密疎の狩人とシュレーディンガーの吸血鬼   作:(´鋼`)

5 / 40
どんどん増えていく文字数……5000文字を久々に突破しちゃったよ。

仕方ないか。


代償 願望 神父
№1-1 登校→テスト


『4月』

 

「アーカードさん、行きますよ」

 

 

 明密は自宅であるアパートの玄関で鞄を持ち、靴を履いた状態で立っている。アーカードは珍しく欠伸をしながら靴を履き明密と共に出る。

 

 そう、今日この日こそが雄英高校入学の日。そこで明密とアーカードは雄英で『代償』としても『願望』としても、その高校で過ごしていく初日。

 

 

 根津や他教師、政府の者はある意味緊張の面持ちで居るだろう。何故ならば、雄英に【吸血鬼狩り】を行う者2人が入るのだ。明密は生徒として、アーカードは使い魔として。

 

 早めに出ておいて損は無いだろうと考え駅まで歩き駅内で新幹線を待っていると、右肩に突然重みが感じられる。

 

 振り向いてみると、そこには友人である『飯田天哉』が居た。明密は体を飯田天哉の方に向けて話をする。

 

 

「飯田君、お早う」

 

「あぁ、お早う……と言いたい所なんだが」

 

 

 飯田天哉はアーカードを指差し明密に尋ねた。まぁ仕方ないだろう、何せ話題になっている輩が明密の隣で佇んでいたのだから。

 

 

「何故君はこの大男と一緒に居るんだ?」

 

「あー……えっとぉ……」

 

 

 流石に悩んでしまう明密。一応個性追加届けを出してはいるが、あまりにも信憑性が薄くなってしまうのでどうしようかと考えていると、アーカードは天哉に個性追加届けのコピーの確認をさせる様にする。

 

 確かにこれには自分の“個性”の事も書かれているため、信憑性を上げるのには十分だ。結果、飯田天哉も納得した様子で明密、アーカード、天哉の2人と1体は雄英に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雄英の正門に到着すると、学校とは思えない程の巨大さで少し顔が引きつる明密。アーカードは何処かしらどうでも良いという顔をしていた。クラスの確認をし、下駄箱に靴を入れる。アーカードは明密の下駄箱に入れ、室内用の靴を履いてクラスへと向かう。因みにだが、明密と天哉のクラスは一緒であった。

 

 クラスに入ると、既に人が何人か居る様子だ。烏の様な頭をした男子生徒、ポニーテールを基調とした女子生徒、何故か左半身が氷で覆われている男子生徒、赤髪で如何にも熱血タイプの男子生徒、耳たぶがイヤホンのプラグの様になっている女子生徒に少しチャラめで黄と黒が基調の髪をした男子生徒。

 

 今現在居るのは明密たちを合わせて8人と1体居る計算になる。明密たちが入っていてクラス内の生徒たちが明密たちを見る。しかし視線にはやはりアーカードが目立つ為、その生徒たちの表情は驚いていた。

 

 しかしアーカードは暇だというので、シュレーディンガーで消えて学内を探索するらしい。アーカードが消えた後、明密は今居る生徒に謝罪をし指定された席に座る。

 

 隣は先程の右半身が氷で覆われている男子生徒の隣。しかし明密は性格が良すぎる為、自然な笑顔で挨拶を交わしていく。今室内に居る生徒たちにも挨拶を交わしていく明密。

 

 

「なぁちょっと良いか?」

 

「はい?」

 

 

 突如声を掛けられ振り向くと、先程の赤髪の男子生徒が明密に尋ね事がある様だ。まぁ、それはやはり。

 

 

「あの大男、何だよさっきの?」

 

 

 アーカードの事である。しかし明密は笑顔を崩さずに答えを出す。勿論、真実2割のみ。

 

 

「あの方はアーカードと申しまして、僕の使役する者です。先程は急に入ってきてしまい驚かせてしまって申し訳ありません」

 

 

 ご丁寧にお辞儀をする明密。目の前の男子生徒は顔を上げる様に催促したあと、名前を尋ねてきた。

 

 

「俺は『切島 鋭児郎』!お前の名前は?」

 

「疎宮明密と申します。以後お見知りおきを、切島さん」

 

「さん付けは止してくれよ。これから一緒に過ごす仲間だろ?」

 

「ふぅむ……そうですね、ではそうさせてもらいます。切島君」

 

「まだ抜けてねぇな」

 

 

 少し苦笑いをしながら切島は握手を求め手を差し出す。それに答える様に手を差し出し握手を交わす明密。しかし相変わらず明密は笑顔を向けており、何故かは知らないが明密はナンパをされてしまう。無論男に。

 

 明密の容姿は確かにアホ毛にタレ目、とんがり耳を合わせ持ち女と間違えられる事もあった。しかし的確に、尚且つ傷付かない様に真実を伝えると驚く。しかし男女の判断は制服を見れば良い。

 

