調子に乗りましたすいません、失踪はしてないです。
最新話どうぞ。
「いってぇ....ちくしょう」
「自業自得だ。馬鹿者」
しばらくすると痛みも引き、木曾は喋れるほどに回復していた。
「全く、まあいい。春日、お前をここに呼んだ理由は二つある」
「二つですか?」
「ああ、まず一つ目。二週間ほど前、ソロモン諸島を航行中だった米海軍輸送船団が襲撃され、中の荷が奪われた可能性が浮上した」
それを聞き、春日以外の全員が一斉に全員が固まった。
「なるほど、ですが、まだ深海棲艦との戦闘が続いてる中です。輸送船が襲撃されてもおかしくはないのでは....」
言いたくない言葉ではあるが、春日の発言は正論だった。
未だに深海棲艦の脅威に晒されている中、リスクは承知の上のはずである。
「確かにそうだ。たかが襲撃程度で我々に通達は来ない。だが、無くなった物が曰く付き....と言ったら話は別だ」
「というと...?」
一段落入れると、表情をさらに真剣にさせて春日たちに告げた。
「消えたものは...日米で共同開発を行っていた新型兵器。戦術電磁誘導砲....俗に言うレールガンだ」
「なっ......」
「口径170mm、砲身水平状態で射程30km。仰角状態で最大150km......」
「なんで、そんなものが.....」
淡々とレールガンの性能や詳細を言う采音を前に、春日達はただ唖然とするだけだった。
「対深海棲艦兵器....その名目で作っていたが、まさか奴らに奪われたかもとはな。さて春日。これは南西方面泊地の提督全員に伝えたが、もしこれを見つけた場合速やかに破壊しろ。いいな?」
「....了解しました、中佐」
「そして二つ目...休暇だ」
「....はい?」
さっきまでの真剣な話から一転、休暇だと言われ拍子抜けした。
「というのも、ここに呼んだ理由は久々にお前の顔が見たかっただけだ。さっきの話は二の次みたいなものだよ。本部には春日は休暇と報告しておいた、存分に楽しめ。あ、私服持ってきてないだろうと思ったからこちらで用意しておいた」
「い、いや、それどころの話じゃない気が....」
「大丈夫だ、奪われたかもなんて言ったが、あらかた襲撃された時に海の底に沈んだんだろう。あまり気に留めるな、じゃあ、楽しんで来い!」
____しばらくして、春日達は私服に着替え、鎮守府の正門前で誰かを待っていた。
「全くよぉ、どれが大事な話なんだかさっぱりだぜ、あのメスゴリラ....」
「はは、あの人はああいう感じだから」
「というか、木曾。なんでアンタだけ制服着てるのよ!」
叢雲までもが私服に着替えている中、木曾だけ着替えていなかった。
紫織や叢雲ならまだ制服でも問題は無いが、木曾の場合は黒い外套にサーベルを下げている。あからさまに浮く格好だ。
「別にいいだろこのくらい。それに艦娘ってはっきりわかった方がいいだろ?」
「ところで兄さん。誰を待っているんですか?」
叢雲と木曾が言い合う中、朝潮、もとい紫織と弥生は春日のと話していた。
「あぁ、それならもうすぐ」
「あ、司令官。彼女では?」
「お待たせしました。本日の護衛を務めさせていただきます。駆逐艦不知火です」
不知火と名乗った駆逐艦は、グレーのパーカーをまとい、大きな黒のリュックを背負っていた。
「ショートランド泊地所属、春日英人だ。よろしく不知火」
「はい、宜しくお願いします。行先はお任せします」
「よし、それじゃあ.....」
「お、春日じゃないか!」
行き先を言おうとした時、白い軍服を着た男が近寄ってきた。
「鷹谷さん!お久しぶりです」
馴染みがあるのか、鷹谷と呼んだ男と握手をして一通り挨拶をした。
「兄さん、その人って…」
「パラオ泊地所属、鷹谷漱吾(たかやそうご)中佐。この前の作戦で支援艦隊を出してくれた人だ」
「なるほど、鷹谷司令官。駆逐艦朝潮です、あの時は助かりました」
紫織は鷹谷の方を向き、丁寧に頭を下げて礼を言った。
「いやいや、あれはたまたまだし...」
『同志よ、その人たちは誰だ』
雑談をしていると、赤いシャツを着た長い銀髪の女性が背後に立っていた。
見た目からして海外艦だろうか、言語も日本語ではなかった。
『あぁ、私の友達だ、話すか?ガングート』
これには叢雲達は驚いた。銀髪の女性が話した言語と似たような言葉で鷹谷が会話をし始めた。
「あぁ、彼女はガングート。ロシアから着任してきた戦艦だ」
『ほら、この前教えた日本語を試す時だぞ』
「....わ、私は戦艦ガングート。よろしく.....」
つっかえたりはしていたが、中々上手に話した。
「鷹谷さんは語学堪能でね。海外艦の日本語教育などを任さているんだ。今じゃイタリアやドイツ、イギリスやアメリカの艦娘も彼のとこにいるんだ」
「なるほど、すごいわね....」
「ガングートは勉強熱心でね、こう見えて日本語は海外艦の中でも上手いぞ」
「なっ!同志!恥ずかしいからあれほど言うなと.....」
「気にしない気にしない。勉強熱心なのはいいことだ。恥ずかしがらなくていい」
「そう....か?」
「うんうん」
「さて、鷹谷さんも一緒に行きませんか?中華街」
「お、いいね。ちょうどガングートも中華が食べたいって言ってたんだ」
「よし、じゃあ行こう」
やや賑やかになり、彼らは車で中華街の方へ向かった。
「ハァッ...ハァッ....」
__その頃、中華街の近くで裸足で走る少女がいた。
「ニゲ、ナキャ......」
黒い布切れを被り、雨が降り始める中ただただ当てもなく走っていた。