どうも電柱人です。
それではどうぞ
彼を呼び止めた私は彼に近づき、ちょっとした階段の部分に腰を掛けた。
「比企谷君も座ってよ」
私が声をかけると、彼は嫌そうに目を濁らせながら階段の端に座る。
むっ、そんな顔しなくたっていいじゃん!
そう思ってしまった私は彼との距離をつめる。
「おっ、おい、近いって!」
「そんな顔した人にはちょうどいいよ!」
どや顔で言ってやった。しかも人生最大の。
たださ、こう言ったけど私もすご~~~く恥ずかしい。
だってさ、やっと彼と話せるんだもん。
そりゃ恥ずかしくもなるよ。
隣で彼は、
「ちっ、わかったよ。で?なんの用だ?」
ちょっ!舌打ちとか隣にいるのにする?!
そんなことはまあいい。
とりあえず話を進めよう。
「いくつか聞きたいことがあるんだけどさあ、…まず私のこと覚えてる?」
この質問をしたとたん、比企谷君の目が急に濁り度が増した。
私はすごく気になったのだが、彼が口を開いたので考えるのを止めた。
「…ああ、中3で同じクラスだった日代だろ?」
「さらに言えば今も同じクラスだけどね!」
私がそう告げた瞬間彼は驚いた顔をする。
「えっ、同じクラスなのか?全然知らなかったわ。」
…失礼な!同じクラスだよ!
「失礼な!同じクラスだよ!」
思わず心の声と一致。
マジか、クラスメイトとして認識されていなかったからしい。
「まあ、その…すまん」
「いや、別にいいんだけどね。じゃあ改めて、私は日代白、よろしく」
「…よろしく」
なんかよろしくする雰囲気ないけど大丈夫だよね?
「で、まだ質問があるんだけど、次は中3の冬休みにカツアゲされている人を助けたことなんだけど…」
「…ん?ああ、あれか。もしかして通報してくれたのってお前か?」
「そうだよ」
「そうか、あのときはサンキュ。で、何が聞きたいんだ?」
「私が聞きたいのはなんで助けに入ったのかってこと」
そう、これが私の興味の始まりなのだから。
「…別に、たまたま偶然にも俺が通りがかっただけだからだ。それ以外に理由はあるのか?」
いや、嘘だ。私にはわかる。
彼が真実を隠してるように感じてならない。
「…とりあえずそういうことにしといてあげる。じゃあ次、なんで一人でいつもいるの?」
「もちろん、一人が好きだからだ」
これは理由の1つなのだろう。真実ではあるがまだ理由がある的な。
「じゃあ次、~~~~」
幾つか質問をして彼の答えを聞く。
でも、彼との会話は楽しいはずなのにとても悲しく感じてしまう。
心に生まれたこの感情をなくすために私は最後の質問を彼にした。
「じゃあ最後に、君は…いったい何に怯えてるの?」
「っ!…なんのことだ?」
「比企谷君はさあ、ポーカーフェイスで感情を出さないようにしてるけど、私の質問に答える度に悲しそうで、何かに怯えてる顔をしてるよ」
「…そんな…ことは…」
「あるよ、隣で見てた私が言うんだもん。私は知ってるよ。本当は優しくて、誰よりも人のために動ける人だってことを」
「それは違う!」
比企谷君はいきなり大きな声をあげる。
「…いきなり大声を出して悪い。だが、俺はそんないいやつなんかじゃない」
「その理由を聞いてもいいのかな?」
「…ここまで話してしまったなら、もう変わらんからな」
「…ありがとう」
彼の生き方を変えた理由をついに聞ける。
悪いとは思っているけど、やはり興味が上回っている。
「どこから話すか…。まあ、きっかけからでいいか?」
「そこからお願い」
「そうだな、きっかけは妹が生まれたときからだな」
「妹?」
「ああ、2つ下にいるんだが両親が溺愛するほどでね。妹が生まれてから俺は一切相手にされなくなった。いつからか俺は家族旅行を断ってさ、「自分の意思で断ったんだ。愛されていないからじゃない」って思いたかったのさ」
それが彼の始まりだったんだ。
「まあ、これはきっかけにしか過ぎないんだ。ひどくなったのは中学からだ」
