艦これSS〜一筋の航跡〜   作:鉄製提督

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第二話「抜錨」

 

 

(ほんとに何なのよ、ここは…)

執務室から、強制的に連れ出された叢雲は、案内をしている摩耶の後ろをついて行っていた。

 

「ここが入渠用ドック、こっちが食堂...って、聞いてんのか?」

 

「聞いてるわよ。」

 

彼女に対し、叢雲は素っ気ない返事をした。

 

「なんだぁ?可愛くねぇな。ホレホレ♪」

 

そう言うと摩耶は、叢雲の頭を荒っぽくガシガシと撫でた。

「な、何すんのよ!?」

 

「なーんだ。可愛い反応できるじゃねぇか。無愛想なのは勿体ねぇぞ?」

 

「余計なお世話よ!まったく...」

 

そんなやり取りをしていると、二人は部屋に到着した。

 

「よし着いたな、今日からここがお前の部屋だ!」

 

そう言って摩耶は部屋のドアを勢いよく開けた。部屋の中は、鎮守府内のボロさをかき消すようなしっかりとした内装だった。

 

「あら、中々良いじゃない。」

 

「だろ?廊下とか大部屋はちょっとボロいけど、生活部屋は綺麗なんだ!」

 

(少しは他も整備しなさいよ…)

 

「って、ん?」

 

部屋を見回していると、叢雲はある疑問を持った。

「ん?どした?」

 

「いや、なんでベッドが二段なの?」

 

「あぁ、それね!うちの鎮守府はちょっと変わったシステムでなー。違う艦種との共同生活が基本なんだ。」

 

「そうなの。随分変わってるわね。それで、私と相部屋なのは誰なの?」

 

摩耶は悪戯っぽい笑みを浮かべた。

 

「なんだ?察しが悪いなぁ。ここ使わない奴に案内させる訳ねぇだろ?」

 

「え、それってまさか...」

 

「そのまさかだよ。お前との相部屋は、この摩耶様だ!驚いたか?」

 

「ちょっと待って。私入れて13隻じゃない。一人部屋は一体誰なの?」

 

「あぁー。それは大淀だな。あいつは色々忙しいし、一人部屋の方が融通利くんだと。」

 

(だとしても...よりもよって....)

 

「なんだぁ、なにか不満か?」

叢雲が考えている事が分かったのか、摩耶はムスッとした表情を作る。

 

「...別に。」

 

その返答に、摩耶はニヤッと笑った。

 

「よし!それならいいんだ!それじゃあ、さっさと他の所も案内しなきゃな!」

 

そう言うと摩耶は、また叢雲の手を引いた。

 

「ちょ、ちょっと!またなの!?」

 

「まだまだ案内しなきゃいけない所いっぱいなんだ。悪ぃな。」

 

そう言って部屋の外に出ようとした時、耳をつんざく様なサイレンの音が聞こてきた。その後、慌しい大淀の声が聞こえた。

 

"鎮守府近海海域、製油所地帯沿岸にて、深海棲艦の出現を確認!以下の艦娘は至急出撃用ドックヘ急行してください!加賀、飛龍、摩耶、木曽、白露、叢雲。これは訓練ではありません!繰り返します。これは訓練ではありません!,,

 

「...悪ぃな。案内はやっぱナシだ。」

 

さっきまでニヤニヤ笑っていた顔が嘘のような、険しい表情を作っていた。

 

「初日から忙しいわね。」

 

「出撃用ドックは向こうだ。行くぞ。」

 

そう言うと二人はドックへと走り出した。

しばらくして、二人はドックの前ヘ着いた。

二人以外の艦娘は、既に着いていた。

「叢雲、実戦経験はあるよな?」

 

「もちろんよ。」

 

「なら話が早い。」

摩耶は、またさっきの様にニヤッと笑った。

しばらくして、大淀が入ってきた。

 

「これで全員ですね。それでは、出撃準備をお願いします。なお、今回の旗艦は摩耶さんにお願いします。」

 

「おうよ。任せときな。」

そう言うと摩耶は、奥へと歩いていく。

叢雲や、他の艦娘もついて行く。

 

「ここが出撃用ドックだ。」

 

「こんな施設あったのね。」

 

出撃用ドックの中は、既に少し注水されていて、上には各艦の主機や武装が吊り下げられていた。

 

「時間がない。さっさと出るぞ。」

 

「了解よ。」

叢雲は降りてくる自分の艤装の下へ行き、主機を背中へ装着し、武装を主機横のアームに取り付ける。他の艦娘達も同様に自分の装備を装着していく。全員の装備を付け終えたところで明石が放送を流した。

 

"各艦は、缶の始動後、進水を行って下さい。,,

 

指示に従い、缶を始動させる。小気味よい振動が体を震わせた。それぞれが水上へと立ち準備が整う。

 

"全艦娘の装備着装を確認。ドックヘの注水開始!正面隔壁解放!進路クリア!,,

目の前の壁が開き、陽の光が薄暗いドックの中を照らしていく。

 

「よし!行くぜ!抜錨だっ!!」

 

To be continue...

 


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