艦これSS〜一筋の航跡〜   作:鉄製提督

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少し急ぎ足です。
すいません(土下座)


第九話「演習⑶」

「はぁ、はぁ.....」

 

煙幕の中、叢雲は扶桑を追いかけていた。

 

「速すぎる!」

 

缶を装備し、叢雲と同等の速度を出せる扶桑に翻弄されていた。

速いため、接近するのも至難の技だった

 

(まずは、缶をどうにかしないと!)

そんなことを考えてると砲弾が飛んでくる。

 

接近すれば至近弾を、かと言って速度を落とすことも出来ない。

 

(くっ、これじゃダメだ!)

 

「あらあら、さっきの意気込みはどうしたのかしら!」

続け様に撃ち込んでくる。

 

「きゃ!」

足元に着弾し 、身体が浮き上がる。

 

「もらった!」

扶桑が叢雲を撃とうとしたその時だった…

 

「きゃ!?煙幕!?」

どこからともなく煙幕弾が飛んできた。

 

"叢雲、聞こえるか…,,

長門の声だった。

 

「長門!?もしかして、今のは…」

 

"あぁ、副砲に一発だけ残ってた。上手く使え。,,

 

「ありがとう。長門。」

 

通信を切ると、煙幕の周りを周回し、扶桑を煙のカゴに閉じ込めた。

 

(このまま、接近すれば!)

 

一気に加速し、扶桑に近づく。

 

(狙うは、缶の結合部のみ!)

 

主砲で狙いを付け、ギリギリまで肉迫する。

 

「!?そこね!」

 

扶桑にバレ、向こうも照準を合わせた。

 

「遅いわ!」

 

だが叢雲の砲弾は寸分も狂わず扶桑の缶の結合部を撃ち抜いた。

缶は爆風を上げ、使い物にならなくなった。

 

「くっ、ここまでやるとは、でも甘いわ!」

 

主砲を叢雲に撃つ。

 

叢雲も被弾した。

「くっ、魚雷発射管破損。」

 

「まだまだ!!」

 

さらに砲弾を撃ち込んでくる

 

高密度の弾幕を前に動くことさえできなかった。

 

「はぁ....はぁっ」

 

顔を上げると、扶桑が砲口を向けていた。

 

「今すぐ撤退信号を上げなさい。無用な争いはしたくないわ。」

 

「....絶対に嫌。」

 

「残念ね。仕方ないわ。」

 

弾薬を再装填する音が聞こえる。

叢雲は扶桑の上にあるものがいるのに気づく。叢雲は笑い出した。

 

「?何がおかしいの?」

 

「いや、ほんとに私ばっか見てるから。おかしくなっちゃった。フフッ。」

 

「ハッタリは効かないわよ。」

 

ジリジリと近づく。

 

「上見なさい。う、え。」

 

「上?...!?」

 

見上げると煙が晴れた真上から赤城の攻撃隊が急降下していた。

 

「避けなきゃ、きゃあ!!

 

叢雲が距離を取り至近弾を浴びせる。

 

「残念ね。逃がす気は無いわ。」

 

その直後、二人を爆炎と煙が飲み込んだ。

__煙が晴れると、扶桑が大破していた。

 

「煙幕はブラフよ。こっちの切り札って思ってたのが運の尽きね。」

 

「...完全に私達の負けだわ…」

 

"そこまで!!ただいま雨風水上打撃部隊全艦無力化を確認!ショートランド泊地第一艦隊の勝利とします!,,

 

 

 

 

 

____その夜、鎮守府はお祝い一色だった。

 

「おめでとう。叢雲ちゃん。」

雨風艦隊のみんなも祝に参加してくれた。

「すげぇな。単艦で戦艦を落とすんだから!」

 

摩耶が叢雲の背中をバンバン叩いた。

「痛い痛い。運が良かっただけよ。」

 

「謙遜しないで、十分すごかったわ。」

 

扶桑がフォローするように後押しする。

 

「そう、かしら?」

 

「そうさ、姉さんをあそこまで追い詰めたんだ。」

雨風も叢雲を褒める。

「いいや、私だけの力じゃないわ。摩耶達がいてこその勝利よ。」

 

「へへっ、かわいいこと言うじゃん!このこの♪」

摩耶が叢雲の頭をガシガシと撫でる。

 

「もう、それやめてって言ったでしょ!」

 

叢雲と摩耶のやり取りを見て、全員笑っていた。

そんな中、雨風がひっそりと部屋を抜け出した。

 

 

 

 

 

____その頃、執務室では春日が書類仕事をしていた。

「やっほ、ここにいたか。パーティー行かないの?」

 

「雨風か。今忙しいんだ。」

 

「へぇ、どれどれ....」

書類を手に取って見ると、雨風は表情を変えた。

「....やっぱりね。」

 

「お前には関係ないことだ。」

 

「まだ、"あの娘,,を想い続けてるのか?そりゃあ、俺だって見た時はビックリしたさ。」

 

「.....」

 

「お前だって言ってただろ「失ったものは戻らない」だから俺達にはどうすることも出来ない。」

 

それを最後に、執務室は静寂に包まれた____


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