艦これSS〜一筋の航跡〜   作:鉄製提督

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第八話「救援」

 

 

____鎮守府正面海域にて、木曾達第二艦隊は、巡回中に第一艦隊が捜索中の敵空母機動部隊と交戦していた。

 

「全艦対空射撃!とにかく狙って撃ち落とせ!一機たりとも鎮守府に行かせるな!」

 

彼女達の上には、艦載機の大群が鳥の群れのように空を黒く染めていた。

重なり合う機銃の銃声、海に落ちていく大量の空薬莢と撃墜された艦載機の破片。

木曾達の周囲には、幾度となく爆発が起こっている。

「ちくしょう、キリがない!叢雲!支援艦隊到着まで後どのくらいだ!」

 

叢雲が機銃を連射しながら答えた。

 

「到着まで後二十分弱!」

 

「わかった!いいかお前ら、敵機に警戒しつつ砲雷撃戦に移行!」

 

全員が一気に速度を上げ、敵に突撃する。

予想外の接近に敵も慌てて砲撃を始める。しかし、照準が追い付かず命中しない。

 

「よし!接近すれば艦載機もろくに攻撃はできないはずだ。後少し____」

 

木曾が振り返った時だった。

 

「叢雲!!直上に敵機三機!」

 

急いで機銃の照準を合わせる...しかし。

 

(っ!?何 、この感覚...)

突然、頭の中になにかが引っかかるような違和感が芽生えた。段々と渦を巻くように広がり、叢雲の意識を惑わす。

 

(何よこれ...頭が...)

 

視界が霞み、手が痙攣し、まともに立つことも出来ない。

 

「叢雲!!」

 

叢雲が見上げた時には、敵機が目の前に迫っていた。

 

(沈む...)

 

鳴り響く爆音、立ち込める黒煙。

 

「叢雲!叢雲!!」

____彼女は無傷だった。

 

「...え?なんで?」

 

さらに敵艦二隻が突如爆発した。

 

「なんだ今の...」

 

綾波が木曾に通信をとる。

 

「こちら綾波、駆逐二級爆沈、軽巡へ級大破。泊地方向より砲撃及び雷跡を確認!12.7cm砲と四連装酸素魚雷だと思われます!」

 

「はぁ!?駆逐艦はここにいんので全部だろ。誰が...」

 

「攻撃方向より誰か来ます!」

 

艦娘がやってきた、彼女の容姿に誰もが既視感を覚えていた。

 

「え....紫織?なんでお前が?」

 

「詳しいこと後で。今は敵の足止めが先です。」

 

「わ、わかった!全艦戦闘続行!足止めしろ!」

 

「「「了解!」」」

 

「大丈夫ですか、叢雲さん。」

 

「えぇ、もう大丈夫。」

 

「全艦砲戦始め!!」

 

加勢も入り、とにかく全力で敵に砲撃を浴びせ続ける。

「ちぃ!!やっぱり火力が足りねぇ!各艦残弾報告!」

「こちら綾波。残弾0!」

「こちら吹雪。残弾0!」

「こちら白露。同じく残弾0!」

「こちら叢雲。残弾80」

 

「紫織は!」

 

「残弾大量です。魚雷も十分あります!」

 

「よし!俺が援護する!その間に突っ込んで雷撃しろ!」

 

「了解!行くわよ、紫織!」

 

「主砲、全門斉射!」

木曾から放たれる砲弾の雨が敵へと降り注ぐ、続いて響く爆発音。

 

「弾着確認!軽巡へ級撃沈!悪ぃな二人共。今ので残弾0だ。あとは任せた!」

 

「任せてください!」

 

全速力で敵に接近する。

 

「紫織、主砲で視界を遮った瞬間に魚雷を斉射!タイミングは私が出す!」

 

「了解です!行きましょう!」

 

更に近づいて行く。

 

「見えた!距離100!全主砲斉射!撃ちまくって!!」

ひたすら砲弾を撃ち込み続ける。着弾時の煙や水柱で敵の視界を塞いだ。

「叢雲さん、主砲残弾0です!」

 

「了解!今よ、魚雷全門斉射!!」

 

二人から放たれた魚雷は、まっすぐと敵に進んでいった。視界を塞がれた今、これを避ける術はない。

舞い上がる巨大な水柱。間違いなく着弾した…だが。

「嘘...重巡リ級2小破...ダメージが全然通ってない!」

 

