「ふざけるのも、大概にしなさい!」
怒号が発せられたと思うや否や、霊夢の放った鋭い拳は、俺の腹に深々と突き刺さった。拳が腹を貫通したと錯覚するほどの衝撃に、うめき声とともに肺の中の空気がこぼれ出る。
俺は膝から崩れ落ち、そのまま畳の上に倒れこむ。悶絶する俺を尻目に、霊夢――この博麗神社の巫女は、不機嫌そうに足を踏み鳴らしながら、どこかへ立ち去っていった。
「……相変わらず、いい踏み込みのリバーブローだったね、あれは。世界を獲れる一撃だ。間違いない」
横合いから、のんきな声が聞こえてくる。俺の親友であり、一緒に幻想入りした優だ。
「そんな感想は、どうでもいいから……。まずは俺に心配の一声とかあっても、よくないか……?」
「いつも通りの日常の風景に、わざわざ感情を動かす道理なんて無いでしょ」
俺の恨めし気な声をよそに、優は飄々として答えた。
紫さん――幻想郷の管理者である八雲紫に招かれ、優と一緒に幻想入りしてから、早数ヶ月。はたく・殴る・蹴るなど、俺が霊夢から暴力を受けるなんて、さほど珍しくない光景だ。
……おっと。この一場面だけを切り抜いたら、霊夢の風評が著しく悪くなりかねないな。彼女の尊厳に配慮して、きちんと説明しておこうか。
とはいえ、俺と優が霊夢と出会い、こうして幻想郷で日々を送るようになる過程に触れておいた方が、より理解を促しやすいだろう。
まあ、いわゆる昔語りだ。そんな堅苦しい話でもない。ソファーにでも座ったり、布団に寝っ転がりったりしながら、のんびりと耳を傾けてくれ。
それこそ、小説を読むように。
==============
(作者からのコメント)
物語の展開は、原作準拠する形で『紅魔郷の紅霧異変』から順に始めます。
自分の書きたい物語を作ることを最優先するので、登場人物同士の言葉の掛け合い……『言葉遊び』を多めに描写していこうと思います。
ちなみに、「幽棲抄(ゆうせいしょう)」とは、「俗世から離れた、ゆったりとした暮らしの物語の抜き書き」という意味です。
怒号が発せられたと思うや否や、霊夢の放った鋭い拳は、俺の腹に深々と突き刺さった。拳が腹を貫通したと錯覚するほどの衝撃に、うめき声とともに肺の中の空気がこぼれ出る。
俺は膝から崩れ落ち、そのまま畳の上に倒れこむ。悶絶する俺を尻目に、霊夢――この博麗神社の巫女は、不機嫌そうに足を踏み鳴らしながら、どこかへ立ち去っていった。
「……相変わらず、いい踏み込みのリバーブローだったね、あれは。世界を獲れる一撃だ。間違いない」
横合いから、のんきな声が聞こえてくる。俺の親友であり、一緒に幻想入りした優だ。
「そんな感想は、どうでもいいから……。まずは俺に心配の一声とかあっても、よくないか……?」
「いつも通りの日常の風景に、わざわざ感情を動かす道理なんて無いでしょ」
俺の恨めし気な声をよそに、優は飄々として答えた。
紫さん――幻想郷の管理者である八雲紫に招かれ、優と一緒に幻想入りしてから、早数ヶ月。はたく・殴る・蹴るなど、俺が霊夢から暴力を受けるなんて、さほど珍しくない光景だ。
……おっと。この一場面だけを切り抜いたら、霊夢の風評が著しく悪くなりかねないな。彼女の尊厳に配慮して、きちんと説明しておこうか。
とはいえ、俺と優が霊夢と出会い、こうして幻想郷で日々を送るようになる過程に触れておいた方が、より理解を促しやすいだろう。
まあ、いわゆる昔語りだ。そんな堅苦しい話でもない。ソファーにでも座ったり、布団に寝っ転がりったりしながら、のんびりと耳を傾けてくれ。
それこそ、小説を読むように。
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(作者からのコメント)
物語の展開は、原作準拠する形で『紅魔郷の紅霧異変』から順に始めます。
自分の書きたい物語を作ることを最優先するので、登場人物同士の言葉の掛け合い……『言葉遊び』を多めに描写していこうと思います。
ちなみに、「幽棲抄(ゆうせいしょう)」とは、「俗世から離れた、ゆったりとした暮らしの物語の抜き書き」という意味です。
プロローグ ―依願の神隠し― | |
第1話 早苗と電話 | |
第2話 早苗と優について | |
第3話 優と雑談 その1 | |
第4話 優と雑談 その2 | |
第5話 優と雑談 その3 | |
第6話 夢の中、謎の声 | |
第7話 レストランで昼食 その1 | |
第8話 レストランで昼食 その2 | |
第9話 守屋神社に参拝 その1 | |
第10話 守屋神社に参拝 その2 | |
第11話 守屋神社に参拝 その3 | |
第12話 早苗と再会 その1 | |
第13話 早苗と再会 その2 | |
第14話 早苗と再会 その3 | |
第15話 旅行の前夜 | |
第16話 再来と戯言 | |
第17話 駅前広場で集合 その1 | |
第18話 駅前広場で集合 その2 | |
第19話 駅構内で雑談 その1 | |
第20話 駅構内で雑談 その2 | |
第21話 駅構内で雑談 その3 | |
第22話 轢過事故 | |
第23話 闇の世界 | |
第24話 戯言談義 その1 | |
第25話 戯言談義 その2 | |
第26話 戯言談義 その3 | |
第27話 戯言談義 その4 | |
第28話 戯言談義 その5 | |
第29話 戯言談義 その6 | |
第30話 昔語り | |
第31話 夜半の再訪者 その1 | |
第32話 夜半の再訪者 その2 | |
第33話 幻想入り | |
紅白巫女と白黒魔法使い | |
第1話 博麗神社と博麗霊夢 | |
第2話 困惑と安堵 | |
第3話「手伝わない? だったら殴るわよ」 | |
第4話 お股がイタイイタイなのだ | |
第5話 幻想郷では、常識に囚われてはいけないのですね! | |
第6話 俺、紫さんの腰ぎんちゃくになるわ | |
第7話 紫さん、ひとまず『15億円』ください | |
第8話 生のアレ、ダメ、絶対 | |
第9話 霊夢なら素手で頭がい骨を陥没させられる | |
第10話 何度でも「霊夢を愛している」と言ってやろう……死にたくないから | |
第11話 罠にハメられた | |
第12話 紫さんは恋愛脳 | |
第13話 住む場所は内緒です | |
第14話 程度の能力の正体 | |
第15話 霊夢と恋仲になっても構わないのですよ | |
第16話 いざ、香霖堂へ |