堕天使少女と欲望の王   作:ジャンボどら焼き

14 / 19
遅れて申し訳有りませんでした!
これからも遅くなるかもしれませんが、気長にお待ちいただければ幸いです。

では14話をどうぞ。




Ride on Right time

 駒王学園へ乗り込み、再びコカビエルと対峙する華霖。オーズ 『タトバコンボ』へと変身し、眼前で笑みを浮かべるコカビエルへ一歩、また一歩と歩み寄る。

 

「戦う前にひとつ、貴様に伝えておこう。今ここにはある術式が仕組まれていてな、あと15分もしないうちにこの街は崩壊する」

 

「……それで?」

 

「なに、そうなれば貴様の下にいる下級がどうなるか、疑問に思ってな」

 

 直後、コカビエルの目の前に拳が出現。そのまま真っ直ぐに顔を捉え、その巨体をまるでボールのごとく吹き飛ばす。

 コカビエルはそのまま校舎の壁に激突、激しい音とともに瓦礫へと埋もれてしまう。

 

「コカビエルを、殴り飛ばした……?」

 

「あら、あら……」

 

 その一瞬の光景に、リアスと朱乃は目を丸くさせる。一誠とアーシアも同様、いや驚きで声すらも出せていない。

 自分たちの精一杯の攻撃を歯牙にもかけなかったコカビエルが、まさか拳ひとつに吹き飛ばされるなど。しかもそれを成したのは奇妙な鎧を身にまとったとはいえ、いまだ幼い子供がだ。

 

 当のオーズはというと、立ち上る砂煙りへと無言で双眸を向ける。その姿はまるで睨みつけているかのようで。

 

「痛ぅ……いやはや、やはり君はとてつもないな」

 

 地面に倒れ込んでいたゼノヴィアが、痛みに表情を歪めながら立ち上がる。続いて木場、そして小猫と順に立ち上がり、コカビエルが埋もれた瓦礫へと目を向ける。

 

「でてこい。さっさと決着、つける」

 

「──くくっ、ははははははっ!」

 

 歓喜の笑いと共に瓦礫が吹き飛ぶ。コカビエルは大したダメージは負っていなかったものの、口の端からは一筋の血が流れていた。

 それを手で拭い、付着した血で傷を負ったことを視認すると、コカビエルはより一層笑みを深める。

 

「いい一撃だ。戦いとはこうでなくてはな──お?」

 

 再びコカビエルとの距離をゼロにする。今度はトラクローで切り掛かるが、光の槍で受け止められる。そして腹部を蹴り上げられ、頭上高く打ち上げられるオーズ。

 空中にて身動きが取れないであろう彼に、コカビエルは周囲に幾つもの槍を出現させ一斉射出する。

 

「……ガラ」

 

 迫り来る槍の雨を見ながらも冷静に、現れた橙色のメダルを二枚掴むとベルトへと装填。

 

 《タカ! カメ! ワニ!》

 

 その音声とともに再びオーズの姿が変化する。頭部はそのままに、橙色の体と脚部を持った形態『タカカワニ』。

 変化と同時に両腕『カメアーム』に付いた『ゴウラガードナー』を合わせ、カメの甲羅を模した橙色のシールド『ゴウラシールドゥオ』を出現させる。シールドは光の槍を弾き、傷の一つすらも許さない。

 

 そのまま着地の勢いを利用し拳を振り下ろす。そして蹴り。足を振るうたびに現れるワニのエネルギーがコカビエルへ噛みつき、ダメージを与えていく。

 

「うぉ⁉︎」

 

「ウヴァ、メズール」

 

 コカビエルが怯んだ一瞬、緑のメダル二枚と青いメダルを一枚装填する。

 

 《クワガタ! ウナギ! バッタ!》

 

 頭部と脚部が緑、胴体が青の形態『ガタウバ』へと変化。両腕の『ウナギウィップ』を引き抜き、後退したコカビエルへと巻きつける。

 そのまま電流を流す『ボルタームウィップ』で追撃をかけ、コカビエルは体から火花を散らす。

 

「ぐぉ……ははっ、いい! いいぞ!」

 

 電撃を浴びながらもコカビエルは笑みを絶やさず、そのままウナギウィップを握り締めると力の限り引き寄せる。

 そして目の前まで近づいたオーズへもう再度、腹部への強烈な蹴りを食らわせた。

 

「カッ……!」

 

 肺の空気が全て抜ける。後方へと大きく蹴飛ばされたオーズは地面を数度バウンド、ゼノヴィア達がいた場所まで飛ばされた。

 腹部を抑え咳き込むもわずか、すぐに立ち上がると拳を構える。

 

