評価人数が減った影響で黄色から白に逆戻り……まぁ考えても仕方ないので本編どうぞ。
数分前に遡る。出久は尾白を見つけ峰田の個性である【もぎもぎ】を一本の鉄棒に足場の基礎を作るように設置し、その上に平たい瓦礫を乗せていき簡易的な足場を作る。それを尾白の所まで下ろす。
お茶子は個性を使用し瓦礫を浮かせて耳郎を発見する。
そんな中、天哉が血相を変えながら耳郎とお茶子に向かう。何事かと天哉に視線を向けると、天哉は耳郎とお茶子を巻き込みながら倒れる。その直後に後方から暴風が巻き起こり、この事態に全員気付いた生徒たちは暴風の起きた地点の方向に顔を向ける。
この事態にいち早く気付いた天哉は何事かと尋ねた耳郎とお茶子に答える。“敵”だと。
その事に驚愕する2人。しかし、さらに驚愕させる光景が広がった。煙が晴れると、そこにはマスクで顔を隠した大男と大男に捕まえられている轟の姿。
そして黒の長髪で顔全体を覆える大きさの灰色の仮面を被り、上半身を隠している黒のコートに灰色のズボン。見るからに女の姿がそこにはあった。
そして生徒全員が合流する。推薦組で屈指の実力を持つ轟の姿を目撃し、有り得ないと表情を曇らせる生徒たち。
大男は仮面の女に視線を向けると、女は相澤と13号の2人に近付く。相澤と13号は“個性”の使用で対抗しようとするが、その前にとてつもない暴風に襲われ女に顔面を掴まされた状態で女に連れていかれる。
とてつもない暴風の後に生徒たちが見えた光景は、その大男の周囲には何も無い事が判断できる。つまり、それほどのパワーを持っている事が理解できる。
しかしそんな状況でも、その大男に向かってくる者が1人。爆発によってスピードを上げて、爆発を用いて迎撃を仕掛ける者。『爆豪 勝己』であった。
迎撃の為に使用した爆発は片手で防がれるが、それでも尚諦めず大男に戦闘を挑む。その光景に無謀と思える者も少なくはない。
だが、それでも爆豪の行動を考える者も居る。少なからず『緑谷 出久』はそうである。連続で爆発を起こしてはいるが、それを片手で防ぐ大男。
大男はしびれを切らしたのか腕をスイングさせるが、爆豪は爆発の反動で上に避けて奇襲を掛ける。
その奇襲は成功し、爆豪は距離を取る。しかし大男の方は余り効いていない様に行動している。
距離を取った際、助けに行こうとしていた天哉に他の生徒の避難を要求する。
しかし他の生徒は爆豪の一言によりやる気を出し、目の前に立ちはだかる大男に向かい合う。
「一応全員、ヒーロー志望なんだけど!?」
その時出久はお茶子の一言で、ある事に気が付いた。明密の姿が何処にも見当たらないのだ。そう思った出久は大男に尋ねた。
「敵《ヴィラン》!!明密君はどうしたんだ!!?」
『ッ!!?』
「明……密?……あぁ、あのガキか。“あの女”が始末したぜぇ!!」
嫌な言葉が響いた。嫌な事実が響いた。しかしそれを否定したのは天哉であった。
「バカを言うな!明密君には回復系の“個性”があった筈だ!!それが有る限り明密君は負けない!負ける筈がない!!」
その発言を一喝する様に、大男は述べていく。余りにも受け入れがたい事を。
「確かにあのガキはしぶとかった…………しかし!流石に脳味噌を破壊されれば、あのガキも再生できなかったんだなぁ!!これが!」
『!!!』
この言葉で、戦意を喪失してしまう生徒たち。誰しも膝を着き、絶望の淵に追い詰められた事で目の光を失っていく者は多かった。
ただ1人を除いて。
「ぬぉ!?」
「チィ!」
謂わずもがな爆豪であった。たった1人だが、他の者とは違う行動を取っていた。そして叫んだ。
「テメエら!!それでもヒーロー志望って、よく言えたなぁ!!アァン!?」
「たった1人殺されて戦意喪失って、どんだけ糞メンタルなんだよ!!」
「ヒーローには他の奴が死ぬ事なんて可能性としてあるだろ!!」
「だったら燻ってねぇで殺された奴の無念を晴らす為にコイツをぶっ倒しゃあ良いだろ!!糞が!!」
叫んだ。その言葉を叫んだ。その言葉に肯定の意思を持ち、立ち上がっていく生徒たち。気が付けば全員が立っていた。明密の無念を晴らすために。弔い合戦を行う生徒たち。
