密疎の狩人とシュレーディンガーの吸血鬼   作:(´鋼`)

7 / 40
№1-3 吸血鬼の思い出

 

 

 

 

 

──フフフッ。そうでなくては、そうであろうとも。さぁ殺ろうぜjudges priest!!

 

──フハハハハ、この前の様にはいかないぞvampire!

 

 

 宿敵と会って高揚している吸血鬼と狂信者。

 

 

──人の身で、よくぞここまで練り上げた

 

──ぬぅ!?

 

──敵を……殺してみせよ!この心臓にバイヨネットを突き立ててみせろ!500年前の様に、100年前の様に。この私の夢の狭間を終わらせてみせろ!!愛しき我が宿敵

 

──語るに及ばず!

 

 

 思い出されるのは、あの頃の懐かしく、楽しいと感じた宿敵との思い出。

 

 

──どうしたクリスチャン?化け物は此処だぞ!?

 

──はあ"……はあ"……ぬ"あ"ァ……

 

──満身創痍だな。腕が千切れて落ちるか。……どうするんだ?お前は狗か?それとも人間か?

 

──それがどうした吸血鬼?まだ腕が千切れただけじゃねぇか!能書き垂れてねぇでかかってこいよ!かかってこい!hurry!hurrrry!!

 

──ッ!……素敵だ…………やはり人間は、素晴らしい

 

 

 一時の高揚感を噛み締めるかの様に笑顔になる吸血鬼。満身創痍ながらも吸血鬼と闘う狂信者。

 

 

──やめろ!アンデルセン!!化け物になる気か!?神の化け物に!!神の力の不死身の、本当の玩具になる気か!?同じだ!まるで同じクソッタレだ!神を肯定した化け物と、神を否定した化け物と!そんな奇跡の残骸を使って、お前も奇跡の残骸になる気か!?

 

 

 約束を破られそうになって、宿敵の行為を止める吸血鬼。

 

 

──俺と……お前の……俺たちの闘争を、彼岸の彼方に追いやるつもりか!?俺の様な化け物は、人間でいる事にいられなかった弱い化け物は……人間に倒されなければならないんだ

 

 

 必死に止めていく。我が儘を何度も言う子どもの様に。

 

 

──やめろ人間。化け物にはなるな。私の様な……

 

──俺は只の銃剣で良い。神罰という名の、銃剣で良い。俺は産まれながらに嵐なら良かった。【脅威】ならば良かった。一つの炸薬なら良かった。心も無く涙も無い只の恐ろしい暴風なら良かった…………これを突き刺す事でそうなれるなら、そうしよう。

 

 

      そう……あれかし……

 

 

 心臓に釘を刺し、化け物に成り果てる狂信者。それを見て激怒の表情を浮かべる吸血鬼。

 

 

──お前は俺だ!!

 

 

 血の涙を流し、大声を挙げる吸血鬼。その声には悲しみが含まれていた。

 

 

──お前は俺だ……俺もこの通りの有り様だった…………俺もこの通りの様だった!

 

──……くはっはっはっは…………鬼が泣くなよ。童に追われたか?……鬼が泣くなよ。泣きたくないから鬼に成ったんだろ?人は泣いて、涙が枯れて果てるから、鬼になり化け物に成り果て……成って果てるのだ。ならば笑え。傲岸に不遜に笑え、何時もの様に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………夢、か。また随分と懐かしい……」

 

 

 アーカードが目覚める。その場所はあの麗しの戦場ではなく、コンクリート作りのビルの中という事だけであつた。昔の……忘れ難き思い出の記憶を見ていた。

 

 

「………?」

 

 

 アーカードの手袋に血が落ちていた。自分の頬に触れると、液体……血の感触があった。それは目尻から流れ出ていた。涙を流していたのだ。

 

 

「……全く、アケミツ。お前は私の宿敵と重ね合わせたいのか?自らを、その身を」

 

 

 アーカードは涙を拭き取り、立ち上がって核のモデルを守護していく。しかしアーカードは、何処と無く……傲岸不遜な笑みを浮かべていた。

 

 

「だが……アイツに倒されるのも、良いのかも知れん。なぁ?アンデルセン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「dust to dust.塵に過ぎない貴様らは、塵に帰れ!!」

 

 

 明密は両腕と両手の密度を凝縮させ、硬化する。関節は硬化していないため自在に手の形は変えられるが、それでもダイヤモンド並みの硬度を持つ。

 

