というか駆逐棲姫の力がどう考えてもアルp...(殴
「敵艦捕捉!距離500、数増加!ル級2隻が随伴!」
横須賀港から遥向こう、水平線に戦艦棲姫、ル級の計3隻がこちらに近づいていた。深海棲艦の少女は艦橋から船を操っていた。
「狙いは君か?」
「ウン、ワタシハアイツラカラニゲタ。ウラギリモノハシズメラレル」
前戦った時の「予定」とやらはどうやらこの子のようだったらしい。
当然だが、春日達はこれを止め、彼女を守らねばならない。
「よし、僕達も戦う。君はここで援護をしてくれないか」
「ウン、ワカッタ」
「それと、君のことはなんと呼べばいい」
「ソウ....ダネ.....。ハル、ッテヨンデクレレバイイ」
「わかった、ハル」
しばらくすると、艦橋に木曾の声が聞こえてきた。続いてほかの艦娘の声も聞こえてくる。
《こちら木曾!敵艦隊に急速接近中、だがヤバいなこれ。戦艦棲姫は障壁が三重になってやがる!》
「木曾、被弾を避けるために回避を優先。とにかく近づけさせるな」
《了解!》
「聞いたな?全員回避優先、隙を見て攻撃を仕掛けろ!」
《叢雲、了解》
《弥生、了解しました》
《こちらガングート、了解した》
だが相手は戦艦3隻、こちら側は戦艦は1隻しかいないその上戦艦棲姫は三重の障壁を使う。明らかにこっちが不利だった。
「提督、援護射撃を頼む!」
《了解》
直後、127mm砲が火を噴いた。
赤く光る砲弾はまっすぐ戦艦棲姫の方向へ飛翔し、着弾、炸裂した。
もう一発、もう一発と撃ち込まれ、次第に煙が覆っていった。
ハルの正確な砲撃は止むことなく続いていく。
「.....全艦警戒」
木曾が指示を出した直後、黒煙を切り裂いて砲弾が飛んできた。
彼女達のあいだをすり抜け、ガングートへとまっすぐ飛んだ。
「ガングート、避けろ!」
「っく!」
木曾の声ですれすれ砲弾を避けたガングートだが、咥えていたパイプに当たり、パイプは砕け散ってしまった。
「なっ......私の、パイプが...」
水面に浮かんだ欠片をじっと見つめ、打ちひしがれたような顔をしていた。
「フフ、シズ.....」
ル級が黒煙の中から追い打ちをかけようとした瞬間だった。ガングートが目と鼻の先に接近していた。
「グガッ...ナ、ニ....」
『よくも私の大切な物を壊してくれたな......絶対に生きては帰さんぞ...』
そのまま顔面を掴むと、勢いよく前へとル級を投げ飛ばした。さらにそのまま至近距離から主砲を容赦なく撃ち込んでいく。
「....敵艦一隻排除」
《おいガングート!危険だ!あまり前に出るな!》
彼女らしくない戦いに慌てた鷹谷が無線で声をかけてきた。恐らく大切な物だったのであろう、パイプを壊されたことによる怒りなのは間違いなかった。
「何を言っている同志。前に出なければこいつらを殺れないだろう!ypaaaaa!!!」
鷹谷の声も聞かず、ロシア語で叫びながらさらに突っ込んでいく。
だが、目の前には戦艦棲姫の障壁があった。
『徹甲弾装填、撃ち方始め!』
数十mの距離から容赦なく砲撃を加えていく。そして、その間に木曾達がル級を相手していた。
「こちら叢雲。弥生!左舷側に回って時間稼ぎ。木曾!私の雷撃に合わせて砲撃と雷撃!30秒後にやるわよ!」
駆逐艦の機動性を活かし、左右から交互に砲撃を入れていった。
ル級の砲塔は彼女たちに追いつかず、砲撃が当たらない状態だった。
「今よ!魚雷一斉射!」
「くたばれ!」
圧搾空気の抜ける音と共に、計8発の魚雷が海中に滑り込んだ。
そのまま白い雷跡を残しながら真っ直ぐ進み、数発がル級に直撃した。
「よし、残り1隻!」
ル級の撃沈を確認した直後、爆風と一緒にガングートが飛んできた。
「おいおい!大丈夫か!」
慌てて木曾が駆け寄って彼女の状態を確認する。主砲と機関部が大きく損傷していた。
彼女自身の怪我もかなり酷い状態だった。すぐにでも応急処置が必要だったが、戦艦棲姫からの追い討ちは止むことなく続く。彼女の撃った砲弾により、そこかしこに水柱が立っていく。
「木曾、危ない!」
木曾に向かってきた砲弾を、叢雲が盾になって庇った。黒煙が立ち込め、叢雲がどうなったかがわからない。
「ヒヨワナモノダ、オマエラモイッショニミナゾコニ.....」
彼女が喋り終わる前に、叢雲のいる方向から彼女のマスト型の槍が飛んできた。
「フッ、ソンナモノ」
右手を前に出して三重障壁を張って防御した。だが、叢雲の投げた槍は障壁を一瞬で突き破り、それだけでなく戦艦棲姫の右腕を吹き飛ばした。水面に鮮血を零しながら、彼女は二の腕の半分から下が吹き飛んだ腕を押さえて断末魔を上げた。
「ナ、ナンデ!ナンデダ!!ナゼヤブレタ!!オマエ!!」
「何デ?何でカって?アンタが知ル必要はナいよ....」
しばらくして煙の中から叢雲が出てきた。
あれだけの砲撃が直撃したにも関わらず無傷だった。
それどころか少し様子が違った。
じわじわと近寄り、戦艦棲姫の目の前に立つと、彼女の大きな艤装を砲撃してあっさりと破壊した。そのまま彼女の首を掴んで持ち上げ、赤黒く光る憎悪に満ちた目で睨みつけていた。
「......シズメ」
冷酷な声でそう言うと、アームを伸ばして至近距離からの砲撃を始める。一発、また一発と当たっていき、撃ち終える頃には戦艦棲姫は息すらしていなかった。
掴んでいた手を離すと、彼女は鮮血を流しながら暗い海に沈んでいった。
戦いが終わり、海の上には静寂が戻った。
体中に戦艦棲姫の鮮血を染みつけていた叢雲は、ただ空をぼーっと眺めていた。
黒煙が晴れると木曾達も彼女の姿を捉えた。
「叢.....雲?」
名を呼ばれてゆっくり振り向くが、彼女はその途中で膝から崩れ落ちて意識を失った。
「叢雲!叢雲っ!!!」
「こちら弥生!すぐに整備班と医療班を待機させてください!負傷1、意識不明2!叢雲さんとガングートさんです!」
《こちら春日、了解した!すぐに手配する!》