 そしてナンパをしてきた男子生徒の名は『上鳴 電気』。しかしそんな間違いは誰にでもある事に対して一言述べた後、笑顔を向けた。何故だか上鳴は嬉しい興奮状態に入っていた。

 

 そして耳たぶがイヤホンのプラグの様になっている女子生徒。明密は見たことがある。

 

 そう、デパートの事件の時の人質がこの子であった。そのため明密は顔は知っているが、さも知らないフリをして挨拶を交わす。

 

 彼女は『耳郎 響香』というそうだ。ここでもやはり明密はぶれずに交流をしていく。一種の癖の様なものなので直そうとすると一苦労する。良い癖だが。

 

 そうしていると上鳴から“個性”について尋ねられる。因みに上鳴は【帯電】、切島は【硬化】、耳郎は【イヤホンジャック】という風に体の性質から産み出された“個性”が多い。

 

 

「僕の個性ですか?」

 

「そうそう!何なのか教えてくれよ!」

 

「そうですね……まぁ【密度操作】です。はい」

 

「それはそれでパッとしねぇなぁ」

 

 

 突如天哉が立ち上がり明密の元まで歩き、何故か“個性”の説明をしだした。

 

 

「何を言っているんだ君は?明密君の【密度操作】は自分や触れたものの密度を操作できるんだ!これにより密度操作で筋肉の硬質化、軟質化が可能!さらには自分を霧状にさせ姿を眩ます事もできる!しかも対人戦で使用すれば、筋肉の密度を少なくさせて行動不能にさせる事もできる!硬質化を使用すれば相手は動けない!しかも空気の密度を操作して真空状態を作る事も可!さらに「飯田君流石にストップ!」」

 

 

 ベラベラと喋られたが、さらに補足していく。帯電等の個性持ちの相手の筋肉を硬質化させれば電気は流れず、反対に軟質化させれば電気が過剰放電するのだ。

 

 分子という段階まではいけないが、水や火などの無形にも対応できる。空気を操作し真空の道を作り弾丸を放つ事は吸血鬼相手にしたことのある明密。

 

 しかしながら天哉の説明で上鳴はウキウキとしており、切島は「俺の個性ェ……」と項垂れ呟き、耳郎は何か考え事をしていた。

 

 そして天哉に何故そこまで明密の個性を知っているのかを聞くと、やはり兄である天睛からの推測情報だということ。全て当てはまっているが。

 

 そんな事をしていても、ぞくぞくと入室していく学生たち。声を掛けられても丁寧に答え、質問に応じる姿勢を見て『蛙水 梅雨』から一言。

 

 

「貴方、妖精みたいな見た目なのに仏みたいね。アッちゃん」

 

 

 その言葉を全肯定する様に一部を除き頷く生徒たち。仏ともエルフとも言われた事のある明密だが、蛙水が言った事は少し戸惑いの表情を見せる明密。

 

 

「アッちゃん……ですか?蛙水さん」

 

「そうよ。あと梅雨ちゃんと呼んで」

 

「分かりました、梅雨ちゃん」

 

 

 やはり笑顔から後光が射し込んでくる様な幻覚を生徒は見ている様だ。何故か頭部が葡萄みたいになっている『峰田 実』は腕で顔をガードしていたが。

 

 また1人と入ってくる学生。しかしこの生徒は足を机に置いた為、天哉に注意を受けるも聞く耳を持たなかったそうな。ドアの開閉音が聞こえた為、明密はドアまで歩き開けた。

 

 緑色のボサボサとした髪をした至って普通に見える男子生徒と後ろに居る穏やかそうな女子生徒。名前を尋ねると『緑谷 出久』と『麗日 お茶子』という。

 

 天哉がドアの所に居る出久を見つけると、何やら喋っていた。話の内容から察するに試験の事と推測した明密。明密は代償として推薦入学した為、試験内容を理解していない。

 

 しかしながら、緑谷と麗日には関係性がある様に思った明密。恐らく試験中に何かしらあったのだろうと考えた。

 

 

 

 

 

 

 

「お友達ごっこしてぇなら他所に行け」

 

 

 酷く掠れた声が廊下から発せられる。声の方に向くと、シュラフで寝ている男。ついでにアーカードも居る。

 

 

「ここはヒーロー科だぞ」

 

「アケミツ、ここはここで面白そうだな」

 

 

 シュラフで寝ている男は中から飲料ゼリーを取りだし飲む。アーカードは影からラベルを剥がした輸血パックを飲みだす。

 

 

「「「(な、何か居る!?)」」」

 

「(アーカードさん、ここで輸血パックは……)」

 

「(飲みたいから飲むんだ。誰にも邪魔はさせんぞ)」

 

「(……分かりました)」

 

 

 男は立ち上がり、シュラフのジッパーを下ろして姿を見せる。くたびれた印象を持つが、明密はアーカードの見立てでものを見ているせいか感覚が麻痺している箇所がある。

 

 

「はい、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠けるね。あと君」

 