 対し天哉と切島は明密の言動一つ一つに驚きを感じ、対策云々ではなかった。あの大人しく社交的な明密が、こうも簡単に【敵】の素振りが出来てしまう事に。

 

 しかしこれは戦闘訓練。直ぐに天哉は思考を戻し切島に作戦を伝える。明密は狩りを楽しむかの様にゆっくりと歩いて近づいている。

 

 

「切島君!明密君の注意を引き付けておいてくれ!俺はその間に核を見つけて触れる!」

 

「おっしゃあ!!分かったぜ!」

 

「よし!ならば一旦硬化を解除してくれ!」

 

 

 切島は硬化を解き、天井から重力に従って下に落下する。しかし切島が硬化を解除した瞬間、天哉は脚の個性を使用し明密の背後まで行き地面に着地する。切島の脚から手を離し切島も地面に着地する。

 

 

「あと気を付けてくれ!明密君の個性は!」

 

「【密度操作】だろ!?対人に使えば筋肉軟らかくして行動不能にさせたり、固くさせて動けなくしたりするんだろ!?」

 

「そうだ!それを踏まえて対処してくれ!」

 

「任せろ!!」

 

 

 天哉はビルの部屋を素早く回る為に個性を使用せず、素の力での全速力で部屋内を捜索していく。

 

 一方の切島は明密と対峙している。しかしながら与えられた役目は時間稼ぎ。それさえ出来れば此方の物を考えていた。しかし……明密の表情は崩れるどころか、不敵に笑い続けていた。

 

 

「飯田天哉……アイツだけでどうにかなると思ったら大間違いだぁ」

 

「??どういう事だよ、それ」

 

「貴様の様な異教徒が……知った所で何になる!?」

 

 

 明密は脚をバネの様な筋肉に密度操作し、一気に切島との距離を縮めた。切島は咄嗟の事で狙われた顎を硬化させる事で威力を弱めたつもりだが、何故か痛みが長引いている。密度操作で一瞬だけ“柔らかくさせられた”のだ。

 

 

「(いってぇ!これが明密の個性かよ!俺の個性が通じてねぇ!顎を硬化させたのに頭がグラグラする!……だが、隙だらけだぜ!)」

 

 

 切島は仰け反ってしまうも体勢を崩さず、右手に確保テープを持ち明密に投げた。一瞬の隙で、しかも超近距離の所で確保テープを投げたのは良かった。

 

 しかし明密は見た瞬間霧状になった。確保テープは宙を舞い、明密を捕縛する事はなかった。それを見た切島は驚きの声を挙げる。

 

 

「(マジかよ!?……そういや天哉の奴が言ってたな、明密の個性は自分を霧状にさせる事ができるって。だったら!)」

 

 

 切島は体を捻り右手に持っている確保テープを後ろに薙ぎ払う様にする。もし奇襲をするなら後ろだと踏み、後ろに確保テープを振り回した。

 

 しかしそれも空を切った。空を切った次の瞬間、切島の体に確保テープが巻き付いた。しかし右手には確保テープが存在している。

 

 違和感の正体を知る為、確保テープが投げられたであろう場所……下を見た。

 

 何とそこには、左腕が浮かんで確保テープを持っているでは無いか。その左腕から徐々に人の形が作られていき、最終的には明密の姿が形成された。 

 

 

「僕の裏取り勝ちですね、切島君」

 

 

 切島を捕まえ、人の形に戻ったと思いきや今度は演技を止め普通に戻っていた。負けた事に対し悔しい反面、一本取られたという事実を味わっていた。明密は切島の顎に触れ密度を戻す。

 

 

「アケミツ、此方も終わったぞ」

 

「アーカードさん、お疲れさまです」

 

 

 突如何もない空間からアーカードが出てきた。その右手には確保テープが巻き付いている天哉の哀れな姿もあった。切島はアーカードが急に出てきた事に対して驚きを持ち、明密とアーカードを交互に見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『(キャラが違う!!!)』

 

 

 そんな事を思っているのはモニタールームに居る新米教師オールマイトと生徒全員。明密の演技の迫力に思わずそう考えてしまったそうな。 

 

 

「(えっ、何あれ?あれワタシに優しくしてくれた明密少年!?メッチャキャラが濃いというか、性格そのもの変わってね!?あれもヴァンパイアハンターならではなの!?)」

 

「(違うこんなんちゃう!!仏で妖精で神父様の明密君は、こんなキャラちゃう!!絶対に!)」

 

