密疎の狩人とシュレーディンガーの吸血鬼   作:(´鋼`)

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3度目の前書きをば。

評価バーが何時の間にか白になったと思いきや橙に成っていた事。そして現在お気に入り登録者180名に到達致しました!皆さんありがとうございます!!

これからも“密疎の狩人とシュレーディンガーの吸血鬼”を楽しんで読んでいただきたいです!!

それでは本編どうぞ!!





№3-4 開催

 時間が過ぎ去り雄英体育祭前日。午前1時、明密の部屋に久々にアーカードが現れた。余りにも唐突に来たのでアーカードの声だけで跳ね起きる。

 

 そんな明密を化け物特有の不敵な笑みをしながら笑うアーカード。そんなアーカードを見て眠気が一瞬で覚め尚且つアーカードから投げ渡されたサイレンサー2つをベレッタ二丁に装着させ、連射する明密。アーカードは弾丸を受けてはいるが効いている様子は見せていない。一応祝福儀礼済みの硫化銀弾頭なのだが。

 

 

「挨拶に来たんだが、前より良い挨拶になってるじゃないか。アケミツ」

 

「何でサイレンサー渡してきたんですか?撃たれたがってたでしょアーカードさん」

 

「なぁに久しぶりにな。たまにはお前の腕を見てみたかったというのもあるな」

 

「自分使ってまでやる事じゃないでしょうに」

 

 

 撃たれた際に出た血は全てアーカードの元に集まり、この部屋に残っているのは火薬の臭いだけ。因みにベッドの上で撃っていたため空薬莢はベッドがクッション代わりになっていたので、音はサイレンサー越しの銃声だけ。

 

 明密は空薬莢を持ちアタッシュケースの中に入れ込んだ後、冷蔵庫まで歩みよりキウイジュースを少し飲む。

 

 

「ではな、アケミツ。私は戻る」

 

「どちらへですか?」

 

「我が主が日本に来ていてな、序でに政府の者も」

 

「成る程。ニュースになってない所を見ると秘密裏ですかね?」

 

「まぁそんな所だ。体育祭、楽しみにしているぞ。我が主共々な」

 

「そうですか。それなら張り切らなきゃいけませんね」

 

 

 アーカードは【シュレーディンガー】で消え、部屋に居る明密は消臭剤を置いて寝た。翌日、部屋を出るとお隣さんが不審がって明密に尋ねて来たが適当にあしらって雄英に向かうのであった。

 

 因みにだが、明密の処罰は雄英体育祭が終わって2日後に行われるそうだ。体育祭の緊張より、行われる処罰の日が近付く事に不安を覚えてしまう明密であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 体育祭当日。明密は景気づけと謂わんばかりに控え室で持参してきたキウイジュースを飲みながら、アーカードが置いていってくれたのか机にあった“十字架”と“逆十字”のペンダントを眺めていた。

 

 控え室の蛍光灯に当てると銀色に少しだけ輝くので、そんな事をして暇を潰していた。十字架には神などの聖なる存在を信仰する証として、逆十字には悪魔などの魔なる存在を信仰する証として知られているが明密は“これ”にはどちらにも当てはまらないだろう。

 

 魔である『アーカード』と過ごしているが、魔である『吸血鬼』を殺しているのだから。しかしこの意味を知らない明密は、2つとも首に下げて体育祭に挑むのであった。

 

 クラス単位で1年ステージ会場へと向かう途中、プレゼント・マイクの実況が入る。

 

 

『雄英体育祭!ヒーローの卵たちが我こそはと凌ぎを削る、年に一度の大バトル!どうせテメエらあれだろ!?コイツらだろ!?敵の襲撃を受けたにも関わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!ヒーロー科!1年A組だろぉ!!?』

 

 

 この実況だけで周囲に居る一般人やヒーローたちの熱声が響く。その実況に続くようにA組は姿を現した。これだけでも内心、興奮や緊張が治まらないのは通常なら普通の反応だろう。しかし明密は観客席を見回していた。誰かを捜すかの様に。

 

 そしてA組に続き同じくヒーロー科のB組、普通科であるC・D・E組、サポート科であるF・G・H組、経営科であるI・J・K組が入場していく。ここでは体育祭なので体操服がルールなのは知っての通りだが、サポート科では自身が発明したサポートアイテムの使用が可能となっているのが特徴。

 

 そしてこの1年ステージでは『ミッドナイト』が審判を務めるため朝礼台に立っている。18禁ヒーローと呼ばれている為、高校に18禁があって良いのか常闇が発言すると峰田が肯定した。ミッドナイトは持っている鞭を向けて黙らせた。

 

 そして選手宣誓。この場では入試1位であった爆豪が行うのだが、爆豪は朝礼台に立ちミッドナイトの合図で宣誓を行う。

 

 

「せんせー、俺が1位になる」

 

