艦これSS〜一筋の航跡〜   作:鉄製提督

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朝上げ


第六話「妹」

「えぇ!?妹!?」

 

春日の妹と聞いて、皆が驚愕した。

 

「は、はい。兄さんから何も聞いてないんですか…?」

 

「「「いや、何も。」」」

全員が口を揃える。

 

「えぇー...ちゃんと話しておいてって言ったのに…」

 

紫織は、少し困ったような表情になった。

叢雲が口を開く。

 

「ま、まぁまずは彼に会いに行きましょ。ついてきて、こっちよ」

 

「ありがとうございます」

 

叢雲が彼女を執務室に案内しようとした時だった。

 

「紫織!」

春日の方からやって来た。

 

「お久しぶりですね。兄さん。」

 

「結局こっちに来たのか。危ないから本土にいろと言っただろう。」

 

「どうしても会いたかったので来ちゃいました。数日はこっちに泊まる準備もしてます。」

そう言って船から大きな旅行鞄を持ってきた。

 

「まったく...仕方ない、絶対に危ない真似はするな。約束だぞ。」

 

「はい。あ、あと」

 

「なんだ?」

 

「本土の方から新型の艤装をと頼まれました。船の中にあります。」

 

「わかった。」

 

一通り話し終わると、春日は叢雲達に向き直った。

 

「日が沈んできたから今日はもうおしまい!各自着替えて中に戻ること。」

 

 

 

__その日の夜、鎮守府の談話室では紫織の話で盛り上がっていた。

 

「なぁなぁ、提督の妹って子さぁ、可愛いよな。」

 

摩耶が特に一番興味を抱いてた。

 

加賀でさえも興味を持っていた。

 

「とゆうか、司令官はまず何歳なのよ。」

 

叢雲が問いかけた時だった。

 

「あの、失礼します。」

 

パジャマ姿の紫織が談話室に入ってきた。

 

「おう!一緒に話でもするか?」

相変わらずの豪快な口調な摩耶が、楽しそうに彼女を誘う。

 

「あ、ではお言葉に甘えて。」

 

彼女は艦娘達の会話に参加した。

 

「紫織で、いいんだよな?」

 

摩耶が早速話しかける。

 

「はい。春日紫織と言います。改めてよろしくお願いします。」

 

「別にそんなに丁寧な口調になんなくてもいいさ。相手は摩耶なんだからな。」

 

木曾が摩耶のことをおちょくる。

「あぁん?このアタシに随分偉そうなこと言うじゃねぇか、木曾。」

 

「そうか?そんなつもりはなかったけどなぁ~」

顔は笑っているが、二人の背後からは殺気以外の何でもない空気が漂ってきた。

 

「上等じゃねぇか。一回サシでオマエとやりあってみたかったんだよ。今から演習でもするか?おん?」

 

「いいぜ、相手になってやらァ。ただし、勝つのはオレだがな。」

 

互いに睨み合いながら顔を近づけあう、まさに一色触発の状態だった。

 

「やめなさい。」

 

睨み合う二人に、加賀が拳をおろした。

 

「「いったァ!!」」

 

その場で二人共頭を抑えのたうち回る。

 

「ごめんなさいね。いつもこんな感じなのよ。」

 

「そうなんですか...アハハ...」

 

____しばらくの間、紫織は彼女達と談笑していた。

 

「へぇー、提督って元自衛隊員だったんだな。」

「はい、でも、何かの作戦で大怪我したのが理由で辞めて、ここに入ったらしいんです。」

「その話は何も聞いてないのか?」

「はい。詳しいことは何も。」

摩耶がふと時計を見る。もうすっかり夜中だった。

「そろそろ寝なきゃな。そういや、紫織はどこで寝るんだ?やっぱ提督と同じ部屋で寝るのか?兄妹だし。」

 

「いえ、来客用の部屋で寝泊まりします。」

 

「いいのか?一人で。」

 

「えぇ、一人なのは慣れてます。」

 

加賀がすかさず疑問を投げかける。

 

「慣れてるって...貴女、両親は?」

 

「親はいません。母は私を産んで他界、父は深海棲艦が本土攻撃をしてきた時に。」

 

そう言って彼女は俯いてしまった。

流石に加賀も焦り始める。

 

「ご、ごめんなさい...嫌なこと思い出させてしまって。」

 

「いえ、大丈夫ですから。お気になさらず。私はもう寝ます。おやすみなさい。」

 

皆に気を遣ってか、紫織はゆっくりと部屋をあとにした。

 

「...俺達もこの辺にするか。」

木曾が口を開いた。

重々しい足取りで談話室を後にした。

 

To be continue

 


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