無茶苦茶遅れて申し訳ありません!そしてかなりクオリティ低下している駄文を投稿してしまう事を謝罪します!
では5ヶ月ぶりの本編どうぞ!
「……漸く、か。大分毒も失せてきてる」
「だな」
『…………』
暫くの間横になっていた明密は上半身を起こし首を左右に倒す。それにより両サイドからバキバキと骨が鳴った。明密の異常な回復速度によって毒の96%は消え失せている感覚を持つ明密。側で座るアーカードも多少ながらケラケラと笑っていた。この明密の化け物並みの回復速度を見ていたが、明密を見ている間も窓の景色を見ている間も何処か遠い目をしていた。
気絶させられていた雄英生はこの病室に居る。ただし、執念の暴走によってかなりの力で対処されたため体力的に止められそうにないのは理解している。そして今は冷静さを取り戻しているため尚更質が悪く、ものの数秒あれば全員行動不能にさせられることも有り得る。
ただ、明密が起こそうとしている行動に異を唱える者とて居る。それは仕方の無いことだ、人間は千差万別であり性格はどうしようも無いのだ。
明密がベッドから降りる。体の調子を確かめるべく試しに片足でジャンプを数回繰り返す。ほぼ完全にバランス感覚もあり筋肉に力を入れやすくなっていた。
つまり準備は整った。明密はアーカードに触れて消えていった。その時の明密の表情は、何処か静かに闘志を燃やしていたのであった。
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「これで、良かったのかな……?」
「緑谷君?」
そう口を開いた緑谷は明密のことを考えながら、ふと思った。幾ら修羅場を潜り抜けたとは言えども、明密はこの雄英の生徒の1人であるのだから。彼等は吸血鬼狩りの明密を知り、普段の明密を知り、少人数の前とはいえ涙を流した明密を知った。
彼等は若さ故に悩む。明密は若さ故に走る。
どちらも若さ故に起きてしまった行動であった。しかしこの場に居る全員、本来は単にヒーローを目指している者たちの集まり。謂わば《殺さずして捕らえる》事を最善とする。
明密とて殺さずして捕らえる事は可能であるし、その考えを持ってはいる。だが相手が吸血鬼であった場合は話は別、悪鬼羅刹の如き動き仕留める。今回の相手は、
明密は殺しに行くのだろう。何となく彼等は、そんな予想が出来た。だが相手が相手なだけに、もし殺してしまえば明密とて社会的に無事では済まない。それ以前に相手は
人間のままで居る敵が居て人間でない敵が居るが、そのどちらとも明密は仕留める覚悟で向かったのだろうと幼馴染みの天哉は思う。
だが、そんな理由で立ち止まる彼等でもない。友が真に道を外そうとするならば、彼等は若さ故に止めようと向かわねばならない。いや、勝手に走り出してしまう。場所なんて分からないが、それでも走り出してしまう。
友人であるから。仲の良い幼馴染みであるから。彼等は病院から外へと飛び出した。
爆発が、外から聞こえてきた。
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時は戻って敵連合内部。そこに居る人物が、殆ど意気消沈していた。それもその筈、人外並みの動きで果敢に攻めてくる2名の姿を見たから。『血狂いマスキュラー』を赤子の手をひねる様に容易く落とした1人の人物を見たから。
そしてここに集まる殆どの者は初めて恐怖というものを……否、初めてではない。全く別のベクトルの恐怖を感じたからだ。
だが
ここに来て、彼等はトンデもない輩に手を出したのでは無いのかと。そしてその部屋の真ん中に1人椅子に縛り付けられた爆豪が居た。
爆豪は怒り心頭の状態であった。自分を無視して何に怯えているのかが、どうやら気にくわないらしい。椅子ごと揺れた為か、ガタガタと部屋に音が響いていく。
だが先程の毒によって、暫くは動けないだろうと判断はされていた。遅効性の毒と、速効性の毒を別々に体内に取り込ませた影響で明密の“個性”を利用した生き地獄を成功させた。
だからこそ慢心が生まれた。
突然
『!?』
「アーカード、やれ」
「言われずとも」
刹那、アーカードが【ブルート】と【カスール改】を取り出し回りながら部屋の壁
明密は銃剣を取り出し、全員蹴散らしていく。他は兎に角動きが鈍い故に倒すのは簡単であったが、やはり残ったのは黒霧のみ。何故か科学者の風貌をした男は居なかった。
「……貴方は猟犬か何かか?異常なまでに固執している様子が見受けられる」
