俺が初代魔王なんて間違っている。 作:すのどろ Snowdrop
7話:彼女達と彼等は再開する
「あれ?見たことない天井……?」
朝目が覚めると、見た事のある部屋の配置なのにどこか広く感じ、更にみたことのない天井と壁、ベッドは昨日までよりかなりふかふかだった。
「んん?」
やっぱりおかしい。私が居た部屋はこんなに民家っぽくなかったはずだ。でもお城の部屋より広い……?
ふと、ノックが響く。
お城ではノックする人なんていなかった。というより優美子の部屋に入り浸ってノックされる機会なんてなかった。
誰か分からないけど、とりあえず魔法の準備を……。
あ、私の魔法使えないじゃん。ここ草とかないし。そもそも人に使えないし。
「どうぞ」
「失礼する」
「ひ、ひひヒキタニ君!?」
入ってきたのはなんと比企谷君だった。なんで……?
「比企谷だ。悪いが、訳ありというわけでもないがあんたの魔法と種族に興味があって攫わせて貰った。もちろんここでの生活は保証しよう」
今までにない上から目線の態度。そしてそこから発せられる威圧感に、私は屈してしまった。
「うん、わかったよ比企谷君」
「ん、朝飯できてるから準備とか終わったら下りてきてくれ。寝癖とか酷いぞ」
なっ!?それは気付いても言っちゃいけないやつ!
声をかけようとした時にはもう遅く、比企谷君は部屋を出て行った。
「はぁ」
私は1つため息をつき、ベッドからでて、いつの間にか設置されていた鏡の前に立ち、手ぐしで髪を直していく。
「こっちの方が息苦しくなくていいかも。限定テレポート先も比企谷君の隣に変えておこ」
どうしてこうなったんだろ……。
でも、なんとなく楽しみ、かも。
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海老名さんが起きて数分後、うとうととしていた彼は再びベッドに入り眠りこけていた。
《ニャー》
猫の鳴き声とともに俺の腹に柔らかな衝撃が走る。
「まだ寝かせろよ……」
俺はそう言って壁側へ寝返りをうった。
《ミャッ》
さっきより強く柔らかい衝撃が脇腹に走る。
意外と痛い。
ん?猫の鳴き声?
俺はバッと起き上がり猫の鳴き声がした方へ向く。
「カマクラ!?どこ行ってたんだよ」
《……ミャァ》
なんとなく疲れているカマクラと、背中ですやすやと安心した表情で寝ている雪ノ下に、カマクラに何があったのか察した。
「あぁ、雪ノ下にモフられてたのか。お気の毒に」
俺はこんな時でもモフる雪ノ下に呆れる。
「とりあえず空き部屋にでも突っ込んどけ、カマクラ」
《ニャゥ》
カマクラは短く鳴くと、空間魔法で穴を開け、消えていった。
「どう説明したもんかね……」
独り呟いて、俺は瞼を閉じた。
そして、そのまま意識を手放した。
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「………………おはよ」
「おはようお兄ちゃん!」
「おはようございます、先輩!」
「おはよ、八幡」
「うむ、おはようだ、八幡!」
「おはようございます、お兄さん!」
お兄さんと聞いてなんかイラッとした八幡。微量ではあるか、魔力が漏れ出ている。
「おはよう、比企谷」
「「「「おはよう、比企谷君」」」」
《ミャウ》
「なんで朝から勢揃い…………」
「小町ちゃん、なんであんなに不機嫌なの?」
「お兄ちゃんは朝に弱いですから……。朝だけはシスコンでもないんですよ……」
八幡は小町が遠い目をしてることに気づいたが、何も言わずに放置した。
「比企谷君、大丈夫?」
「ん」
陽乃が話しかけても八幡は素っ気なく返し、リビングを出て外に出た。
八幡が出ていった後、陽乃は八幡が素っ気なさすぎたせいか、どことなく落ち込んでいる。
「八幡なんか元気なかったね」
「お兄ちゃんは朝だけはそんな感じですよ。正確には寝起きですけど」
