密疎の狩人とシュレーディンガーの吸血鬼   作:(´鋼`)

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№2~3 脆すぎた心

『雄英高校 会議室』

 

 USJ襲撃から翌日の事。この日と明日は雄英高校は臨時休業となっている。そしてここ会議室では根津校長、18禁ヒーロー【ミッドナイト】、ブラッドヒーロー【ブラドキング】、【スナイプ】、そして【オールマイト】が。

 

 さらには政府警察庁から3名程の役人。そして進行人は【塚内直正】という警部が行う事になった。しかし塚内警部はこの状況に戸惑いを隠せずに居た。

 

 そしてここに似つかわしくない“人外”が1体。机に足を掛け、如何にも傍若無人さを醸し出している“元”吸血鬼である【アーカード】。

 

 ヒーロー、政府役人、塚内警部、そして元吸血鬼が居るというカオスな場となってはいるが話は敵連合のUSJ襲撃事件の事に切り替わる。

 

 

「で、では!今回USJ襲撃事件に関わった敵幹部に関してですが……先ずは……えっと「アーカードだ」えー、アーカードからの情報によれば手の様なアクセサリーを付けた男の名前が『死柄木 弔』という男。“触れたものを破壊する個性”の持ち主ですが、役所に確認してもそれらしき個性届は見つからず」

 

「裏の人間……か。ここまで侵食されていたとは」

 

 

 政府の役人がそう呟く。今回の事態の危うさを感じている。しかしそれを一喝したのは、ずっと不敵な笑みを浮かべながら机に足を掛けているアーカードであった。

 

 

「ハッ、これぐらい直ぐに気付いて欲しいものだ」

 

「ちょ、アーカード君!」

 

 

 オールマイトがアーカードの発言に対して政府の役人とアーカードを交互に見ている。政府の役人たちはアーカードを睨み付けているが、アーカードは椅子から立ち上がり傲岸不遜に笑い続けながら政府の役人に物申した。

 

 

「だがそうだろう?貴様ら政府も、この様な事態の予測をしていれば危険な目に遭わずに済んだ。しかも今回は、甦っているがアケミツが1度死んだのだぞ?大切な大切な吸血鬼狩りが1度な」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

「だろう?オールマイト」

 

「…………あぁ。そうだ」

 

 

 オールマイトの肯定。これには驚きを隠せない教師陣と政府の役人、塚内警部も何も言えなかった。甦ったとはいえ、雄英で死亡した生徒が居るのだから。オールマイトも助けられなかった……否、逆に『疎宮明密』という生徒に助けられたのだ。脳無の攻撃から、自分の身を呈してまで。

 

 その事を考えるだけで自然と手に力が入る。受け入れ難い真実だが、それでも受け止めなければならない。

 

 

「だが、これでアケミツは殺されて死亡って事は無いだろうな」

 

「元吸血鬼、一体どういう事だ?」

 

 

 政府の役人である若い男がアーカードに尋ねる。答えは至極単純な、それでいて不可解な答えでもあった。

 

 

「アケミツに“個性”の発現が確認された、と言えばどうする?」

 

「ば、バカな!個性は1人1つの筈だ!例外としてA組の生徒に1人居るが、あれは遺伝子によるものだ!本来1つであった人間が今さら“個性”を発現させるなんぞ有り得るか!」

 

 

 ヴラドキングの言っている事はごもっともである。確かに“個性”というのは産まれた時に両親のどちらか、または両方の個性の複合か、あるいは無個性として分類される。明密は産まれた時は確かに【密度操作】という個性だけだったが、吸血鬼狩りによってアーカードを個性の一端として登録したのを除外すれば有り得ない話である。

 

 しかしアーカードはそれを真っ向から否定する。オールマイトに視線を向けると肯定する様に頷いた。そしてアーカードは明密の個性増加について話す。

 

 