「固執……固執ねぇ…………
してるぜ?正解だから喰らえ」
明密は毒で弱っていた筈なのに、それを感じさせない洗練された何時もの動きがそこにはあった。密度操作によって
分身の数を増やし続け、数にして16体目で生身の部分に鈍器となった銃剣が叩き付けられる。
「がッ………………!」
「……手間掛けさせやがって、糞が」
そして16体全員で生身の部分を叩きつけていく。その速さに追い付ける訳が無く、黒霧の口からは多量の血が飛び出す。トドメと謂わんばかりに明密は銃剣を、床に伏している黒霧に叩きつける。
それにより床が崩れた。明密も下へと向かい降り立つ。黒霧の事なぞ既に用済みであり、後は人間を生屍にさせた
たった、それだけであった。
「ぐぅぁ……な…………ッ!?」
外へと飛び出た明密は、地面を転がっていくが体勢を立て直して気配のした方を見やる。【再生】し【回復】しながら思考する。殴られた、それは体に受けた衝撃の形が拳の様にゴツゴツとしていた為か直ぐに分かった。
見て分かった事といえば、お互い違うベクトルの恐怖をお互い感じていたのかもしれない。肌で感じ、気配で感じ、匂いで感じ、触覚で感じる互いの恐怖。それだけならば、どれほど良かっただろうか。
明密は見やった途端、すぐに目をギラつかせながら銃剣を構える。異常なまでに、
「出てこいよ、影に居ようと今なら分かる。
テメェから感じ取れる薄汚ねぇ気配をよ!」
「薄汚いとは心外だなぁ……吸血鬼狩りさん?」
成り果ててしまった様だ。力に溺れてしまった様だ。今目の前に居るのは人間である悪などでは無い。
化け物に成り果てた憐れな
「やはり素晴らしいね。吸血鬼……特に
「…………
「人間よりも遥かに優れた身体能力に、異常な回復速度。さらには」
「黙れ!」
一気に密度操作で迫り、殺しきれる銃剣を首に向けて振るう。だが化け物は何もせずに首に銃剣を受ける。
しかし弾かれた。そして斬ることに特化させた衝撃が明密の右腕を文字通り
「【密度操作】に加え【再生】と【回復】の個性を持つ、故に千切れた腕をくっつければ再生によって腕が
お前に言われたかないと考える明密。少しすると腕は元の血色の良い状態に戻り自由に動かせる様になったが、心許ないのは確かであった。
そんな時、丁度いい時にアーカードがコスチュームと【ブラン】を持って来た。アイコンタクトで応えるとアーカードはコスチュームを空中に放り投げ、明密は霧状になってコスチュームの中で形成した。
ブランがこちらに投げられてくるが、それをキャッチしブランをポケットに仕舞うと明密は何時ものルーティーンを取る。
「我は神の代理人、神罰の地上代行者なり!
汝、生きとし生ける者の理を外れ!
外道の法理を持って通過を企てる者なり!
故に我は、貴様に神罰の鉄槌を下さん!
明密は銃剣で十字架を作り、銃剣と銃剣を打ち付けると【密度操作】をフルに使用していく。
アーカードと明密が同時に走り出す。聖書による身体能力上昇と特殊効果の付与を付けた銃剣、そして【密度操作】による身体能力上昇を合わせ、アーカードは
分が悪いと思考したAFOは、咄嗟に【エアウォーカー】【瞬発力】×3【筋骨
明密も空気の密度を操作して足場を形成しながらAFOに銃剣を構えながら向かっていく。その速度はAFOという猛者も速いと知らしめる程であるが、誰も避けれないとは言っていない。避けられる。
AFOの真上に位置した明密は腕の密度を操作し回転させて溜める。その間、AFOも腕を引き絞って明密と同じタイミングで腕を突き出す。
「【
「ッおぉ!?」
AFOは【膂力増強】×3を追加して“空気を圧縮して放った”。が、明密の【暴嵐】は回転数を溜める時間を与えればすぐにでも一撃必殺の威力の出る“嵐”と成りうる。先程ので2600回転、空気を押し出したとしても一瞬故に持続時間のある攻撃では分が悪い。
さらに暴嵐が下へ下へとAFOを押し出していく。回転が終わる頃にアーカードがカスール改をAFOに向けて弾丸を放つのだが、目の前に“もや”が出現し弾丸が消える。
その弾丸は明密の目の前に来る。少々驚いていたが、的確にカスールの弾丸を霧状になって避けて銃剣を向けて急降下。
AFOは【増殖】と【肥大化】を使いアーカードを捉え明密に投げ付ける。
盾代わりとなって動揺を誘う作戦だっただろうが、生憎アーカードは真の不死身と不老不死を持つ
激しい攻防戦が続いている街、その街からは瓦礫や剥き出しの鉄骨などが散乱し始めていた。
夜はまだまだ、これから。