「叢雲さん、もう残弾ないですよ!」

 

「私もよ…」

 

数が上といえ、こっちはもう弾がない。どうすることも出来なかった。リ級二隻が叢雲と紫織に照準を合わせる。ダメだと悟ったその時だった___不意に聞こえた風切り音、目の前でリ級一隻が爆炎を上げた。

 

「きゃっ!!今度は何!?」

 

目の前の事態に思考が追いつかない。

 

「こちら吹雪、叢雲ちゃん!リ級1爆沈!右舷前方から長距離砲撃!...!あれは!!支援艦隊到着しました!」

 

"ショートランド泊地第二艦隊、応答願います。,,

木曾に通信が来た。

 

「こちら第二艦隊旗艦木曾だ。そっちはどこの所属だ。」

 

"こちらパラオ泊地第一艦隊旗艦サラトガ、大淀さんから緊急通信を受け参りました。,,

 

「そうか、ありがたい。こちとら弾薬がすっからかんなんだ。援護を頼む。」

 

"ご苦労様でした。あと任せてください。,,

彼女は通信を切ると全員に指示を出す。

 

「ということで、全力で行くわよ!アイオワ、陸奥、三式弾装填で待機、瑞鶴、翔鶴は私と一緒に攻撃隊発艦!!」

 

瑞鶴、翔鶴、サラトガから攻撃機が次々と飛び立つ 。

降り注ぐ爆弾と魚雷の雨。

突然の攻撃に敵の統率が乱れだす。

 

「この程度で乱れては、私達は沈められませんよ!」

 

追い討ちをかけるように更に攻撃を加える。

 

「リ級撃沈!残りヲ級2!」

 

「こちら翔鶴、攻撃隊より入電!敵機接近!機数30!」

 

「そっちは私たちに任せて。アイオワ、行くわよ!」

 

「OK、ムツ!」

 

陸奥とアイオワが砲口を上空の攻撃機へと合わせる。

 

「三式弾、撃ち方始め!!」

 

「Fire!!」

 

二人から放たれた砲弾が空中で弾け、無数の破片になって敵機に襲い掛かる。

 

「こちらアイオワ、攻撃機全機撃墜!制空権確保!」

 

その光景を見たヲ級二隻が更に航空機を発艦させようとしていた。

 

「二度目は無いわよ!全機爆装、発艦!!」

 

瑞鶴から爆撃を受け、片方のヲ級が大破した。

「よし、トドメは私達が、アイオワ、通常弾装填。目標、空母ヲ級二隻、主砲斉射!撃て!」

 

「全主砲、Fire!!」

 

赤く光る砲弾が弧を描いてヲ級達へと飛んでいく。

圧倒的物量の砲撃に、ヲ級達はなす術無く沈んだ。

「ふぅ、敵艦隊殲滅、戦闘終了。」

 

「あんなに苦戦したアイツらをものの数分で、すごい…」

 

傍観していた叢雲は、彼女達の練度と強さに驚きを隠せなかった。他の皆も同じだった。

サラトガが叢雲を見つけ、近寄る。

「Are you ok?怪我はないですか?」

 

「えぇ、私は大丈夫。」

 

「水雷戦隊でよくここまで粘りましたね。流石です。」

 

「でも、あなた達の助けがなかったら今頃ヤバかったわ。ありがとう。」

 

「仲間を助けるのは当然のことです。お礼なんかもらうほどではありませんよ。とりあえず、泊地まで護衛します。念には念を。ですから。」

 

こうして木曾達は、救援に来たサラトガ達に護衛され泊地へと戻った。

 

 

 

 

その夜、入渠も終わり、鎮守府内は静まり返っていた。

春日は、執務室で今回の出撃の資料を真剣に読んでいた。

 

「おーい、ちょいと失礼するぜ、提督 。」

 

「木曾か、どうかした?」

 

「それ、読んだか?」

 

「あぁ、一通り読ませてもらったよ。まさか紫織が艦娘になるとはな。」

 

「あいつは強いぞ。この目で見たんだからな。ハハハ!」

 

木曾は豪快に笑ってみせた。

「ま、それもそうだが、"あの反応,,についてどう思ってる。」

 

急に真剣な表情へ変えた。

 

「...まだなんとも言えない。」

 

「でも、反応を見る限り"アイツ,,の可能性も...」

 

「木曾、一つ教えてあげよう。僕はね、_____失ったものは戻ってこない、そう思ってる__」

 

To be continue


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