Fate/BANZOKU 作:今日から君は、BANZOKUだ!!
この作品は、戦闘時は三人称。それ以外では一人称で書いてます。『読みにくい』『統一した方が良い』という場合は、気兼ねなく感想にて言って下さい。
それからキャラが喋る時の『』はピクト語「」はブリテン語なので、基本的に言語は通じてません。ほぼ理解不能状態です。
色々あって、主人公には名前がありません。なので地の文では『戦士』と呼ばれています。
戦闘描写マジでムズい……。
全身に緑の刺青を施した『戦士』が、猛烈な槍さばきで女性騎士──ガレス──を攻め立てる。
『オラオラどうしたッ!そんなもんなのか、円卓の騎士の力ってのはよぉッ!』
「ぐっ!」
『戦士』とガレスとの間には、致命的なまでの技量差があった。
ガレスが一度斬りかかる間に『戦士』は三度の攻撃を浴びせ、ガレスが一撃防ぐ間に、その守りを掻い潜って三撃もの有効打を与えている。
いつガレスの首が刎ねられてもおかしくはない状況だが、そうなっていないのは偏にトリスタンの援護による物だ。
『戦士』がガレスを殺し得る一撃を放とうとすれば、必ずトリスタンの弓による邪魔が入る。これがただの弓矢ならば『戦士』にとって大した問題にはならないが、目に見えぬ音の刃ではそうもいかなかった。
『チィッ!』
今もまた、ガレスの首を刎ねようとした『戦士』は、直感から追撃を止めて半歩だけ下る。するとその目の前を音の刃が通り過ぎて行く。
「ガレス。無茶をしないように。奴は並の手合ではありません。今まで幾人もの著名な騎士を倒している強敵です」
「すみません、トリスタン卿」
『戦士』が攻め立て、ガレスが応戦し、トリスタンが『戦士』を退ける。先程からこの一連の流れが続いていた。
一見すれば拮抗しているかに見える状況だが、しかしトリスタンには、この『戦士』を倒すビジョンがまるで見えなかった。それどころか、ガレスが戦士に討たれぬようにするのが限界だったのだ。
本来躱わす事など不可能に近い音の矢は、『戦士』の異常なまでの勘の良さから掠りもせず、ガレスの技量ではトリスタンの援護込みでも『戦士』には及ばない。
『んー。大体分かってきたな。』
しかもトリスタンは、時間が経つにつれて、段々と『戦士』の音の刃への反応が速くなってきていることを感じていた。最初は『戦士』も体勢を崩しながらのギリギリの回避だったにもかかわらず、今ではある程度余裕を持って避けられている。
『……次あたりで行ってみるか』
『戦士』はチラリを視線をガレスの周囲に向けると、ガレス目掛けて駆け出す。
その防御ごと食い破らんとする『戦士』と、真っ向から迎撃の構えを見せるガレス。互いの武器が交わりかけた次の瞬間、『戦士』は槍を立てるように手前に放ると、降り下ろされるガレスの剣目掛けて蹴飛ばした。
『そぅらよっ!』
「かはっ……!」
槍はガレスの剣を弾き飛ばし、続けざまに『戦士』はがら空きの腹を蹴とばして距離を開けさせる。そして『戦士』は、直後に飛来した目に見えぬ音の矢を、手刀によって大気ごと切り裂いて掻き消した。
「なっ!?」
素手で音を切り裂くというありえない対処法に面食らったトリスタンは、驚愕で一瞬だけ硬直してしまう。しかしその一瞬だけで、『戦士』には充分だった。
『戦士』は近くに転がっている仲間の死体から斧を拾い、それをブーメランのように投げつける。斧は数名の騎士の首を刎ね飛ばしながらトリスタンへ向かい、迎撃に放たれた音の矢を掻き消していく。
弓による撃墜は無理だと判断したトリスタンは、咄嗟に腰の剣を抜いて飛来する斧を弾いてみせた。しかしそれによって腕が大きく弾かれており、『戦士』はその隙を突いて隠し持っていた石を投げつけた。
『オラァッ!』
