牙狼・雷流鋼伝   作:ラルク・シェル

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これは「牙狼〈GARO〉魔戒烈伝」の「金字塔」と、「牙狼〈GARO〉炎の刻印」の「光芒」に近い話で、道外流牙と冴島雷牙とあともう1人が共演する物語です。そして出てくる敵は流牙と雷牙にとっては因縁の相手です。


前編

なにも無い暗黒の空間。そこにとてもどす黒い陰我を纏った邪気の塊が漂っていた。

 

「なん…で……なん…で…こ……うなっ……た…俺の…」

 

塊は怨言や呪言を吐きながらも漂い続けると、突如目の前に白く輝く塊が現れる。

 

「これは、これは…なんともこんな強い陰我は初めてだ?」

 

白い塊は黒い塊に興味を持ったのかジロジロ見つめが、黒い塊は上手く喋れない事に気づく。

 

「よく話せないか?ならば」

 

すると白い塊が触手を伸ばして黒い塊に突き刺す。しばらく経ってから触手を抜くと

 

「うぐ…はっ、なんだ?ちゃんと喋れるぞ!」

 

黒い塊は喋れるようになって驚く。

 

「さて、お前の望みは何だ?」

「望み?」

「我には分かる。お前は我と同じ望みがあるとな?言ってみろ」

 

いきなり願いはあるのかないのかと尋ねてきた。しかも不審な事に自分も同じ願望があると言い出す。そして黒い塊は強い怨み込めながら叫んだ。

 

「俺は…魔戒騎士を…黄金騎士を滅ぼしたい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある廃ビルで、魔戒剣で素体ホラーと戦う青年がいた。

この青年は黄金騎士の称号を持つ者、道外流牙。かつて光を失った漆黒の牙狼を仲間達と、母の思いによって黄金に取り戻すことが出来た。

そして今は一度仲間達と別れてホラー狩りの旅を続け、ホラーの根城になってる廃ビルから出てくる。

 

「これで、ここのホラーは全滅だな?」

『そうみたいだな流牙』

 

相棒の魔導輪・ザルバは今回の仕事も成功したと上機嫌。すると流牙はベンチに座って一休み。

 

「莉杏もみんなも元気にしてるかな?」

 

それから寝っ転がって星を見ながらも、魔戒法師でパートナーの莉杏や魔戒騎士の仲間達はどうしているのかと考える。さらに生き別れの母や育ててくれた師の死をも思い出す。

 

「なんだ?」

 

その時、流牙は上空を見て驚く。なぜなら黒い渦のような穴が開いてた。しかも穴は流牙を吸い込もうと迫って来る。

 

「ザルバ、あれは!?」

『俺にも分からない。だが、早く逃げた方が良い!』

「だな!」

 

急いで穴から逃げようとするけども、あまりの強い吸引力で踏ん張ったが。

 

「うぐぐ…うわぁあああああ!!」

 

そのまま流牙は穴に吸い込まれてしまい消えてしまった。

さらに流牙とは異なる別世界では、とある青年もホラーを倒していた。

彼は冴島雷牙。流牙とは別の世界の魔戒騎士で、歴代最強の牙狼と呼ばれた黄金騎士。今は眠りについた少女型魔導具にして、雷牙にとって大切な人。マ号ユリ型改めマユリが目覚めるのを待ちながらホラーの討伐を続ける。

 

『今回も良い調子じゃないか?』

「ああ…そうか」

 

相棒のザルバに対して無気力で返事を返す雷牙。これにはザルバも呆れてしまう。

 

『なぁ、未だにマユリが起きないのは分かるが…そんな無理して返事するなよ?』

「分かってるさ…だけど…」

『やれやれ…』

 

どうやらまだマユリが目覚めない事に心配していた。それでもホラーを倒すのには問題ないが、こんな無気力状態に。

すると雷牙の前に流牙と同じ黒い穴が出現。

 

「ザルバ、あれは!?」

『分からないが、この気配は!』

「たしかに、これは!」

 

この穴から覚えのある気配を感じる。しかしどんどん穴は近づいて吸引力が増していく。

 

『どうする雷牙!』

「もちろん、行ってみるさ!」

 

雷牙は自ら穴に飛び込んだ。そして着いた先は、なにも無い洞窟のような空間。

 