えっ、中学?そんな感じ全然なかったのに…。
「俺は好きだった人に告白したんだがな、フラれてな。まあ、そのときは俺も優しくされたぐらいで勘違いしてしまっただけのことなんだがな。問題はそこじゃなくて次の日のことなんだ。学校に行ったらクラスのやつ全員に告白したこと知られてた。周りから「あいつかおりに告白したらしいよ」「まじー!ありえなくない?勘違いもいいとこじゃん」って聞こえてきてな。それでわかったよ。ああ、あいつは友達に言ったのだろう。からかう対象として。俺はバカ野郎だったんだ。勝手に期待し、人生はうまくいくと思ってた。それからは周りすら信用ならなくなってな、一人でいるのが一番いいと思ったのさ。だから一人でいる」
…比企谷君にそんな過去が…でも、
「…じゃあなんで冬休みのとき人助けしたの?」
「あれはな、結局のところ自己満足なんだ」
「自己満足?」
「そうだ、俺は人を助けることができる。それだけの価値はあるってな。まあ、お前が通報してくれなきゃできなかったわけだが…」
「…なるほどね。…それでさ、この高校にしたのはなんで?」
「それは中学のやつらがいないと思ったからだ。だが、お前がいたのは予想外だった」
そりゃ、君を追いかけてきたからね。
「最後に、なんで入学式に事故にあったの?」
「その日はな、俺らしくもなくテンションがあがっていてさ、早く学校に行っていたんだ。そしたらさ、どっかのアホが犬のリードを離してな、その犬を庇って事故っただけだ」
「ふーん、それも自己満足ってやつ?」
「ああ」
これで全ての疑問が解決した。
彼の理由、彼の生き方を。
でも、それって悲しくないのかな?
聞いたところで彼は悲しくないと答えるだろう。
彼はもう周りに期待をしていない。多分家族にも…かな。
でも、私は彼に期待をしてもいいかな?
だから私は、
「今日はありがとう。比企谷君のことが聞けてよかったよ」
「そうか、じゃあな。できればもう関わらないことをおすすめするがな」
「いや、私は君に関わり続けるよ」
「…なんでだ?別に俺みたいなやつよりも関わった方がいいやつなんてたくさんいるだろう」
「私は比企谷君以上に関わりたい人なんていないよ。たとえ君が誰にも期待してないとしても、私は君に期待する。私だけは君を裏切らない。だからさ、いつか比企谷君は私にだけは期待してよね」
彼は私の言葉に驚いている。
理由はわからないけどね。
でも、少しは期待してくれるといいな。
「…俺は簡単にその言葉を信用することはできない」
「別に信用なんてしてくれなくていいよ」
「…俺はめんどくさいぞ」
「そんなの関係ないよ」
「…っ。わかったよ。いつか…な」
「うん、それ言葉が聞けて嬉しいよ」
「そうか」
「じゃあ、帰る前にケータイ教えてくれない?比企谷君と連絡とりたいしさ」
「ああ、頼んだ」
そう言って比企谷君は私にスマホ渡してきた。
「えっ、渡しちゃっていいの?」
「別に見られて困るものないしな」
「ええぇ…」
…ほんとだ!連絡先ほとんどない!
私は驚きつつも自分のアドレスを入れて彼に渡す。
「はいっ、入れといたから。連絡するね」
「はいはい、じゃあ今度こそ帰らせてもらうぞ」
「うん、またね」
「ああ」
彼と挨拶をして別れる。
荷物をまとめて私も家に帰る。
今日は色々とあったな。
比企谷君と偶然だけど話すことができた。
彼のためにできることはないかな。
私はそう思いつつ玄関を開ける。
「ただいま~」
「お帰り、今日は遅かったわね」
「ん~、ちょっとね話してたら遅くなった」
「それならいいわ、でも遅くなるなら連絡はしてね」
「わかった~」
母と話して自分の部屋に行く。
明日は比企谷君と話せるかな?
私の新しい期待と興味を胸に1日は終わる。
いかがでしたでしょうか?
自分的にはちょっと急ぎすぎたかなと思います。
それではまた次回