大暴れの転生者   作:月光花

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気まぐれと、書いてみようかなと考えたものです。

よろしければどうぞ。


食うのに困って入った職場がまさかのカルト教団だった その1(シャイニング・レゾナンス)

  Side ???

 

 皆様は、カルト教団という存在をご存知だろうか。

 

一般的に広く知られている定義としては、新興宗教の一種で反社会的な行為を行う信仰集団を指し示すものだ。

 

まあ、その新興宗教の中には伝統的な宗教から派生したものも存在しており、明確な線引きは微妙に難しいものなのだが。

 

多くの人が、この存在を単語として知っていても実際に見たことはないだろう。

 

かく言うオレも数年前まではその存在を知識の中にある単語の1つとしてしか認識していなかった1人である。

 

何故過去形なのかというと……オレが今現在そのカルト教団にいるからである。

 

その名を、ロンバルディア帝国・刻印教会。

 

ロンバルディア帝国が持つ軍事力の要であり、その力は国王からも絶大な信頼を得ている。遠征においては負け知らず、無敵の強さを誇ると言われている。

 

信仰の対象は、古の時代において、ハイエルフとドラゴンに敵対し、 神竜大戦(ラグナロク)と呼ばれる戦争を引き起こした『神』と呼ばれる存在だ。

 

なんでも、その強大な力で世界を造り変えようとしたらしいが、「親ドラゴン派」と呼ばれるハイエルフと、最高位の力を誇る5体の竜、 世界竜(ユグドラシル)によって封じられたそうだ。

 

そんな遥か昔の時代に君臨した 怪物()を崇め、再びこの世に蘇らせる。

 

それがこのカルト教団……刻印教会の信仰であり、最終目的でもある。

 

加えて、その中でも特に異質、かつ常軌を逸した集団が存在する。

 

 

刻印教会特務騎士団「ベイオウルフ」。

 

 

刻印教会の中でも選りすぐりの 実力者(化け物)が集う部隊であり、どういうわけかオレが所属しているSAN値直葬のクソッタレな職場である。

 

何せ、入団試験というのが「洗礼」と呼ばれる儀式であり、ジョッキに入った見てるだけで凄まじい嫌悪感を感じる赤黒い液体Xを飲めと言われた。

 

え? これ飲むの? 飲んだら合格ですって何だオイ。

 

飲んだら確実に何か起こるのが予想出来たし、入り口には剣の柄に手を添えた数人の兵士が黙って待ち構えていた。

 

逃げたら殺すと、そういうことですかコンチクショウ。

 

ついでに部屋の隅のカーテンの奥から漂う凄まじい血の匂いは何なんですかね? カーテンの向こうで狩って来た動物の血抜きでもしてんの? それとも死体が山積みにでもなってんの?

 

というか、この時点で分かり切ったことだけど、この組織マトモじゃねぇ。

 

此処で、改めて自己紹介だ。

 

オレの名前はエリクス・ベルギス

 

『幻速の銃剣士』なんて2つ名を付けられた、刻印教会特務騎士団「ベイオウルフ」に所属する最高幹部の1人である。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

 メルギウス大聖堂。

 

今現在、ベイオウルフが皇帝の命令を受けて侵攻中の大陸、アルフヘイムに構えた帝国軍の拠点の1つであり、幹部クラスが集う本陣だ。

 

その聖堂の大広間には、オレを含めて全部で5人の人影があった。

 

「……全員揃ったようだな。では、これより皇女殿下が立案された作戦を伝える」

 

鉄靴と甲冑を鳴らして声を上げたのは1人の騎士。

 

顔に十字傷を刻み、刃物を思わせるような鋭い眼光を持つその男の名はゲオルグ・ザルバード。

 

オレ達ベイオウルフの団長にして、アルフヘイム侵攻の指揮権を任された 大司教騎士(アークパラディン)だ。

 

諸外国や帝国内部でも刻印教会の『犬』と畏敬の念を込めて言われているが、オレからすれば誤評も良い所だ。アレは『犬』なんて可愛らしいもんじゃない。その気になれば主人の首を躊躇わず食い千切る『狼』だ。

 

「作戦……? 世界竜(ユグドラシル)のドラゴンソウルも満足に発見出来ていないこの状況で、ですか?」

 

そう言ってゲオルグの発言に質問を投げたのは、分厚いローブを着込んだ1人の男。

 

伸び切った青紫色の髪で顔の殆どを隠し、口元はマスクで覆われ、見えるのは赤色の酷く濁った……ハッキリ言って腐った目をした左目のみ。

 

