艦これSS〜一筋の航跡〜   作:鉄製提督

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第十二話「我、姫ト邂逅ス」

「側面ハッチ開放!艦娘展開!!」

 

「全武装、安全装置解除!敵から目を離すな!」

 

「全艦娘、無事スロープより離脱。展開確認、複縦陣で航行を開始。」

 

 

 

 

イージス艦「こんごう改」の側面から、木曾、叢雲、弥生、朝潮がスロープをつたい海原へ滑り降りる。

 

"こちらも支援を行うが、あまり期待はしないでくれ。,,

 

無線から艦長の岱蔵の声が聞こえてきた。

 

「大丈夫だ艦長。援護が必要になる前に片付けてやらぁ。全艦、最大戦速!俺に続け!」

 

指示を出すと木曾は、腰のサーベルを抜いて敵艦隊の方角へ突っ込んでいく。

 

「木曾さん、見えました。重巡リ級二隻、駆逐イ級、ハ級一隻づつ、軽巡ツ級二隻。」

 

「了解、各艦主砲弾薬装填!あとは俺の支持を待て。」

 

「ちょっと木曾!一人で何する気!」

 

「へへっ、雷巡の性能、その目に焼き付けな!甲標的、展開!」

 

それと同時に、木曾の艤装から潜水艇のようなものが海の中に滑り込んでいった。

 

「なにあれ、潜水艇?」

 

直後、一本の雷跡が敵艦隊めがけ進んでいった。そのまま雷跡はイ級に当たり、大きな爆音と水柱が立った。

 

「イ級爆沈!残り五隻!」

 

「何、今の....」

 

呆然とする叢雲に木曾が説明を入れる。

 

「甲標的、雷巡や潜水艦が運用できる潜水艇だ。酸素魚雷を敵の至近距離から確実に撃ち込める。イ級ぐらいの小型艦じゃ、当たったらまず浮かんでいられねぇ。」

 

彼女の言う通り、イ級は黒煙を上げながら海の底へ消えていった。

 

「ほれ、ボサッとするな!全艦、砲門開け!砲戦用意!撃ち方始め!」

 

木曾の指示に従い、砲口を向けながら敵艦隊へ接近していく。リ級達はさっきの雷撃で混乱してる様子だった。こちらに気付くも、先程の影響で砲撃が当たらない。

 

「よし、混乱してます。畳み掛けましょう。」

 

冷静な表情で弥生が言い放つ。

 

「わかった。全艦砲撃をリ級二隻に集中!撃ったら即回避行動!」

 

指示に従い、一斉に砲弾を放っていく。

濃密な弾幕がリ級めがけ飛ぶ。しかし....

 

「ダメ!ハ級とツ級一隻が前に出て身代わりになった!」

 

叢雲が見た時、ツ級とハ級が前に出て、リ級二隻を庇った。代わりにツ級達は沈み、残り三隻になったが、それでも高火力のリ級は健在だった。

 

「怯むな!砲戦続行!装填中の弾撃ち切ったら雷撃戦に移行!!」

 

周囲に回り込みながら、砲弾を浴びせていく。だが、ツ級の回避力、リ級の装甲相手では歯が立たなかった。

 

だが彼女達の切り札はまだある。

 

「よし、雷撃開始!酸素魚雷、一斉射!!」

 

四人が一斉に酸素魚雷を放っていく。

無数の雷跡は残った三隻めがけ進み、爆発した。

先程とは比にならない大きさの水柱が舞い上がった。

 

「雷撃命中.....やったか?」

 

水柱が消えると、深海棲艦の姿は艤装の残骸を僅かに残し消えていた。

 

「よし、敵部隊殲滅。これより船に___」

 

木曾が指示を出そうとした時、視界の先に人影のようなものが見えた。

 

スラリとした高い身長。

肌は雪のように白く、それとは対照的に、真っ黒なワンピースのような服を纏い、潮風に流される黒髪は腰辺りまで伸びていた。

 

「艦.......娘.....?」

 

じっとその人影を見つめると____

 

 

風になびく髪の隙間から黒い角が見えた。

 

 

「っ!!深海棲艦だ!!距離を取れ!!!」

 

木曾が叫んだ直後、その深海棲艦は不敵な笑みを浮かべ、海中から生物のような艤装を呼び出しそのまま砲撃を始めた。

 

「避けろ!とにかく避けろ!」

 

彼女達の周辺は、砲弾が当たる度に大きな爆音と水柱が立った。

火力から戦艦級なの間違いなかった。だがそれだけじゃなかった。

 

「.....フフフ......ナンドデモ、シズメ....」

 

その深海棲艦は笑いながら言葉を発した。

 

それを聞いて木曾が戦慄する。

 

 

 

"木曾君、何があった!,,

突然の砲声を聞き、岱蔵が木曾に無線をかけた。

 

「新手だ!それもすっごくヤバイやつだ!」

 

"何!?艦種は!,,

 

「奴は....姫級...戦艦棲姫だ!!」

 

 

 


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