「先ずUSJでの襲撃の事。襲ってきた『対オールマイト兵器』もとい『デイ・ウォーカー』の攻撃を受け、見るも無惨な姿に成り果てたアケミツ。しかし絶叫に近い雄叫びを挙げた奴が居たのさ。それがアケミツだ、アイツは死地から甦ったのさ」

 

「となると……発現した個性は“回復系”になるのかね?」

 

 

 政府の役人である初老の男がアーカードに尋ねる。それに関しては頷いて肯定したあと話を続ける。

 

 

「恐らく発現した個性は【回復】と【再生】。この“2つ”によってアケミツは甦ったと言っても過言ではない」

 

「ちょっと待って“2つ”!?」

 

 

 根津の驚きようは分かる。16になって一気に2つ個性を発動する前例が無いため、突拍子もない話に聞こえてしまうだろう。しかし今現在明密は生きているのだ。それに逆に考えれば“この2つ”が無ければ死んでいた事になる。それが何よりの証拠だと提示するアーカード。

 

 その場に居る者は何も言えずに呆然としていた。しかし塚内警部が話を元に戻した。敵幹部の内の黒霧、そしてプロフェッサーと呼ばれた男の事を報告すると真剣に悩む教師陣と政府の役人たち。

 

 暫く議論を続けていき、最終的には敵の取締り強化等を行い監視の目を増やす方針で行くらしい。勿論敵を見つけた場合はヒーローへの連絡をするという事を前提として。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アーカード君、少し良いかな?」

 

 

 アーカードは帰り際の廊下で後ろからオールマイトに声を掛けられる。アーカードは振り向いて話をしていく。

 

 

「何の用だ?オールマイト」

 

「あぁ……まぁ、疎宮少年の容態はどうなってるかとね」

 

「そんな事か。アケミツは今は熱も下がりつつある。それと、様子を見たければ自分で行って見てこい」

 

「……あぁ、そうさせてもらうよ」

 

 

 アーカードはその場から消えて居なくなる。オールマイトはアーカードが居た場所を見つめながら独り言を呟く。

 

 

「…………全くもって、情けないなぁ。生徒に守られるなんてな。……今まで経験した事が無いよ」

 

 

 オールマイトは自身の掌を見た。平和の象徴と呼ばれているからか本来なら助ける筈だった所に、明密は脳無の攻撃からオールマイトを庇ったせいで殺されてしまった事を改めて痛感する。その事実を感じながら、オールマイトは明密の居る病院へと歩み出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アーカードが明密の入院している病院へと転移する。人間の規則の中で生きているアーカードは、受付から許可証を貰い明密の居る病室まで歩く。

 

 明密の病室まで到着する。因にだが明密は個人部屋で入院している。スライド式のドアを開けると、アーカードの目にはベッドの上でスヤスヤと寝息をたてている明密と椅子に座り側に居る飯田天哉が映った。

 

 天哉は開かれたドアの方に顔を向けると、アーカードの存在に気づく。それを見た天哉は立ち上がりアーカードに一礼する。

 

 

「来ていたのか、飯田天哉」

 

「えぇ。入院沙汰と聞いて直ぐに」

 

「そうか」

 

 

 アーカードは天哉の向かい側に座り明密を見た。昨日搬送され夜に見に行ってみた時より大分落ち着いているのが確認できた。腕に点滴のチューブが付けられていた。

 

 アーカードは飯田天哉に尋ねる。

 

 

「何時から居た?」

 

「朝方から。その時は少しだけ目覚めてはいましたが……起きた途端に色々言われました」

 

「どんな風に?」

 

 

 飯田天哉は少し顔をしかめながら、それでいて何処か言い難い雰囲気を醸し出しながらもアーカードに伝えた。

 

 何でも、明密が目覚めて天哉を見た途端に明密の表情が変わり何故ここに居るのかを聞かれた。見舞いで来たと伝えると、今度は退室をしてくれと泣きながら懇願されたそうだ。熱の影響もあるため泣き止んで落ち着くと寝てしまったそうな。

