「彼埜高校の横、浜川は知っているな?」
長走先生の話はここから始まった。
「はい!知ってます。河川敷で少年たちが野球をしているのを結構見ますね。」
と智東さん。
「恐らく、そこが火災の原因だ。」
「「「え!?」」」」
と皆が声を合わせた。
「それはまた…何でです?」
と僕が聞く。すると…
「あー…推測だが、変質系の能力者の仕業だろう。」
「変質者?」
と智東さんが聞き返す。断じてそれはないと思う。いや、ない。
「変質系の能力者とはだな…適正道具によって適正能力は人それぞれ違うだろう?適正能力の中でも区分が別れているんだ。変質系の能力者は、その名の通り道具によって対象物の性質を変化させる。…ってまさか?そんな能力者が!?」
と、桜庭さんが補足説明をしている途中で急に驚き始めた。いったいどういう事なんだ…
「…恐らくお前が思っている通りだ。水を可燃性に変化させたのではないかと思うんだ…」
「なるほど…そうなると水場で被害が集中した説明がつくな…」
「あのー…その、水だとしたら、なんでここには被害がないんでしょう?」
と桜庭さんと長走先生が会話しているところに智東さんが聞く。
「この地下支部はもしもにもしもを重ねた設備が揃っていてな…水道も貯水タンクから独自で引いているんだ。」
なるほど…
「桜庭…これはなかなかに問題ではないか?これほどの規模で性質を変えるとなるとかなりの能力者だと思うのだが…」
「まだ水が原因とは決まったわけではないがな。確かに、水か原因だとするとこれはかなり…」
「かなりの能力者って、能力に強いも弱いもあるの?」
とまた智東さん。
「そりゃあるだろう。適正道具といえど、本人の適正能力が弱くては使い物にならない。そして、これほどの規模の水質変化は相当な能力者だと思われる、ってことだ。」
…なるほど。うん?
「待ってください。なんで川って分かったんですか?水質変化や着火ならいろいろなところでできるはず…」
と僕は聞いた。
「あー…それを説明していなかったな。浜川で一番最初に煙が上がったと攻撃適正保安委員の一人から連絡があったんだ。そこから着火したと思われる。」
「なんでその保安委員は都合よく浜川にいたんです?」
「浜川の近くに攻撃適正保安委員会烏帽子宮支部の地上支部があるんだ。支部内は煙草厳禁だから、吸いに行くやつは良く浜川に行く。それで見たんだろう。そしてその時に大きな声が聞こえたそうだ。」
「保安委員よ。これが勝利の煙だ。ってな。」
横浜優勝!