 そんな瞬きのような攻防戦に、傍観に徹するしかできない一誠を含む他の面々は息を飲んだ。

 ゼノヴィアと木場以外は特に驚いたことだろう。あのコカビエルへダメージを与えるどころか、渡り合ってすらいるのだから。

 

「……私、あれを相手に挑んだのね」

 

「うふふ、無事帰れたのは私たちの方でしたわね」

 

 あの日、ミッテルトを追って戦ったリアス達。よく無事に帰れたものだと、リアスは今の戦いを見て心からそう思った。

 

 

 《タカ! カマキリ! チーター!》

 

 リアス達が過去を振り返り安堵している間にも戦況は変化していく。『タカキリーター』へチェンジしたオーズはチーターの脚力を用い高速で移動、カマキリソードで連撃を加える。

 火花を散らしながらぶつかり合う槍と双剣。気を緩めれば一瞬で首が飛ぶであろう斬撃の嵐の中、互いに一歩も引くことなく獲物を振るい続ける。

 

「どうした! その程度の力で倒せると思っているのか!」

 

「うるさい」

 

 槍を弾き上げ、腹部を蹴る反動で後ろへと跳躍。スキャナーを取り再度メダルを読み込む。

 

 《スキャニングチャージ》

 

 新たな音声とともに、オーズとコカビエルとの間に赤、緑、黄のリングが出現。三つの輪を潜り抜けると同時、オーズの姿は閃光へと変化。一瞬でコカビエルの眼前へと移動すると、飛び上がり回転切りで襲う。

 咄嗟に反応し槍を盾にするコカビエルだが、緑のオーラをまとったカマキリソードは一撃目で槍を粉砕。続く二撃目でコカビエルの体を斜めに斬りつける。

 

 鮮血が舞い、コカビエルはその場に片膝を着く。傷口からはかなりの量の血が流れ、校庭へと流れ落ちていく。

 

「あぁ……これだ、これだ! 俺が求めていたのはこういう戦いだ!」

 

 傷は決して浅いものではない。にもかかわらずコカビエルは笑い、狂喜する。

 久しく味わうことのなかった痛み、流れ出る血、熱を帯びる切り傷。戦いというものに飢えていたコカビエル、そんな彼の心が今、少しづつ満たされていく。

 

「だがまだ足りないな。この程度では俺は満たされん」

 

 あと少し、あと一押しで満たされるであろう乾き。コカビエルはオーズへ視線を向け、十の翼をこれでもかと広げる。

 

「……出し惜しみはもうなしだ。ここからは俺も加減抜きで行かせてもらおう」

 

 右手に作り出すのは光の剣。見た目は槍よりも細く脆そうだが、そこに秘められた光力はこれまでの比ではない。

 

「貴様も、本気を出してくれると嬉しいのだがな!」

 

 オーズとの戦いで初めて、コカビエルが攻めの姿勢を見せる。翼を打ち鳴らし低空を駆け、オーズめがけてその剣を振り下ろす。

 

「う……っ!」

 

 今までとは一段階違う。カマキリソードで受け止めるも、その重みに耐えられず地面に膝をつく。その衝撃を表すかのように、オーズを中心に校庭へ巨大な亀裂が走る。

 

 そこからコカビエルの攻勢が始まる。その身に似つかわしい剣捌きでオーズを攻め、しかもその一撃一撃は先ほどと同じ重さを秘めていた。

 カマキリソードで受け流しなんとか攻撃へ移ろうとするも、翼から放たれる羽の刃がそれを許さない。

 

『何してやがる! いったん距離取れ、距離!』

 

「……わかってる」

 

 一瞬の隙をつき、チーターの脚力で後方へと退避。そんなオーズへコカビエルは追撃を仕掛けることなく、その場に佇み静かに口を開く。

 

「……そろそろ、本気を出したらどうだ?」

 

「なに?」

 

「あと七分といったところか。その時間で俺を倒せるとしたら……貴様もわかっているだろう?」

 

 七分。それはこの町が崩壊するまでのタイムリミット。

 確かに、今のままでは時間内にコカビエルを倒すのは不可能。だがコカビエルの言う通り、一つだけ倒す手段はある。

 

「……アンク、『コンボ』」

 

『あぁ……と言いてぇところだが、お前わかってんのか?』

 

「時間がない。今のままじゃ最低でも十分かかる」

 

