艦これSS〜一筋の航跡〜   作:鉄製提督

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第十一話「横須賀への渡航」

「よし、横須賀に行くよ!」

 

「「えっ?」」

 

弥生の一件から数日がたったある日、春日は艦娘を執務室に集めると突然言い放った。

 

「今日は横須賀鎮守府の将校からお呼ばれがありました。里帰りも含めて行くつもりなので、紫織、補佐の大淀は確定です。この中で一緒に行きたい人は?」

そう言うと、全員が無言で手を挙げた。

 

「まぁ、と言っても残りは既に決まってるんだ。叢雲、木曾、弥生。すぐに身支度を整えて来て。」

 

木曾はやはりという顔をし、叢雲と弥生はただきょとんとしていた。

 

「ほらほら、早く準備!身支度を整えたらまたここに来て。」

 

 

____しばらくして身支度を整えると、彼女達は執務室に足を運んだ。

 

「よし、じゃあ出ようか。」

 

「ちょっと待って司令官。どうやって行くの?私達はいいとして。」

 

「あぁ、それなら大丈夫。迎えがいるから。」

 

その直後、大音量で警笛の音が響いてきた。

 

「えっ!?何!?」

 

慌てて叢雲が執務室の窓から外を見ると....

 

海上自衛隊の艦が海岸沿いに停まっていた。

 

 

 

 

 

「__ふぅ、たまには船で海に出るのも気持ちいいな。」

 

彼らは横須賀を目指し海原を進んでいた。

彼らが乗っている船は、対深海棲艦改造型イージス艦「こんごう改」

対艦ミサイルを山積みにしたバケモノだ。

 

「やあ、春日君。乗り心地は如何かな?」

甲板の出ていた春日達の背後から、白髪混じりの男性が話しかけてきた。

 

「艦長。ええ、この度はありがとうございます。」

艦長という言葉を聞き、大淀、弥生、紫織、叢雲は丁寧に敬礼し、木曾はただ海の方を眺めてた。

 

「はははっ、大淀君以外の三人は初めて会うな。私はこんごう改艦長、志田野岱蔵(しだのたいぞう)だ。好きに呼んで構わない。まぁ、そこの木曾君でさえ艦長と呼ぶがな。」

 

岱蔵が木曾に視線を向けると、彼女はニヤつきながら手をヒラヒラと振った。

 

「うむ。あ、そうだった春日君。そういえば、私に用事があるとさっき連絡したそうだが。何用かね?」

 

「その件でしたら、とりあえず場所を変えて話しましょう。」

 

「そうだな。では、CICに来てくれ。もちろん君一人でだ。」

 

「ええ、わかりました。じゃあ君達は艦内を見学しててくれ。一時間後に食堂に集合だ。」

 

そう言うと彼は岱蔵と共に艦内へ歩いていった。

 

「....さて、どうしようか?」

 

「そうね。案内もなしにうろついたら危ないし…」

 

「お嬢さん達、案内なら俺が。」

 

いつの間にか横に男がいた。

 

「あの....あなたは...?」

弥生が前に出て男に問いかけると

「あぁそうだったね。俺はこのバカデカイ砲を操作する砲手だ。名前は菰田唯智(こだただのり)。菰田で構わない。」

 

「私は叢雲。よろしく菰田さん。」

 

「うん、じゃあ見学するか?ついてきな。」

 

 

 

 

一方その頃、春日と岱蔵はCICで話をしていた。

「で、私に用事というのは?」

 

「はい。この艦が過去に交戦した敵の編成及び、敵の出現報告データを全て頂けませんか?」

 

「どうしてかね。」

 

「いえ、実は最近妙なことが....」

 

「.....ふむ。なるほど、鎮守府正面海域。それも定期的に哨戒がある製油所地帯をわざわざ敵艦隊が狙って来たと。確かに変だな....リスクが高いのにわざわざそこを選ぶ必要は無いな。」

 

「ええ、そこで、この艦が収集した敵との戦闘記録、及び敵編成、その他場所や日時などのデータを全て頂けませんか。」

 

「わかった。今から手配しよう。横須賀に着く頃には出来ると思う。」

 

「ありがとうございます。ところで、この製油所地帯の件ですが、艦長はどう思いますか?」

 

そう聞かれると岱蔵は、白髪混じりの無精髭を弄りながら考え込んだ。

 

「陽動...かな。」

 

「陽動ですか。」

 

「うむ、ただでさえ哨戒がある海域に出ることで、そこの哨戒をわざと強化させ、別の所を攻める....と言ったところか....」

 

「なるほど。」

 

「だが、現状で詮索しても意味がない。データを確認してからにしよう。」

 

その時だった。

 

 

"緊急事態!緊急事態!レーダーに深海棲艦の感あり!本艦左舷前方1500mより急速接近!,,

 

それを聞きCICが一気に騒がしくなった。

 

「慌てるな!甲板上の乗員は全員艦内に退避!各武装起動。ミサイルセル、全セル開放状態を保持して待機。127mm砲、砲身冷却システムオン、速射モードで待機!戦闘準備!!」

 

「提督!」

 

木曾達がさっきの放送を聞いてCICに飛び込んできた。

 

「みんな、内容は聞いたね?」

 

「あぁ、それにさっき双眼鏡借りてそっちの方向を見た。少なくともリ級二隻、イ級とハ級一隻ずつ確認した。」

 

「わかった。艦長、あの装備を使いましょう。」

 

「そうだな。君達、こっちだ。ついてきてくれ。」

 

CICを抜けしばらく歩くと、あるドアの前に来た。岱蔵が鍵を回しドアを開ける。

 

「す、すげぇ....」

 

中は、狭い空間に彼女達の艤装が吊り下げられ、目の前にスロープのようなものがある場所だった。

 

「提督、ここはなんなんだ?」

 

「ここは、有事の時に艦娘を直接海に出撃させることが出来る。いわば簡易式の出撃用ドックだ。」

 

四列並んだスロープのレール上には、木曾、叢雲、弥生、朝潮の脚部艤装が固定してあった。

 

「いいか、これより君達に緊急の任務を頼む。本艦に接近中の敵艦隊の迎撃及び、可能な限りの排除。こちらも支援を行う。」

 

「心配すんな艦長。俺達がなんとかするさ。」

 

「ありがとう木曾君。」

 

「そうだ、木曾。君の装備だが、今回改ニの装備を用意した。打っ付け本番だが....」

 

「なに、問題ないさ提督。武装は?」

 

「15.5cm三連装砲一門。甲標的。五連装酸素魚雷。」

 

「いいねぇ。じゃあ、ちょっくら暴れてくるか!」

話を終えると、木曾は叢雲達に向き直った。

 

「いくぞお前ら!」

 

木曾の威勢のいい声が狭い空間に響き渡った__


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