称山先生からのお願いです~!
~~~前話の翌日、朝。~~~
「good morning!」
快人よ。なぜ英語なのだ。
「今日から適正道具カリキュラムだぜ!楽しみだな!」
「まぁ…楽しみだな、かなり。自分にどんな隠れた才能があるのか…ラノベみたいで。」
快人は鉛筆だろうがな。
「朝もはよから智東香里奈で~す!おはよー!沖原クン!」
智東さんから急に話しかけられた。
「えっ!?智東さん!?なんでこんなところに!?」
「家近くだからね。私彼埜に入るためにここに引っ越してきたから~。ほら、あの家!」
「えっ…」
意外に…近い。家から四軒奥ぐらいだ。
「それにしても私もこんな近くだとは思わなかったよ~!家出たら沖原クンとその他約一名がいるんだもの!私もびっくりしたよ!」
その他約一名扱いの快人…
「で、あなたはどなた?」
「お…俺は1-Cの日下部快人です。はじめまして。よろしくおねがいします」
「日下部クンね!私は智東香里奈!これからよろしく!」
(めっちゃ俺のタイプなんだけど。どういう関係だよ。)
(どうもこうも…隣の席だよ。)
(うらやまっ!俺と変われ!)
(無理だ。…僕も結構可愛いと思うけど…)
(チッ…爆ぜろ…)
(れ、恋愛感情はないからな!勘違いすんなよ!)
「な~にこそこそ話してるんですか~。コソコソ話イクナイ!はやく行きましょ!」
「そうだね。行こうか」
(趣味は同人制作だって伝えた時の反応が楽しみだな…)
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「は~い。今日は皆が待ちに待った、
「よっしゃー!」「キター!」「Fooooooo!!」
…等々、様々な声が聞こえてきた。朝のHRが終わり、一時限目が始まる前である。ものすごい盛り上がり様だ。
「では~、適正検査室に皆さん移動してくださ~い」
適正検査室だと!?wktkが止まらない!
「称山先生!適正検査室ってどこですか?」
「あ~…言うのを忘れていましたね~。私についてきてください~」
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―――適正検査室は、意外に近かった。
「では~、あとはよろしくお願いしますね~。」
と、適正検査室の先生に言い残し、称山先生は部屋を出た。
「あ~…私は
と話したのはその先生だ。ショートの金髪にメガネをかけている、端正な顔立ちの女の先生だ。それにしても…長走って珍しい名字だな。初めて聞いた。
「え~…君たちの待ちに待ったであろう、適性検査だ。班ごとに調べるから、まず1班。こっちに来てくれ。」
と、1班の人が先生と謎の機械が置いてある机へ行った。僕らは6班なので一番最後だ。
「えっとまず…君は…木嶋英輔君だね。この機械に手を入れてくれ。」
「はい…」
トップバッターは木嶋君だ。みんなの視線を浴びてとても緊張しているようだ。僕も気になる。
「君の
「えっ。」
「「「は!?」」」
木嶋君の気の抜けた声と皆の無駄に揃った声が聞こえる。まぁ、僕も驚いたけどさ…
「なぁ、適正道具がつまようじって何に使うんだ?」
赤身…ゲフンゲフン赤海君が話しかけてきた。
「さぁ…想像つかない。」
「能力はね…つまようじの先をMD、ミニディスクの事だが、MDにつまようじの先端を当てると音楽が聴けるようだ。」
「えっと…はい…ありがとうございました。」
「まぁ…そう落ち込むな。用途や能力を強化していくのがこの学校だ。これからも頑張れ。」
CDならまだしもMDか…と思っていると、長走先生が皆に声をかけた。
「まぁ、皆最初はこんなもんだ。あんまり最初の能力には期待しすぎるなよ。」
「マジかよ…」「そんな―…」
周りから落胆の声が聞こえてくる。まぁ仕方ないっちゃ仕方ないけど…僕もなんか変な適正道具なのかなー…
「では次―…」
と、しばらく過ぎて、やっと5班が終わった。
皆の適正道具はピンキリだった。適正道具は折り紙で脳内でイメージすれば一瞬で鶴や箱などの折り紙ができるという能力もあれば、適正道具が工具全般で、電気機器を直したりするのが普通の人より数倍早くできるというすごい能力まであった。
「えーと…次は6班だな。まずはじめに…赤海君。皆と同じように、この機械に手を入れてくれ。」
「はい」
赤海君もとてもワクワクしている様子だ。
「君の適正道具は…そうか…」
先生が小声でつぶやく。6班以外の人には聞こえないぐらいの声だ。
「え~っと…先生、何ですか?俺の適正道具。」
赤海君も小声で聞く。
「皆。先に帰っていてくれ。そういえば、称山先生から『適性検査が終わった班から教室で自習をさせてくださいね~』と言われていたのを忘れていた。すまなかったな。」
「称山先生の物まね上手っ!」
と小声でつぶやいたのが誰かは知らないが、皆教室へと帰って行く。