 

 

「驚きました。あんな大声で言われた事が無かったので」

 

「……確かに、普段のアケミツは何処と無く優しい雰囲気を出していたからな。そう思うのも無理はない」

 

「えぇ。それに……あの時の明密君は、まるで別人だった」

 

 

 あのUSJで見せたもう1人の明密。『吸血鬼を殺す時の明密』を見てしまった全生徒。飯田天哉も、その内の1人だ。

 

 思い出されたのは昔の気弱であった明密の事。しかし今では別人へと変貌し、何処か遠い存在となった明密を天哉は思い浮かべていた。そんな天哉に対し、アーカードはある事を尋ねた。

 

 

「飯田天哉、お前に問おう。『明密が殺しをしていた』事について、どう思う?」

 

 

 飯田天哉は考え込む。そして、答えを出す。自分なりの受け止め方を。

 

 

「正直言って、犯罪行動をしていた明密君と貴方を許してはおけないし雄英にも置かせたくないです。ですが……個人的には、明密君を放ってはおけない。こんな風になるまで無茶をする親友を、放ってはおけない」

 

「…………そうか、そんな答えか」

 

 

 飯田天哉は椅子から立ち上がりアーカードに一礼をしてから部屋を退出しようとするが、アーカードに少しだけ止められた。そして尋ねられた。

 

 

「もう帰るのか?」

 

「……えぇ、昼には恐らく誰かやって来ますから」

 

「…………そうか。すまないな、引き留めて」

 

「いえ。では」

 

 

 天哉はスライド式のドアを開け外に出ていく。扉が閉まり終わるとアーカードは溜め息を吐きながら明密を見る。時折苦しそうな表情を浮かべるが、どうしたら良いかは知らない。自分が人間だった頃の生い立ちには、この様に心配してくれる者すら居なかったと思い出すアーカード。

 

 少しだけ羨ましく、そして明密をまだ『甘い人間』と思いながら明密の額に触れる。

 

 そうした時の明密の表情は、少しだけ落ち着いている様にも思えた。生死が判明してない存在とはいえ、アーカードは人間から死んで吸血鬼になった。死人の冷たさというのだろうか。その手からは明密の体温がより鮮明に感じられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼頃になって目覚めた明密はアーカードが自身の手を額に置いている事を理解する。何故だか少し、落ち着いている様子だった。

 

 

「アー……カードさん、来てたんですね」

 

「あぁ。中々退屈だったから置いてみたが、熱すぎて火傷しそうだ」

 

「なら触らなければ良いじゃないですか」

 

「確かにな」

 

 

 明密はアーカードの手を退かし、ゆっくりとだが上半身を起こす。すると、アーカードは椅子から立ち上がり頭をくしゃくしゃにしながらもゆっくりと撫でた。

 

 

「…………アーカードさん、何か変な物食べました?」

 

「私は食べたとしても変にはならん。ただ……そうだな、よく分からん」

 

「いや分からないって……?」

 

 

 アーカードは明密の頭から手を離し、少しだけ上を見つめながら言葉を綴っていく。

 

 

「人間の気紛れ……ともいうべきか。長い年月を人間と……我が主たちと共に暮らしていたせいか、染まったのかもしれん」

 

 

 明密はただただ呆然とアーカードを見つめていた。何時もの様な傲岸不遜な笑みは無く、何処か懐かしい思い出がふと思い出された様な……楽しそうな笑顔であったから。

 

 アーカードは視線を明密に戻し口を開く。

 

 

「アケミツ、これから私は少しだけ我が家へ帰る事にする。少々用事が出来たのでな」

 

「分かりました」

 

 

 明密は笑顔をアーカードに向ける。慈悲深い笑みをしていた明密を見ながら、アーカードはその場から消え去った。

 

