復讐の事は聞き飽きたんだがね?」

 

 

 

 その発狂している男。黒霧と呼ばれた黒い“もや”の者からはグランドプロフェッツァルと、死柄木と呼ばれた男からはプロフェッサーと呼ばれている。しかしこれは、何れも名称の様なもの。

 

 

「いえ、それよりも……本当にそれでオールマイトを“殺せる”んですか?」

 

「当たり前だ!私を誰だと思っている!」

 

 

 急に男はバッグからノートパソコンを取り出し、USBメモリを挿した。そしてパソコンを操作しながら話していく。

 

 

「態々『社会のゴミ屑』となった奴等に【吸血鬼細胞】を与え!実験台にしたのは!あの方が目指すものを作り上げるためだ!そしてその研究結果が!」

 

 

 男はエンターキーを押し、死柄木と黒霧に見せた。

 

 【Day Walker:脳無】と表記されている吸血鬼とは思えない風貌の化け物を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。遅めに寝た明密とアーカードは何時もの通り起き、朝食を取り学校へと行く。道中に天哉と合流したので昨日の事を天哉と話しながら登校する。

 

 昨日はアーカードによって天哉が捕まえられたが、その捕らえられ方が異様だと話す。何でも明密の設置した五重の壁を蹴破っていると後ろに気配を感じて振り向いてみれば誰も居なかったが、何故か確保テープが巻き付いていたという。他人から聞けばホラー要素のある捕まえ方をしたアーカードは「余所見をしている貴様が悪い」とキッパリと言った。

 

 結果、哀れにも壁を蹴破っただけで核には辿り着いていない天哉はその時項垂れていた様であったとの事。

 

 その時の事を思い出して再度項垂れた天哉と学校に到着する。しかし校門前には大勢の報道陣が詰めかけており、入るのは困難を極めていた。途中出久とお茶子と合流しどうしようかと悩んでいると、何をトチ狂ったのか天哉が報道陣に向かいインタビューを自ら受けた。結果は真面目さが報道陣の興味を失せさせていた。

 

 が、その代わりにアーカードや明密、出久、お茶子に報道陣が詰め寄る。しかしアーカードがサングラスを外し報道陣に目を見させた事で道が作られた。その道を悠々と歩くアーカードと、呆気に取られている出久とお茶子を連れて報道陣に謝罪しながら明密は学校に入っていく。

 

 そして担任の相澤が報道陣に対し一言告げた後、報道陣たちは無表情のまま帰っていったという。それを見た相澤からは「生気が感じられなかった」とだけ。

 

 クラスに入る4人。そして今度も学内を探検するアーカード。クラスに入ると報道陣が詰め掛けていた事に話題が盛り上がっていた。入るなり切島たちに詰め寄られた明密は何時もの様に丁寧に答えていた。

 

 そして相澤担任が教室に入る頃には全員席に着き、HRが始まる。そしてHRでは……

 

 

「今日は君らに…………学級委員長を決めてもらう」

 

 

 明密以外の全員はホッとしている様子。しかし明密は中学で幾度となく学級委員長に選ばれていたため、少々飽きた様子になっていた。

 

 しかしヒーロー科での学級委員長とは皆を導く素質が問われるものであり、出久と明密を除いた全員が挙手していた。途中何か峰田から口走った様だが気にしなかったそうな。

 

 そして、何やかんやで学級委員長が決まった。

 

 

 疎宮明密 五票

 

 緑谷出久 四票

 

 

 この時明密は疑問を抱きながら「何で……?」と小さく呟き、出久も同じような心境に立っていた。因にだが、お互いに明密と出久に票を入れたそうな。

 

 そして昼休み。アーカードと合流し今朝の事を伝えると興味が無さそうだった。過去にも学級委員長になった事のある明密は溜め息をついていた。

 

 途中何時もの3人組と合流し昼食を食堂でとる。その際、明密と出久がお互いに票を入れた事も判明し苦笑いしか出なかったそうな。ついでに天哉がヒーロー『インゲニウム』の弟であることが出久とお茶子に知られた。というか天哉が言ったが正しいであろう。明密は既に知っているので特に何とも思わなかった。

 

 そして午後の授業に入り、今回は【人命救助訓練】を行うためバスに乗る。アーカードはというとバスの天井で風を感じながら横になっている。

 

 そして話題は梅雨の性格からの発言によるもの。

 

 

「あなたの個性、オールマイトに似てる」

 

「うぇ!?あー……いや僕はそのー……えーっと」

 

 

 まるで確信を突かれたかの様な慌てよう。それを切島が否定させる事で出久は落ち着いた。しかし今度は個性関連の話に持っていかれる。

 

 

「俺の【硬化】は対人じゃ強ぇけど、如何せん地味なんだよなぁ」

 

「地味そうだけど一番強いのはアッちゃんだけど」

 

「梅雨ちゃん、確かに僕のは地味ですけど大した個性では……」

 

「あら?それだと地面を水みたいにしたのはどうなるのかしら?」

 

「あれは液状化させただけでして……って、何で皆さん冷ややかな目で僕を見るんですか?」

 

 

 クラス全員から冷ややかな目で見られる明密。隣の爆豪にも冷ややかな目で見られてしまう。

 

 まぁそうだろう。物は気体や液体にされるため八百万の【創造】や峰田の【もぎもぎ】なども塵あくたと化し、轟の【半冷半燃】や爆豪の【爆破】にも対応できる。

 

 人体に使えば筋肉の密度を調整して自己強化も出来、尚且つ霧状にもなれる。そして相手には行動の制限をかける事ができる始末。切島の【硬化】や『砂藤 力道』の【シュガードープ】、お茶子の【無重力《ゼログラビティ》】や『瀬呂 範太』の【テープ】等が無効化できてしまう事実。

 

 空気に触れれば密度操作もできるため、耳郎の【イヤホンジャック】や『口田 甲司』の【生き物ボイス】等も無効化できる万能個性【密度操作】。

 

 しかし明密はこの個性にも弱点はあると公言すると、全員の目が光だした。明密の答えは……【疲労の蓄積】であった。蓄積されれば密度操作は困難を極め、形が歪になったり、場合によっては自分が元の状態に戻れなくなる可能性もあるという事。

 

 その時、またもや全員から冷ややかな目を向けられた事に対して明密は解せなかった様である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ諸君、反逆の時だ」

 

 

 何処からか響く声は、狂気に満ち溢れていた。

 

 『もう一つの正義』は直ぐそこまで迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ヤン「ヤンと!」

ルーク「ルークの」

「「後書きコーナー!!」」ドンドンパフパフ

ヤン「さぁて今回で分かった事は!?」

ルーク「オリ主と原作主人公が学級委員長と副委員長に。そして飯田天哉は委員長にならずっと。あとは……」

ヤン「あの気持ち悪い鳥頭みたいな奴?が吸血鬼に。しかも太陽克服してるっていうね」

ルーク「……なぁ弟よ」

ヤン「なんだい?兄ちゃん」

ルーク「俺たち……ここで出る意味あるのか?」

ヤン「………まぁ、清涼剤だから」

ルーク「……本編に出してくれないかな?」

ヤン「望み皆無」







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