「(エイメン……異教徒……パフォーマンスか?)」

 

 

 約1名『轟 焦凍』の考え事以外は皆、明密の性格を考えていた。そんな事を考えていると明密、アーカード、切島、天哉が戻ってくる。天哉はあっさり捕まった事によるショックがまだ立ち直れていないらしい。

 

 そしてオールマイトからのアドバイス……ではなく、また八百万からのアドバイスとなってしまった。

 

 まずヒーロー組。天哉が明密の個性を熟知しているが故の作戦でもあった事に関しては良かったが、何故個性を使わず部屋の捜索をしたのかという疑問に走る事になった。

 

 飯田天哉の個性【エンジン】の連続稼働時間は10秒程。しかもエンジンのトルク数を上昇させた結果になったのが明密の液体コンクリート罠の脱出と移動する為に使用したのでオーバーヒートを起こしかけていた事だからだそうだ。

 

 続いて敵組。明密が一人だけで対応する……という結果には至らなかったものの、アーカードを護衛に置いたのは良い判断という結果に。しかし八百万はアーカードの行動も見ていた。つまりはアーカードが物思いに耽って寝ていた事も知っている。アーカードにその事への指摘をしようとすると、アーカードは能力の公表をした。

 

 アーカードの個性【シュレーディンガー】。簡単に言えば『何処にでも居て何処にもいない』個性。その気になれば、例え寝ていようがヒーロー組の意識に潜り込んで撹乱させる事もできるという事を自信満々に言った。

 

 

「勿論、お前を含めた全員にもな。小さなフロイライン」

 

 

 アーカードは丁寧にお辞儀をしつつも皮肉に近い事をズバズバと言い放つ。敵に回しがちになる性格だが、1年以上過ごしている明密にとっては可愛いものと思っている。

 

 そして午後の授業を終えて皆帰宅するのだったが、切島と上鳴、『芦戸 三奈』と耳郎からファミレスへと誘われる。少しトラウマを思い出しそうになって右手が震えたが、天哉が肩を叩いてくれたお陰でトラウマと向き合いながらもファミレスへと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういや明密、何で飯田に肩に手を置かれたんだ?」

 

 

 やはりその質問になる。周りに居た者も聞こうとして明密に集まるが、明密は言っても良いのか悪いのか分からない表情をしていた。しかしそれはアーカードによって代弁される。

 

 

「1年以上前、アケミツの働き先であったのもファミレスとやらだった。しかしその時は吸血事件の真っ只中にあり、そのファミレスに居た者たちが全員被害にあった」

 

「「「「ッ!!」」」」

 

「でも……気にしないでください。皆様は吸血事件にも関係はない、それに僕の事もよく知らない。仕方がありません。それにこれはリハビリとしての目的も兼ねてますから、大丈夫ですよ」

 

 

 一時期騒がせていた吸血事件。明密が関係者だとは知らなかったのは極自然の事であるため、明密は気にしてもいない。しかし本当に気にしているのは吸血事件の犯人による【殺意】。それが影響で手の震えがあった。質問をしてきた上鳴は反省している様子を見せるが、明密の何時もの社交的な性格で立ち直ってもらったそうな。

 

 しかし約1名。吸血事件とは無関係の、しかも自分が人質になっていた時の事を思い出していた。

 

 正確には、『救ってくれた者の背中』を思い出していた。その少女は、救ってくれた者の背中と明密の背中が酷似している事を考えた。

 

 ファミレスに着くなりテーブル席に座り注文をしていくのだが、アーカードはというと……普通に頼んだ料理を食べていた。

 

 まぁそうだろう。『何処にでも居て何処にもいない』という事は【確率】の世界に入る。ならば『吸血鬼であって吸血鬼でない』という【確率】も当てはまってしまうのだ。因みに頼んだのはハンバーグセット、パンとドリンクバー付き。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ヤン「ヤンと!」

ルーク「ルークの」

「「後書きコーナー!!」ドンドンパフパフ

ヤン「兄ちゃん兄ちゃん!このSSに感想着たぜ!」

ルーク「ほぉ?それはやはり私のk「オリ主のアンデルセンコメ」何故だあぁぁぁぁ!?」

ヤン「それと……亀更新タグ消えてるし、本気で書きに行ってるよ作者」

ルーク「くくくっ……こうなれば、次回予告をしてやる!『次回!№1~2 前触れ』!」

ヤン「兄ちゃん、それ意味ない」






▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。