「…赤海君。結果は後で伝えるから、とりあえず機械から手を抜いてくれ。」
「え~…はい」
がっかりしたような、赤海君の声が聞こえた。
「では次に、智東さん。この機械に手を入れてくれ。」
「はい!わかりました!」
ワクワクした感じで智東さんが機械に手を入れる。
「君も…か。すまないが、君も後でだ。」
少し驚いた様な表情をしたものの、冷静に言う。
「えっ…は、はい。」
智東さんも少し驚いたような、がっかりしたような感じで機械から手を抜く。
それにしても…いったい何なのだろう。
「次は…宮内さん、この機械に手を入れてくれ」
「は…はい…」
いつものおどおどしたような感じで機械に手を入れる。
「君もか…こんな例は今までにないな…すまない。君も後でだ。」
長走先生はとても驚いているようだ。いったい何が…
「あっ…はい…」
宮内さんが機械から手を抜いた。
「では次は…沖原君、だね。この機械に手を入れてくれ。」
「はい」
その読み取り機械を、僕は初めて近くで見た。なんか、こう近未来的な感じなのかなーとか勝手に思って
いたけど、手相の認証システムの機械ををちょっと大きくして蓋を付けたような感じだった。
「君もなのか!?そうか…こんなことは…なかなか…」
「えっと、いったいどうしたんです?」
驚きを隠しきれない長走先生に、僕は言った。
「では…話すぞ。このことは他言無用だ。まず…赤海君の適正道具なのだが…」
「何ですか?勿体ぶらずにお願いします!」
「…棒状のものだ。」
「棒状のもの…?なんかすごいアバウトですね…で、能力はなんですか?」
棒状のもの…?なんだ、それは…
「能力なのだが…棒状のものを投げるとき、とても速く、投げる間隔も短く投げられる。」
「えっ…それって…」
赤海君が驚いた顔で言う。まさか…
「そうだ。世に〝攻撃適正″と伝わるものだ。」
マジか…攻撃適正とは、人や動物を攻撃するのに特化した能力だ。ハンターになる人もいるが、裏社会に出る人も少なくないらしい。
「先生…驚いていたってことは、もしかしてこの四人全員が…?」
智東さんも驚いたように言う。
「その通りだ…智東さん、あなたの適正道具は指輪。能力は、想像した〝魔法″を発することができる能力だ。」
「えーと、それってどういう意味ですか?」
智東さんが質問する。
「例えば、ゲームにでできた凍らせる魔法を脳内で想像して、念じて放つと…本当に凍るんだ。」
「えぇ…そんな嘘みたいな…」
信じられないような顔の智東さん。
「それが…現実にできるんだ。そして、宮内さん、あなたの適正道具は
「お…おもちゃ…?それがなんで…攻撃適正に…?」
宮内さんも驚いた顔で言う。
「まぁ、正確にいうと攻撃適正に〝なりうる″と言ったところか。例えば、星たちの戦いって映画があるだろ?」
「は…はい」
「あー、あの映画ね。面白かったわー。ライトセーバーとか出てくるやつね」
と赤海君
「そう、そのライトセーバーを現実のものにできるんだ。玩具を本物にできる。例えば、ライトセーバーのおもちゃで本当に何でも切れるようになる。」
「は!?なにそれ強くね!?」
赤海君を始め、4人がみんな驚いた。
「えっと…私は…危険?」
「そんなことはない。能力を間違って使わなければ、そうだな。例えばあひるのおもちゃを本物のアヒルにするマジックとか、そんなことに使えばまったく危険ではない。」
(マジックのタネが…)
「そして、沖原君」
「は、はい。」
緊張するな…攻撃適正って…
「君の適正道具は刀だ」
「刀…?」
刀って…結構危険な部類じゃ…
「その能力は、どんな刀でもを軽々と操れ、何にも負けない強度を持たせることができる能力だ。」
どんな刀でも軽々と…ってことは大太刀の二刀流とかも可能ってこと…!?
「マジか…6班全員が攻撃適正持ちとか…」
赤海君はまだ驚きを隠せないようだ…
「つまり、私たちは要注意人物ってこと?」
と智東さん
「勝手に要注意人物にしてすまないが…その通りなんだ。君らなら悪用することはないと思うが…」
「悪用してる集団って…聞いたことある…」
と宮内さん。
「ああ。そんな道に進まないように、気を付けてほしいって話だ。あと…知っているのは私ぐらいだろうが…君たちにだけ話そう。話さないと、君たちが危険だろう。」
「何です?危険って…」
赤海君が聞いた。
「このあたりで活動している適正道具を悪用している集団だ。大人から高校生までいる。巧妙な手口で引き込んでくるらしいから、気を付けた方がいい。その集団の名前はT…」
バキューン
銃声が響いた。
弾丸は、長走先生の腹部を打ち抜いていた…
「え…今の…銃声…」
智東さんがおびえた声で言う。
「おま…え…まさ…か…」
長走先生のかすれた声
「あら~。それ以上は話させないわよ~?」
ドアの近くには、朝のHRと変わらない笑顔の、銃を持った…称山先生がいた。
次回より…本格的に