道具を使うもの ~Tool user~   作:水津の月

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適正道具のリスク

あれから…医務室での日下部との再会の後、特訓が再開された。日下部は念のためまだ医務室で療養するそうだ。

「さて、次は智東だ。」

と桜庭さんが呼ぶ。

「智東か…魔法系の能力だな。あと私の結婚指輪を返してくれないか。」

今回の特訓からは長走先生も一緒だ。

「あ…忘れてました。すみません、返しますね。」

と智東さんは長走先生に指輪を返す。

その時の長走先生の表情は、安心したような顔だった。相当仲が良い夫婦なのだろう。

「それでは、訓練用の指輪を渡す。」

と桜庭さん。

そうして智東さんに渡されたのは、…正直言って安物に見える指輪だ。まぁ、長走先生のはダイヤモンドもついてるし、それに見慣れたからだと思うけど…

「正直言って…いままでの長走の指輪だと魔法の威力が強すぎて智東にはちょっと危険だったんだ。」

そういえば桜庭さんは名字の呼び捨てで呼ぶなぁ…ちょっとかっこいい。

「どういうことです?」

「智東の適正道具は指輪、指輪によって魔法を発動させる能力だ。そしてだな、この指輪に使われている鉱物…宝石が希少であれば希少であるほど魔法の能力も高まるんだ。」

「でもダイヤモンドってそんなに希少じゃないって聞いた気が…」

「…正直そんなに良いダイヤではなかった。」

と長走先生が恥ずかしそうに言う。可愛かった。

「宝石の中では希少でなくとも、ダイヤ自体希少なことに変わりはない。ほとんど適正道具のカリキュラムを受けていない智東にダイヤを扱うのは少々危険なのだ。」

「適正能力が本人の限界を超えるとどうなるんですか?」

「この前説明した沖原の能力は常時発動だ。沖原の場合はさっきのように、そのうち疲れてきて最終的には気絶に至る。そして智東の能力は瞬間的に発動するものだ。もしかなりの疲労がたまっている状態で大きな魔法を放ったら…」

「…どうなるんですか?」

「暴走する。能力も、道具も。」

道具も…?

「それってどういうことですか!?」

「俺達適正道具の能力者は、常に道具と関係を持っているんだ。こちら側は道具を使うもの、道具側は能力者に使われるものだ。適正道具のカリキュラムというものは、道具と能力を最大限に生かすため…つまりは、道具を使う力を育てるという事だ。この使う力が弱ければ弱いほど、早く疲労という形で道具から使用者に影響が出てくる。これが限界になると“0"。つまりは気絶だ。しかし…瞬間的に発動する能力で0をマイナスに振り切ると…」

 

「道具が使用者の言うことを聞かなくなるし、その道具は使用者の“能力"を吸い取ってしまうんだ。」


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