戦女神達の戦争 軍団、『彼の地にて』   作:電話圏外

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1章 始まった戦い 抗う者達は
5話 刑事の場合 ー 狂気の殲滅者となりて


 

 

 

 

 

 

「警視庁一課、フミジマ・ヨシヒコ警部…」

 

「この女郎…っ」

 

仮面とローブに一本縦筋の入った可笑しなこの女、的確に無効化する為に脳を揺らして来やがった…

 

「落ち着きたまえ、キミの予測不能な行動は、いや、全く以て理解できない」

 

 

「オヤジのようにか!」

 

ダメだ、この女に殴られて、視界が揺れる…

 

くそ、腰に力が入らん、見上げることしか出来ん…っ

 

「『シマイ』、ありがとう。助かりました…危ない処だった…!」

 

倒れる俺に見えたのは

 

この野郎に銃剣を首筋に宛がっている

 

その本気の証拠に野郎からは赤黒い血がドクドクと流れ、顔は汗だらけ

 

先程までの勢いはどうした。青褪めてらあ

 

「冗談は、ぶ」

 

何か固い物を無理やり歯で噛み千切ったかのようにブチブチと音がする

 

犯人…男の死体はこの女の斬撃で首が千切れた

 

その後聞こえたのは、なんとでもないような殺人の感想だった

 

 

 

「ふむ、この剣は使いずらい、です」

 

 

 

ぷっつんシチマッタ

 

 

「貴様あアアア!」

 

先程の音速の剣を構える女、構わん!

 

ストレート!真っすぐ!

 

 

 

 

 

 

 

 

血みどろに女に倒れ掛かる俺

 

「まさか」

 

 

「それを言わせたかったのさ…!」

 

速度じゃあ敵わんから頭突き噛ましてやった!

 

 

「仮面が割れた程度、対してあなたは」

 

「腹の一本、二本掻っ捌いったって…っ構いやしねえ!」

 

取り敢えず、コイツのツラは割れた、あとは…

 

「アナタは何処までも…」

 

 

「脱出、出来るとお思いで?」

 

呆れた、と溜息を吐く、青髪、長髪、顔は…

 

「そりゃ、な。オンナには判らねえ、男の矜持ってもんだ」

 

笑っているのは判る…細かく見えねえ…

 

「唯の意地っ張り、でしょう?」

 

女は俺を優しく抱え込み、降ろす

 

 

身体が冷たくなってきた…ヒエイ…ヘリ…ヤバイ…こいつらは…

 

「にげ……ろ」

 

 

「最期の言葉、ですか?」

 

 

「ワタシも強い戦士には、好意を持ちますね」

 

顔がハッキリと…!

 

「ちゅっ」

 

「なん…」

 

キス…で、顔がハッキリと、見えた!

 

「おバカな男の最後くらい、ごほーび、です」

 

跪く俺に離れる犯人

 

 

「殺人…さ、さつ…はん………ほ」

 

意識が、持たない…

 

 

 

黒く意識が塗り潰される前に、見えたのはオンナの笑顔と、迫る鋸状の刃だった

 

 

「ケイジサン…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとキミ!!」

 

 

おおう、目が覚めたときと同じセリフ…

 

 

「おう、戦場のオフィスでブルマーとは判ってるねぇ…」

 

 

「ああ、お気になさらず、コーヒーの銘柄っスよ」

 

 

 

『交通安全課までコーヒーセビリに来る所轄なんてセンパイくらいですよ』

 

 

そう、オレは束の間に霞が関、交通安全課の元後輩にコーヒーを恵んで貰っている

 

 

「目立つのはな。可愛い後輩女性刑事とエリートコースでヤングのバリキャリお若くカッコイイオニーサン刑事なんてそう珍しい組み合わせじゃねえぞお…」

 

 

『『ヤブに入って美女が出る』なんて誰が想像できますか?最早創造の域ですよ』

 

 

 

 

そんなやり取りをしていた(・・・・)

 

 

ええと、と、後輩は仕事通り手元の書類を確認する

 

 

その通り、ああ、分かっているさ

 

 

『アナタの名前は姫川さん』

 

『弟さんの行方が気になったあなたは『あの藪の近くで』近隣を捜索中のフミジマ刑事に説得し、車でこの署に護送中、『テログループに襲撃を受け』、意識を失った』

 

