「えぇ!?妹!?」
春日の妹と聞いて、皆が驚愕した。
「は、はい。兄さんから何も聞いてないんですか…?」
「「「いや、何も。」」」
全員が口を揃える。
「えぇー...ちゃんと話しておいてって言ったのに…」
紫織は、少し困ったような表情になった。
叢雲が口を開く。
「ま、まぁまずは彼に会いに行きましょ。ついてきて、こっちよ」
「ありがとうございます」
叢雲が彼女を執務室に案内しようとした時だった。
「紫織!」
春日の方からやって来た。
「お久しぶりですね。兄さん。」
「結局こっちに来たのか。危ないから本土にいろと言っただろう。」
「どうしても会いたかったので来ちゃいました。数日はこっちに泊まる準備もしてます。」
そう言って船から大きな旅行鞄を持ってきた。
「まったく...仕方ない、絶対に危ない真似はするな。約束だぞ。」
「はい。あ、あと」
「なんだ?」
「本土の方から新型の艤装をと頼まれました。船の中にあります。」
「わかった。」
一通り話し終わると、春日は叢雲達に向き直った。
「日が沈んできたから今日はもうおしまい!各自着替えて中に戻ること。」
__その日の夜、鎮守府の談話室では紫織の話で盛り上がっていた。
「なぁなぁ、提督の妹って子さぁ、可愛いよな。」
摩耶が特に一番興味を抱いてた。
加賀でさえも興味を持っていた。
「とゆうか、司令官はまず何歳なのよ。」
叢雲が問いかけた時だった。
「あの、失礼します。」
パジャマ姿の紫織が談話室に入ってきた。
「おう!一緒に話でもするか?」
相変わらずの豪快な口調な摩耶が、楽しそうに彼女を誘う。
「あ、ではお言葉に甘えて。」
彼女は艦娘達の会話に参加した。
「紫織で、いいんだよな?」
摩耶が早速話しかける。
「はい。春日紫織と言います。改めてよろしくお願いします。」
「別にそんなに丁寧な口調になんなくてもいいさ。相手は摩耶なんだからな。」
木曾が摩耶のことをおちょくる。
「あぁん?このアタシに随分偉そうなこと言うじゃねぇか、木曾。」
「そうか?そんなつもりはなかったけどなぁ~」
顔は笑っているが、二人の背後からは殺気以外の何でもない空気が漂ってきた。
「上等じゃねぇか。一回サシでオマエとやりあってみたかったんだよ。今から演習でもするか?おん?」
「いいぜ、相手になってやらァ。ただし、勝つのはオレだがな。」
互いに睨み合いながら顔を近づけあう、まさに一色触発の状態だった。
「やめなさい。」
睨み合う二人に、加賀が拳をおろした。
「「いったァ!!」」
その場で二人共頭を抑えのたうち回る。
「ごめんなさいね。いつもこんな感じなのよ。」
「そうなんですか...アハハ...」
____しばらくの間、紫織は彼女達と談笑していた。
「へぇー、提督って元自衛隊員だったんだな。」
「はい、でも、何かの作戦で大怪我したのが理由で辞めて、ここに入ったらしいんです。」
「その話は何も聞いてないのか?」
「はい。詳しいことは何も。」
摩耶がふと時計を見る。もうすっかり夜中だった。
「そろそろ寝なきゃな。そういや、紫織はどこで寝るんだ?やっぱ提督と同じ部屋で寝るのか?兄妹だし。」
「いえ、来客用の部屋で寝泊まりします。」
「いいのか?一人で。」
「えぇ、一人なのは慣れてます。」
加賀がすかさず疑問を投げかける。
「慣れてるって...貴女、両親は?」
「親はいません。母は私を産んで他界、父は深海棲艦が本土攻撃をしてきた時に。」
そう言って彼女は俯いてしまった。
流石に加賀も焦り始める。
「ご、ごめんなさい...嫌なこと思い出させてしまって。」
「いえ、大丈夫ですから。お気になさらず。私はもう寝ます。おやすみなさい。」
皆に気を遣ってか、紫織はゆっくりと部屋をあとにした。
「...俺達もこの辺にするか。」
木曾が口を開いた。
重々しい足取りで談話室を後にした。
To be continue