「あちゃー…やっぱ閉まってたか。」
赤海君が呟く。そう、防火シャッタは閉まっていた。これだけの大火災ともなれば、すぐに閉まるのも当然であろう。
「どうする?これ。こじ開ける?」
智東さんが物騒な言葉を言う。こんな子だったっけ…
「いや、それはやめた方がいいと思うよ…燃え広がると思うし。でもこのままここにいても危ないしなぁ…なんとかここから脱出して、かつグラウンドに避難しているであろう生徒と合流したいところだけど…」
皆汗をかいていた。。それはこの状況で学校に閉じ込められたことに対する汗か、それともこの火事の暑さによる汗か。…幸い、あまり煙は出ていないようだが。
「じゃ、窓から脱出する?閉めれば別に問題ないでしょ?浮遊魔法とか、皆にかけれるよ…たぶん」
智東さんが有能すぎる。そして魔法もなんでそんなにポンポン使えるのか。適正道具の才能はとてもあったようだ。智東さんの「たぶん」は信頼できる。
「だったらそれで行くか…皆、それで良い?」
「…わかった。」
「おっけー。今その方法が最適かは俺にはわからないけど、学校から脱出できるなら、良いんじゃないか?」
「なら大丈夫だね…智東さん、お願い!」
「了解…フライ!」
智東さんが皆に向かってそう唱えた。そうすると…浮ける。なんだろう、どう表現すれば良いのか分からないけど、空を飛べるような感覚がする。決して危険なクスリとかではない。
「皆窓から飛び降りて!」
「えっ…ちょっと怖い…分かってたけど…」
と宮内さんが呟くも、皆飛び降りる。
フワッ…と、浮くような感じで、三階校舎から地面に着地した。
「人生で一番怖かった気がするわ…でもありがとう!智東さん!」
「へへ…沖原君にそう言ってもらえるなら…」
「君達」
!?前にいた人から急に話しかけられた。格好も先生のようではない。スーツ姿の、結構ハンサムな顔立ちの人だ。まさかまた敵が…と皆思ったようで、智東さんを初め全員が臨戦態勢だった。しかし…
「君達は『T4A1』に狙われています。なので、こちらの方で保護します。」
平坦なしゃべり方の人だった。
「保護するって?」
最初に口を開いたのは赤海君。
「おっと…さすがに信用できませんよね…私わたくし、国家機関『攻撃適正保安委員会』の桜庭さくらばです。」
と、名刺を見せられた。今はとにかく緊急事態だ。信用するしかないか…
「皆ついてく?僕は緊急事態だしついて行こうと思うんだけど…」
と、小声で相談する。
「先生心配しないかな?」
と智東さん。
「あとで連絡すればダイジョーブダイジョーブ」
と赤海君。まぁ、僕も後で連絡すれば大丈夫だと思う。
「…私も、ついて行った方が良いと思う…嘘をついているようには見えない…」
と宮内さん。
「OK。じゃぁ…お願いします。私たちも今まで危険な目に遭ってきたので、保護してもらいたいです。」
「了解しました。まぁ、同意されなくても強引に保護するつもりでしたが…」
「え?」
「いえ…コホン。では、私についてきてください。」
と、桜庭さんが歩き始めたので、僕らもついて行った。
桜庭って苗字はもっとひねれば良かったかなとか思ってます。