こいつの名前はヨアヒム・ルーベンス。

 

古代魔導研究の第一人者であり、生体科学や医術に天才的な能力を持っている。

 

既に帝国や刻印教会にもその能力を高く評価されており、「竜体力学」を活用した数多くの生体兵器を生み出している。

 

だが、研究実験以外のことにはまったく興味が無く、捕まえた人間を使って笑顔で人体実験をやらかす生粋の変人……マッドサイエンティストである。

 

オレも、ベイオウルフに配属となった際、こいつには実験とやらで酷い目に遭わされた。

 

と、そんな時に、オレはふと湧いて出た疑問を口にした。

 

「おい、ヨアヒム。お前がこの前まで連れてたあの子はどうした」

 

「あぁ、エトのことですか? あの子でしたら、腹立たしいことにアストリアの 竜騎士(ドラグナー)達に奪われてしまいましたよ……あの恩知らずめ……」

 

「お前がしたことのどの辺に恩を感じれば良いのか、オレにはさっぱりだがな。あの子には文字通り地獄からの救いだろうさ」

 

「何を言ってるんです!? 私がエトの研究にどれだけの苦労と時間を費やしたか! ああ、もうあの悲鳴を聞くことが出来ないなんて、何という悲劇!!」

 

もうやだコイツ。

 

オレの言葉に会話が噛み合って無いし、仕舞いには髪を掻き乱しながら天に向かって奇声を放っている。こう、某奇妙な冒険に出る吸血鬼の「WRYYYYYY!! 」みたいに。

 

まあ、元々コイツは大嫌いなので(むしろ好きな奴なんていないと思う)「ざまぁww」と嘲笑うだけで特に何の感情も湧かない。

 

それよりも、あのエトと呼ばれていた銀髪の子供。どうやらアストリア側に付いたようだ。

 

アストリアとは、このアルフヘイムに首都を持つ王国の名前。オレ達がこの大陸に進行してから8年近く争っている 敵国(・・)だ。

 

別にあの子とは大した付き合いがあるわけでも無い。

 

時々射撃の訓練を見てやったり、ヨアヒムが言う診断という名の拷問を怖がった時に匿ってヨアヒムの顔にキレの良いグーパンチを叩き込んでやる程度の仲だった。

 

だが、あの子にとってはこれで良かったんだろう。

 

この場にいるオレが言うのも何だが、 刻印教会(ここ)は立派な外道の集まり、もっと分かりやすく言えば『悪の組織』と呼ぶのが相応しい場所だ。

 

対してアストリアはそれに対抗する『正義の軍勢』。どっちが良いかなんて分かり切ってることだ。オレのように、 分かっていながら(・・・・・・・・)此処にいるわけでもないのだから。

 

「お前達、口を慎め。皇女殿下の御前で無様を晒すな」

 

そう言ったゲオルグの言葉に続き、黒い鎧を着込んだ少女が前に出る。

 

ツインテールに纏めた長い白髪を靡かせ、雪のように白い肌と美麗な容姿を持つ赤色の瞳は鋭い。

 

この少女こそ、ゲオルグが口にしたロンバルディア帝国第1皇女。

 

名を、エクセラ・ノア・アウラ。

 

最近になってアルフヘイムにやって来た本国からの視察者なのだが、実際は違う。

 

帝国が誇る生物型兵器、ドラグマキナを3体も連れてやって来た実際の理由は、8年近く時が経っても未だにアルフヘイムを手中に収められないオレ達を見かねた皇帝が派遣した新たな指揮官。

 

ちなみにドラグマキナとは、 神竜大戦(ラグナロク)において『神』が生み出した竜を指し示すもので、今生き残っているのは5体のみ。

 

その全てを帝国が高度な技術によって復活させ、あの姫さんが従えている。

 

姫さんが連れてきたのは、『皇女の三本槍』と呼ばれる3体。

 

“紅蓮槍龍”トリシューラ。

 

“氷蒼鉾龍”ゲイボルグ。

 

“雷戟轟龍”グングニル。

 

その他にも、本国にて皇帝を守護する『帝国の双剣』。“水天剣神”カリバーンと“魔剣竜王”ダーンスレイブが存在する。

 

「此度の作戦の目標は、アストリア王国の手中にある「空竜」のドラゴンソウルの奪取と首都である海上都市マルガの制圧。並びに、煌竜の捕獲だ」

 