 一方の明密は先程までアーカードが立っていた場所からベッドへと視線を移し、少しだけだが悲しそうな表情を浮かべる。

 

 親友である飯田天哉に、暴言を撒き散らすかの様に泣きながら言い放った言葉。その言葉の意味は自分でも理解できている。『吸血鬼狩りを知られたくなかった』、『こんな自分を見てほしく無かった』から。その事実をあの場で見せてしまった。他者から見れば仕方の無い事だったのかもしれない。

 

 何せ吸血鬼があの場に居たのだから。その吸血鬼を放っておいて、どうやって吸血鬼狩りを名乗るのか。そして、それを今で隠し続けていた。雄英に入学する前はこんな感じにはならなかった。

 

 あの高校は“居心地が良すぎた”。だからこそ“知られたく無かった”。新たなクラスメイトが居る“あのA組”の居心地が良すぎたのだ。だからこそ皆に知られて、恐れられたく無かった。殺している様を見せたくなかった。

 

 不意に頬を伝う熱い何か。その原因を手で触りながら辿って行くと、目から涙が零れていた。その涙は、どうやっても治まらなかった。

 

 ガラガラとスライド式のドアが開かれる音が聞こえた。見ると、相澤が来ていた。左手にはコンビニのビニール袋と思われる物をぶら下げていた。明密は着ている衣服で涙を拭いたあと相澤に視線を戻す。

 

 

「なんだ、お早い目覚めだな」

 

「今は昼頃ですよ?早くありませんよ、寧ろ遅すぎです」

 

「そうだな、起床時間が昼なんて合理性に欠ける」

 

 

 相澤は明密から見て左隣の椅子に座る。そして座ると何故か相澤はビニール袋からクリームパンを取り出し、そのクリームパンを食べ始めた。何故生徒の目の前で食事をしているのかと考えた明密だが、相澤の一言で考えが変わる。

 

 

「退学するか?」

 

 

 一瞬だが明密の体がビクリと震えた。クリームパンを咀嚼しながら言った相澤の口はモゴモゴしているが、視線は明密から逸らさなかった。

 

 

「………………考えてはいます」

 

 

 震えながら明密は言う。まだ相澤の口にはクリームパンを咀嚼している様子が見てとれるが、明密は言葉を綴っていく。

 

 

「あの様な光景を皆に見せてしまった事に変わりありません。それによって皆さんに支障がきたす事を考えれば……僕が退学すれば良い話です「そりゃ無理だな」」

 

 

 一瞬で否定された明密は長座対前屈の様に前向きに倒れる。ガバッと上半身を起き上がらせようとしたが、熱のせいで頭がクラクラしてしまう。そんな明密を余所に淡々と話す相澤。

 

 

「先ず明密、お前が入学したのは『吸血鬼狩りの隠蔽』を条件としてだよな」

 

「そ、それは……そうですが……」

 

「逆に考えれば、お前が退学すると『吸血鬼狩りの隠蔽』が打ち切られるという事になる。そうなりゃ民衆は騒ぎだしてパニックを起こす可能性だってある訳だ。それこそ非合理的だ。つか被害がデカくなる事もありうる」

 

 

 何も言えなくなった明密。確かに明密が入学した条件は『吸血鬼狩りの真相隠蔽』という政府の情報操作という大掛かりなもの。その条件を呑んだ明密が勝手に条件を破る事は真相を明るみにさせてしまう事と同じ。何時かボロが出てパニックを起こす人間だって居る。

 

 その事実を相澤によって気付き、そして葛藤が生まれた。自分は何をすれば良いのかという葛藤が。このまま学校に行くのか?それだと自分に向けられる視線というのが気になってしまう。退学するのか?それでは吸血鬼狩りの真相が明るみに出てしまう。

 

 そんな明密を葛藤に陥らせた張本人である相澤は、今度はビニール袋からキウイジュースを取り出し明密に投げる。

 