「ここは…」

『とにかく、邪気が蔓延している』

 

雷牙もザルバも警戒しながらも歩き出す。前にも後ろは勿論のこと、左右や頭上にも気を付けて進み続ける。だが、歩いている内にこの空間の邪気が、改めて2回も経験したのに気づく。

 

[やっぱりこの邪気は…だが、奴は封印されたはず]

 

そう思ったその時、後ろに殺気を感じる。

 

「ふんっ!」

「はっ!」

 

すぐに魔戒剣で防ぐが、相手の持っている剣も魔戒剣で自分と同じ牙狼剣だと気づく。

 

「同じ剣!?」

「くっ!」

 

相手は少し雷牙から距離を離れて魔戒剣を構える。

 

「お前…魔戒騎士か?」

「そういう君も、魔戒騎士みたいだね?」

「じゃあ、なんで俺と同じ剣を!」

「知らないさ。だけど…偽物じゃないな?」

「当たり前だ」

 

少し軽く会話しながらも、お互いのまた魔戒剣を混じり合いながら打ち合った。刃の打ち合いの衝撃で何回も火花が出たりして、さらに両者の振るう力が同じだったのか魔戒剣が弾いて天井の岩に突き刺さる。だけど、気にせずに今度は拳で戦った。雷牙の徒手空拳を使いながらも、相手はストリートファイトのような戦い方をする。しばらくすると突き刺さったお互いの魔戒剣を抜き取って構える。

両方は睨んで一歩も動かなかったが

 

「ふふ…」

「んふ…」

「「あははははははは!!」」

 

なぜか笑いながらお互いの魔戒剣を鞘に納めた。

 

「お前強いな?」

「それはこっちの台詞さ。だけど、これで分かった」

「ああ、俺達は敵じゃないってな」

 

お互いの剣と拳で敵じゃないと理解し分かり合った。

 

「俺は道外流牙。魔戒騎士で牙狼だ」

「牙狼だと?」

「え?」

「俺も牙狼の冴島雷牙だ!」

「お前も!?」

 

2人共牙狼ということで驚く。だが、2つのザルバが喋り出す。

 

『なるほど、つまり別世界の牙狼という奴だな?』

『それぞれの世界でも、魔戒騎士が存在するから牙狼もいる訳だ』

 

理解し合うザルバ達だが、これには少しシュールと感じる流牙と雷牙。

 

「だけど、どうして俺達が?」

「なんか……黒い穴に吸い込まれたけど、雷牙も?」

「そうだ。しかも覚えのある感じだった」

 

その時、突然地震が起きた。

 

「なっ、なんだ!?」

「周りが!?」

 

地震の影響か空間が変わっていき、洞窟からまるで古代遺跡のようになる。だが、この光景は流牙にとって見覚えのある光景だった。

 

「ここは…」

「知ってるのか?」

「ああ…なぜなら」

「かつてコイツがゼドムと戦った風景だからな」

 

すると2人の前に黒い塊が現れる。

 

「まさか、本当に牙狼の称号を持つ者が…2人もいるとは」

「アンタが俺達をこの世界に?」

「まぁ、そういう訳だ」

 

魔戒剣の柄を掴んでいつでも戦えるようにする雷牙の隣で、流牙は黒い塊の声と雰囲気に覚えがあるらしく静かに怒りを見せた。

 

「まさか…お前は」

「ああ、そうさ」

 

黒い塊が変形していくと人間の頭部になるが、流牙はその顔に見覚えがあるらしくもっと険しい顔になる。

 

「金城…滔星!」

 

それは流牙にとって絶対に許さない敵、金城滔星。かつてボルシティの人々を殺戮の闘将・ゼドムの魔導ホラーに変えて、流牙の母親の波奏を散々利用してきた男。しかしそれが災いしてホラーに憑依され、醜く命乞いしたが莉杏によって消滅した。

 

「そうだ…お前達によって全てが台無しになってホラーになって倒された!だが、お前達に対する怨念が消えずに時間をかけて、亡霊のようになりながらもさまよい続けたんだ…お前の怨みでな!」

 

怨念が籠った眼で流牙を睨むが逆に睨み返した。

 