つまり、敵国を完全に潰す、ということになる。

 

「随分と至れり尽くせりな作戦だが、具体的には?」

 

「基本的な陽動作戦だ。まず、敵の主力である 竜騎士(ドラグナー)達をクラヴァール平原まで引き寄せ、包囲する。この役目はゲオルグ、お前達に任せる。ゲオボルグとグングニルにも手伝わせよう」

 

「承知しました。では、 竜騎士(ドラグナー)の相手は、ゼストとエリクスにやらせましょう」

 

「うむ、その隙に私はトリシューラを連れて敵の首都を強襲する」

 

今名前の出たゼスト……フルネーム、ゼスト・グレアムはああ、と短く返事をする。

 

機動性を優先した鎧の無い装束を身に着けた白髪に深紅の瞳を持つ少年。

 

この場にいるメンバーの中で一番若い外見をしているが、その強さは帝国最強と呼ばれ、敵味方にもその恐ろしさが知り渡る程である。

 

「ゼストだけでなくオレも? 随分と過剰戦力だな。というかゼスト、お前もう煌竜に興味が無いんじゃかったのか?」

 

たしか前に一度戦って、『本気』を出したら圧勝した、とか言っていたが。

 

それからは竜に仇す者とか呼んでる奴を探していたはずだ。

 

「ああ、今でも興味ねぇよ。だが、メインディッシュを喰う為の条件だからな。本当の楽しみに、心が躍る戦いに有り付く為だ……上手くやるさ」

 

そう言って口元に浮かんだ狂気的な笑みを見て、聞かなきゃよかった、と心中で後悔する。

 

こいつの思考回路は、バトルジャンキーを通り越してサイコパスのソレだ。

 

ベイオウルフに転属されたからすぐ、こいつに銃剣を突き付けられて殺し合いをしたのは今では懐かしくもやってられない思い出の1つだ。

 

そんな奴と今もこうして普通に話していられるのは、ゼストの好敵手としての興味がオレから失せたからか、それともヨアヒムよりマシだからか。

 

「まあ、そういうわけだ。竜騎士(ドラグナー)の相手は俺だけでいいだろ。俺と 同格(・・)お前まで参加したら、勢い余って煌竜も殺しかねないしな」

 

「そうかい。なら任せた」

 

同格の部分を強調したゼストの声を無視し、オレは出口へと歩を進めた。

 

「エリクス、何処へ行くのだ?」

 

「それぞれの役割は決まった。なら、もうオレが此処にいる必要は無いだろう」

 

そう言って礼拝堂を出たオレは、真っ直ぐ自分の部屋に向かった。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

  Side Out

 

 「申し訳ありません。エリクスのヤツめが無礼な態度を……」

 

「よい。それよりも訊きたいことがある。ゲオルグ、先程ゼストがエリクスに口にした“同格”とはどういう意味だ?」 

 

部下の不敬を謝罪するゲオルグを手で制し、エクセラは質問を投げる。

 

問われたゲオルグは、その質問の内容に対して数秒の間を置いて返答する。

 

「どういう意味かと問われれば、そのままの意味にございます。アイツの実力は『本気』になったゼストと互角に渡り合えるほどですから」

 

ゲオルグの返答に、エクセラは一瞬耳を疑った。

 

あの男、エリクスが帝国最強と名高いゼストと互角の実力者?

 

エクセラの知る限り、ゼストは自分の従えるドラグマキナ、ゲイボルグを“一撃で”瀕死の状態に追いやった。

 

そんな規格外の強さを持つゼストと互角など、その姿をまったく想像出来ない。

 

「別に不思議なことじゃねぇだろ。アイツの「神の血」との適合性は俺と同じくらいに高かったんだ。その分、発現したスティグマの力はデカい」

 

特務騎士団「ベイオウルフ」には、特殊な入団試験が存在する。

 

教会内では「洗礼」などと呼ばれているが、その内容はごく単純。

 

「神の血」を飲み、生きていれば合格、死ねば不合格だ。ちなみに、合格率(生存率)は100人に1人の割合である。

 

その中で生き残った者は「神の血」が体質と合わさり、その者だけの特別な力「スティグマ」に覚醒する。

 

例えば、ゲオルグのスティグマはあらゆる致命傷を与えようと復活する不死身に等しい「超回復」。

 

ヨアヒムは対象を視ただけで思考の工程をすっ飛ばして解析し理解する「分析」。

 