 

「おい明密、投げるぞ」

 

「うぇ?おっとと……って、これ僕が何時も飲んでるヤツじゃないですか」

 

「飲めるか?」

 

「祖父母から聞いて、医者は少しぐらいならと」

 

「そうか」

 

 

 1つ目の独特のプラスチックの蓋を取り外し、2つ目のキャップを回して開けて少しだけ飲む。よく朝に飲んでいるので何時もの味が喉を通っただけで落ち着いた明密。少しだけホッと溜め息を吐く。

 

 相澤もビニール袋から同じ容器に入っているグレープフルーツジュースを飲みだす。珍しそうに相澤を明密が見ていたため問いかける。

 

 

「……なんだ?」

 

「いえ、そういえば何時も飲料ゼリーの相澤先生が今日は菓子パンとジュースっていうのが珍しくて」

 

「失敬だな、俺だってこういう時もある……所で明密」

 

「はい?」

 

「明後日学校来い」

 

 

 一瞬だけ明密が固まる。手からボトルが落ちるがキャップは閉めていたため中身が落ちることは無かった。錆び付いたロボットの様に首を相澤の方へと動かし尋ねた明密。

 

 

「…………な、何なんですか?今日は誰か変な行動する日なんですか?」

 

「何故それに至った?」

 

「アーカードさんが頭撫でたり額に手を置いてたりしてたので…………」

 

 

 一瞬相澤の動きが止まったと思いきや、そのままグレープフルーツジュースを飲みだす。そして話題を変えた。

 

 

「ゴホン……あー、明密。明後日学校に来い、体育祭の説明あるから」

 

「……1つ聞きますけど、何故に僕を学校に?」

 

 

 相澤はボトルのキャップを閉めてビニール袋に入れた後、明密に呆れた様子を見せながら話す。

 

 

「そりゃお前、先生って言うの生徒だけだろ」

 

「…………………えっと?」

 

「生徒じゃなきゃ先生なんて言わねぇよ。それ以外に何か理由でもあるか?」

 

 

 明密の心のモヤが少しだけ晴れた様な気がした。深く考えていなかったが、相澤は明密を『吸血鬼狩りという殺し屋』という前に『一人の生徒』として見ていた事に気付いた。まだ相澤“先生”と言った明密の事を“生徒”として。それに気付いた明密の目から涙が浮かび、頬に伝っていくのが分かった。

 

 明密は頬に伝う涙を拭き取るが、感極まって目を押さえて涙をボロボロ流し続けた。嗚咽が止まらず、鼻水まで出てくる始末だが、不思議と心は軽く感じていた。

 

 その後、やって来た筋肉質オールマイトと出久、切島と耳郎が明密の泣いている姿を見て誤解していた。即急に相澤は否定するが切島と耳郎だけは相澤に対し冷ややかな視線を向けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……失礼しました。皆さん」

 

 

 泣き終えると集まった4人と相澤に対して謝罪をする。4人は滅多に見る事の無い光景だったため内心動揺しつつ、相澤の方に振り向き謝罪をする。相澤はどうでも良さそうな表情をしながらコンビニのビニール袋を持って退室しようとする。

 

 

「相澤先生」

 

「…………何だ?」

 

「明後日、ちゃんと来ます」

 

「……そうか」

 

 

 そんな会話のやり取り。それを終えると相澤は部屋を出てドアを閉める。それを見届けると、明密は残された4人を見ながら尋ねる。

 

 

「皆さんはどうしてここにいらっしゃるんですか?」

 

「皆言いたい事があって来たのさ、疎宮少年」

 

 

 筋肉質のオールマイトがそう言った。先に言葉を綴ったのはオールマイト本人からだ。

 

 

「先ずは私からだ。疎宮少年、身を呈して守ってくれてありがとう。よもや私が助けられるなんて経験しなかったなぁ!疎宮少年がヒーローに見えてしまったよ!HAHAHAHA!!」

