「烏帽子宮は燃えているか。」
「マスター、どっかの独裁者みたいなことをおっしゃらないでください。」
まぁ、マスターも独裁者みたいなものかもしれないけど…と心の中で呟く。
俺の名は高宮尚典たかみやたかのり。T4A1の幹部をやっている。
「それにしてもオーダーセブン…ずいぶん大きな作戦を実行させやがりましたね。称山は。」
「昔からあんな奴だ、称山は…。良く言えば決断力がある、悪く言えばすぐに作戦を発動させるからな…」
「今回の作戦発動は正直失敗ですかね?」
「作戦自体は失敗ではないが…称山の独断は失敗だな。もっと期を見てするべきだっただろう。それが“奴ら”を逃がさないためだけとは…」
「奴らを逃がさないためだけに実行したんですか?」
…まったく称山の野郎は。本当に…
「らしいぞ。この前称山本人から聞いた。そういえば…奴らは確か四人だったな?名前はなんだったか…」
「はい。えっと…沖原郷、宮内瑠璃、智東香里奈、赤海柊平の四人ですね。」
「そうそう…その四人だ。奴らはなかなか面白い。一クラス、しかも同じ班に攻撃適正が四人だ…。ぜひ我々の組織に入ってもらいたいところだが…」
「無理でしょうね…彼埜高校には長走がいます。長走が彼埜高校に赴任してきてから、T4A1に入るものも減ってきております。」
「むぅ…長走が警告しているという事か?」
「いえ、そういうわけでもなさそうですね。今回称山が『長走がT4A1の事について話そうとしたから』という理由で撃ってますし。」
「ではなぜ減ってきている…?長走が赴任してきてから。」
「恐らく、浜川の所以外にも保安委員の拠点があるかと。」
「なぜそう思う?」
「浜川の所でも我が組織と戦ってはいますが…浜川の所に潜入してるスパイからの報告によると、どうも浜川の所に長走がいないようです。奴は適正道具保安委員に入ってるはずなのに。」
「で、それがT4A1への加入減少とどう関係するのだ?」
「この部隊が適正能力者の部隊とかだったらどうです?」
「…思考のコントロールか?まさかそんな…」
「あり得ますよ。この適正道具の世界なら…。こんな世界を変えるために私たちは動いているのではないのですか。」
そう、俺達T4A1の目的は適正道具のない世界。この世から適正道具はなくなれば、人は皆平等になれるであろう。そうすれば、きっと差別などのない社会に…
「そうだな。それではその別の拠点も調べていくか。社会を変えるぞ。」