ゼストは心臓に刻印を打ち込むことで普段は抑え込んでいる力を解放し、運動能力を始めとした全ての出力を何倍にもブーストする「強化」を持っている。

 

「懐かしいですね~……あの人がベイオウルフに入団してきた日のことは今でもハッキリと覚えていますよ。ゼストさんでも小さなグラス一杯分だったのに、エリクスさんはそれを無視してジョッキに入った「神の血」を一気飲みするんですから」

 

エリクス本人はやけくそになってグラスが目に入っていなかっただけなのだが、その時の教会内の混乱はそれは凄まじいものだった。

 

何せ、現存している貴重な「神の血」をたった1人の人間が全て飲んでしまったのだ。その知らせを聞いた当時のヨアヒムは唖然となって数分間の思考停止に陥った。

 

ちなみに、ゲオルグは「ファッ!?」と変な声を上げて気絶。ゼストは腹を抱えて大爆笑の後に面白そうな奴が現れたと考えていた。

 

「まあ、アイツの実力が見てみたいんなら、ドラグマキナを全部ぶつけてみたらどうだ? 揃ってぶちのめされるだろうぜ」

 

それだけ言って、ゼストも礼拝堂から姿を消した。

 

エクセラは何も言わずにしばらく考え込み、黙って礼拝堂を出ていった。

 

残されたのは、ゲオルグとヨアヒムの2人のみ。

 

「そういえばヨアヒム、お前はエリクスとゼストの戦いを見たことがあったのではなかったか?」

 

「ええ、確かにありましたよ。と言っても、私にはマトモに認識すら出来ませんでした。ああいうのを次元が違うって言うんですかね。ゲイルリッツ監獄の一区画が戦闘の余波で崩壊したくらいですし」

 

そう言いながら、ヨアヒムは遠い目をしながら天井を見上げる。

 

あの時、ゼストが気まぐれを起こして戦闘を中断しなければ、ゲイルリッツ監獄は今頃ただの瓦礫の山へと化していたかもしれない。

 

それだけ、2人の戦闘は凄まじいものだった。突如喧嘩を売られたエリクスは防戦に徹していたというのに、とんでもない被害が出た。

 

「あの2人がお互い『本気』で暴れたら、私達生きていられますかね? いや、「超回復」を持ってるあなたは死にはしないでしょうけど……」

 

「考えたくもないことだな。だが、恐らくその心配は無いだろう。裏切ることもな」

 

「おや、どうしてそう言い切れるんです?」

 

「ゼストとエリクスが正面からぶつかれば、間違い無くどちらかが死ぬ。だが、自身の死を引き寄せる戦いをエリクスは望まない。アレはそういう人間だ」

 

言ってしまえば、死ぬ確率が高い戦いはしない、ということだ。

 

ゲオルグがエリクス本人から聞いた話だが、刻印教会に入信したのも、元々は食うのに困っていたからという理由だ。

 

「洗礼」の詳細を知らされた時も、死ぬ確率が圧倒的に高い事実を知って激怒し、ゲオルグとヨアヒムを半殺しにしたくらいだ。

 

スティグマに覚醒し、とてつもない強さを手に入れた今でも、エリクスは心の底で死の恐怖に怯えている。

 

ベイオウルフが「悪」と知りながらもそこに居続けるのも、“こちらに付いた方が死ぬ可能性が低いから”である。

 

ゲオルグは知る由も無いが、その強い恐怖心は一度死を体験した“前世の記憶”が存在するからこそである。

 

「我々と敵対すればほぼ間違い無くゼストさんと戦うことになる。けど、ゼストさんと全力でぶつかれば高い確率で死ぬかもしれない。それがイヤだから裏切らないと」

 

「そうだ。下手な忠誠心や目的よりもずっと信頼出来る。あの非協力的……というか、自由気まま過ぎる姿勢には手を焼かされるがな」

 

そんな会話をしながらも、ゲオルグとヨアヒムの体は半殺しにされた時のトラウマによって無意識の内に小さく震えていた。

 

裏切りはせずとも嘗められるのは許さない。

 

抑えるところはしっかりと抑える抜け目の無さも、エリクスの強さの1つである。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

 

  Side エリクス

 

洗面所で顔を洗い、少し乱れた髪を鏡を見ながら所々直す。

 

鏡に映るオレの顔は、確実に前世よりも整っているもので、首の後ろを隠すくらいにまで伸びた髪は右先端部の青色をメッシュのように残して見事に真っ白となっている。

 

元々青色の方が地毛なのだが、入団試験の際にこうなってしまった。

 