大男は拳圧で地面を吹き飛ばし、その地面の破片で攻撃する。これには青山の【ネビルレーザー】と切島の【硬化】、砂藤の【シュガードープ】によって破壊される。
その後に耳郎は【イヤホンジャック】を大男に向けて使用し、瀬呂の【セロファン】と八百万の【創造】で大男を拘束した後に合図で出久、天哉、障子、常闇が大男に向かった。
しかし大男は拘束を解いた影響の風圧で吹き飛ばす。辺りに煙が巻き上がり、それが少し晴れると大男の後ろから爆豪が奇襲を仕掛けるが回避される。
一瞬表情を曇らせるが、もう一度爆発を使用する。しかしこれも回避され、大男は腕を振るうが爆発のスピードで避けられる。そして爆発で横移動した後、もう一度攻撃を仕掛ける。これを何度も何度も繰り返していく。
この間に出久は咄嗟のアイデアを思い付く。それを天哉、峰田、お茶子、梅雨に伝える。
爆豪は大男が放つ風圧を諸に受けて距離を取られながら仰け反るが、踏ん張って堪える。しかし如何せん動きすぎて肩で息をするまでの状態になった。
「ふぅ……流石に疲れてきたな。そろそろ終めるか」
肩をパキパキと鳴らしながら言う大男。しかし爆豪は何時もの口調を崩さずに大男に向かった。
それと同時に出久も走り出した。お茶子の手に触れ軽くさせた後、合図で梅雨に投げ飛ばしてもらう。
爆豪が大男に爆発を使用し、煙を発生させる。煙が晴れると後ろから出久が飛ばされて来た。そして右手に掴んでいる峰田の【もぎもぎ】を突き出すとお茶子は個性を解除させる。そして【もぎもぎ】を轟の背中にあるリュックに付けて轟を救出する。
出久は救出した後、足でブレーキを掛け右手をデコピンの形にさせて思いっきり放つ。
それはとてつもない風圧となって大男に衝突するが、それでもビクともしない。諦めかけていた時、爆豪が大男に突っ込み両手で大規模の爆発を起こす。
煙が立ち込むが、その煙から爆圧によって吹き飛ばされる大男。その大男の視線の先には、【もぎもぎ】の貼り付けられた瓦礫の一部があった。それに衝突し、離れない。つまりは捕まった。
そう誰しも安心しきっていた所に、その仮面の女が現れる。その女は大男に近付き、瓦礫に触れる。
するとどうだろう?その瓦礫が一瞬にして消えたではないか。しかも【もぎもぎ】ごと。
その光景に最早戦う気力さえ残っていない状況の中、女は大男に合図をし大男は去っていった。残された女は女性特有の高い声でこう告げた。
「あの大男から話は聞いておられるでしょう。私は1人、貴方たちの仲間を“殺しました”」
「ですが私は今、貴方たちの前に立ちはだかっている。それは何故か?」
「“貴方たちとの『殺し合い』”をしたいのですよ。仲間が殺されてさぞかし辛いことでしょう。そこで私がチャンスを与えに来た。それだけでございます」
とてもとても挑発的な態度を取る女。あろう事か、この女は“ただ殺し合いをする”為に全員の前に現れたのだ。仮面越しに不敵に笑い響く声がこだまする。
勿論、この言葉に対し苛立ちを覚える者も少なくは無い。今すぐにでも、この苛立ちの原因である女を“倒しに行きたい”と考えている。
しかし思った通りの行動をしたのは、これまたたった1人だけ。爆豪だけ。
「ごちゃごちゃウッセェんだよ!!死ね!糞アマ!!」
爆発。女に向けて爆発を使用し先制攻撃を仕掛ける。仕掛けたのは良かった……が、煙が晴れると女は片腕で防御していた。また爆発を女に当てるため、爆発で上へと回り込み女に爆発を使う。
だがそれでも片腕で防御される。苛立ちを覚えている爆豪は女の後ろに着地するが、それを狙っていたかの様に瞬間的に距離を縮められ掌打を腹に入れられる。
そして爆豪の腹から女の手が退けられる。すると爆豪は動かないまま前に倒れ込んだ。この事態に誰しも目を見開く。
そして女は動きだした。一瞬にして消えたと思いきや、一瞬にして背後に回り込まれ誰しも倒れていく。それが何回も何回も続き、誰もが倒れていく様を見ていく生徒たち。
そして現在残っているのは出久、口田、尾白、芦戸、天哉、葉隠のみ。そしてその残された者からも犠牲者が出る一方である。