 

 前言撤回、ただの挑発行為だ。この影響で爆豪にブーイングが向けられるが、それを気にせずに挑発行為を続ける爆豪に頭を抱える明密であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は移動し、予選第1種目の場所へと足を踏み入れる。どうも第1種目は【障害物競争】だが、毎年この障害物競争で予選敗退をする生徒が多いのだとか。さらにコースがスタジアムから4㎞離れた地点からのスタートとなる。

 

 そして気になる事が。ミッドナイトは『どの様な行為をしても構わない』とだけ発言した。つまりは明密が考えている事でも良いのだと直感的に察した。

 

 スタート地点に立ち、ランプが1つ1つ点灯していき……最後のランプが点灯した。これにより全員が走り出す。明密はこの群衆に巻き込まれない様に、脚をバネの様にさせジャンプしていく。落ちていく際、足に触れている空気を密度操作し空気の足場を作り着地する。そしてまたジャンプしていくのであった。

 

 

『あーっと!?1人だけ空中移動してる生徒が居るー!!って、ありゃ疎宮じゃねぇか!何時も授業の時ノリに乗ってくれてサンキューな!!』

 

『お前大の大人なのに恥ずかしく無いのか?』

 

 

 何か実況ではなくマイクから何かしら感謝の言葉が述べられたが気にせず続けていく。

 

 少々解説気味になってしまうが、説明しよう。明密は脚の筋肉を密度操作させ空高く跳び、重力に従って落ちていく途中で足……というより明密の足に触れている靴から密度操作の“個性”を用いて空気の足場を作っているのだ。

 

 しかしこの作戦は密度操作するタイミングがずれれば明密は地面に足を付ける事になる。下では妨害工作の嵐が巻き起こり、地面に降り立てば妨害の嵐に巻き込まれる事も有り得る。気の抜けない方法をしてしまったと少しばかり後悔する明密であった。

 

 そんな事を考えて暫く進んでいると、目の前に巨大なロボが。先程峰田の声が聞こえたのだが無視していく。

 

 

『さぁ!いきなり障害物だ!まずは手始め!第一関門【ロボ・インフェルノ】!!』

 

 

 巨大なロボが目の前に居るのだが、そのロボは瞬く間に氷漬けにされる。恐らく轟によるものなのだろうと考えていると、ギシギシと嫌な音が少しだけ聞こえてきた。

 

 

「不味いッ!」

 

 

 明密は空気の足場作りを止めて地面に着地した後、足を靴と空気を含ませながら密度操作の応用をする。足の形が人間のものでは無くなり、まるで動物の【ダチョウ】の様な足へと変貌を遂げた後に上半身を地面と平行にしてロボに向かって走る。周囲に居る生徒たちの妨害を時速60㎞というスピードで避け続けロボに近付く。

 

 すると、そのロボは崩れ落ちる。明密は足と靴を戻し、脚をバネの様にさせて跳びロボに触れて気体にさせる。と、ここで明密はある案を思い付いた。そこで自分自身を霧状にさせる。

 

 

『おぉっと!?空中散歩を終えたと思いきや素早く進んで……そしたらロボが消えて疎宮も消えたぁ!?どーなってんのこれ!?』

 

『騒ぐな喧しい』

 

『コイツはシヴィ……んぉ?あれ何だ?』

 

 

 マイクがそう告げる。すると空気の流れが巻き起こり、“ある一点”に空気が集中する。その影響で風が竜巻の様に風が巻き起こり、他の生徒は巻き込まれない様に踏ん張るため動けないでいる。

 

 さらに、“その一点”から形が作られる。先程明密が霧状にさせたロボの装甲の色が目立つ。

 

 そして形が現れた。その姿はまるで鳥、【隼】の様な姿をした大きな鳥。全体的にはロボの装甲の色をしているが、生命活動をしている証拠として鳴く。その後、翼を羽ばたかせて飛んでいく。

 

 

『何かデッケェ鳥出てきたんだけどぉ!?』

 

『ほぉ……“自らの姿を変える”。ある意味とっておきだな』

 

『んでその鳥っつーか疎宮は……一気に翔ている!ゴールまで一直線に翔んでいるゥ!!もう障害物競争じゃねぇよコレ!!』

 

 

 明密は一気に翔る。その巨体から巻き起こる風圧で他の生徒が堪えられずに吹き飛ばされ、本来なら通るべき箇所をショートカットしている。鳥だから仕方ないが。

 

 さらに最終関門である『怒りのアフガニスタン』の罠も関係ない。それどころか風圧が絶大過ぎて地雷が発動するため自動的に妨害している事にもなる。

 

 悠々と翔んでいるため、一番先頭に居る爆豪と轟を抜いてぶっちぎりの1位に躍り出た。

 

 