瞳の色も、両方とも金色だったのが今では片方だけ血のような深紅だ。

 

変色した青色メッシュの白髪に金と深紅のオッドアイって……鏡見る度に思うが、何処の中二病患者だオレは。

 

溜め息を吐いて気持ちを切り替え、ここ数年で着慣れた服を身に着ける。

 

少し白の明るさが混じった紺色のジーンズに少し薄暗いグレーのYシャツ。その上から丈が長く体と生地の間の余裕が少ないロングコートを思わせるようなフードを羽織る。

 

刻印教会に支給される装束や鎧とは明らかに違うが、別に誰も咎めない。

 

いや、オレを咎めることの出来る奴がいない、と言う方が正しいか。

 

そのまま部屋を出て外の空気を吸おうと正門に着くと、背後から僅かな気配を感じた。知っている気配なので、特に警戒心も抱かないが。

 

「おや、もう軍議は終わったのかい?」

 

「ベアトリスか……」

 

黒髪に翡翠の瞳、褐色の肌とエルフの種族特有の尖った耳、明るい黄色を基調としたドレスと装束を合わせたような服装。

 

オレやゼスト達のように「洗礼」に合格したわけではなく、その隠密と暗殺に長けた能力を買われてベイオウルフに入団した珍しい女ダークエルフだ。

 

「役割が決まったから先に抜けてきた」

 

「相変わらず我が道を行くヤツだねアンタ。偶には協力的になってやったらどうだい?」

 

ヨアヒム(キ○ガイ)が奇声上げて、 ゼスト(戦闘狂)が楽しそうな笑み浮かべてるような空間で最後まで話し合いに付き合えってか?」

 

「……アタシが悪かったよ」

 

気まずそうに目を逸らしながらベアトリスはオレに謝る。自分の過ちを素直に認めるのは良いことだな。

 

「そういうお前はどうして軍議にいなかったんだ? あの姫さんは出席してたのに」

 

「そのお姫さんに頼まれて捜し物をしてたんだよ。コイツと一緒にね」

 

そう言ってベアトリスが後ろを指差すと、そこにいたのは黄緑色の刺々しい鱗と雷撃の輝きを纏った竜……ドラグマキナの一体、グングニルがいる。

 

「なるほど……んで、作戦があるから戻って来たわけか」

 

「そういうことさ、アンタはゼストと一緒に 竜騎士(ドラグナー)の相手だって? ゲオルグも随分と相手を警戒してるんだね」

 

竜騎士(ドラグナー)の強さは大した問題じゃねぇ。オレかゼストがその気になれば簡単に皆殺しに出来る。アイツが警戒してんのは多分煌竜の暴走だ」

 

そう言うと、ベアトリスは目に見えて顔を曇らせた。

 

竜騎士(ドラグナー)の中にはコイツの昔馴染みがいると聞いたが、大方心の中でそいつ等の心配でもしているのだろう。

 

敵だと割り切れないなら、さっさとこんなところ裏切っちまえばいいのに。

 

「お前は次の作戦でどう動くんだ?」

 

「アタシはエクセラ様とトリシューラが敵の目を引き付けてる隙に城に忍び込んで「空竜」のドラゴンソウルを盗んでくるのが仕事さ」

 

なるほどね、とベアトリスの言葉に心中で納得すると、自分に向けられた視線を感じてその方向に目を向ける。

 

そこには、何処か試すような目付きでオレを見るグングニルがいた。

 

「何か用か?」

 

『ベアトリスから、貴様の実力はあのゼストと同格だと聞いた。それは真か』

 

「周りが勝手にそう言ってるだけなんだがな……まあ、否定はしない。実際、オレに勝てるのはゼストくらいのもんだろうからな」

 

その言葉と共に、オレの全身から僅かに放たれた威圧感がベアトリスとグングニルを一瞬の間に圧倒する。

 

口にした言葉の中に、一切の自惚れはなかった。

 

ベイオウルフに入り、色々なモノを犠牲にしてオレが手にした力はそれだけの自信を持たせてくれる。

 

オレは心の底では死ぬのが怖い臆病者だ。

 

だが、決して他者の理不尽な力に蹂躙される弱者ではないし、ならない。

 

誰かの都合で殺されるような終わり方は、うんざりだ

 

 




ご覧いただきありがとうございます。

前にも言ったことがあるのですが、こっちは息抜きなので次の投稿がいつになるかは本当に未定です。

では、また次回。

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