 相手は堕天使幹部コカビエル。倒せないわけではないが、時間がそれには相応の時間が必要となる。それは今の状況においては致命的であり、オーズはアンクへの語気を強める。

 アンクもオーズの言葉に数秒葛藤し、そして出した答えを荒々しい口調で告げた。

 

『わーったよ! けど三分だ、それ以上の使用は認めねぇぞ』

 

「ありがとう──カザリ!」

 

『はいはーい。ていうか、僕を省いて話進めないでよ。力を貸すのはこっちなんだからさぁ』

 

「ごめん。力、貸してくれる?」

 

 しょうがないなぁ、と口ではそう言いつつも、その言葉は上機嫌そのもの。するとオーズの胸から二枚、黄色のメダルが飛び出しその手に収まる。

 オーズはその二枚を赤と緑と交換、黄色のメダルが一列に並ぶ。

 

 そしてスキャナーを手に、ゆっくりと、一枚一枚を噛みしめるように、三枚のメダルを読み込む。

 

 《ライオン! トラ! チーター!》

 

 三枚の黄色いメダルのエネルギーが出現する。獅子、虎、猟豹──三種の猛獣が描かれたそれは、眩い輝きを放ち闇夜に包まれた校庭を照らす。

 

 端から傍観していたゼノヴィアは、今までとは一線を画すその雰囲気に息を飲んだ。

 そして気づく、これまでの戦闘を思い返し、何が違うのかを。

 

「色が、揃った……?」

 

 それは無意識に口から出た言葉。

 今までは色が揃ったのは二色まで。だが現在、オーズの目の前にあるのは統一された三枚のメダル。これが何を意味するのか、朧げながらに理解する。

 そう、コアメダルは、オーズは、三枚揃ってその真価を発揮する。

 

 《ラタラター! ラトラーター!》

 

 オーズの脳内に流れる新たな歌。それを合図にメダルは一枚へ合体、オーズの胸へと吸い込まれ、その体を光が包む。

 瞬きの間の発光の後、その姿を現したオーズ。それを目にしたコカビエルは待ちわびたと、そう言わんばかりの笑みを浮かべ

 

「ようやく、ようやく本気を出したな!」

 

 威風堂々と佇む宿敵へと告げる。

 コカビエルの、そしてこの場の面々の視界に映ったーズの姿は、一言で表すならば『黄色』。

 それは食物連鎖の頂点に立つ存在。獅子の(たてがみ)に虎の鉤爪、そして猟豹の脚。この地上で何よりも孤高で気高い、獣の王の力を宿した姿。

 

 

 その名を『ラトラーターコンボ』。

 

 

「ガァアアアアアアアアア‼︎‼︎」

 

 咆哮。それは大地を駆け、空気を震わせ、聞いたものを威圧する。

 

「ぅ──ぁ……」

 

 無意識に、一誠は一歩後ろへ退く。足が、体が、心が震える。それはアーシアも同様で、彼女場合は腰が抜けたのかその場にへたり込み、さらには涙まで浮かべている。

 リアスたちも一誠たちほどではないが、オーズから発せられる威圧感に圧され、顔を青ざめさせていた。

 

 圧倒的存在感を放つオーズ。それを前に平常を保っていられるのはこの場にたった一人、コカビエルのみ。

 口元に裂けんばかりの笑みを浮かべたコカビエルは、青い双眸を向けるオーズへ嬉々とした言葉をかける。

 

「さぁ、これからが本番だ! かかってk──」

 

 閃光。これまでの比ではない速度で走る一筋の線は、コカビエルの横を通過するとその翼を三枚吹き飛ばす。

 遅れて血飛沫が噴水のように宙を舞い、次いでコカビエルが苦痛に表情を歪める。

 

「か──ははっ、ははははっ! やはり凄まじいな、その力は!」

 

 脂汗を流しながらも笑みを浮かべるのは、自身を凌駕する存在に対する嬉しさからか。

 

 対するオーズはトラクローを横薙ぎに振るい、刃についた血を払い落とす。そして複眼をコカビエルへ向け、再び構えを取り

 

「三分……」

 

 小さく漏らした。

 

 

 

 

 

 

 




はい、サブタイから察された方もいます通り、『ラトラーターコンボ』の登場回です。
コンボ初出場、とは言っても回想で一度出てきましたけど笑
コンボは出てくる回数は少なめですが、全部登場させられればなと思っています。

あとオリジナルの亜種コンボも登場させますので、ネーミングに提案がありましたらアドバイスお願いします!

ではまた次話でお会いしましょう!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。