「そんな大変な事態に発展しているのなら…私たちも戦います!そんな…これ以上犠牲者を増やしたくない…」
と一番最初に言い出したのは智東さんだったか。僕達も、智東さんがそう考えている事を聞いた時には驚いた。確かにこれ以上犠牲者も出したくないし、僕達の住む烏帽子宮市も守りたい。けど命も危険もある…。その事を僕たちは最初に桜庭さんに相談した。
「正気か…?T4A1はほぼみんな攻撃適正持ちと思ってもらって良い。いくら君達が攻撃適正持ちと言っても、戦闘に参加するのは…。命も危ないし、まだ高校一年生。適正道具カリキュラムも受けていないんだろう?ならもっと危険だ。」
と、桜庭さんが「お前ら正気か?」と言うような顔で言った。
心なしか、桜庭さんの話し方も前より若干砕けた気がする。
「それでも…私たちは…支援だけでも…」
と智東さんは言う。智東さんは困ってる人を放っておけないタイプだ。自分より他人を優先するような人であるかもしれない。
「駄目だ。危険すぎる…だが、この支部にもT4A1が攻め込んでくる可能性がある。ならば…」
そこで、桜庭さんが少し笑ったような気がした。
「俺から適正道具、攻撃適正のカリキュラムを受けるか?」
「良いんですか!?」
と智東さんが目を輝かせた。魔法を使いたいだけってことは…無いよね…?
「ああ。あくまで護身のためだ。戦闘には参加させないぞ。」
ここから…桜庭さんの特訓が始まった。
―――「そこ、もっとモーションを小さくだ。」
烏帽子宮支部のさらに地下、いつも暮らしているところがB1階だと仮定すると、B2階には的のほかにいろいろな道具がある総合訓練場が広がっていた。
「間隔も短くだ。お前の適正能力なら、もっと短くできるはずだぞ?」
呼び方も「君」から「お前」に変わっている。…まさに特訓だ。
今は赤海君が特訓されている。的に向かって飛ばしているのは訓練用の棒だ。…何製?
「はぁ…はぁ…」
赤海君も相当疲れている。適正能力を使うと結構疲れる。桜庭さんいわく、「慣れたり訓練したりしているうちに、能力を使ってもあまり疲れを感じなくなる」ということだったが…
「桜庭さん…ちょっと休憩…」
赤海君がこういったことを言うのも珍しい。僕、宮内さん、智東さんの三人は部屋の隅の方でその訓練を見ていた。
「まぁ…最初はこんなものか。適正道具カリキュラムを一回も受けていない身にしては結構良かったぞ。」
と桜庭さんは少し笑顔になり言った。
「さぁ次…沖原だ。」
桜庭さんが一番かっこいいと思います(小並感)