「は、はい」

 

 

 男は明密を見る。それに応答する様に返事をした明密。

 

 

「この使い魔、できればコンパクトにできない?クラスに居られても邪魔だから」

 

「……アーカードさん、学校探検していってください」

 

「理解した。まぁ元々そうするつもりだったが」

 

 

 アーカードはシュレーディンガーで消える。それを見た男は自己紹介をしていく。

 

 

「担任の『相澤 消太』だ。宜しくね」

 

 

 その一言をきっかけに全員驚きの表情を浮かべ、静かに声を挙げる。そんな事はお構い無しと謂わんばかりに担任の相澤はシュラフから体操服らしきものを取り出す。

 

 

「さっそくだが、これを着てグラウンドαに出ろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全員が体操服に着替えグラウンドに集合すると、相澤から『個性把握テスト』を行う事になったと聞く。これには一部を除いてだが驚かれる生徒たち。またもやアーカードが居るのはさておいて。明密はアーカードを『デイ・ウォーカー』という形で捉えている、夜の王なのに。

 

 ヒーローの何たるかを生徒全員に講義したあと、明密にボールを投げ渡す。明密は中学時代の距離は52m程であった。あまり筋力を鍛えていない事も相まって距離は出せなかったが、今回は個性が使える為飛距離も大幅に延びるであろう。

 

 右腕の筋肉と左脚の密度を増強させ、思いっきり力を乗せる様に投げる。その際に人差し指でボールに回転を加える事で空気抵抗を無くし、飛距離を伸ばした。

 

 結果、1,205mという規格外の距離を生み出したのは明密自身も驚いてアーカードと自分の手と生徒を交互に見ていたのは面白い動きであった。

 

 しかしお手本として見せた行為が意外にも他の生徒たちにプレッシャーを与える要因になるとは思わなかった。

 

 【除籍処分】。最下位の除籍を決めさせてしまう。それには各々の反応はあるものの、全員真剣に取り組もうとする目をしていた。アーカードは暇なので投げさせてもらったら1,302mまで飛んだそうな。

 

 それから着々とテストが進んでいく。

 

 第一種目の『50m走』。アーカードと走るが結果は明密の負け。しかしタイムではアーカード『4.02』、明密は『4.06』というタイムになってしまう。

 

 第二種目の『握力測定』。先程使った筋肉の密度を増強させる事で大幅に上げる。しかし、もう一声という所で壊れそうになるとは思わなかったそうな。結果862㎏。

 

 第三種目の『立ち幅跳び』。脚をバネの様な筋肉にさせる事で飛距離を伸ばす。結果369m。

 

 第四種目の『反復横飛び』。明密は素で挑んだ為、記録は58回。何故個性を使わなかったのか天哉や切島に聞かれると「思い付かなかった」とだけ答えた。

 

 第五種目の『ボール投げ』。明密は最初に1回した為、あとは1回投げるだけで良し。結果は『1,215m』。この競技では麗日が∞を出したので素直に凄いと思う明密。

 

 しかし緑谷の1回目の投球が46mには疑問を抱く。天哉に緑谷の個性について聞くと【増強系】なのだが、恐らく相澤に何かされたのだろうと考える明密。その予想は当たり、相澤の正体は『イレイザーヘッド』という【目で見た者の個性を消す】個性だそうな。

 

 個性を解除し、使える様にすると緑谷は2回目の投球。記録は『705.3m』となったが人差し指が腫れていた。この記録に対してなのか、朝に天哉と言い争っていたガラの悪い生徒『爆豪 勝己』が緑谷に対して危害を加えようとしたため霧状になって先回りし密度を操作して軟質にする。動こうとするも動けない、立つのがやっと程度に抑えたつもりだが執念が凄まじいと思ったそうな。

 

 そして相澤は「個性使わなくて良かった」と言った。ドライアイらしいので、直ぐに納得した。

 

 第六種目の『上体起こし』。背中の筋肉と骨をバネの様にさせて回数を稼いだ。結果『205回』。

 

 第七種目の『長座体前屈』。脚の筋肉と腰にある筋肉の密度を操作し限界まで伸ばす。結果『83㎝』。

 

 第八種目の『持久走』。脚を密度操作し、一歩一歩の歩幅を稼ぐ。曲がる時は空気を一旦真空にさせ急激に戻させる事で進行方向を操作していた。結果『106周』。

 

 いよいよ結果が出されるが、やはり一番の最下位は緑谷だった。そのせいか緑谷の表情も重くなるが……

 

 

「因みに除籍は嘘な」

 

 

 その言葉で一部を除き表情が固まる生徒たち。「君たちの全力を引き出す“合理的虚偽”」と追加を入れれば、叫ぶ生徒も居た。明密は3位にランクインしていた。

 

 そんな感じで1日が終了していく。緑谷の指は『リカバリー・ガール』の個性で治してもらったらしい。天哉と共に緑谷と麗日に別れを告げ帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。