 

 

 そう高らかに笑うオールマイトを見て、優しく慈悲深そうな表情をオールマイトに向ける明密。この言葉だけで嬉しく思っていた。

 

 

「次は俺だな!あー……その、何だ。明密、生きててホッとしたぜ」

 

 

 明密は目を丸くしたあと、少しだけクスクスと笑っていた。それを見た切島は明密に尋ねた。

 

 

「ちょ、明密!何で笑ってんだよ!?」

 

「い、いえ……フフッ。「生きててホッとした」なんて普通言いませんよ」

 

「し、仕方ねぇだろ!緑谷が降りた場所を見たら、明密が放送事故レベルになってて倒れてたんだからよ!」

 

「あれには僕も何にも言えなかったよ……」

 

「確かに……そうですね。ご迷惑お掛けしました」

 

 

 切島と出久に向かって、笑顔を向ける明密。USJでの悲惨な姿も、今や面影を残さずに存在している明密。

 

 そして最後、耳郎からの言葉。

 

 

「あー……あの時、ウチら助けてくれてありがとうな。流石に“あの光景”は忘れられんけど……あ、あとこれはウチ個人の話なんやけどな」

 

「去年の12月、敵に捕まった時に助けてくれてありがとう。疎宮」

 

 

 突如カミングアウトした耳郎の発言によって、聞いていたオールマイト、出久、切島、そして明密が目を見開いた。3人は何の事か分からなかったが、明密は答えていく。

 

 

「……なん……で?あの時、顔を隠して口も隠してた筈なのに」

 

「あー気付いた理由?んー…………強いて言えば、雰囲気が似てたんからかな?助けてくれた時の背中と、疎宮の背中が似てたし」

 

 

 耳郎からは去年に起きたデパート襲撃事件の事を話してくれた。明密本人は誰にも気付かれない様にしていた筈なのに、まさか雰囲気で判断されるとは思っていなかったから。耳郎は不意に明密の手を握りしめ、再度お礼を言った。

 

 

「疎宮、2度も助けてくれてありがとうな」

 

 

 明密は微笑んだ。こんな自分でも誰かが周りにやってくるという事を認識して。そして同時に、天哉にも謝ろうと思う明密であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある某所。もうすぐ“午前5時”になる時に大きすぎる屋敷を1人の女性が徘徊していた。その女性の肩にポンッと何か置かれる。しかし怯える様子も無く後ろを振り向く女性。

 

 

「お帰りなさいマスター」

 

「あぁ、久しいかな。セラス」

 

 

 セラスと呼ばれた女性はアーカードをマスターと呼んでいた。しかしアーカードは今回帰ったのは用があるから。

 

 

「セラス、あの姉弟は起きているか?」

 

「あの子たちですか?多分寝てると思いますけど……何か?」

 

「少々、私が旅行兼命令で訪れた日本で厄介な事が起きた」

 

「厄介な事……ですか」

 

「あぁ、『Day Walker』。“昼を生きる吸血鬼”が現れた」 

 

 

 その場からは緊張が走る。そしてアーカードはセラスと呼ばれた女性の横を通り、とある部屋へと歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ヤン「ヤンと!」

ルーク「ルークの」

「「後書きコーナー!」」ドンドンパフパフ

ヤン「何と!今回は8000文字オーバー!作者詰め込みスギィ!!」

ルーク「やっと出てきたドラキュリーナ……そして新たなオリキャラの予兆……ここまで詰め込むか、普通?」

ヤン「まぁこれで次回からは『雄英体育祭』編に続く事ができるなぁ、この話書くのに3日掛かるってどういう事だよ?」

ルーク「ま、何にせよ。HELLSINGのキャラが登場できた事を祝福しようじゃないか。そしてこのまま私も出演され「される訳ないじゃん、バカなの?」」


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