『お伝えしにくいのですが、弟さんの件で、銀座に最後に入ったのは事件当日、現地の防犯カメラで死の間際までキッチリと収まっています』

 

『顔認証が間違いだったとして、捜索手続きも無ければ、戸籍も…失礼』

 

『弟さんは遺体を預かっています』

 

 

 

 

 

「正直に言いましょう」

 

 

 

「センパイの名前と、誰も知らない筈の先輩の家族内容まで騙るどっかのバカの情報を持った『情報提供者』さん?」

 

 

「アナタは少し休憩して、診て貰った方が良い」

 

「今…、10時、11時には西東京まで出る装甲車が到着します、そちらに乗って頂ければ、一時避難施設を開設しています」

 

 

「避難者支援金等のお話は…お姉さん忙しいけど、確りしなさいね?」

 

 

それじゃあ、二番休憩所で待機してください。

 

 

その言葉に、俺は打ちひしがれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼女、綺麗な娘だったな…」

 

サクラ色の光彩を放つブロンド髪、同様の桃色の瞳に長い同色の睫毛

 

グラビアかってぐらいスタイルも肌も良いし、女として負けた気分

 

 

 

「ええ、ああいう子が増えるでしょうね…」

 

 

でも、あんなのが、ギンザで壊滅(・・・・・・)した『鬼の一課の鬼神』と呼ばれた敏腕刑事とあんな処まで態々似せてまで騙るなんて怒りを覚えたし、片思いの人を馬鹿にされた様で許せない

 

でも、こんなご時世に唯一の家族の弟さんまで亡くしたあの子と犠牲になった先輩どちらも攻め立てることは出来ない

 

「立派な人でした…」

 

黙って肯く係長

 

「アカサカ料亭前、バリケードの件で!電話入ってます」

 

廻して!

 

と彼らは仕事に戻っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレは…」

 

「わたくしは…」

 

何度か話していると自称が入り混じる

 

トイレに行った時の感覚に

 

 

 

身体は婚前交渉は論外のタチだったが

 

確認に腹を触らせてもらう

 

 

 

「この口調…このご時世に」

 

幼い喋り方、視線も顔の唇に行きがち

 

着ていた服は新品、だが、下着は汚れていた

 

「『この身体の感覚』に『そういう職業』だったってのは判るが」

 

 

 

今まで、大人に振り回されて大変だったな。お疲れさん

 

 

身勝手だが、恨みは返す、平和に眠ってくれ

 

そう心の中で呟くと肩の力が軽くなる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、これからは…いち、一匹の "戦士" だ…」

 

 

「これで、拳は軽くなった」

 

この娘の商売柄柔らかいしなやかで"男以上のスタミナ"に確りと付いている筋繊維の拳を握る

 

これなら、複数人殺陣(太刀舞われ)る!

 

 

あの時のデカチョウとの約束(不殺の誓い)消えた(時効)

 

 

「オメエ達の望む殺し合い(せんそう)、やってやんヨ…ォ」

 

 

"前"には小学生ながら組織を幾つも潰すという桁外れな経歴元を持つこの女

 

 

狂気とも謂える怒りの波動により、彼女の身体のポテンシャルを含め

 

 

"前"よりも圧倒的に強化されている

 

 

だが、相手(害虫)の戦力は俺のチカラを上回っている

 

 

悩んでいても仕方ない(一殺の道も一歩から)

 

 

取り敢えず降車場の近くのジムを利用(・・)することに決めた

 

 

 

独り言の清楚なお嬢様が醸し出す異常な殺気と語る物騒な小言により

 

 

装甲車の中の少年少女は怯えきっていたのを姫川ヨシノは知らない

 

 

 

こうして、一人の組織の男は

 

一人の戦士として文字通り、生まれ変わった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠くには硝煙と火災の煙、発砲音が遠くから響く

 

 

 

 

イケブクロ、その数多のひとつ、ビルの上から、女性は呟く

 

 

 

『ホシの一人目』 と書き置きを残し

 

 

 

 

 

 

 

高所特有の風に煽られ

 

 

 

 

 

呟いた女性は翌日、物言わぬ死体となって落下死による自殺と断定される

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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