白い砂浜の上を、一人の少女が歩いていた。
「ふーん。ここがショートランド泊地ねぇ…」
彼女の名は、吹雪型五番艦「叢雲」。
叢雲は、更に奥へと歩いて行く。
しばらくして、木造の大きな建物が見えてきた。
彼女はその建物の中へと入っていった。
「何か、結構ボロいわねぇ。」
彼女の言うとおり、建物の中はだいぶ老朽化していた。廊下は歩くと床鳴りがし、照明は電球をそのまま吊り下げただけのものだった。
少し歩くと、「執務室」と書かれた木札のかかった部屋を見つけた。
「ここのようね。」
躊躇うことなくドアを開ける。部屋に入ると男性が1人と、眼鏡をかけた、艦娘と思われる女性がいた。
「やっと来たね。叢雲。」
「あら、私のこと知ってるのね。」
「当然さ。これから来る予定の娘を知らないでどうするんだい?」
「アンタが司令官ね。よろしく。」
「春日 英人(かすがひでと)だ。よろしく。」
「アンタ随分と若く見えるわね。本当に提督?」
叢雲の言う通りだった。彼の見た目は、二十代後半から三十代前後、中肉中背で、提督と呼ぶには、若過ぎるような見た目である。彼女の鋭い発言に、春日は苦笑いを浮かべた。
「叢雲さん。私は軽巡大淀です。よろしくお願いします。」
「えぇ、よろしく。」
一通り挨拶を終えると、春日は口を開いた。
「それでは、残りの艦娘達も紹介しよう。」
そう言うと彼は、机の上にある放送用マイクのスイッチを入れた。
「全艦娘は、執務室に集合してください。」
しばらくすると艦娘達が執務室へ入ってきた。
「紹介しよう。加賀、赤城、飛龍、長門、摩耶、妙高、木曾、白露、吹雪、綾波、明石だ。」
「へぇ、ほかの艦娘は?遠征?」
「いや、これだけだけど?」
彼の口から放たれた言葉に、叢雲は驚愕した。
「はぁ!?私と大淀入れても13隻しかいないじゃない!」
「は!?いやいや、なんでこんなに少ないのよ!普通もっといるでしょ!」
二艦隊分+1しかいないことに、叢雲は驚愕の声を上げた。
本来は、四艦隊を運用するのが当たり前であった。つまり、24隻は少なくともいるはずなのである。
「ま、まぁ、それついては今度詳しく話すから。ね?」
「.....」
彼の言葉に対し、叢雲は黙り込んだ。
「...わかったわ。」
彼女は渋々承諾した。
「よかった。それじゃあ、君の部屋へ案内しよう。摩耶、頼む。」
「おうよ!摩耶様に任せときな!ほら行くぜ!新入り!」
そう言うと摩耶は、叢雲の手を引き、強引に外へ連れ出した。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
二人がいなくなり、少し部屋が静かになった。
「さて、君達もご苦労だった。各自解散でいいよ。」
「了解」と同時に言った後、それぞれ談笑しながら部屋を出て言った。
大淀だけは部屋に残った。
「....いいのですか?提督。」
「ん?何がだい?大淀。」
質問に首を傾げるのに対し、大淀は溜め息をついた。
「しらばっくれないで頂けますか。」
その言葉で、春日は柔らかい笑顔から、硬い表情へと変えた。
「ああ、いいんだ...僕達は受け入れるしかない、たとえそれが残酷な巡り合わせだったとしても____」
To be continue...