Fate/BANZOKU 作:今日から君は、BANZOKUだ!!
かつてブリテン島に住まい、キャメロットの黄金時代を築いた円卓の騎士たち。一人一人が一騎当千の実力を持ち、数多の騎士達を率いて歴史に名を刻んだ英雄たちだが、その彼等をして難敵とされる恐るべき民族が居た。
そのあまりの価値観の違いや、対話の通じぬ凶暴性ゆえに蛮族と呼ばれ、アーサー王が誕生して尚、長年に亘って人々を苦しめたその者達の名は、ピクト人と言った。
◇◇◇
『これでラストっと』
逃げようともがく騎士を足で押さえつけながら、手に持った槍を後頭部へと突き刺す。騎士の体は一度ビクンッと跳ねた後、それきり動かなくなった。辺りを見渡してみれば、今止めを刺した者と同じ上等な装備に身を包んだ騎士達の死体が転がっている。その大半が四肢がもげている者や、首から上が無い者。上下半身が分かれてしまっている者が殆どで、まともな形状を残している死体はほとんどない。それらの死体は皆、金属で切断されたというよりは、
死んだ騎士達の遺品を漁る役目を仲間に任せると、俺は手頃な岩に座って体を休め始める。高揚している体を鎮めようと軽く深呼吸をすれば、戦場全体に充満する血の臭いが鼻につく。この臭いに慣れてしまっていることに嫌気を感じる自分を自覚しつつも、同時に戦の高揚感に心を躍らせる自分がいた。そしてそれを考える度に、自分にもしっかりと蛮族の血が流れているのだと自覚する。
俺達はキャメロットからローマ軍との最前線へと運ばれる物資の輸送隊を襲撃していた。
手始めに円卓の騎士を擁する護衛部隊を分断し、残った僅かな護衛も今しがた片付け終えた。今は待機させていた奴等が、戦利品を運んでいる。しかし、そろそろ足止めを抜けて幾人かの護衛部隊が辿り着く頃だろう。
『敵の増援が来たぞ!』
『戦士長!率いているのはあの妙な弓を使う奴だ!それともう一人、やたら強い女も居るぞ!」』
『周りは俺達が押え込む!奴等を頼む!』
『おう』
全身に緑色の刺青を施し、六つ穴のフルフェイスヘルメットをかぶった2メートルの大男達が、俺に背中を任せて騎士たちへ走っていく。
それに続くように俺もまた駆け出し、敵軍の先頭を駆けて来る、兜を被った女騎士に襲い掛かる。
「さぁ勝負といこうかぁッ!!円卓の騎士様よォーーッ!!」
◇◇◇
精強な円卓の騎士達を日々追い詰め、強大なるローマ帝国に多大な被害を与えたピクト人だが、文字という文化を持たなかったために、彼等には謎が多い。
しかしそんなピクト人の中でも、数こそ少ないが著名な者は存在する。鉄のアグラヴェインを瀕死に追いやり、太陽の騎士ガウェイン、湖の騎士ランスロット、叛逆の騎士モードレッド、隻腕の騎士ベディヴィエール等円卓の騎士四人を単独で退け、円卓の騎士を幾度となく窮地へ追いやった男。
ついには、常勝の王と謳われた騎士王を敗走寸前まで追いつめ「最も難敵であった」と言わしめた、そのピクト人戦士の名は────