『おーっと!?これで先頭の2人を抜いたぁ!!これで勝負は決まったかぁ!?』

 

『いや……まだだ』

 

 

 突如として爆音が後ろから響いた。通常の量ではなく複数の地雷が同時に、そして一気に爆発した様な音だ。明密は翼に何か少しの重みが感じられたが、それは直ぐに気付いた。

 

 

「おいデク!テメエ俺の前を行くんじゃねぇ!!」

 

 

 そう、出久だ。出久が鳥状態の明密の翼に掴まっているのだ。しかしこれでは出久に負担が掛かってしまう事になってしまう。

 

 そんな悠長な事を考えているとゴール地点が見えてくる。明密はゴールに合わせる様に小さくなったあと、出久を落とさない様に鳥から姿を変える。後ろから爆豪と轟が追いかけているが、それも関係ない様になってしまう。

 

 明密は両足を地面に付け翼を付けた後、翼を前足に変えて走り抜ける。その姿はキマイラと呼ばれる合成獣の様で、走り方は獣の様に素早かった。出久は鳥状態では翼に掴まっていたので、今は左前足にしがみついている状態だ。

 

 しかしこのままでは出久が離れた拍子に怪我をしてしまう恐れすら有り得るため、嘴で出久の服を掴み走り続けた。

 

 そして、ゴール地点を通過してミッドナイトや他の教師が判定をしていく。

 

 

 

 

「……審議の結果!1位『緑谷出久』!2位『疎宮明密』!」

 

 

 結果は至極当然だろう。嘴で掴んでいたため顔が前に向いていたので先に1位になってしまうのは当然だ。それでも2位なのは素晴らしい事だと感じ、明密は出久を降ろしたあと元に戻る。

 

 明密は元に戻って地面に降り立つと、両膝を着いて肩で息をしていた。あの状態を維持していれば疲れが溜まってしまうのは目に見えていた筈だ。しかし、何故この段階で本気に近い行動をしたのかは自分も理解できなかったそうな。

 

 その後、次々とゴールまで到着する生徒たち。疲れ果てていた明密は、その場に大の字になって寝そべった。そんな状態の明密に出久が近付いて話しかける。

 

 

「あ、明密君……さっきの、何だったの?」

 

「……密度操作の……最終……応用編の……【変身】……です」

 

「す、凄いや……変身って……ハハッ」

 

 

 明密も出久も疲れている。明密は“個性”の過度な使用によって疲労しており、出久は変身していた明密の移動スピードに必死で耐えていた事によって疲弊していた。

 

 そのあと天哉やお茶子たちも到着するが、八百万が到着した所を目撃すると八百万の背中に峰田が“個性”を使用して引っ付いており楽していた様だ。片方の頬に叩かれた跡と鼻血が出ている様子の峰田。

 

 八百万に頼まれた明密は、ゆっくりと立ち上がり峰田の“個性”である【もぎもぎ】の部分だけを密度操作で消して峰田の体操服の襟を掴んで離す。疲れた様子を醸し出しながらギャーギャーわめいている峰田を密度操作した左手で少しばかり脅していると、峰田は黙った。

 

 しかし峰田を持ったまま明密はフラフラとしていて、今にも倒れそうな所を八百万は明密の後ろに回り支えた。うっかり峰田に何かされない様にという事も踏まえた上での行動だったそうな。この事に峰田は憤怒の表情を浮かべていたが支えられていた間に明密の【回復】が作用してきたのか、ふらつきも治まった明密は即効で殺気を出したそうな。

 

 明密はゆっくりとだが八百万に振り向き、感謝の言葉を述べた。

 

 

「ありがとうございます、八百万さん」

 

「いえ。倒れそうな場合は地面との衝突を避ける為に支える事は必要ですから」

 

「フフッ、そうですね。確かに必要な事ですよね」

 

「えぇ。……所で、疎宮さん。その2つのペンダントは一体?」

 

「あぁ、これですか?」

 

 

 首に下げている十字架と逆十字のペンダント2つを取り出し八百万に見せる。この2つのペンダントを見た八百万はこの様に述べた。

 

 

「これ、十字架と逆十字ですね。一体何処で買ったのですか?」

 

「これは……アーカードさんが朝テーブルに置いてくれた物なんです。僕にとっては御守りなんですよ」

 

「そうなんですか……ですが十字架単体なら兎も角、逆十字と一緒というのも変ですね」

 

「???」

 

「十字架は神などの聖なる存在を信仰する証で、逆十字は悪魔などの魔の存在を信仰する証なんです。だから相反する2つが同時にあるのも変だと思いまして」

 

「そんな意味が…………」

 

 

 2つのペンダントを手に置いて見た。だがその2つのペンダントは異様にも、輝きが増している様にも見えたそうな。

 

 因みにこの状況を見ていた峰田は、どこか絶望した表情をしながらブツブツ呟いていたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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