この世界でもそうだとは思いませんでしたけどね、と付け足す小町。
「そうなんだ〜」
「で、なんで雪乃さんと海老名さんがここに?」
「あ、それ私も気になりましたー!」
「「「「「今更!?」」」」」
実は小町といろはも朝が弱かったりする。八幡程ではないにしろ、特に衝撃的なことがない限りは何も言わなかったり気付かなかったりする。
「私はあの猫に……」
「あぁ、お兄ちゃんのカマクラですか。よく手懐けられましたね。確かレベルが200はあった気がするんですけど」
「ひ、比企谷君のだったの……」
カマクラは主である八幡の命令がない時は基本的に大人しく、悪意や敵意を持たずに近づく者には普通に懐く。善意や好意100%で来るのであれば、来る者拒まずという感じだ。
「えぇ。小町が封印魔導で飛んじゃったんですけどね」
「あれ?封印魔導って魔王とかにしか効かないんじゃないの?」
「カマクラはお兄ちゃんの血が多く流れてますから誤作動を起こしたんだと思います」
話題になっているカマクラはリビングのテーブルの下で丸くなっている。主に似て怠惰な性格である。
「で、海老名さんは何故?」
「攫われた」
……?
この場にいる全員が?を頭の上に浮かべている。
「えっ……と、どういうことかな?」
「比企谷君が私の種族と腐魔術に興味があったらしいです」
「あー、昨日の夜小町と2人になってお兄ちゃんのこと色々聞いた時にお兄ちゃんは興味持った者はよく攫うって言ってましたね……」
八幡はその場にいないが、小町が言ったその言葉にみんなに呆れられた。
そのころ、八幡は……
「雨降る朝に燃え盛る水は落ち、雷纏いし風は山を覆う」
彼は犯罪者集団の拠点である山で新たに習得した独自魔導のテストをしていた。その山にいた犯罪者の大半が既に殺されていた。その山の動植物もほとんどが焼け、あたり一面が赤やオレンジ、青い炎で埋め尽くされていた。逃げようとした犯罪者達は山から降りた所にある風と雷のドームに触れた瞬間、身体が切り刻まれ、強い電気があたりに撒き散らされた。
彼がテストと言って使ったその魔導は、使い方次第ではその山自体を消し去る事が出来るほどの威力を持った危険な魔導だ。とは言うものの、この世界に来てから八幡は殺人に抵抗が無くなり、犯罪者集団や『身内』に手を出した者達はその全員が殺される。
後に、彼はこう呼ばれることとなった。
“魔帝ハチマン”
「独自魔導強すぎるだろ……」
風魔導で宙に浮いた彼は辺りの景色を見ながらそう呟いた。
「はぁ、やりすぎたな。とりあえず消火だな」
彼は右手を振り、この山全域に雨を降らせる。雨とは言っても雲からではなく、彼の周りから、だが。その際に燃え盛っていた炎と水、風と雷のドームは消えた。
「あー、帰ろ……」
彼は宙に浮いたままその場から消えた。運良く逃げることができた数人の犯罪者はメモリア王国に顔を真っ青にして駆け込むが指名手配されていたため、すぐに捕まった。その際、魔王に襲われたと言うが、憲兵は聞く耳を持たず、問答無用で城の地下にある檻に入れた。
独自魔導
取得している全ての魔法、魔導を組み合わせた魔導。魔法、魔導が習得してあればどんなことでもできる。スキル欄からは各魔法、魔導、テレポートは消える。
八幡はまだ時魔法、魔導を習得していないため、組み合わせることが出来ない。空間、腐、光魔法、魔導は各魔法、魔導を組み合わせることで使うことができる。
賢者を冥界側の味方につけるか否か
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味方にする
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しない
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味方にして、R18指定のストーリーを出す