しかし、ここで考えているのが出久だ。彼はどんな状況だろうと打開策を見つけていく生徒である。そして、1つの考えに達する。
「飯田君!背中合わせにして立ち回って!」
「!成る程!」
出久と天哉は背中合わせの状態になり、警戒を続ける。
「(相手は必ず消えたと思ったら後ろに居た。でも全部“後ろに居たんだ”。つまりは必ず後ろに来るから、背後を塞げば自ずと……ッ!来た!)」
出久の思惑通り。女は出久の真正面に立ち突っ込んできた。しかし女の向かう速度が尋常ではなく、腕に力を溜める事すらままならない。だがそれでも、出久は手と腕に力を込めて打ち放つ。
「SMAAAAAAASH!!!」
全力と謂わんばかりの威力を放つ。それにより異常なまでの風圧が起き女の姿が巻き起こる砂塵によって隠れられる。そして、出久は自身の変化に気付いた。
“腕と手が負傷していない”事に気づく。しかし、その変化に気付いたのも束の間。出久は腹部に手の感触を味わったと同時に動けなくなり、そのまま前に倒れ込んだ。
「緑谷君!!」
名前を呼んだ天哉も背中に手の感触を覚えたあと、前に倒れ込んだ。
そして気が付けば全員倒れており、誰しも動けずに居た。
女は溜め息を付いたあと、手のひらを合わせた。
すると今まで動けなかった生徒全員が動けるようになっていた。その女は先程大男が生み出した穴の中心に移動した後、口を開いた。
「皆さん……もう少し出久君を見習ってはどうですか?」
『ッ!!?』
女から発せられた声は、確実に聞き覚えのある声であった。女は仮面を手に取り、顔から外す。
髪にアホ毛は無いうえ長髪であるが、何時ものタレ目を見て確信する。前に出ている髪を後ろに回し、自らの視界を広くさせる。
『明密!?/明密君!?』
紛れもない明密本人である。女っぽくなっているが、それでも雰囲気は何処か感じとる事ができる姿となっていた。
生徒全員が明密の元に集まるが、1人だけ先にキレている生徒が居た。
「オイこら偽善者!!何でテメエがんな事してんだよ!?」
「爆豪の言う通りだ!何で明密がんな事してんだよ!?」
爆豪に続いて切島が明密に物申した。爆豪は答えによればタダじゃ済まさないとか何とか。そんな挑発に乗らずに淡々と真実だけを述べる。
「今回の件はオールマイトの発案にございます。因みに先程の大男がオールマイトです」
『オールマイトォ!!?』
誰しも驚き叫ぶ中、またもや淡々と言葉を綴っていく明密。その表情は普段の様ににこやかになっていた。
「皆さんの成長ぶりを確かめたいと考えていたオールマイトが僕に協力を依頼してきたんですよ。あと、轟君もです。ほら」
明密が指差した方向を生徒全員が見ると瓦礫の上に轟、相澤、13号が普通に立っていた。恐らくはグルであったが、明密に臨戦態勢になっていた事から相澤と13号は知らなかったようだ。この事に生徒全員がオールマイトに殺意を覚える羽目になりオールマイトが次回のヒーロー基礎学で辛辣な言葉を言われるのは、また別の話。
今度は明密の容姿について峰田が尋ねた。
「なぁ明密よ、何でそんな格好なんだ?」
「これですか?まぁ先ずは正体を隠すためですね。流石に男の状態のまま現れると雰囲気でバレそうだったので」
「いや雰囲気でバレるってよぉ……そんな奴居んのかよ?」
「一応……耳郎さんにバレました」
少しだけ目線を逸らしながら苦笑いで答える明密。その事を聞かれていたため、女性陣は耳郎に視線を集中させていた。
次は上鳴が明密に質問を投げ掛ける。
「それよりよぉ……この髪どうしたんだよ?どうやって長髪にしたんだ?」
「これですか?密度操作で空気を用いて伸ばしたんですよ。お陰でモフモフですけど」
髪をときながらそう告げる。あまり長髪には慣れていない明密は、うざそうに思いながら長髪から短髪に戻す。そして何時ものアホ毛もピョコンという擬音が似合う様に立つ。
そして時間は過ぎていき、放課後になり皆帰ったそうな。因みに明密の処罰についてだが、オールマイトが発端なので軽くさせてもらったそうな。『休日に女装して町を徘徊する』という明密にとっては1つの拷問に。