「ぐぁっ!?」
石は寸分違わずトリスタンの頭部へと命中し、片目を潰すと同時に脳震盪を起こしてトリスタンを気絶させた。
『幾ら目に見えない音の刃でも、こう何度も放たれたら流石に対処くらいはできる。俺の実力を見誤ったな、弓兵』
『戦士』は気絶したトリスタンから目を離し、先程蹴飛ばしたガレスの方へと目を向けた。頑丈なはずの鎧は蹴られた部分に大きな罅が入っており、ガレス自身にも衝撃が達したのか、腹を押さえてえずいている。
『戦士』は落ちている自身の槍を拾うと、援護の無くなったガレスを殺すために近づいていく。
『別に、仕留めようと思えば割と機会はあったんだ。ただ、音の矢に対応しきれない内に無茶をする必要がなかっただけだ』
近づいて来る『戦士』にガレスは落ちていた同胞の剣を拾って応戦しようとしたが、それより速く『戦士』が接近。剣を拾おうとしたガレスの手を踏み砕いた。
「あぐぅっ!」
『じゃあな、円卓の女騎士。悪くはなかったが、俺相手には足りなかったな』
うずくまるガレスの頭部目掛けて、『戦士』は槍を降り下ろす。しかしそれが当たる直前で、彼は本能的にその場から大きく飛び退いた。
『戦士』が先程まで自分が立っていた場所を見れば、そこには膨大な熱量を帯びた光の刃が通過している。
「無事ですか、ガレス!」
「兄……さん。モード……レッド……」
『戦士』が光の刃の発生源の方向を向けば、多くの同胞を葬った円卓の騎士、ガウェインとモードレッドが、大勢の騎士達を引き連れてやって来ていた。
「ガレスとトリスタンを下がらせて治療しろ!こいつは俺達が相手をする!」
真っ先に斬り掛かって来たモードレッドの剣を受け止めながら、『戦士』は思考を巡らせる。
円卓の騎士が二人も駆けつけた時点で、護衛の足止め部隊が不覚を取った事を覚り、これ以上の戦闘続行に利益は無しと判断を下した。
『……チッ、あいつら、下手を打ちやがったな。物資は運び終えてるし、このまま戦っても意味はないか……撤退するぞ!荷物持って引き上げろ!』
『『『おお!!』』』
『戦士』の命令に従い、即座に戦闘を止めて戦場から離脱し始めるピクト人達。
『戦士』はモードレッドの剣撃を受け流しながら背後へ回り込み、モードレッドが向き直る前に兜の角を掴んで、筋力任せに遥か上空へ投げ飛ばした。
『ぜりあぁぁっ!』
「う、おぉぉぉっ!?」
投げの直後の隙を狙ってガウェインが斬りかかるが、『戦士』は強く後ろに跳んで避けてから、力の限りを込めて、後退中のガレス目掛けて槍を投擲した。
「っ!負傷者を狙うなど、卑劣な!」
負傷しているガレスを庇う為には、ガウェインは槍の射線上へ立ち塞がらざるをえず、『戦士』への追撃を中断させられてしまう。
『じゃあな、騎士ども。また来るぜ』
ガウェインがガレスを庇いに行った瞬間、『戦士』が拳を地面に叩きつけると、周囲の地面が爆散して砂煙となって視界を塞いだ。
砂煙が晴れた時には、既にそこに『戦士』含むピクト人達の姿はなく、遠方に後ろ姿が見えるだけだった。
騎士達は馬を使って追いかけようとするが、彼等の強靭な脚力から生み出される速さは馬をも上回り、ただでさえ開いている距離を離されていく。
「待ちやがれっ!今度こそは逃がさねえぞっ!」
それでも何処までも追いかけてくる騎士達に、このままでは拠点がバレる可能性があると判断した『戦士』は、一旦足を止めて大きく息を吸い込んだ。
『があぁぁッッ!!』
『戦士』が大声で吼えると、騎士の乗る馬達は恐慌状態に陥り、まともに言うことを聞かなくなってしまう。
馬が動かぬその隙に、ピクト人達は視認すら不可能な程の距離を駆け抜け、見事に逃げおおせたみせた。
今回の戦いは、完全に円卓の敗北であった。
みんな蛮族になぁれ!