「ふざけんな…お前のせいで母さんは勿論、罪のない人間が犠牲になったんだぞ!」

「はっ!俺はただ町の支配者として君臨したかったんだ。それなのにお前が邪魔しなければゼドムが復活することは無かったんだぞ?」

「貴様……!」

 

なんという開き直りと逆恨みにもっと怒りを増していくが、そこに雷牙も会話に入る。

 

「だが、亡霊のお前がどうやって俺達を倒そうというんだ?」

 

雷牙の言う通り今の滔星は亡霊そのもの。亡霊が2人の魔戒騎士相手にどう戦うのか。

 

「いや、俺には協力者がいるんだ」

「協力者だと?」

「我の事だ」

 

すると白い塊が周りに不気味な植物を生やしながら現れた。

 

「待ってたぞ。黄金騎士よ」

 

そして白い塊も形を作り始めると半透明で片方に目がある植物の胚になる。

 

「まさか…お前は、エイリス!?」

 

雷牙が驚くのにも無理がない。エイリスはメシアの涙や魔界の花とも呼ばれた古のホラー。かつて魔戒騎士の毒島エイジが死んだ恋人を蘇させる為に石板の封印を解いて復活したが、マユリや仲間達の協力で再び石板に封印した。

 

「なぜお前が!封印した筈…」

「我は貴様達に封印される直前に、欠片だけを次元に飛ばした。そして強い陰我と共に亡霊のようにさまようこの男と出会い…貴様ら黄金騎士を葬る為に手を組んだのさ!」

 

なんとエイリスがあの時、自分の分身を逃がしていた。しかし分身と言っても欠片のような物で、滔星同様に2人と戦える力がないと理解する。

 

「流牙、とにかく奴らを倒さなきゃ」

「もちろんだ。亡霊なら倒しても文句は言えない」

 

2人は魔戒剣を抜いて構えるが、滔星とエイリスは余裕な態度をとってた。

 

「エイリス、頼むぞ」

「分かった」

 

するとエイリスは時空の穴を開いて触手だけ穴に通した。しばくすると小さな種のような玉を取り出すと、流牙はまた見覚えのあるものに驚く。

 

「ゼドムの種!」

「こんな状態でも、多少なら時空を操れる。これ1つ持ってくるぐらいなら可能だ」

 

エイリスは触手でゼドムの種を包み吸収すると、白く輝く魔導ホラーのプラントになり滔星の額を突き刺した。

 

「「なっ!?」」

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

額に突き刺さったプラントから蔦が出て滔星を包み込む。しかし最初は呆然と突っ立てたが、流牙がすぐに雷牙に声をかけた。

 

「雷牙!何をやっているか分からないけど」

「たしかに、今がチャンスだ!」

 

すぐに2人は魔戒剣で斬りかかろうとした瞬間。蔦に包まれた滔星の頭部は粒子になると、粒子が人から植物やさらには素体ホラーや魔導ホラーの形になっていき、最後は大きな光に包まれ爆発する。

 

「うわっ!」

「なっ!」

 

なんとか爆風に吹き飛ばされないように踏ん張ったが、流牙と雷牙は目の前に立ち相手に驚愕する。

それは魔導ホラーの角と長く伸びた髪に、全身が灰色に近い銀に輝き。植物の模様が刻まれた上半身で、ホラーに近い下半身と両手をした異形の姿をした滔星。今まさに滔星とエイリスは、魔導ホラーのプラントを使って融合した。

 

「これが…俺の姿……俺は究極にして永遠の存在になった!」

 

【挿絵表示】

 

自分の姿を見て不気味に笑い出す金城滔星・エイリス融合体。さらに滔星の腹部からエイリスの顔が浮き出て喋り出す。

 

「どうだ?ゼドムの種をツナギに、とてつもない陰我を持つ亡霊と融合した我を?」

 

エイリスもまた自分の姿に惚れ惚れするような発言をする。だが、そんなのは2人にとってどうでも良い事。

 

「滔星…あの時は莉杏がやってくれたが、お前みたいな奴は俺が倒す!」

「俺もだエイリス!今度こそ好きにはさせない!」

 

2人の黄金騎士と最悪の敵の戦いが始まる。




pixivで投稿した牙狼の短編小説です。前からもしも金城滔星が復活する展開を考えていて、いっそエイリスと融合する形にしてみました。
さらに次回から雷牙と流牙の前に別の男が現れますが、待っていてください。

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